2022年01月22日

「壽初春大歌舞伎」 第一部


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元々は東京国際フォーラムで宝塚歌劇雪組「ODYSSEY」を観る予定だったのですが、残念ながら公演中止となってしまい、それならば、陽喜くんの初お目見えを寿ぎましょう、と戻りのチケットを捕獲して歌舞伎座一部を観ることにしました。

「祝春元禄花見踊」に出演の中村虎之介さんが新型コロナウイルス感染症陽性、中村扇雀さん、中村七之助さん、中村橋之助さん、中村福之助さん、中村歌之助さんが濃厚接触者に該当するということで、「一條大蔵譚」は配役変更、「祝春元禄花見踊」は代役を立てず、演出を変更しての上演となりました。


「壽初春大歌舞伎」 第一部
2022年1月18日(火) 11:00am 歌舞伎座 1階6列センター


一、一條大蔵譚  檜垣・奥殿
出演: 中村勘九郎  中村獅童  中村歌女之丞  
中村京蔵  澤村國久  中村山左衛門 ほか
(上演時間: 1時間25分)



常盤御前: 扇雀   → 歌女之丞
お京:   七之助  → 京蔵
鳴瀬:   歌女之丞 → 國久

という配役でした。
七之助さんのお京が観られないのは残念でしたが、これはこれでめったに観られない貴重な座組だったな。


前回勘九郎さんの一條大蔵卿を観たのはいつだったかしら?と調べたら2012年3月の平成中村座。勘九郎さんの襲名披露興行でした(こちら)。
10年前か~と遠い目・・・。

相変わらず愛嬌たっぷりで可愛らしいことこの上ない大蔵卿。
表情がとても豊かで、まるで珍しいものを見るようにお京を見る目つきなんて、そのまま漫画に出てきそう。
カリカチュアライズされているのですが、決してやりすぎず、どこまでも品よくかわいい。
お決まりの床几に座ってのひとり遊びもゆらゆらゆったり。とても自然で、観客を笑わせようという感じではないのが好感。
中村屋さん伝統に華やかさも相まって、勘九郎さん大蔵卿が登場してからはもうずっと目が吸い寄せられっぱなしでした。


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2022年01月03日

吉例顔見世興行 第三部


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吉例顔見世興行 第三部は千穐楽を観劇。
かぶりつきど真ん中で麗しい幸四郎さんのご尊顔を拝するという幸せな2021年歌舞伎納めでした。


京の年中行事 當る寅歳
吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 第三部


2021年12月23日(木) 6:00pm 南座 1階2列センター

  
第一、銀杏鶴玉章封裏 雁のたより
監修:片岡仁左衛門
出演:松本幸四郎  片岡愛之助  上村吉弥  片岡千壽  
片岡進之介  片岡千次郎  片岡松十郎  片岡愛一朗  中村錦之助 ほか
(上演時間: 45分)



片岡仁左衛門さん監修で「銀杏鶴玉章封裏」(いてうづるふみのふうじめ)という外題がついています。
十三世仁左衛門さんの歌舞伎座での襲名披露興行の演目だったのだとか。松嶋屋さん型の「雁のたより」です。

「雁のたより」は顔見世興行にかかることも多く、これまで何度か観ていますが、髪結三二五郎七を坂田藤十郎さんと中村鴈治郎さん以外で観るのは初めて。つまり成駒屋(山城屋)さん以外の型で観るのも初めてでした。

主筋はもちろん同じですが、若殿前野左司馬と愛妾司の登場など、ところどころ記憶と違っているところがあって、これが松嶋屋型なのかなと思いました。
一番印象に残ったのは下座音楽で、♪四つ花菱は幸四郎さんの紋所 四つ花菱は幸四郎さんの紋所 と何度も唄っていて、そうそうこれ、♪丸に二の字は松嶋屋の紋所 ありゃさ 松嶋屋の紋所 って何かの演目の時にやってたなぁと思い出したのでした。ここは「高麗屋」じゃなくて「幸四郎さん」なんやとも思ったりw


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2021年12月08日

吉例顔見世興行 第二部


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初日直前に伝えられた吉右衛門さんのご訃報に言葉もなくす思いでしたが、今年もこうして南座の顔見世で1年の歌舞伎を締めくくることができるありがたさを噛みしめつつ、観てまいりました。


京の年中行事 當る寅歳
吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 第二部


2021年12月5日(日) 2:30pm 南座 3階2列センター



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第一、三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場
作: 河竹黙阿弥
出演: 片岡孝太郎  中村隼人  片岡りき彌(名題昇進) 中村芝翫 ほか
(上演時間: 30分)



お嬢吉三(孝太郎)がおとせ(りき彌)から奪い取った百両を巡ってお坊吉三(隼人)と斬り合いになりますが、そこへ和尚吉三(芝翫)が仲裁に入り、同じ”吉三”の名をもつ三人の盗賊が義兄弟の契りを交わすおなじみ「大川端庚申塚の場」。

これまで幾度となく観ていますが、いかにも「東西合同大歌舞伎」といったこの座組で観るのは初めてで新鮮・・・というか、孝太郎さんのお嬢吉三を観るのが初めてでした。
お嬢吉三の妖しい美しさはさておき(コラッ!)急に男声に変わるところなど台詞はやはり安定、「月も朧に白魚の・・・」の名台詞も聴かせてくれました。

隼人くんは以前浅草歌舞伎でお嬢吉三を初役で演じた時は手に汗握ったものでしたが(調べたら2016年でした→こちら)、役が違うとはいえ見違えるような安定ぶり。11月歌舞伎座の「花競忠臣顔見勢」もよかったし、9月の「盛綱陣屋」、6月「日蓮」でも印象に残っていて、この5年間の精進ぶりが伺えます。

お嬢とお坊の立ち廻り観ながら、「和尚だれ?和尚だれ?」と心の中で考えていたのですが(「三人吉三」で配役把握していないと大体こうなりがち)、現れたのは芝翫さん。
芝翫さんは上背もあってガタイがいいので、二人の争いに割って入って止めるのも説得力あります。
にしても、芝翫さんは次の「身替座禅」で奥方玉の井を演じることは知っていましたので、「何気に中村芝翫奮闘公演じゃん」とびっくり。

おとせに抜擢されたりき彌さんの懸命さも印象的でした。
お師匠さんの秀太郎さん、南座のどこかでご覧になって喜んでいらっしゃったかな。


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2021年11月30日

4日間だけのもう一つの忠臣蔵 「花競忠臣顔見勢」


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本来ならば通して上演すると1日かかる「仮名手本忠臣蔵」。
この状況下、今の興行形態(三部制)でもできる忠臣蔵を、と企画された演目です。
描かれるのは12月11日・12日・13日 そして討ち入り当日12月14日の4日間。
「仮名手本忠臣蔵」では語られない外伝を集めた「もう一つの忠臣蔵」。
演じるのは、松本幸四郎、市川猿之助 両兄さん率いる若手花形役者の皆さん。


吉例顔見世大歌舞伎 第三部
「花競忠臣顔見勢」(はなくらべぎしのかおみせ)
序幕 第一場 鶴ヶ岡八幡社頭の場 
   第二場 桃井館奥書院の場
   第三場 稲瀬川々端の場
   第四場 芸州侯下屋敷の場
   第五場    同  門外の場
大詰 第一場 槌谷邸奥座敷の場
   第二場 高家奥庭泉水の場
   第三場 元の槌谷邸の場
   第四場 花水橋引揚げの場
作: 河竹黙阿弥  渡辺霞亭
補綴: 戸部和久
構成・演出: 石川耕士   演出: 市川猿之助
出演: 尾上右近  中村歌之助  市川笑也  市川猿之助  市川猿弥
中村歌昇  松本錦吾  松本幸四郎  坂東新悟  澤村宗之助  中村鷹之資
中村隼人  大谷廣太郎  中村福之助  中村米吉 ほか

2021年11月26日(金) 6:00pm 歌舞伎座 1階7列センター
(上演時間: 2時間22分/幕間 20分)



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櫓と千穐楽の幕がともにあがる歌舞伎座は1年の中で11月のこの日だけですね



緞帳が上がると定式幕の前には白いマスクと黒いマスクをつけた二体の口上人形。
声は幸四郎さんと猿之助さん。
「四十七士登場すると密になるので人数は数えないように」といったユーモラスな解説も交えながら公演の概要と、4日間の物語であることが語られます。
録音かな?とも思ったのですが黒マスクの猿之助さん人形が「今日はめでたき千穐楽」とちゃんとアップデートされていました。

そして定式幕がゆっくり、本当にゆっくり徐々にひかれると、そこは足利直義を中心に高師直、塩冶判官、桃井若狭之助ら居並ぶ鶴ヶ岡八幡社頭の場。
物語の発端のここだけが4日間とは別の場です。
義太夫の声に合わせて、一人、またひとりと命が吹き込まれたように目を開いていく様を見ていて、「あ~『仮名手本忠臣蔵』の通しが観たいっ!」と思いました。

兜改めを終えた顔世御前に横恋慕する高師直から庇った桃井若狭之助が師直から散々に侮辱されて耐え切れずついに斬りかかり・・・というところで「桃井館奥書院の場」へ。
師直に刃傷に及んだのは若狭之助の夢だったという設定で、「もし一つ間違えば今の塩冶殿の運命はわがこと」と塩冶判官とその家中の者たちに思いを寄せます。

ここから1日1つの物語がスピーディに展開します。


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2021年10月06日

九月大歌舞伎 第三部 「東海道四谷怪談」


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九月大歌舞伎 第三部は片岡仁左衛門さん、坂東玉三郎さん 38年ぶりの「東海道四谷怪談」。
4月と6月の「桜姫東文章」に続いて、「多分一世一代」「もう二度と観られない」とい座組と演目で、チケットは即完売という人気ぶり。
歌舞伎の四谷怪談はこれまで何度も観ていますが、仁左衛門さん玉三郎さんで拝見するのはもちろん初めてです。


九月大歌舞伎 第三部 「東海道四谷怪談」
四谷町伊右衛門浪宅の場/伊藤喜兵衛内の場/元の浪宅の場/本所砂村隠亡堀の場
作: 四世鶴屋南北
出演: 坂東玉三郎  尾上松緑  中村橋之助  片岡千之助  片岡松之助  中村歌女之丞  片岡亀蔵  市村萬次郎  片岡仁左衛門 ほか

2021年9月22日(水) 6:00pm 歌舞伎座 1階11列センター
(上演時間: 2時間10分/幕間 20分)



上演時間の制約もあってか、伊右衛門浪宅から始まって隠亡堀まで。
伊右衛門が舅であるお岩の父・四谷左門を殺す場面はないし、お袖ちゃんも出てきません。
直助権兵衛と佐藤与茂七はラストの隠亡堀にチラリと登場しますが、ほぼ主筋に関係ない役割。
「四谷怪談」の物語はご存知でしょ?な見取り上演です。


まずは、何といっても仁左衛門さんの色悪の魅力炸裂。
幕開きの浪宅で唐傘張りをしている姿がわびしくやつれているのに色っぽい。
赤ちゃん(わが子なのに)の泣き声が聞こえると舌打ちせんばかりに渋面をつくる悪いオトコの香りプンプン。
とんでもないDV男で、お岩を足蹴にする、お金のために赤子の産衣や蚊帳を奪い取る(それを必死で止めようとするお岩の爪がはがれる)、宅悦を脅してお岩に不義を仕掛けさせる、宅悦が逃げると小仏小平とお岩の不義を言い立て小平を惨殺し戸板に打ち付けて川へ流す、といった数々の血も涙もない非道の数々を時にはせせら笑いながらやってのける悪の魅力。
お岩の霊にたたられているとはいえ、新妻のお梅や伊藤喜兵衛を斬ってしまう狂気の凄み。
姿形の美しさはもとより、何とも抗えないような魅力に満ちていて、まさしく悪の華。


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2021年10月02日

九 月大歌舞伎 第二部


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今年も「秀山祭」という冠のつかない九月大歌舞伎。
第一部は六世中村歌右衛門 二十年祭・七世中村芝翫 十年祭の追善興行、第三部は仁左玉の「四谷怪談」、そして、この第二部が「秀山祭」という位置づけでしょうか。
吉右衛門さんは出演されていませんが、播磨屋ゆかりの役者さんたちによる見応えある舞台が繰り広げられました。


九月大歌舞伎 第二部
2021年9月22日(水) 2:10pm 歌舞伎座 1階3列下手


一、近江源氏先陣館 盛綱陣屋
出演: 松本幸四郎  中村雀右衛門  中村錦之助  中村米吉  中村隼人  
尾上丑之助  坂東亀三郎  中村吉之丞  澤村宗之助  大谷廣太郎  
松本錦吾  中村歌昇  中村又五郎  中村歌六 ほか
(上演時間: 1時間55分)



頼朝亡き後、源氏一族の争いに巻き込まれた近江国の佐々木家。兄の盛綱(幸四郎)と弟の高綱は敵味方に分かれて戦うこととなります。盛綱の子息小三郎(亀三郎)は幼いながらも初陣を飾り、高綱の子息小四郎(丑之助)を生け捕りにする大功を立てました。琵琶湖にほど近い盛綱の陣屋では、盛綱が母の微妙(歌六)に囚われの身となった小四郎に切腹を勧めて欲しいと頼みます。そこへ高綱討死の報せが届き・・・。


義のため忠のため、幼い子どもの命が犠牲になる物語は苦手感ぬぐえない不肖スキップ。
この「盛綱陣屋」もその一つです。
いかに戦略のためとはいえ、自分の命や家を守るため、わが子に切腹を言い含める高綱どーよ?とこの演目を観るといつも思います。
しかも本人出て来ないし。

・・・という物語への思いはさておき、見応えたっぷりの義太夫狂言となっていました。
口跡よい役者さんが揃っていることもあって、「盛綱陣屋」でこんなにくまなく台詞聴いたの初めてかも(←)というくらい聴き入りました。
結果として、戦乱の世の中で、心ならずも敵味方に分かれてしまった兄弟の哀しみと非情・・・盛綱は盛綱なりの、高綱には高綱の葛藤や苦悩があることを感じ取ることができたように思います。


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