2021年11月30日

4日間だけのもう一つの忠臣蔵 「花競忠臣顔見勢」


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本来ならば通して上演すると1日かかる「仮名手本忠臣蔵」。
この状況下、今の興行形態(三部制)でもできる忠臣蔵を、と企画された演目です。
描かれるのは12月11日・12日・13日 そして討ち入り当日12月14日の4日間。
「仮名手本忠臣蔵」では語られない外伝を集めた「もう一つの忠臣蔵」。
演じるのは、松本幸四郎、市川猿之助 両兄さん率いる若手花形役者の皆さん。


吉例顔見世大歌舞伎 第三部
「花競忠臣顔見勢」(はなくらべぎしのかおみせ)
序幕 第一場 鶴ヶ岡八幡社頭の場 
   第二場 桃井館奥書院の場
   第三場 稲瀬川々端の場
   第四場 芸州侯下屋敷の場
   第五場    同  門外の場
大詰 第一場 槌谷邸奥座敷の場
   第二場 高家奥庭泉水の場
   第三場 元の槌谷邸の場
   第四場 花水橋引揚げの場
作: 河竹黙阿弥  渡辺霞亭
補綴: 戸部和久
構成・演出: 石川耕士   演出: 市川猿之助
出演: 尾上右近  中村歌之助  市川笑也  市川猿之助  市川猿弥
中村歌昇  松本錦吾  松本幸四郎  坂東新悟  澤村宗之助  中村鷹之資
中村隼人  大谷廣太郎  中村福之助  中村米吉 ほか

2021年11月26日(金) 6:00pm 歌舞伎座 1階7列センター
(上演時間: 2時間22分/幕間 20分)



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櫓と千穐楽の幕がともにあがる歌舞伎座は1年の中で11月のこの日だけですね



緞帳が上がると定式幕の前には白いマスクと黒いマスクをつけた二体の口上人形。
声は幸四郎さんと猿之助さん。
「四十七士登場すると密になるので人数は数えないように」といったユーモラスな解説も交えながら公演の概要と、4日間の物語であることが語られます。
録音かな?とも思ったのですが黒マスクの猿之助さん人形が「今日はめでたき千穐楽」とちゃんとアップデートされていました。

そして定式幕がゆっくり、本当にゆっくり徐々にひかれると、そこは足利直義を中心に高師直、塩冶判官、桃井若狭之助ら居並ぶ鶴ヶ岡八幡社頭の場。
物語の発端のここだけが4日間とは別の場です。
義太夫の声に合わせて、一人、またひとりと命が吹き込まれたように目を開いていく様を見ていて、「あ~『仮名手本忠臣蔵』の通しが観たいっ!」と思いました。

兜改めを終えた顔世御前に横恋慕する高師直から庇った桃井若狭之助が師直から散々に侮辱されて耐え切れずついに斬りかかり・・・というところで「桃井館奥書院の場」へ。
師直に刃傷に及んだのは若狭之助の夢だったという設定で、「もし一つ間違えば今の塩冶殿の運命はわがこと」と塩冶判官とその家中の者たちに思いを寄せます。

ここから1日1つの物語がスピーディに展開します。


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2021年10月06日

九月大歌舞伎 第三部 「東海道四谷怪談」


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九月大歌舞伎 第三部は片岡仁左衛門さん、坂東玉三郎さん 38年ぶりの「東海道四谷怪談」。
4月と6月の「桜姫東文章」に続いて、「多分一世一代」「もう二度と観られない」とい座組と演目で、チケットは即完売という人気ぶり。
歌舞伎の四谷怪談はこれまで何度も観ていますが、仁左衛門さん玉三郎さんで拝見するのはもちろん初めてです。


九月大歌舞伎 第三部 「東海道四谷怪談」
四谷町伊右衛門浪宅の場/伊藤喜兵衛内の場/元の浪宅の場/本所砂村隠亡堀の場
作: 四世鶴屋南北
出演: 坂東玉三郎  尾上松緑  中村橋之助  片岡千之助  片岡松之助  中村歌女之丞  片岡亀蔵  市村萬次郎  片岡仁左衛門 ほか

2021年9月22日(水) 6:00pm 歌舞伎座 1階11列センター
(上演時間: 2時間10分/幕間 20分)



上演時間の制約もあってか、伊右衛門浪宅から始まって隠亡堀まで。
伊右衛門が舅であるお岩の父・四谷左門を殺す場面はないし、お袖ちゃんも出てきません。
直助権兵衛と佐藤与茂七はラストの隠亡堀にチラリと登場しますが、ほぼ主筋に関係ない役割。
「四谷怪談」の物語はご存知でしょ?な見取り上演です。


まずは、何といっても仁左衛門さんの色悪の魅力炸裂。
幕開きの浪宅で唐傘張りをしている姿がわびしくやつれているのに色っぽい。
赤ちゃん(わが子なのに)の泣き声が聞こえると舌打ちせんばかりに渋面をつくる悪いオトコの香りプンプン。
とんでもないDV男で、お岩を足蹴にする、お金のために赤子の産衣や蚊帳を奪い取る(それを必死で止めようとするお岩の爪がはがれる)、宅悦を脅してお岩に不義を仕掛けさせる、宅悦が逃げると小仏小平とお岩の不義を言い立て小平を惨殺し戸板に打ち付けて川へ流す、といった数々の血も涙もない非道の数々を時にはせせら笑いながらやってのける悪の魅力。
お岩の霊にたたられているとはいえ、新妻のお梅や伊藤喜兵衛を斬ってしまう狂気の凄み。
姿形の美しさはもとより、何とも抗えないような魅力に満ちていて、まさしく悪の華。


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2021年10月02日

九 月大歌舞伎 第二部


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今年も「秀山祭」という冠のつかない九月大歌舞伎。
第一部は六世中村歌右衛門 二十年祭・七世中村芝翫 十年祭の追善興行、第三部は仁左玉の「四谷怪談」、そして、この第二部が「秀山祭」という位置づけでしょうか。
吉右衛門さんは出演されていませんが、播磨屋ゆかりの役者さんたちによる見応えある舞台が繰り広げられました。


九月大歌舞伎 第二部
2021年9月22日(水) 2:10pm 歌舞伎座 1階3列下手


一、近江源氏先陣館 盛綱陣屋
出演: 松本幸四郎  中村雀右衛門  中村錦之助  中村米吉  中村隼人  
尾上丑之助  坂東亀三郎  中村吉之丞  澤村宗之助  大谷廣太郎  
松本錦吾  中村歌昇  中村又五郎  中村歌六 ほか
(上演時間: 1時間55分)



頼朝亡き後、源氏一族の争いに巻き込まれた近江国の佐々木家。兄の盛綱(幸四郎)と弟の高綱は敵味方に分かれて戦うこととなります。盛綱の子息小三郎(亀三郎)は幼いながらも初陣を飾り、高綱の子息小四郎(丑之助)を生け捕りにする大功を立てました。琵琶湖にほど近い盛綱の陣屋では、盛綱が母の微妙(歌六)に囚われの身となった小四郎に切腹を勧めて欲しいと頼みます。そこへ高綱討死の報せが届き・・・。


義のため忠のため、幼い子どもの命が犠牲になる物語は苦手感ぬぐえない不肖スキップ。
この「盛綱陣屋」もその一つです。
いかに戦略のためとはいえ、自分の命や家を守るため、わが子に切腹を言い含める高綱どーよ?とこの演目を観るといつも思います。
しかも本人出て来ないし。

・・・という物語への思いはさておき、見応えたっぷりの義太夫狂言となっていました。
口跡よい役者さんが揃っていることもあって、「盛綱陣屋」でこんなにくまなく台詞聴いたの初めてかも(←)というくらい聴き入りました。
結果として、戦乱の世の中で、心ならずも敵味方に分かれてしまった兄弟の哀しみと非情・・・盛綱は盛綱なりの、高綱には高綱の葛藤や苦悩があることを感じ取ることができたように思います。


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2021年09月05日

泣き申さず候ては化し申さず候 「市川猿之助 春秋座特別舞踊公演」


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京都芸術大学の開学30周年と、春秋座開場20周年を記念した公演。
猿之助さんと鷹之資くんの連獅子なんて絶対観たいやつ、と張り切ってチケット取りました。
昨年3月に平城宮跡で観る予定だった猿之助さん特別公演が中止になったので、実は猿之助さんの連獅子も澤瀉屋型の連獅子も観るのは初めてでした。


大学開学30周年記念・劇場開場20周年記念公演
京都芸術劇場 春秋座 芸術監督プログラム
市川猿之助 春秋座特別舞踊公演
2021年9月2日(木) 11:00am 春秋座 1階3列(最前列)センター



一、大学開学三十周年記念 劇場開場二十周年記念御挨拶
出演: 市川猿之助


大学創始者である徳山詳直氏の大きなパネルが飾られた舞台。
猿之助さん、黒紋付袴の正装でのご挨拶です。

「今年は大学開学30周年で春秋座開場20周年。その記念の公演です。もっと大々的にいろいろやろうと思っていましたが、今のご時勢でこういう形になりました」と猿之助さん。

この大学をつくる時、当時は日本全国に多くの大学ができていて、国としてはもう大学はいらないという考えだったところ、徳山氏が文部省まで出向いて演説をされたそうです。

「泣き申さず候ては化し申さず候」

江戸時代の儒学者 細井平洲の言葉で、「人は涙を流すほど感動した時初めてすごい向上心が生まれて成長する」ということ。日本にたくさんある大学はどこも政治経済は教えても感動は教えない。感動こそが人間をつくる。私は人間をつくる大学をつくりたいのだ」と。

このお話、2016年9月の「猿翁アーカイブにみる三代目市川猿之助の世界」でも出ていましたが、何度聞いても胸を衝かれる思いです。

徳山氏に「大学で歌舞伎を教えてほしい」と乞われた先代猿之助さんが「それなら劇場をつくってください」とお願いしてできたのが春秋座。「宙乗りもできるし、客席はずしてフラットにもなる、とてもいい劇場です」と猿之助さん。
猿之助さんは「亀治郎の会」を立ち上げた時に東京ではできる劇場がなくて、「春秋座なら自由に使える」とこちらで大変お世話になりましたとおっしゃっていました。

今はこのようなごご時世ですが、このままだと関西では歌舞伎に限らず演劇がなくなってしまうのではないかと厳しい表情で危機感を話されていたのが印象的でした。


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2021年08月28日

滅びの美 「八月花形歌舞伎」 第三部


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歌舞伎座の「八月花形歌舞伎」
演目と出演者が発表された時には「三部とも通すわよ!」と鼻息荒くチケット取っていたのですが、結局観ることができたのは三部のみ。
「義賢最期」は、昨年、四国こんぴら歌舞伎の高麗屋襲名披露興行で幸四郎さんが初役で勤めるはずだったお役。
元々好きな演目でもあり、「これだけは何としても」と強い心で観に行ってまいりました。


八月花形歌舞伎 第三部
2021年8月20日(金) 6:00pm 
歌舞伎座 1階3列下手


一、源平布引滝  義賢最期
出演: 松本幸四郎  中村梅枝  中村隼人  中村米吉  
小川大晴(奇数日)/小川綜真(偶数日)  大谷廣太郎  
松本錦吾  片岡亀蔵  市川高麗蔵 ほか
(上演時間: 1時間25分)



平家全盛の時代。源氏再興を密かに願う木曽義賢(幸四郎)は、病で館に引きこもっています。その館に、百姓の九郎助(錦吾)が娘の小万(梅枝)、太郎吉(小川大晴/小川綜真)親子を連れ、小万の出奔した夫の奴・折平(隼人)を訪ねてきます。一方、折平が平家方から追われている源氏の武将・多田蔵人であることを見抜いた義賢は、平家打倒を志す本心を打ち明け、折平に思いを託します。そこへ平清盛の使者が来訪し、義賢の平家方への忠誠心を試そうとしますが・・・。

幸四郎さん筆頭に、梅枝さん、隼人さん、米吉さんと見目麗しい花も実もある役者さんが並び、まさに“花形歌舞伎”。
それぞれが奮迅の活躍で熱気あふれる舞台はとても見応えありました。

仁左衛門さん直伝の義賢を演じた幸四郎さん。
紫の病鉢巻姿も、後半の顔面を血で染めた姿も、勇壮で美しく悲壮感もたっぷり。
義太夫に乗せた台詞も緩急があって、しかも言葉に気持ちもきちんと乗せられているのでとても心に響きます。


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2021年08月26日

祝 寄せ書きサイン色紙当選 「七月大歌舞伎」 夜の部


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松竹座の七月大歌舞伎 7月14日の夜の部を観に行ったところ、関西・歌舞伎を愛する会のデスクで「七月大歌舞伎 出演俳優7名による『寄せ書きサイン色紙』抽選販売のご案内」なるものをたまたま発見。
「あれ?初日にはこんなのやっていなかったよね?」と思ったのですが、後で聞いたところによると、当初は初日からの販売予定だったところ、鴈治郎さんの復帰を待って7月13日から販売されたのだとか。
昼の部、夜の部各10枚限定ということでしたが、「何だか当たる」予感がして申し込んだところ見事当選。
仁左衛門さん・鴈治郎さん・扇雀さん・孝太郎さん・幸四郎さん・壱太郎さん・隼人さん
サインを持っている役者さんも何名かいらっしゃいますが、この7名が揃った寄せ書きって一世一代かなと家宝にしたいと思います。


関西・歌舞伎を愛する会 第二十九回
七月大歌舞伎 夜の部
2021年7月14日(水) 4:30pm 松竹座 3階1列センター


一、双蝶々曲輪日記  引窓
出演: 片岡仁左衛門  松本幸四郎  中村壱太郎  
中村隼人  上村吉弥  中村孝太郎 
(上演時間: 1時間10分)



仁左衛門さんの南与兵衛、吉弥さんのお幸、孝太郎さんのお早と万全の体制の中に幸四郎さんの濡髪長五郎が入っての「引窓」。
幸四郎さんの濡髪が11年ぶりと聞いて愕然。
この間観たと思ったのに・・・と調べたら、確かに、2010年の松竹座 「七月大歌舞伎」で、あの時は「引窓」の前に「井筒屋」「米屋」「難波裏」がついた半通しでした(こちら)。


あの時も今回も、南与兵衛は仁左衛門さん。

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