
1月も半ばでしたが、鏡餅はないもののまだまだお正月気分が残る華やかな歌舞伎座へ。
壽 初春大歌舞伎 夜の部
2026年1月15日(木) 4:15pm 歌舞伎座s 1階1列下手
(上演時間:4時間13分/幕間 25分・35分)


「女暫」
出演:中村七之助 松本幸四郎 坂東亀蔵 中村歌昇 坂東巳之助
坂東新悟 市川笑也 中村勘太郎 市川寿猿 中村松江
大谷桂三 大谷友右衛門 中村錦之助 中村芝翫 ほか
(上演時間:57分)

歌舞伎十八番のひとつ「暫」の女性版。
鎌倉権五郎景政が巴御前という設定です。
強力無双の主人公が圧倒的な強さで悪人をやっつけるというお話ですが、お芝居というより祝祭劇的な雰囲気で絵面も華やか。
初春にぴったりの一幕です。
これまでに玉三郎さん、福助さん、時蔵さんと観ていて、七之助さんの巴御前も平成中村座で観たなぁ・・と調べたら2015年でした。11年前って👀(こちら)。
玉三郎さんもそうですが、七之助さんも長身なので大きな三升の素襖にも位負けせず、華があって凛としてとてもお似合い。
悪人たちに何か言われてもプイッと横を向く巴御前が大好きなのですが、この高ビ~ぶりもお手の物です。
轟坊震斎の坂東巳之助さん、女鯰若菜の坂東新悟さん、後から登場の成田五郎の坂東亀蔵さんとよく通る声よしの役者さんが揃って万全。
茶後見は市川寿猿さん。変わらずお元気そうでお姿拝見するだけでもうれしくなります。
私は借りていませんが、イヤホンガイドではこの場面「茶後見は市川寿猿。若く見えますが95歳」と解説入ったそうで、そんなの聴いたら吹き出しちゃうな。
そして、「女暫」と言えば、なお楽しみ、すべてが終わった後の幕外。
七之助さん巴御前と幸四郎さん舞台番のやり取り楽しかったな。
それまでの無敵の女丈夫ぶりから一転、乙女で可愛らしい七之助さんと軽妙洒脱な幸四郎さん。
ほぼ幸四郎さん真ん前のお席だったのですが、七之助さん花道にいて目が忙しい。
「皆さんも(巴御前の六方を)観たいですよね?」と幸四郎さんに目線合わせて言われて、思い切り首ぶんぶんタテに振りましたよね(≧▽≦)
「鬼次拍子舞」
出演:尾上松緑 中村萬壽
(上演時間:26分)
京都・洛北の山中で山樵姿に身をやつした平家の武将・長田太郎景宗が見目麗しい白拍子と出会いますが、白拍子は実は平判官康頼の妻松の前で、色仕掛けで重宝の笛(敦盛遺愛の青葉の笛らしい)を奪い返そうとする、という長唄舞踊。
・・・ですが、初見でしかも舞踊ではもちろんそんなことはわからず💦
優雅に舞う中で腹を探り合っていたのか、と後で思うなどしました(解説を先に読まない人間なので)。
二人それぞれにいろいろな踊りを繰り広げて、次第に所作仕立てとなって最後はぶっ返りで華やか。
新春なので幕間に幸四郎さん与兵衛とおめでたい焼きで乾杯🐡
「女殺油地獄」(Aプロ)
作:近松門左衛門
出演:松本幸四郎 坂東新悟 市川笑也 澤村宗之助
大谷廣太郎 中村吉之丞 中村梅花 片岡松之助 嵐橘三郎
松本錦吾 市川高麗蔵 中村錦之助 中村歌六 中村東蔵 ほか
(上演時間:1時間50分)

河内屋与兵衛を松本幸四郎さんと中村隼人さん、お吉を坂東新悟さんと中村米吉さんの役替り。
両方観たいのはヤマヤマなれど、どちらか一方となれば幸四郎さんの方を選ぶのもやむなきことかな。
幸四郎さんの与兵衛はこれまで数々観てきましたが、歌舞伎座で観るのは初めてでした。
ちょっと言葉がなかったです。
とても凄まじくてすごく哀しい。
切羽詰まって借金を申し込むも拒絶され絶望した刹那、殺意が芽生えた目に背中がゾクッとしました。
最初は恐る恐るだったのに徐々に「殺すこと」自体が快感になっている狂喜の発露も本当に凄まじい。
救いようがないクズ男ですが、甘えん坊で見栄っ張りで実は小心者で可愛らしさも見え隠れするあたり、罪なオトコだなと思います。
だから、お父さんもお母さんも勘当しつつ見放すことができないよなと切なくなります。
歌六さんの徳兵衛がいいだろうなというのは想定内でしたが、梅花さんのおさわもとてもよかったです。
錦之助さんの七左衛門がいかにも実直で仕事一筋の商人という趣き。
お吉の坂東新悟さん。
もう少し色っぽさも欲しいかなとも思いましたが、いかにも世話好きの近所のお姉さんといった造形に好感。
口跡よくよく通る声。
「子どもを残して死ねない。助けて」という必死さ、理不尽に殺される悲しみが滲んでいます。
長身で海老ぞりも大健闘していましたが、あとひと息。がんばれ。
夜の部の前に昼の部の切「実盛物語」を幕見しました。
源平布引滝「実盛物語」
出演:中村勘九郎 中村七之助 守田緒兜
中村梅花 嵐橘三郎 坂東新悟 尾上松緑 ほか
(上演時間:1時間22分)

「義賢最期」の後日談にあたる物語。
平家全盛の世。木曽義賢の子を身ごもる葵御前(坂東新悟)を匿っている百姓九郎助(嵐橘三郎)のもとへ、平家方の武将・斎藤実盛(中村勘九郎)と瀬尾十郎(尾上松緑)が詮議にやってきます。実は密かに源氏に心を寄せる実盛。源氏の白旗を託された九郎助の娘小万(中村七之助)のことを実盛が語り出すと・・・。
才気に溢れ武士としても人間としても器の大きい実盛の勘九郎さんがキリリとして最初から最後までずーっとカッコイイ。
実盛の拵えも顔もとてもよくお似合い。
勘九郎さん、世話物だとお父様うつしが過ぎる印象を受けることがあるのですが(ご本人が意識してやっているかどうかは別として)、時代物だとそれがあまり感じられなくて、この方の本来はここにあるのではないかなといつも思います。
松緑さんの瀬尾十郎兼氏。
憎々しさから一転、実の娘である小万を育ててくれた九郎助の恩に報い、孫の太郎吉に手柄を立てさせるため自ら太郎吉に討たれるあたりの腹芸とてもよかったです。
そして驚いたのは太郎吉の守田緒兜(おと)くん。
巳之助さんのご長男で7歳。
舞台上で溌剌と動いて台詞もはっきり、たくさんある所作もしっかり。すばらしい。
歌舞伎のお家の子って、新しい子が出てくるたびにいつも驚かされます。

「女殺油地獄」好きな演目だけどどうしてこれ初春公演に? のごくらく地獄度
