2019年01月26日

壽初春大歌舞伎 昼の部


kabukiza201901.jpg歌舞伎はじめはお正月飾りも華やかな歌舞伎座。
昼夜ともに祝祭感ある演目が入っていて、日常ではすでにはるか彼方なものとなってしまったお正月気分をまた味わえて何だか得した心持ちでした。

壽初春大歌舞伎 昼の部
2019年1月13日(日) 11:00am 歌舞伎座 
1階1列センター



一、再春菘種蒔 舌出三番叟 
出演: 中村芝翫  中村魁春
(上演時間: 29分)


三番叟は数々観ていますが、「舌出三番叟」は初めて、しかも芝翫さん、魁春さんという座組も多分初めて拝見するもので、なかなか新鮮でした。

芝翫のきびきびとした三番叟、魁春の艶やかな千歳・・・魁春さんのお着物、綺麗だったなぁ。
三番叟にあの鈴をシャリ~ンと鳴らされると、おめでたくも神聖な気分になります。
華やかでお正月気分を盛り立てて、幕開きにぴったりの舞踊でした。


二、吉例寿曽我
鴫立澤対面の場
補綴:今井豊茂 
出演: 中村福助  中村七之助  中村児太郎  中村梅花  
中村福之助  中村松江  中村芝翫 ほか
(上演時間: 35分)


初春に上演されるのが吉例の「曽我狂言」ですが、親の敵である工藤祐経を討つという大望成就のためにやってきた曽我兄弟の前に現れたのは工藤祐経の奥方 梛の葉という設定で、曽我物の中でこちらも初めて拝見。

全身白を纏った黒衣さん(とは言いませんよね)がいて、「あれ?今の黒衣さん、白だった?」と我ながら訳のわからないことを心中でつぶやいて二度見したのですが、この演目は「雪の対面」という通称で、舞台一面が雪の場面となっているため、黒衣さんとともに雪衣さんが出るのも特徴なのだそうです。


曽我五郎にあたる血気盛んな弟の箱王が芝翫さん、落ち着いた兄の一万が七之助さんという布陣。
年齢はまったく逆ですが、そこがうまく成り立ってしまうのが歌舞伎役者のなせるワザ。
「必ず粗相のないように」と一万に釘を刺された箱王が「がってんだ~」と応じる。その元気のよさに客席は思わず笑いと拍手。ゆったりした印象の芝翫さんに元気で暴れん坊の弟キャラが存外にハマっていました。

工藤奥方梛の葉は中村福助さん。
昨年、秀山祭九月大歌舞伎で5年ぶりに復帰されてから二度目の舞台です。
御簾が開いて梛の葉の姿が現れると客席から割れんばかりの拍手で迎えられました。
右手はまだご不自由なご様子でしたが声に艶も張りもあって台詞も安定度を増し、座っているだけなのに存在自体が大きく品格もあって、舞台人としての矜持を感じました。

「曽我対面」では小林朝比奈の役どころが妹の舞鶴 中村児太郎くんです。
「女暫」のように花道から一人登場し、お父様の目の前で、一人で場を支えることができる姿を立派にお見せできたと思います。
「父や叔父、従兄も揃って成駒屋、中村屋で・・・」というような台詞があって、胸熱でした。


三、夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋
出演: 松本幸四郎  中村七之助  中村東蔵  片岡秀太郎 ほか
(上演時間: 49分)


昨年、御園座柿葺落四月大歌舞伎で松本幸四郎さんの襲名披露として上演された演目。
幸四郎さんたっての希望で澤村藤十郎に教えていただいたという清元をつかう江戸前の「吉田屋」です。

御園座でもそうでしたが、今回も幸四郎さん伊左衛門の可愛らしさ炸裂。
こんなつっころばしの役は幸四郎さんの真骨頂。
夕霧を待ちわびながら、所在なげに床の間に寄りかかったり、三味線を爪弾いたり、勘当されたわが身を嘆いたり、夕霧が心変わりしたのではないかとなじったり、コロコロと変わる気持ちを繊細さと豊かな表情で描出。もうすぐ夕霧がやってくるとなって、そわそわして奥をのぞいてみたり、襖の陰に立ったり、座布団に座ったり・・・一つひとつの仕草が可愛らしいにもほどがある。しかも色っぽくて、大家の若旦那と云う風情も失わず、勘当された身の上の哀感も漂うという。
舞台にほぼ一人という時間が大半なのですが、歌舞伎座のあの大きな舞台を一人で支配できる力量を遺憾なく発揮。飽きることなくずっと観ていたいくらいでした。

七之助さんの夕霧は本当に絵に描いたような美しさつ艶やかさ。
来るぞ来るぞ、とわかっていても、実際登場したら「ふわぁ~ キ・レ・イ❤」と思わずにはいられません。客席からもジワが起こっていました。
翳りや儚さの中に知性も感じられる夕霧で、拗ねる伊左衛門をなだめる大人の女性に見えたのは玉三郎さんご伝授でしょうか。

勘当が解けたという報せが入り、夕霧を身請けするお金も届いて喜左衛門、おきさ夫妻をはじめたくさんの人が笑顔で登場する終幕。
秀太郎さんおきささんの大阪締めで客席も一緒に「祝うて三度」やって、多幸感に満ちた吉田屋でした。


四、一條大蔵譚
檜垣/奥殿
出演: 松本白鸚  中村魁春  市川高麗蔵  
松本錦吾  中村雀右衛門  中村梅玉 ほか
(上演時間: 1時間22分)


こちらも何度も観ていてたくさんの方が演じられる大蔵卿を観てきましたが、白鸚さんの大蔵卿は初めてでした。

これまで拝見した数々の大蔵卿と最も違うと感じたのは、つくり阿呆と本性のギャップがあまりないこと。
つくり阿呆のつくり方が下手ということではなくて、何て言えばいいのでしょう、ガラリと変わってしまうのではなくて、ちゃんと地続き、みたいな感覚です。
つくり阿呆の時に愛嬌を見せて客席を笑わせることはあまりなかったものの、憂いを纏った大蔵卿。
本性を顕してからは白鸚さんの朗々とした台詞が冴えわたっていました。

配役をあまり把握せず、鬼次郎・お京誰だろう?と思いながら観ていて、梅玉さんと雀右衛門さんが出てきて、「まぁ、年齢層の高い『大蔵卿』だこと」なんて思ったワタシ、失礼を反省。
このお二人に常盤御前の魁春さんを加えた熟年トリオの安定感、すばらしかったです。
それにしても梅玉さんって、いつ観ても梅玉さんなのに老いも若きもその役々に難なく溶け込んでいる感じで、私にとって不思議に魅力的な役者さんです。



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おめでたい初春だから幕間にはもちろんめでたい焼きいただきました のごくらく度 (total 2007 vs 2011 )



posted by スキップ at 17:30
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