2024年08月11日

ニューファンドランドの奇跡 「カム フロム アウェイ」


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23年前の今日 8月11日 私はニューヨークにいました。
夏の休暇をワシントンとニューヨークで過ごした最後の夜で、最後にマンハッタンの夜景をビルの上から眺めようと、エンパイアステートビルとどちらにしようか迷って、ワールドトレードセンタービル(WTC)を選びました。
超高速エレベーターに乗って110階の展望台から眺めた夜景の美しさは今でもよく覚えています。

WTCビルに旅客機が激突し、2つのビルが跡形もなく崩壊してしまったのは、それからちょうど1ヵ月後 2001年9月11日のことでした。


この物語は、カナダのニューファンドランド島の小さな町を舞台に、あの911が起こった日から5日間の奇跡の物語。


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SkyシアターMBS オープニングシリーズ
ブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」 COME FROM AWAY
脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ  デイビット・ハイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン
翻訳:常田景子   訳詞:高橋亜子
音楽監督:甲斐正人   演出補:田中麻衣子   振付補:青木美保
美術補:石原 敬   照明:日下靖順   衣裳:阿部朱美
出演:安蘭けい  石川 禅  浦井健治  加藤和樹  咲妃みゆ
シルビア・グラブ  田代万里生  橋本さとし  濱田めぐみ
森 公美子  柚希礼音  吉原光夫 (五十音順)

2024年4月10日(水) 1:00pm SkyシアターMBS 1階M列センター/
4月14日(日) 12:00pm 1階F列センター
(上演時間:100分)



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物語は、ニューファンドランド島のガンダー空港がある街のカフェで人々ののどかな朝の様子から始まります。
カフェにいた市長に、普段なら1日に6便しか着陸しない空港に大量の飛行機が次々着陸し空港がいっぱいになっている情報がもたらされます。
ニューヨークでの同時多発テロ発生によって、アメリカ合衆国政府が一時的に上空を封鎖し、一切の飛行機の離着陸を禁止する措置を取ったため、旅客機はやむを得ずニューファンドランド島へ向かい、ガンダー空港は突然39機の飛行機と7000人、そして19匹を受け入れることになりました。
人口1万人の町が倍近い人間を、それも言葉も風習も異なる数多の人間を受け入れ、5日間を共に過ごして、乗客たちが無事に飛び立っていく、までの、実話に基づいた物語です。


12人のキャストが100近くの役を次々演じて、爆速で展開するノンストップの100分。
全員で歌う最初のナンバー ♪Welcome To the Rock から涙が溢れて、何度も込み上げるものが😭


報道があの事件一色だったころ、「ニューファンドランド島」という言葉をチラリと耳に挟んだような気もしますが、TVに映し出される衝撃的な映像に夢中で記憶から消し去っていったのかもしれません。
あの時間の影で、こんなことが起こっていたなんて、心を馳せる余裕すらありませんでした。

何よりもまず、ガンダーの人々が、学校などの施設に旅客を泊める準備をして、必要な物資を大量に集め、乗客たちの様々なリクエストにも応えようとするその”献身”に驚きました。見ず知らずの人々のために、人ってあんなに善意に満ちた行動がとれるものなんだ、と。
そんな中にあって、ムスリムの人への対応や、乗客の側にもトイレ掃除のボランティアに手を挙げる人がいなかったり、そりゃキレイゴトや美談ばかりじゃないよねと実感したりもします。
それでも、人が人として人のために(動物たちのためにも)できること、その強さ温かさ、そして希望に、胸がキュッとなりました。

印象に残っている場面はたくさんありますが、バスの運転手(浦井健司さん)が、アフリカ人の乗客に心配しないで、と伝えたいけれども言葉がわからない・・・「そうだ!聖書は違う言葉で書かれていても番号は同じはずだ」と”思い煩うことなかれ”という一節を指で示すシーン、とてもよかったです。
乗客の側のそれまでの警戒心が解かれたのと同時に、言葉や人種や違っても同じものを信じる同志とわかり合った瞬間でもあったのね。
このあたりは「信じる神を持つもの」の強さだなと少しうらやましくもありました。

財布を盗られるのをとても警戒していた男性(多分 加藤和樹さんだったかな)が他人の庭のBBQコンロを盗もうとしたら家主に見つかって「やるよ」と言われてかえって面食らうシーンも印象的。ガンダーの人たち、どんだけ人が好いんだ。


群像劇で、全員がガンダーの街の人だったり乗客だったり、あるいは乗員だったりもします。
上着を着たり脱いだり、帽子をかぶったりするだけで瞬時に乗客がガンダー市長になったり、街の人が機長になったりします。
目まぐるしく早替りしながら、役者さんたち自ら椅子を並べ替えて飛行機の機内になったり、避難所になったり。
ほぼ全員が動くこのフォーメーションもとても緻密につくられていて、一糸乱れぬとはまさにこのこと。
これを歌い踊りながらやる役者さんたちは本当に大変だったと思いますがお見事でした。



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力量あるキャスト揃いで12人全員が主役でプリンシパルでアンサンブル。
誰かを挙げてあれこれ言うのは野暮というものですが、印象に残った人たちを少し。

濱田めぐみさんが歌唱も存在感も抜きん出ていましたが、役の一つがAA航空初の女性機長というのも大きかったかな。
コーラス主体の作品でソロらしいソロはこのビバリーだけだったかと思いますが、”女だから”という抑圧に打ち勝って自分の居場所=空を得た喜びを高らかに歌い上げる姿に心打たれました。
他の女性キャストたちが立ち上がってビバリーに寄り添うように歌声を重ねるのもとてもよくて、彼女たちがそれぞれに様々なものと戦って勝ち得てきたものの尊さ、その強さを思い、改めてここに登場する一人ひとりに物語があることに思いを馳せました。


執拗な身体チェックを受けるモスリムの乗客とぶっ飛び面白キャラという振り幅の大きさ見せた田代万里生さんも印象的。

そしてもちろん柚希礼音さんも。
関西弁が隠し切れないビューラがよい意味でオーラを消していて、おしゃれな服を着るでもない田舎町のごく普通の中年女性で、明るくテキパキした働き者でした。
それでも、10周年のシーンで広いスタンスでリズム踏む柚希さんがまんまあの頃のちえちゃんで泣き笑いでした。
4月14日は大阪千穐楽で、最後だから「後で私のところへ来て」とビューラに言ってもらいたくて「ニューファンドランド語を喋りたい人〜」に元気よく手を挙げたわぁ←


ブロードウェイ版はスター俳優ではない人たちをオーディションで集め、登場人物の無名性を大事にした作品ということで、スターばかりを集めた日本版は真逆のスタンスですが、キャスト一人ひとりがその趣旨を十分に理解して実力を発揮していてすばらしかったです。
いつか再演されるかな・・・再演されるとしても今回のキャストが全員揃うことは多分あり得ないでしょうから、日本初演のこの「カム フロム アウェイ」を観たことを、舞台を愛する者の端くれとして、誇りにしたいと思います。



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こんなビアあるとつい飲んじゃうよねー



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開演前と終演後で空の色が違っていました


4ヵ月も前に観た舞台の感想いつ書くの 今日でしょ のごくらく地獄度 (total 2277 vs 2284 )



posted by スキップ at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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