
劇団チョコレートケーキ
『帰還不能点』
作:古川 健
演出:日澤雄介
舞台美術:長田佳代子 照明:松本大介 衣装:藤田 友
出演: 岡本 篤 浅井伸治 青木柳葉魚 東谷英人 粟野史浩
伊藤白馬 今里 真 小川哲也 加藤広祐 黒沢あすか
声:村上誠基
2026年6月28日(日) 2:00pm 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 1階A列センター
(上演時間: 2時間10分)
1940年から45年まで実在した総力戦研究所。
対米戦必敗を予測していたとされるそのメンバーが、仲間の死をきっかけに終戦から5年後に集まって旧交を温めつつ、”あの時”を振り返り語り合う物語。
2021年の初演を観ていて(こちら)、5年ぶりでした。
まずは、劇チョコの公演が兵芸で観られることが感慨深いです。
さらに、初演を観た伊丹のAI・HALLは今はなく・・・。
初演観た時もとても感銘を受けた作品ですが、今回より深く心にドンと響きました。
戦争に突き進んでしまう様々な状況が、今の日本と重なるからかもしれません。
「私達の『これから』の為には『今まで』を知り、その記憶を教訓として継承していくことは本当に重要なことだと思います。私達はどうしたって物事を忘れる生き物です。だからこそ、忘れちゃいけないことが存在することを知ること。そしてそのことに警鐘を鳴らし続けることが必要なのではないでしょうか?」
・・・作者の古川健さんが配布されたリーフレットに書かれているこの言葉の重み。
内容ももちろんのことながら、演劇作品としての秀逸さを改めて感じました。
「総力戦研究所」を描いてはいますが、リアルタイムではなく、そこに在籍した人々が戦後に振り返るという形。
だから、彼らも「敗戦」という結果を知っていて、私たち観客と同じ視点になっています。
第二次世界大戦開戦がメインテーマとなっていますが、そこに至る、対中関係(国民政府との和平交渉決裂)、日独伊三国同盟とそこにソ連を加えようとした当初の目論み、独ソ不可侵条約とその破綻、そして南部仏印進駐といった当時の日本を取り巻く状況が登場人物によって語られ描かれ、あの時こちらを選んでいれば、あの時引き返していたら、と「帰還不能点」に至るまでの経緯がリアルに感じられる展開。
居酒屋での過去の思い出語りの中で、登場人物が入れ替わりながら演じていくということで、ずっと”劇中劇”を観ている趣き。
そして初演と同じところでまた泣くなど。
物語のラスト。
「もう二度と、知らなかったことにして見過ごしたくない」という岡田一郎の魂の叫びのよう悔恨の念に促され、最後にもう一度「模擬内閣」を再現する9人。
「対米戦は不可」と全員一致で。
これが戦後ではなく、模擬内閣でもなく、昭和16年(1941年)当時の、内閣総理大臣 近衛文麿、外務大臣 松岡洋右、陸軍大臣 東條英機らが率いる本当の内閣で、彼らが導き出す結論がこうだったら、あの不毛な戦争は起こらなかったんだと思うと涙がどっとあふれてきたのでした。
劇団チョコレートケーキ 関西ではなかなか観る機会がないのが残念 のごくらく地獄度
