
イングランド女王 エリザベス一世。
カトリックのメアリーとプロテスタントのエリザベス。
感情豊かで奔放なメアリーと冷徹で知的なエリザベス。
三度結婚したメアリーと生涯独身を貫いたエリザベス。
処刑されたメアリーとその執行書に署名したエリザベス。
同じ時代、同じ島に生きながら、対照的な生き方をして、最後まで会うことがなかった二人の女王の物語。
PARCO Production 「メアリー・ステュアート」
フリードリッヒ・シラー作「メアリー・スチュアート」の自由な翻案
作: ダーチャ・マライーニ 訳: 望月紀子
演出: マックス・ウェブスター
セットデザイン: ジュリア・ハンセン
衣装デザイン: ワダエミ
サウンドデザイン: 内田学
音楽監督: 辻康介
出演: 中谷美紀 神野三鈴
リュート演奏: 久野幹史/笠原雅仁
2015年7月11日(土) 2:00pm シアター・ドラマシテイ 3列下手
二人の女王の物語、ということで中谷美紀さんと神野三鈴さんがメアリーとエリザベスを演じるものとばかり思っていましたが(そしてそれは確かにその通りなのですが)、中谷さんがメアリー・ステュアートの時は神野さんが乳母のケネディ、 神野さんがエリザベスの時は中谷さんが侍女ナニーを演じていて、常にペアで演じます。
幽閉され、エリザベスに会いたいと手紙を送り続けるメアリーと、一国の女王としてその処遇に悩むエリザベス一世、それぞれの場面がくるりくるりと入れ替わって描かれます。
この、場面が入れ替わるごとに二人が演じる人物も瞬時に別の人になるのですが、この演じ分けの鮮やかなこと。
腰をかがめ、背中も丸めてメアリーにかしづいていた乳母が、次の瞬間、背筋をのばし、顎を突き出した傲慢な女王としてそこに立っていました。
衣装は同じなのに、見た目だけでも別人にしか見えない。
声、話し方、表情、仕草などはもちろんのこと。
げに女優さんとはおそろしきかな。自分の心に正直に、恋に生きて国を追われ女王でなくなったメアリー。
私欲を封じ込め、自分を律して女王として君臨するエリザベス。
相手が自分には持っていないものを持っていて
自分も相手には欠けているものを持っていると知っています。
どちらが正しいとか、どちらの生き方が幸せということではなくて、
まるで二人が揃うと完成するパズル。
メアリーとエリザベスは互いに己の姿を映し出す鏡のよう。
そしホリゾントには客席を映す全面鏡。
二人の生き方は、それを客席で見守る私たち、つまり現代の女性をも映し出す鏡、という意図でしょうか。
凛とまっすぐ前を見て立つ中谷メアリー。
まるで背中に背負っている国が見えるような神野エリザベス。
二人がそれぞれ女王になる場面が、まるで攻守チェンジのようにめまぐるしく展開。
とても聴き応えがあり、見応えがありました。
ただひとつ。
中盤、二人がハンドマイクでロバート・ダドリー?を「豚」「豚」と罵りながらノリノリで歌うロックというか、ラップというか(唖然)。
多分、この舞台のメインイベントなのだと思いますが、唐突すぎて、え?何が起こったの?と心が全然ついていけませんでした。
しかもそれって、メアリーの夢だったし

ワダエミさんデザインの衣装、ステキでした。
クラシカルだけどシャープで。
黒いスリップドレスの上にサンドベージュのローブを重ねたような、二人ほぼ同じデザインで、
メアリーは袖口と裾に銀箔の大きな三角形の幾何学模様、
エリザベスは金箔で四角形でした。
ラスト
そのローブを脱ぎ捨て、真紅のドレスで刑場に赴くメアリー。
最後まで背筋を伸ばし、凛と前を向いて。
カーテンコールがスタオベになって、それを見た神野さんが感激して泣かれて、さらにそれを見てこちらも目頭が熱くなるという。
いやしかし、あのロックはなぁ(再び) の地獄度


