
星組のもう1チーム。
8月に花組への組替えが発表されている極美慎さん バウホール2回目の主演作品。
作・演出の平松結有先生デビュー作です。
宝塚歌劇 星組公演
幻想秘抄 「にぎたつの海に月出づ」
作・演出:平松結有
作曲・編曲:太田健 小澤時史
振付:若央りさ 花柳寿楽 平澤智
殺陣:清家一斗 装置:木戸真梨乃 衣裳:加藤真美
出演:極美 慎 詩ちづる
美稀千種 輝咲玲央 七星美妃 二條 華 碧海さりお
瑠璃花夏 紘希柚葉 星咲 希 碧音斗和 御剣 海
稀惺かずと 鳳花るりな 大希 颯/悠真 倫 ほか
2025年1月29日(水) 11:30 宝塚バウホール 14列上手/
2月4日(火) 11:30 配信視聴
(上演時間:2時間30分/幕間 25分)

「熟田津に 船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな」
新羅と唐に攻められていた百済を救うため、援軍を出すことを決意した飛鳥の女帝・斉明天皇が、熟田津から出航する船を見送る心を額田女王に詠ませたとされる歌。世に言う「白村江の戦い」で大和軍は惨敗。彼女はなぜ戦うことを選んだのか・・・。
遡ること数十年前。
留学生として大和にやってきた百済人の青年・智積(極美慎)は、親友の覚従(碧海さりお)とともに百済人である観勒僧正(悠真倫)のもと、学堂を開き、大和の娘・寶皇女(たからのひめみこ・詩ちづる)に出会います。彼女こそ、のちの斉明天皇。幼い息子を亡くし夫と離縁した寶は、学堂で懸命に学び、智積はその優しさで彼女の心の傷を癒していきます。やがて二人は惹かれあい、恋におちますが、歴史の渦は彼らを放ってはおきませんでした。
百済を利用して勢力をのばそうとする蘇我蝦夷・入鹿親子(輝咲玲央・大希颯)、蘇我から国を守ろうとする推古天皇(瑠璃花夏)、ひそかに寶を想う田村皇子(稀惺かずと)-さまざまな思惑によって、引き裂かれる智積と寶・・・。
平松結有先生 鮮烈デビュー👏
百済と新羅・唐の戦争に大和朝廷が派兵して大敗した「白村江の戦い」ーなぜこの戦いに斉明天皇は出兵したのか、という歴史の謎の一つとされる史実に「もし斉明天皇に、百済人との秘められた恋物語があったなら?」という着想を得て生み出された物語。
プログラムのご挨拶に「本作はフィクション作品です。私の空想が、皆様を “幻想秘抄” へと誘います」と書いていらっしゃるのですが、フィクションの中に史実の織り交ぜ方が絶妙で、緻密に検証され構築された物語がリアリティを持ってとても心に響きます。
さらには、中大兄皇子と蘇我入鹿、また中大兄皇子と大海人皇子のこの先を予感させるような場面もあって、それがますます真実味に深みを持たせています。
音楽も舞台美術も衣装(加藤真美先生 ANTHEM と両方だったのね)も素敵でした。
大きな月を背景に智積の乗る船が浮かぶ光景は涙が出そうなくらいの美しさ。
もちろん智積の極美慎さんはじめ出演者皆すばらしい👏👏
キラキラビジュアルばかりが独り歩きしがちな極美くんですが、たとえそれが受け容れてもらえなくても、正しいこと、誤っていることをはっきりと口にする不器用なまでの真っ直ぐさと、人の心を思いやる繊細な優しさを併せ持つ智積でまた新たな一面を見せてくれて、歌もさらによくなって、向かうところ敵なしでは?
「寶ほしさにお前の人生を狂わせてしまった」と詫びる稀惺かずとさん田村皇子に「私は幸せにございます」と優しい笑顔で応える智積にどっと涙溢れて、以降ほぼずっとウルウルしていました

正しいことがいつも正義とは受け取ってもらえない様々な思惑が渦巻く中で、とても荒海を渡れそうにもない小さな舟で百済に送還されることになった智積。
ここで智積が歌う♪熟田津に船乗りせむと月待てば・・・の主題歌。
後に百済に援軍を送り出すときに斉明天皇が額田女王に詠ませたとされる歌をここで、この状況下で智積に歌わせる平松先生の創作、お見事でした。
星組から出すのは本当に惜しいと心から思いますが、花組で一層大きく羽ばたいてくれることを願っているし信じています!
寶皇女の詩ちづるさん。
冒頭とラスト、斉明天皇として登場する時と寶との違い、寶の中でも相次ぐ不幸で心を閉ざした序盤から智積のやさしさに触れて心を開いていくところなど時系の変化が、演じ分けが鮮やか。歌はもちろんお上手。
智積が百済に辿り着いているはずないと知りつつ、「あの方は無事百済に戻られましたか」「そうですか まだお着きになっておられないのですね」「ならばあの方が戻られる場所を守らればなりませんね」と百済への援軍出兵を決意する斉明天皇が切なくも凛々しい。
覚従の碧海さりおさんも若いころと老年の演じ分けすばらしかったですが、蘇我入鹿一派に囲まれた智積を助けに来た時、階段からジャンプして敵陣の中に入る身体能力の高さに感嘆し、そして智積に「寶と息子を頼む」と言われてすべて吞み込んで「あいわかったああ」にナミダ。
田村皇子の稀惺かずとさん。
寶を巡る恋のライバルで、智積を陥れる悪役なのだけど、観ている側の同情も引くという複雑な役どころ。
歌はもちろん演技もとても上手い。
智積が「寶」と呼び捨てにしたことに「え!?」という気配で同様してからの寶を想うソロの歌、すばらしかったです。
輝咲玲央さん、大希颯さんの蘇我蝦夷・入鹿親子はビジュアルも迫力もこの物語の悪役としての存在感の大きさ。
瑠璃花夏さん推古天皇の威厳と気品。
紘希柚葉さん黒風 忍者装束似合い過ぎだし、碧音斗和さん中大兄皇子相変わらずいい声だし、茉莉那ふみさん子中大兄上手い上に激カワだし。
フィナーレ。
まず碧海さりおさん、御剣海さん、稀惺かずとさん、大希颯さんの4人が登場して踊ります。
星組男役の next generations ですね。碧音斗和さんも入ってよかったのに、と少し思いましたが、新公主演メンバーということでしょうか。
からの男役群舞、からの満を持して極美慎さん加わる、という流れ。
からの瑠璃花夏さんセンターで優雅な娘役群舞。
そして極美慎さん&詩ちづるさんの美しいデュエットダンスと続きます。途中♪あかねさす紫の花のメロディが使われていました。
最後に極美慎さんだけ残ってソロダンス。
この場面、煌めく星空の下で踊る極美さんのラストにピンクの花びらが舞い降りてきてそれをそっと手のひらにつかむという演出。
星組から花組へ異動する極美さんへのはなむけだとおっしゃっている方がいて、そういう意図もあったなら平松先生やはりすばらしいな。
千穐楽カーテンコール。
美稀千種組長に「組替え」と言われて涙あふれる極美くんに盛大にもらい泣き。
涙まじりにご挨拶する極美を見て泣く碧海さりおくんがまた( ;∀;)
「星組次回公演は礼真琴退団公演」の言葉を噛み締めるように目を伏せる極美くん。
「この作品は私の一生の宝物だなと(←ここまでかりんちゃんの声)(ここから急に男役・極美慎の声→)思っております。」
「礼さんの最後の日まで」
そして
「礼さんに届きますように」と星組パッションする極美くん。
画面のこちら側のワタクシ 号泣でございました。

極美くんの宝物は私にとってもタカラモノ のごくらく度


