2012年11月30日

ビバ!文楽 「あやつられ文楽鑑賞」

ayatsurare.jpg三浦しをんさんの「仏果を得ず」を読んでいた時、あんまりおもしろくて、「おもしろーい!」とTwitterでつぶやいたところ、複数のフォロワーさんから「それならこちらも」と薦めていただいた本です。

「あやつられ文楽鑑賞」
作: 三浦しをん
単行本: ポプラ社    2007年5月
文庫本: 双葉文庫   2011年9月


「この本は、文楽観劇のド素人であった私が、いかにしてこのとんでもない芸能にはまっていったかの記録である」で始まるまえがき。
順番としては、こちらが先で「仏果を得ず」に続くようですが、後から読んでも十分おもしろかったです。
あ、ここでこういうふうに知ったことが「仏果を得ず」のあの描写につながったのか、とか、まんまあの場面、というところもあったり。

ド素人とは言うものの、取材と称して劇場の楽屋を訪ねて大夫さんや三味線さん、人形遣いさんに会ってインタビューしたり、なんていうところはさすが直木賞作家は「ただの素人」とは違います。
それでも、文楽のあれこれを知るたびに好奇心とミーハー心たっぷりにそのおもしろさ、すばらしさを伝えるしをんさんの文章はとても好感が持てますし、作中に出て来る「仮名手本忠臣蔵」「桂川連理柵」「女殺油地獄」といった作品の考察は、さすがの筆致で、作品そのまま観ているように読み応えがあります。

三味線の鶴澤燕二郎さん(現・燕三さん)へのインタビューの項。
燕二郎さんの師匠である五世鶴澤燕三さんが、「ひらかな盛衰記」の「逆櫓の段」を弾いている舞台上で倒れた。大夫は竹本住大夫さん。燕三さんを心配しつつも三味線なしで語り続ける。その時、燕二郎さんが浴衣姿のまま床に出て三味線を弾いた。
・・・以前に聞いたことがあることも、こうして当事者の話としてリアルに感じられて、改めて文楽、そしてナマの舞台の凄まじさを見る思いでした。
先日文楽列車で吉野へ行った時、終演後、金峯山寺蔵王堂の人影まばらな本堂で、権現様の前で静かに手を合わせていらっしゃった現・燕三さんの姿が目に浮かびました。


この2冊読了して「仮名手本忠臣蔵」通しへなだれ込み のごくらく度 わーい(嬉しい顔) (total 1023 わーい(嬉しい顔) vs 1028 ふらふら)
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2012年10月16日

11月文楽公演がますます楽しみ! 「仏果を得ず」

bukka.jpg「チョコレートコスモス」おもしろかった!っていうエントリへのコメントで「こちらもおもしろいですよ」とみんみんさん恭穂さんが薦めてくださった本はぜーんぶ買った(笑)のですが、その中の一冊。

「仏果を得ず」
作: 三浦しをん
単行本: 双葉社     2007年11月
文庫本: 双葉文庫   2011年7月


文楽の世界を描いた作品。「若手大夫の成長を描く青春小説」というキャッチフレーズがついていますが、これ、非常におもしろかったです。紹介していただいてありがとーっ!!という感じ。
文楽を知らなくてももちろん楽しめますが、文楽と少しでも接したことがある人ならより一層興味を持って読むことができますし、次に文楽の公演を観る時に感じ方が変わったりするのではないかしら。
通勤電車の短い時間に切れ切れに読んでいてもかなり面白くて、早く続きが読みたーいと思いながらままならず、今回の東京遠征の移動時間にもう一度最初から一気読みです。しかも読了後、もう1回ざっと読み返したくらい。

主人公は笹本健(たける)大夫 30歳。
高校の修学旅行でいやいや文楽を観て、ある大夫の石をぶつけるようなエネルギーに射られるように文楽の道を志し、文楽研修所で学んだ後、現在はその大夫・人間国宝 笹本銀大夫の弟子として文楽の世界に生きています。続きを読む
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2012年08月28日

舞台はいつだって小宇宙 「チョコレートコスモス」

chocolatec.jpgみんみんさんつながり(笑)。

「演劇好きの人だったらきっとおもしろいと思う」と少し前にみんみんさんにいただいた本。
本といえば会社のレポートや課題で読まされるビジネス書に追われて、なかなかページを開けないでいたのですが、読み始めるとほんとにおもしろくてぐんぐん引き込まれ、夏休み中の1日(厳密にいえば数時間)で一気読みしました。

「チョコレートコスモス」
作: 恩田 陸
初出:  サンデー毎日 2004年6月27日号~2005年8月7日号
単行本: 毎日新聞社  2006年3月5日
文庫本: 角川文庫   2011年6月25日


ある著名なプロデューサーが新しくオープンする新国際劇場のこけら落とし公演のために女優二人芝居の上演を企画し、そのオーディションに挑む女優たちの物語。
中心となるのは、芸能一家に生まれたサラブレットで美貌と才能を兼ね備えた若き天才女優・東響子と、大学の演劇サークルに入ったばかりで、おとなしく目立たない風貌ながら、ある種狂気じみた天性を発揮する佐々木飛鳥。佐々木飛鳥の「自分では気づいていない」天才ぶりには、「あぁ、天才ってきっとこんなふうなんだろうな」と驚いたりうらやましく思ったり。続きを読む
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