2023年09月18日

これが完成形 星組 「1789 -バスティーユの恋人たち-」


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2012年にパリで初演された大ヒットフレンチロックミュージカル。
2015年 宝塚歌劇月組にて日本初演。2016年には東宝ミュージカル版も上演されました。

今の宝塚で上演するなら星組以上にハマる組はないと思っていたとおり、星組の上演が決定した時は歓喜。
とても楽しみに待っていました。

初日を前に瀬央ゆりあさんの専科への異動発表。
さらには、礼真琴さんがこの公演後の別箱公演には出演せず休養することが発表され、何だか不穏な空気が・・・。

6月2日 台風襲来の中、宝塚大劇場初日が当初の予定より2時間30分遅れて開幕。
が、翌日から25公演中止(全45公演の半分以上)
6月19日ソワレより公演再開。7月2日 宝塚大劇場千穐楽。

7月22日 東京宝塚劇場公演開幕。
が、8月15日 11:00公演の2幕より突然の中止。その日のソワレより休演。
翌日から3日間の休演後、8月19日より公演再開するも、主演の礼真琴さん休演。
代役(ロナン:暁千星 デムーラン:天華えま ダントン:碧海さりお ラマール:鳳真斗愛)にて8公演上演。
8月24日 礼真琴さん復帰。
そして8月28日 大千穐楽。

と、波乱に満ちた公演となりました。
舞台はもちろんとてもすばらしいものでしたが、これから星組の「1789」を思い出すたびに胸がキュッとなりそうです。


宝塚歌劇 星組公演
三井住友VISAカード シアター
スペクタクル・ミュージカル
「1789 -バスティーユの恋人たち-」
Le Spectacle Musical ≪1789 - Les Amants de la Bastille≫
Produced by NTCA PRODUCTIONS, Dove Attia and Albert Cohen

脚本: Dove Attia and François Chouquet
潤色・演出:小池修一郎
音楽監督・編曲:太田 健   編曲:青木朝子
音楽指揮:佐々田愛一郎  西野淳(東京)
振付:御織ゆみ乃  若央りさ  桜木涼介  KAORIalive  鈴懸三由岐
疑闘:栗原直樹   装置監修:大橋泰弘   装置:國包洋子
衣裳:有村 淳   照明:笠原俊幸
出演:礼 真琴  舞空 瞳  瀬央ゆりあ  暁 千星  極美 慎  有沙 瞳
美稀千種  白妙なつ  大輝真琴  輝咲玲央  ひろ香祐  朝水りょう
天華えま  夕渚りょう  天希ほまれ  小桜ほのか  蒼舞咲歩
碧海さりお  天飛華音  瑠璃花夏  詩ちづる  稀惺かずと  大希 颯/
輝月ゆうま ほか

2023年6月2日(金) 3:30pm 宝塚大劇場 1階29列下手/
6月24日(土) 11:00am 2階3列下手/
6月28日(水) 11:00am 2階14列センター/3:30pm 1階13列下手/
7月2日(日) 1:00pm 1階26列下手/
7月29日(土) 11:00am 東京宝塚劇場 1階6列上手/
8月9日(水) 1:30pm 2階6列センター/8月27日(日) 1:30pm 1階10列センター
(上演時間:3時間5分/休憩 35分)



8月27日 東京千穐楽のレポはこちら



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こちらは7月29日に東京宝塚劇場で観た時の座席から撮ったもの。
階段にまっすぐ続く通路横で、蒼舞咲歩さんイヴが真横に立つ、というお席でした。


物語は1788年のフランスの農村ボースから始まります。
貴族将校ペイロール伯爵(輝月ゆうま)率いる官憲に、税金不払いと不法行為の罪を突然言い渡され、土地も没収されて銃殺された農夫の息子ロナン・マズリエ(礼真琴)は、いつか父の仇を討ち、奪われた土地を取り戻すことを誓って妹のソレーヌ(小桜ほのか)を残してパリに向かいます。
パリでも市民たちは重税と飢えに苦しんでおり、革命家のカミーユ・デムーラン(暁千星)、マクシミリアン・ロペスピエール(極美慎)がこの窮状を打破する為に平民ばかりでなく貴族や僧侶からも等しく税金を徴収すべきだと街頭演説で訴えるところに出くわしたロナンは、彼らの思想に触れ、希望を見出して、デムーランの紹介で印刷所で働き、2人や同じ革命家のジョルジュ・ジャック・ダントン(天華えま)らとも親交を深めていきます。
一方ヴェルサイユ宮殿では、温厚ながら凡庸な国王ルイ十六世(ひろ香祐)の政権下、王妃マリー・アントワネット(有沙瞳)をはじめ貴族たちが栄耀栄華を欲しいままにする中、国王の弟シャルル・ド・アルトワ伯爵(瀬央ゆりあ)は王位略奪を狙い、アントワネットのスキャンダルを探っていました。
ある夜アントワネットは、道ならぬ恋の相手 スウェーデンの将校ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン伯爵(天飛華音)との密会のため、王太子ルイ・ジョセフの養育係オランプ・デュ・ピュジ(舞空瞳)の案内でパレ・ロワイヤルを密かに訪れます。ここで野宿をしていたロナンとフェルゼンが争いとなり、アルトワ伯爵配下の秘密警察のラマール(碧海さりお)たちが駆けつける騒ぎとなり、オランプはアントワネットを守るため咄嗟にロナンを暴漢に仕立て上げたため、ロナンは捕えられバスティーユ監獄へ送られてしまいます。ロナンはそこでペイロード伯爵と再会し激しい拷問を受けますが、責任を感じたオランプとその父のデュ・ピュジェ中尉(美稀千種)に助けられ脱獄します。
折から、三部会の開催そして解散を経て革命を求める民衆の叫びはフランス全土へと広がってゆき・・・。



「エリザベート」に代表される小池修一郎先生の潤色・演出のミュージカル作品は、宝塚歌劇団で日本初演→東宝ミュージカルへというパターンが多く見られますが、多くの場合、後で東宝版を観て「やっぱり宝塚の方がよかった」と思うことが多い不肖スキップ。「ロミオとジュリエット」しかり「オーシャンズ11」しかり・・・「エリザベート」だけは例外で宝塚版と東宝版では少し解釈が違う面もあってどちらも好き。

この「1789」は最初に月組の日本初演を観た時からお気に入りの作品でしたが、翌年東宝版を観て「こっちの方が好き」と思った稀有な例です。


宝塚歌劇月組「1789」(2015年5月)
東宝版「1789」①(2016年5月)


月組版はトップ娘役がロナンの相手役ではなくアントワネットにキャスティングされるという異例のパターンで、愛希れいかさんはとてもよかったけれども、その分オランプの影は若干薄め、東宝版を観て「これが正解なのでは」と思ったものです。

貴族社会の不条理への怒りから革命に身を投じるロナン
革命に倒れる側の象徴 アントワネット
その両方に心を寄せることができるオランプ

という関係性がより明確になっていると感じました。


今回の星組版は、ロナンとオランプによりフォーカスしたということで、小池先生は「月組版でも東宝版でもない第3バージョン」とおっしゃっていましたが、ストーリー展開も演出もキャスティングもピタリとハマり、「革命の兄弟」「武器をとれ」といった東宝版にあって宝塚版にはなかった楽曲も入り、ここへ来て大正解が来たという印象。
ひとたび礼真琴さんの歌声で聴くと、「今まで聴いていた楽曲が全部ことちゃんの声で塗り替えらる」という法則が私にはあるのですが、今回は作品そのものが私の中で完全にこの星組の、2023年の「1789」に塗り替えられました。


-バスティーユの恋人たち-というサブタイトル通り、ロナンとオランプの悲恋が物語の中心にはなっているけれど、デムーランのリュシルの物語であり、ダントンとソレーヌの物語であり、ロベスピエールの、印刷工たちの、王宮の人々の、そして名もなき民衆たちの物語。同じ時代を生きた一人ひとりが主役の群像劇。

そんな群像劇の中、デムーランやロベスピエールの「平民だけど高等教育も受けていて裕福」感とロナンの「同じ平民なのに無学で極貧」感がより際立っています。
何となく怒りと勢いで革命派に加わったけれど、ここは本当に自分の居場所なのかというロナンの葛藤や孤独感、デムーランたちへの屈折した思いがとても現実的で、だから、身分や立場、主義主張とは別のところ・・・「不器用な生き方しかできない」という根本の部分で共感したオランプに惹かれる、惹かれ合うというのもとても腑に落ちました。

星組全員と専科の輝月ゆうまさんとでつくりあげた渾身の舞台。
それぞれのソロはもちろん、コーラスも群舞も力強く迫力たっぷり。
この作品を何としても成功させるという星組のパッション。

ムニュ・プレジールから球戯場、パレ・ロワイヤル、そしてバスティーユへとなだれ込む怒涛の各面場面の熱量と迫力。
礼真琴さんが宝塚大劇場千穐楽のご挨拶で「再開してからそれまでの期間を取り戻すかのように暴れまわる仲間たち」とおっしゃっていましたが、本当に公演再開後の個としも集団としても燃え盛るような、エナジーが迸り出るような舞台は凄まじいとしか言いようがありませんでした。


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名曲、好きな場面は数々あれど(ほぼ全部好きと言っていい)、断腸の思いで以下にピックアップ。


☆パレ・ロワイヤル
ダントンの歌でにぎやかなパレ・ロワイヤルが展開する場面。
この物語で唯一といっていいくらい明るい場面で、たくさんの民衆が歌い踊りピエロも登場する楽しい場面。そして目が足りない(^▽^;)
ここでデムーランとリュシルの婚約発表もあります。
ロベスピエールがいないのは、彼は真面目一方の堅物でパレ・ロワイヤルなんかには行かないからなのですって。


☆バスティーユ外
ロナンがオランプ親子から助け出されてバスティーユ監獄を抜け出した後。2人で帰る場面。
ちょっぴり客席降りにもなっています。
「俺のことを心配してくれるのか」「ええ」「なぜ?」の「なぜ」が東京公演からニュアンスが変わったと話題になりました。
もちろんその後の「助けてくれたお礼だ」のキスも。
「なぜ」の後、自分が期待していたような答えが返ってこず(?)喧嘩ごしになるロナンと負けじと受けて立つオランプの言い合いもとても好きでした。ことなこの息の合いっぷり


☆自由と平等
バスティーユから印刷所へ帰ってきたロナンがデムーランたちの「暖炉の前でパンをかじりながら勉強した」という話を聞いて、「そのころ俺たちは飢えていた」とキレる場面。
ここの礼真琴さんロナンが、同じように貧しい暮らしをしていた印刷工たちと踊るキレッキレの群舞。そして「自由と平等」のヴォーカル。

♪人は同じと信じたいけれど現実は違っている
 自由と平等 誰のためなのだ 俺たちをわかってほしい
 同じ未来を追いかけたい

ロナンたちの葛藤がダンスでも歌でもとてもよく表現されていて大好きな場面です。
デムーランの「僕たちを君を兄弟のように迎えてやったつもりだ」というデムーランの無意識の上から目線も含めて、うまい演出だなと思いました。


☆声なき言葉
一幕ラスト 
会議場が閉鎖され、開けさせようとヴェルサイユへ向かうデムーランたち。
「フランスの歴史が大きく揺れ動くんだ」とイヴ。
「ああ。だが動かすのは議員だけじゃない。俺たちだ。見届けてやろう」とラナン。

♪声なき言葉を重ねあえれば響きになる音が聞こえてくる
 夢みることさえ許されず生きてきた日々に別れを告げ
 勇気を出し立ち上がろう 俺たちの声を届けよう
 明日の歴史を変えるのだ
と歌うロナンをはじめ全員が登場する壮大ナンバーで「これぞ1789」という場面です。


☆誰の為に踊らされているのか?
2幕冒頭
客席通路から革命家や市民が登場して舞台に上がり、球戯場でロベスピエール中心に歌い踊る場面。
ここの群舞、むずかしそうなポーズも多々ありますが、リズムに合わせて全体がザッザッザとロベピ中心に集まって三角形になっていくところ(伝われ)ほんとカッコいい振付(KAORIalive)。
からのボディパーカッションの迫力。


☆武器をとれ
国王が軍隊を出動させたことに対して、デムーランが「我々も武器を手に立ち上がろう!」と民衆に訴える場面。
初演の月組版にはなくて、東宝版で渡辺大輔さんデムーランが歌うこの曲が大好きでしたので、今回この曲が入ってうれしかったです。
また、歌う暁千星さんがすばらしくて、緑を掲げてセンターに立ち、民衆を鼓舞するデムーランのカリスマ性がよく表れていて、毎回この場面観るのが楽しみでした。


☆革命が始まる
武器を持った民衆が攻めてきて右往左往する貴族側の場面。
ここで有沙瞳さんアントワネットが歌う曲が、一幕のギャンブルに興じる場面の「全てを賭けて」のリプライズになっていて、歌詞はもちろん違うのですが、「失うものなど何もないわ」と浮かれていたころと、王妃としての覚悟を決めたこの場面とでは歌い方も声までもまるで違っていてすごかったです。
次の「神様の裁き」で泣いたという声をよく聞きましたが、私はこのリプライズの
♪フランスの危機ならば 何があろうと逃げ出しはしない
 国王につき従い 王妃のつとめ全うする
で毎回ナミダ。


☆サ・イラ・モナムール
「1789」といえばこの曲はハズせません。
これを”礼真琴の声”で聴ける幸せ。
とはいえ、あまりに名曲揃いのため、初日にこの場面になった時「あっ!まだこの曲もあった!!」と思ったものでした。

ロナン・オランプ  デムーラン・リュシル  ダントン・ソレーヌのカップルに加えて、ここで初めて登場するロベスピエールの恋人は皆さまの予想どおり(もちろん私も)水乃ゆりちゃんでした。


☆悲しみの報い
ラストの曲。
ロナンが銃弾に倒れ、悲しみの中、一人ずつ人権宣言を読み上げた後、全身白のロナンが登場して歌い、やがて全員の合唱となって昇華する曲。

♪歴史の波間に浮かんで消えてゆく 
 一つひとつの命の叫ぶ声が 
 響き合い重なって明日の歴史つくる
 歌いつづけよう永遠に

 人はいつの日か辿り着くだろう
 愛と平和に満ちた輝く世界 
 いつの日か


悲しみと涙の中ではありますが、明日の世界に希望を持つことができるエンディング。
この世界はまだ、”愛と平和に満ちた世界”に辿り着いていない現実は切ないけれど。



番外編:
☆バスティーユ監獄の拷問でペイロールが床に倒れたロナンを蹴る場面
劇場で観た時もオドロキましたが、Blu-rayのプロモーション映像でのこの場面、何度リプレイしても(したんかい!)本当に蹴っているようにしか見えません。蹴る方の輝月ゆうまさんがとても上手いのはもちろん、礼さんのあの蹴られ方・・・蹴られた瞬間反動で頭がぐわんと揺れる感じ、リアルすぎて震えます。



長文になってしまいました💦
キャスト&フィナーレ編につづく。




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2023年09月02日

「私は自分の意志でここに戻ってまいりました」 星組 「1789 」 大千穐楽カーテンコール


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宝塚歌劇星組公演「1789 -バスティーユの恋人たちー」

6月2日 台風襲来の中、宝塚大劇場初日が当初の予定より2時間半遅れて開幕したことに始まり、数々の波乱に見舞われた公演となりましたが、舞台は本当に熱く、すばらしかったです👏👏
本公演の感想もまだ書けていませんが、まずは、「礼とともに迎えた千穐楽」と美稀組長のご挨拶ですでに涙があふれ、涙ナミダの大千穐楽カーテンコールから。


宝塚歌劇星組公演「1789 -バスティーユの恋人たちー」大千穐楽
2023年8月27日(日) 11:30pm 東京宝塚劇場 1階10列センター



本公演フィナーレが終わった後、美稀組長のご挨拶の後、紹介されたのは、この公演を最後に専科へ異動となる瀬央ゆりあさん。


瀬央ゆりあさんご挨拶:

星組の瀬央ゆりあでございます。
15年間慣れ親しんだ大好きな星組から離れることは、もちろん、不安も寂しさもあります。
ですが、新しい扉を開く可能性がそこにあるならば、挑戦したい、未熟ながらそう思いました。
このように思うことができましたのも、こうしていつも温かく見守り、背中を押してくださる美稀組長、白妙副組長、個性豊かな星組の皆さま、いつも温かい応援をくださるお客様、そして、いつもどんな時も身を粉にし星組を引っ張り、導き、私に常に刺激と学び、舞台をつくること、舞台に立つことの喜びを。楽しさを教えてくれた礼真琴と出会えたからこそです。星組でこうしてのびのびと育てていただきました15年間、私の財産です。星組で学ばせていただいたことを心に刻み、専科へ、新たな扉を開きたいと思います。本当にありがとうございました。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。


「いつもどんな時も身を粉にし・・・」というところで「ことちゃんのことだ!」と察して涙ぽろぽろこぼれる客席の不肖スキップ。

「寂しいです」と涙ぐむ美稀組長。
異動する組子にこんなふうにコメントするのを始めて見ました。
「せおっちは誰からも好かれるので専科に行ってもきっと大丈夫」と言いつつ、「また星組にも出てくれるしね」と。
瀬央さんも涙ぐみながら笑顔を見せていました。


退団者3名のすばらしいご挨拶の後、最後に礼さん。


礼真琴さんご挨拶:

皆さま 本日は星組東京公演の千穐楽を最後までご観劇くださいまして、ありがとうございました。星組の礼真琴でございます。
まず、私事ではございますが、8月14日からの公演中止、その後の休演期間に伴い、皆さまにはたくさんのご不安とご心配、そしてご迷惑をおかけしてしまいましたことを、心よりお詫び申しあげます。
お客様に楽しんで、幸せな気持ちになって帰っていただくために舞台に立っているはずなのに、ご心配ばかりおかけしてしまって、そして、主演という立場でありながら舞台に穴をあけてしまったこと、とても悔しく、情けないです。
でもその間、私がいない間、美稀組長、白妙副組長率いる最強の仲間たち、そして、ロナン・マズリエを演じてくれた暁千星 ありちゃんをはじめとする代役のみんな、頼もしい仲間たちに支えられ、この「1789」を今日まで繋げることができました。
仲間たち、そして支えてくださるスタッフの皆さま、この間もずっと応援し、思いを寄せてくださる皆さまに、心からのお詫びと、それ以上の感謝の思いでいっぱいでございます。本当にありがとうございます。
この後に、私がまたこの舞台に立った時に、皆さまが1ミリの不安もなく、心配もなく、心から楽しんでいただけるような星組をつくっていけるように、これからも努めてまいります。
そして今、袴姿で降りてきた大切な3人の仲間、最後の輝かしいラストステージ、険しい道を歩かせてしまいました。でも、3名の最後の姿を見届けることができて、とても幸せです。今、ここに立っていないあと2名の大切な仲間もいます。星組全員でこの先も突き進んでまいりますので、今後もどうぞよろしくお願い申しあげます。本日は本当にありがとうございました。


時折涙をにじませながら、それをこらえながらのご挨拶を聴いて爆泣きする客席の不肖スキップ。
それでも、笑顔で手を振る礼さんの晴れやかな表情に救われる思いでした。


続きがあります
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2023年05月05日

深い波の底に飲まれ 月組 「Deep Sea」


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                           ©宝塚歌劇団

月城かなとさんの開演アナウンスに続く「Dive」という声で深海に誘われ、「海底の奥深く、海底神殿に集う海神たちが、見たこともないような深海の美を繰り広げる情熱のカルナバル」というラテンショーです。


宝塚歌劇 月組公演
ラテン グルーヴ 「Deep Sea -海神たちのカルナバル-」
作・演出:稲葉太地  
作曲・編曲:太田 健  高橋 恵  長谷川雄大
音楽指揮:上垣 聡
振付:御織ゆみ乃  若央りさ  平澤 智  百花沙里  三井 聡
装置:國包洋子   衣装:河底美由紀


観劇日時、出演者(梨花ますみさん除く)は「応天の門」と同じ(こちら


初日(2/4)に観た時の第一印象は「え?!これラテン?」
というものでした。
月組らしいといえばそうなのかもしれませんが、品よく端正なショー。
ラテンショーといえば暑苦しすぎるくらい熱いものという先入観が(主に星組(≧▽≦)で)ありましたので、おとなしいなぁ~と感じたのです。

2回目観るまでの間に「Suu's Room」で稲葉太地先生のお話を聞く機会があったこと、月組の皆さんの舞台もすごくこなれてノリよく声も出るようになっていて、次に観た時は「やっぱラテンショーだわ」となりました。

稲葉先生のお話といえば、「月組の皆さんは真面目だからこのショーをやるにあたって『私たちは魚ですか?人間ですか?』と何人も聞いてくるので、まず初めに『あなたたちは人間です』と言いました」というエピソード、おもしろかったな。

以下は印象に残った場面をピックアップ。


続きがあります
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2023年05月04日

三白眼の菅原道真 月組 「応天の門」


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              ©宝塚歌劇団

4月30日に無事大千穐楽を迎えた月組公演。
お芝居は月刊コミックバンチに今も連載中の灰原薬さんの「応天の門」。
学問の神様と称される菅原道真と、平安の色男・在原業平が手を携え、都で起こる怪事件を次々と解決していく様を描く歴史サスペンスです。


宝塚歌劇 月組公演
平安朝クライム 「応天の門」-若き日の菅原道真の事-
原作:灰原 薬「応天の門」
脚本・演出:田渕大輔  
作曲・編曲:青木朝子  植田浩徳   編曲:多田里紗
音楽指揮:上垣 聡
振付:御織ゆみ乃  山村友五郎  桜木涼介
擬闘:栗原直樹   装置:大橋泰弘   衣装:薄井香菜
出演:月城かなと  海乃美月  鳳月 杏  光月るう  白雪さち花  千海華蘭
春海ゆう  夢奈瑠音  蓮 つかさ  佳城 葵  朝霧 真  英 かおと  彩 みちる
風間柚乃  天紫珠李  彩音星凪  礼華はる  結愛かれん  彩海せら  
蘭世惠翔  一乃 凜  大楠てら  瑠皇りあ  花妃舞音/梨花ますみ ほか

2023年2月4日(土) 1:00pm 宝塚大劇場 1階29列上手/
3月2日(木) 3:30pm 1階14列センター/
3月5日(日) 3:30pm 1階14列下手/
4月30日(日) 1:30pm TOHOシネマズなんば スクリーン8(ライブ中継)
(上演時間: 1時間30分)

 

13歳の清和帝(千海華蘭)の時代の平安初期。
藤原良房(光月るう)とその養嗣子・基経(風間柚乃)が朝廷の権力を掌握しつつある中、京の都では、月の子(ね)の日に「百鬼夜行」が通りを闊歩し、その姿を見た者を取り殺すという怪事件が頻発していました。幼き頃から秀才との誉れ高き文章生・菅原道真(月城かなと)は、ひょんなことから知り合った検非違使の長・在原業平(鳳月杏)にその才気を見込まれ、この怪事件の捜査に協力することになります。唐渡りの品を扱う店主・昭姫(海乃美月)たちの協力を得て道真は次第に事件の真相に近づいていきますが、その背景には、鬼や物の怪の仕業を装い暗躍する権力者たちの欲望が渦巻いていました・・・。


原作のコミックのことは全く存じあげなかったのですが、この公演に合わせた無料キャンペーンで3巻まで読むことができて、大体の登場人物や人間関係は把握した上で観ました。


百鬼夜行の真相を究明するという主筋に、菅原道真の亡き兄・吉祥丸への思い、その兄と藤原基経との関わり、在原業平と高子の叶わぬ恋、藤原良房・良相兄弟の権力争いと確執、良相の娘・多美子の入内に渦巻く陰謀・・・とあれこれ盛り込み過ぎじゃない?というのが初見の印象。
原作ありの作品にありがちで、原作に出てくる数々のエピソードはどうしても入れたくなるのでしょう。

ミステリーという面では藤原基経が最初からくっきりとした”悪役”として立っているので、百鬼夜行の正体はそんなものかというのは大体想像がつきますが、原作が連載中ということもあってか犯人を徹底的に糾弾する勧善懲悪とはいかず、「戦いはまだこれからも・・・つづく」的な終わり方なのもすっきりしない印象ではあります。

それでもエピソードを寄せ集めたダイジェストみたいにはなっていなくて、さすがの月組の芝居力でおもしろく見せてくれました。


続きがあります
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2023年04月17日

星組 「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」 ジュリアンを取り巻く人々編


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「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」
まだまだ語り切れない思いはありつつ、ジュリアンを取り巻く人々について。


宝塚歌劇 星組公演
「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」
D'après l'œuvre de Stendhal «Le Rouge et le Noir, l'Opéra Rock»
Produced by Sam Smadja - SB Productions
原作:スタンダール
作曲:ウィリアム・ルソー&ソレル
作詞:ザジ&ヴァンサン・バギアン
脚本:アレクサンドル・ボンシュタイン
潤色・演出:谷 貴矢  



本編&ジュリアンについてはこちら



ジェロニモ:暁千星
ストーリーテラーとパリの人気歌手という二つの顔を持つジェロニモ。
物語はジェロニモで始まり、ジェロニモで終わるという、キーパーソンです。

礼さんに負けず劣らず、”新しい暁千星”を見せてくれました。
オープニングでは客席をいじって会場を温め、時に物語の外で俯瞰して人々を眺め、またある時は”歌手ジェロニモ”として物語の中で息づく・・・
上着を着替えるだけで自在に物語を行き来していました。物語の中ではジュリアンをからかうように楽しそうに絡んでいますが、彼の一番の理解者であったように思います。
スケール感を増した歌唱はのびやか。歌唱力ぐんぐん上昇してどこまでいくのでしょう。
礼さんとの並びもハーモニーもとてもよくて、今後のことありに期待しかありません。
長い手足を活かしたダイナミックなダンスも見応えたっぷり。

長いといえば、ヴァルノ邸のパーティで「ブルジョアはなんて素晴らしい」を歌う時、テーブルに片足かけるの、けしからんほど足長でしたね。
物語のはじめの方で2階部分で椅子に座ってお水を飲む姿も話題になりました。

冒頭で客席に「あなた私をご存知ですか?」と聞いて「ありちゃん」と言われた回があって、「ありちゃんって、誰ですか💦」とちょっと焦って中の人が顔を出していたの、かわいかったです。


ルイーズ:有沙 瞳
町長の貞淑で信心深い妻。
身分や地位、財産といった”幸せ”のために愛のない結婚をしたということを自覚しつつも今の暮らしにそれなりに満足していたのに、ジュリアンから直球の告白を受けてその愛を受け容れるという女性。
不貞が発覚した途端、保身のためにジュリアンを遠ざけることや後半の「背信」含めて(ヴァルノ夫妻にそそのかされたとはいえ)、ともすれば観る者の反感を買いそうな役どころを絶妙な塩梅で見せてくれた魅力的なルイーズでした。
地毛で薄化粧なのに肌がとても綺麗で美しく、匂い立つような色気があって。
定評のある歌ももちろんすばらしかったです。


マチルド:詩ちづる
パリの有力貴族の令嬢でたくさんのお婿さん候補に辟易している少し気難しいお嬢様。
二幕冒頭はマチルドの「退屈」という歌で始まるのですが、これがまぁとても鮮やかですばらしかったです。
初舞台のころから注目されていて抜擢もされてきた詩さんですが、これほど一つの場面でセンター取るのは初めてながら実に堂々としていて、一気に花開いたという感じです。
赤いミニのドレスにリボンで編み上げた靴、カーリーな髪を高い位置でツインテールにしてしかも後ろの分け目はジグザクという凝った髪型もとてもキュート。
これ以降はずっと黒いドレス(結婚式もヴェールだけ白でドレスは黒のまま)でした。

マチルドは気位が高いけれど聡明な女性。
ジュリアンは、ルイーズとは情=愛で、マチルドとは知=精神で結ばれていたのではないかと思いました。


続きがあります
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2023年04月16日

光を知らなければ 怒りに身を委ねて生きてゆけたのに  星組 「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」


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宝塚歌劇 星組公演
「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」
D'après l'œuvre de Stendhal «Le Rouge et le Noir, l'Opéra Rock»
Produced by Sam Smadja - SB Productions
原作:スタンダール
作曲:ウィリアム・ルソー&ソレル
作詞:ザジ&ヴァンサン・バギアン
脚本:アレクサンドル・ボンシュタイン
潤色・演出:谷 貴矢  
音楽監督・編曲:太田 健   編曲:多田里紗
振付:御織ゆみ乃  若央りさ  港ゆりか
装置:國包洋子   衣装:加藤真美 
照明:笠原俊幸   映像:溝上水緒
出演:礼 真琴  暁 千星  白妙なつ  ひろ香 祐  有沙 瞳
小桜ほのか  朱紫令真  希沙 薫  碧海さりお  夕陽真輝
瑠璃花夏  詩 ちづる  鳳花るりな  星影なな  彩夏こいき
凰陽さや華  和波 煌  乙妃優寿  絢咲羽蘭 馳 琉輝/
英真なおき  紫門ゆりや

2023年3月23日(木) 4:30pm シアター・ドラマシティ 13列下手/
3月26日(日) 11:00am 10列上手/3月27日(月) 1:00pm 16列下手/
3月29日(水) 11:00am 2列下手/4:00pm 20列センター/
4月9日(日) 11:00am 日本青年館ホール 1階P列下手/
4:00pm 1階D列センター
(上演時間: 2時間40分/休憩 25分)



物語の舞台はナポレオンが没し、王政復古となったフランス。
フランス東南部の小都市ヴェリエールに貧しい大工の息子として生まれたジュリアン・ソレル(礼真琴)は、美しく聡明で強い自負心を持った青年でした。ナポレオンを崇拝し、いつかは立身出世して富と名声を手に入れるという野望を抱いていたジュリアンは、町長のレナール(紫門ゆりや)の子どもたちの家庭教師となり、そこで美しいレナール夫人(有沙瞳)と出会い恋に落ちます。しかし、ジュリアンに恋していた女中のエリザ(瑠璃花夏)がレナールと競い合う貧民収容所の所長ヴァルノ(ひろ香祐)に密告したことによってレナール家を追われます。
パリへ出て貴族のラ・モール侯爵(英真なおき)の秘書となって有能な仕事ぶりが認められ重用されていたジュリアンにかつてヴァルノ邸で知り合った歌手のジェロニモ(暁千星)は侯爵家の令嬢 マチルド(詩ちづる)と恋のゲームをしてはどうかと勧めます。恋の駆け引きから本気で愛し合うようになったジュリアンとマチルド。反対していたラ・モール侯爵もついに二人の仲を認め、結婚式を迎えますが・・・。


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プログラム裏面の「赤と黒」も素敵


スタンダールの名作を、「1789」「ロックオペラ モーツァルト」などを手がけたフランスのプロデューサー アルベール・コーエンがロックオペラに仕立てて2016年にパリで初演されたフレンチロック・ミュージカルの日本初演。

最初に観た時からかなり衝撃でした。
この感じは同じフレンチロック・ミュージカル「ロミオとジュリエット」の日本初演(2010年 宝塚歌劇星組)を初めて観た時と同じ感覚。
ジェロニモが登場してイントロダクションからの出演者全員で「心の声」の合唱となり、最後にジュリアンが現れて歌い始めると、大げさでなく背中がゾクゾクして、「この作品好き~」と思いました。

さらにそれを決定づけたのが「ラテン語で聖書を暗唱する歌」(後で「知識ごそが武器」というタイトルを知る)。
ラモール家の家庭教師が大工の息子と知って侮るヴァルノに対して、ジュリアンが、ルイーズが手にした聖書のどこでもラテン語で暗唱すると言って歌い出す曲。
覇気のない暗い目をして、少し猫背で陰鬱なジュリアンが一瞬で覚醒して爆発する感じ。
第一声で椅子から転げ落ちそうになるくらい衝撃を受けて電流が走りました(二度目)。


スタンダールの原作はずい分前に読んだことがあって、柴田侑宏先生脚本の宝塚歌劇の舞台も何度か観たことがありますが(直近は2020年の月組御園座公演)、正直のところ物語そのものはそれほど好きとは言えず、ジュリアンにもそこまで共感することはありませんでした。

ところが

知っているはずの物語なのにまるで初めて観るような世界観。

楽曲も
脚本も演出も
衣装も美術も照明も大好き
もちろん出演者も皆すばらしい

かなり挑戦的な作品という印象もあって、礼真琴さんにとっても星組にとっても、そして宝塚歌劇にとっても、エポックメイキングな作品となるのではないでしょうか。


続きがあります
posted by スキップ at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする