2019年02月21日

父と娘の物語 「糸井版 摂州合邦辻」


gappo.jpgパ~パ パ~パ
娘よ~
パ~パ パ~パ 抱きしめ~て

幼い玉手(お辻)と父 合邦道心の歌が耳に蘇ります。
夕暮れ時に仲良く手をつないで歩く父と娘。
穏やかな笑顔、二人を包む温かい陽の光まで目に浮かぶよう。


ロームシアター京都 レパートリーの創造
木ノ下歌舞伎 「糸井版 摂州合邦辻」
作: 菅専助  若竹笛躬
監修・補綴・上演台本: 木ノ下裕一
上演台本・演出・音楽: 糸井幸之介
音楽監修: manzo
振付: 北尾亘
出演: 内田慈  田川隼嗣  土居志央梨  大石将弘  金子岳憲  
伊東沙保  西田夏奈子  武谷公雄  石田迪子  飛田大輔  山森大輔

2019年2月11日(月) 3:00pm ロームシアター京都 サウスホール 1階1列センター
(上演時間: 2時間15分)



物語: 元は武士でありながら讒言によって浪人し、出家して清貧の暮らしをする合邦道心(武谷公雄)の娘お辻(内田慈)は河内の大名高安家に腰元奉公し、奥方亡きあと後添えに望まれて玉手御前と呼ばれていましたが、義理の息子 俊徳丸(田川隼嗣)に許されぬ恋慕の情を寄せていました。異母兄の次郎丸(大石将弘)から疎まれていた俊徳丸は原因不明の業病にかかり盲目となってしまい、許嫁の浅香姫(土居志央梨)を残して出奔します。四天王寺で再会した二人は合邦道心に助けられ、彼の庵室に身を寄せます。そこへ、俊徳丸のあとを追って玉手御前が実家である合邦庵室にやってきます・・・。


柱が林立する舞台。
女性同志の争いから間に入った男性が片方の女性を刺す、という場面がいきなり展開されますが、すぐに立ち上がって、役者さんたちが舞台上を行き交いながら歌います。

ダンボールのマイホーム 枕は少年ジャンプ  とか
ストロングゼロ コンビニで買って  とか
最後の客をお見送りして バスタブ 湯を抜く ソープ嬢  
・・・といった、現代の世相そのものの歌詞
この曲がいつまで続くの?と思うくらい長かったのですが、時折、最初のシーンが挟み込まれて、「ああ、あれ、合邦道心が玉手を手にかける場面だったんだ。もう一人の女の人は浅香姫なのか」と気づきました(遅い💦)。

幼き日の次郎丸・俊徳丸・浅香姫のかわいらしい三角関係
高安家へ奉公に出るお辻
高安家に後妻に入ることとなり、上司にあたる羽曳野とともに両親に挨拶に来るお辻
そして幼いころの父と娘
・・・オリジナルのストーリーに、こうだったであろう、なイマジネーションの部分を織り交ぜた展開。


「摂州合邦辻」は元々合邦夫妻と玉手の親子の情愛や、玉手が俊徳丸と次郎丸を思う母の物語ではありますが、この「糸井版」は、合邦と玉手という父と娘の情愛がより色濃いという印象です。

庵室で玉手乱心かとばかりに狂気の言動を見せる玉手とそれを許すことができない合邦。
そこに、フラッシュバックのようにパ~パ パ~パ 娘よ~ の歌とともに時を遡って現れる幼き日のお辻と父の姿。

他愛ない親子の会話の中で
「辻ちゃんはどんな動物が好き?」
「うーん、猫も好きだけど、辻ちゃん、虎がいい!カッコいいもん」
「・・・辻ちゃん、虎はやめとけ。虎は縁起が悪い」
少し翳りのある表情でつぶやく父 合邦の言葉に、「寅の年寅の月寅の日寅の刻に生まれた女」を思い起こして、それがこの少女がやがて辿る悲運に繋がって、思わず洛涙。


オリジナルの部分の台詞は戯曲通り、挿入部分は現代語と振り分けられていて、時も行きつ戻りつしますが、さほど違和感はなく、この戯曲を知っている人にも楽しめて、初めて観る人にも(多分)わかりやすい物語になっていました。

浅学非才の身ですので、以前 木ノ下さんと糸井さんの対談で読んだ、「俊徳丸の日想観」や「玉手が出奔した俊徳丸を追いかける動きが大阪の地理で考えると生駒山から太陽が昇り大阪湾に日が沈む天体の動きとも重なるように、登場人物たちが、あるときは太陽、あるときは月、あるときは闇と言うように、天体や自然と呼応しながら展開しているところが詩的で面白い」といったところまで感じ取ることは正直なところできませんでしたが、玉手の多面性を月に見立てたのはうまいなぁと思いました。


玉手を演じた内田慈さん とてもよかったです。
冒頭の長い歌の時、役者さんによって歌詞の届き方にバラつきがあるなぁと思いながら聴いていたのですが、ひと際くっきり届く人がいて、それが内田さんでした。もとより口跡のよい役者さんで台詞もしっかり。

無邪気な少女時代をはじめ、妖艶な人妻、鬼気迫るクライマックスから聖女のような最期まで、本当に月が姿を変えるように様々な表情、細やかな演技を見せてくれました。
「かかさん、かかさん」と呼びかける切なさ
「邪魔をいたさば蹴殺すぞ」と浅香姫に向ける激しさ
「物語るうちこの刀、必ず抜いて下さんすな」とお腹に刀が刺さったまま語る壮絶
「ととさん、お疑いは晴れましてござりまするか」と父に甘える娘の一面
強く激しく、切なく哀しく、愛おしい玉手でした。

浅香姫の土居志央梨さんもよかったな。
病を得た俊徳丸がどんな姿になっても悪臭を放っても、決して見放さず寄り添う浅香姫。そのやさしさと強さに救われる思いでした。

俊徳丸の田川隼嗣さん、イケメンですね(笑)。
今回の役はオーディションで射止めたのだとか。
「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」(2017)にも出演されていたということですが、全く記憶にない(ごめんなさい)。まだ高校3年生と後で知ってびっくり。今後楽しみな役者さんがまたひとり。

ただただ娘を思い、戸を開けて娘を中へ入れようとする様や、「俊徳丸への邪恋は嘘であろう」と、すべては嘘と娘を信じたい・・・女親ってこうだよなぁを体現した母おとくの西田夏奈子さん、そして、父として娘を思う気持ちと元は武士であり仏に仕える者の矜持との間で揺れる合邦道心の武谷公雄さん・・・親子の物語なればこそのお二人でした。


この日は中村扇雀さんが観にいらしていて、終演後のロビーでは木ノ下さんと何やらお話。
引き締まった表情の扇雀さんと恐縮して聞く木ノ下さん・・・もしかしてダメ出し?(笑)



本当は木ノ下さんのポストトークある2月10日行きたかったけど「ファントム」ライビュと重なったのよ のごくらく地獄度 (total 2018 vs 2023 )


posted by スキップ at 23:07
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