2024年03月24日

バレンタインデーは博多座で 「二月花形歌舞伎」


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国立劇場で「江戸宵闇妖鉤爪」が初演された時(2008年)、当時3歳でまだ”松本金太郎”でさえなかった藤間齋くんが、終演後のロビーで人間豹の真似をしていたのを目撃してから16年・・・と思うと遠い目にもなるというものですが、あの時「いっくん、おばちゃんたち、いっくんが大きくなって舞台で『人間豹』やるまでがんばって長生きするから、早くいっぱい舞台に出てね~」と感想に書いた(こちら)とおり、長生きがんばりまして、思いがけず早く、いっくんの人間豹を観ることができました。


二月花形歌舞伎
2024年2月14日(水) 11:00am 博多座 3階2列上手/
4:00pm 1階1列センター



一、江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)
明智小五郎と人間豹
市川染五郎大凧にて宙乗り相勤め申し候

江戸川乱歩生誕一三〇年
江戸川乱歩「人間豹」より
脚色:岩豪友樹子 脚色
演出:九代琴松  齋藤雅文
出演:松本幸四郎  市川染五郎  河合雪之丞  大谷廣太郎  
片岡千次郎  澤村宗之助  松本錦吾  市川高麗蔵 ほか
(上演時間: 2時間50分/幕間 30分)



江戸川乱歩の小説「人間豹」を原作に、幕末の江戸を舞台に置き換えて、松本幸四郎(当時 染五郎)さんが着想から約10年温めてきた題材を松本白鸚(当時 幸四郎)さんが九代琴松の名で演出を手がけて歌舞伎として初演された作品。

時は「安政の大獄」で揺れる江戸末期。
色男で道楽者の神谷芳之助(染五郎)の恋人・芸者お甲、女役者お蘭( 河合雪之丞二役)が何者かによって惨殺される事件が立て続けに発生します。これらの事件には、犯人が狙いをつけてからちょうど100日目に殺され、肩には鋭く咬まれたような傷を負うという共通点があり、明智小五郎(幸四郎)は、同一犯の犯行とにらみ、人を食い殺す“人間豹”の仕業と見極めます。次の狙いが自分の女房であるとわかった明智は、人間豹・恩田乱学(染五郎)に敢然と立ち向かいます・・・。


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昼の部は三階宙乗りお迎え席で、私に向かって(違)ずんずん迫ってくる染五郎くん恩田乱学にギロリと睨まれ、夜は一階かぶりつきど真ん中で幸四郎さん明智小五郎に優しい笑顔を送られる(違)という昼夜通しでした

国立劇場の初演も松竹座の再演も観たのに物語のディテールすっかり忘れてる私のぽんこつ海馬のおかげで楽しく拝見。(見世物小屋は覚えてるってどんな海馬\(//∇//)

染五郎くんがとにかく立派で、所作や声色含めて二役演じ分け鮮やか。
早替りはもとより、鼓の演奏も、殺陣も宙乗りもワイヤーアクションも、高いところにパッと飛び移ったりも、お父様譲りの身体能力の高さでリアル人間豹でした。
恩田乱学の台詞の声がイメージしていたより太くて大きかったのもうれしい驚きでした。
幸四郎さんの時のようにグルングルンはなかったけれど、天井高い博多座の空間をナナメに長距離飛ぶ迫力の宙乗りに大コーフン💨

ただ、恩田乱学が人間豹として生きなければならなかった苦悩や葛藤-百御前の手で異形の体にされてしまった自分を追い詰めたのはこの世の中で、それゆえに世の中を呪い、罪を犯す。自分の犯す悪行は、自分ひとりのものではなく、謂れもなく親から捨てられた赤子や、異形の肉体を持ったがゆえに不当に差別されてきた者、その他あらゆるこの世に恨みを抱いて死んで行った者たちの復讐なのだーというあたりの説得力は今一歩だったかなぁ・・・というか、今回の脚本、演出が初演、再演ほどそこに重きを置いていないようにも感じました。

少しキャラクターが変わって剽軽さや愛嬌も加わった幸四郎さん明智小五郎も素敵でした💕
劇中で上用f饅頭ほおばりながら「これは向かいの鈴懸さんに売ってる」なんてお茶目な台詞も。
冷静だけれども冷酷ではない、人間味あふれる明智小五郎でよき。

恩田乱学の母・老婆百御前が、つくり込んだ拵えで三階で観た時誰かわからず、「吉弥さんに似てるけど声が違う」と思っていて、幕間に確かめたら千次郎さんでオドロキ👀てっきり松竹座に出ていらっしゃるものとばかり思っていました。
千次郎さん、本当に何をやらせてもお上手です。

初演のお役そのままで、見た目もそのまま、まるでタイムスリップしたかのように変わらず艶やかな雪之丞(当時 春猿)さんにもこれまたオドロキでした。


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人間豹が飛び去って行った後の鳥屋前。
この紙吹雪を横で私もバンバン浴びました。


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舞台下手から客席を斜めに横断して三階客席上手へと飛ぶ宙乗り。
「筋交い(すじかい)の宙乗り」というそうです。


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劇場のあちこちにこの演目を楽しむ仕掛けが。
2011年に松竹座の再演を観た時の感想(こちら)に「国立劇場より松竹座の方がこの演目には合っているという印象。金丸座とか嘉穂劇場みたいなところだともっと雰囲気出るかも。」と書いていたのですが、その意味では博多座はよく合っていたと思います。


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チラシの中面。
チラシを折っていくと「VSチラシ」や「卓上屏風」になるという凝ったものでした。




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二、鵜の殿様
原案:山川静夫
作・振付:西川右近
出演:松本幸四郎  市川染五郎  
河合雪之丞  澤村宗之助  市川高麗蔵
(上演時間: 30分)



「鵜飼」を題材にした狂言仕立ての舞踊劇で歌舞伎として上演されるのは今回が初めてだそうです。
 盛夏の季節。とある大名(染五郎)が暑さをしのごうと、家来の太郎冠者(幸四郎)へ「鵜飼」という涼の遊びを披露するよう命じます。早速、鵜飼の由来を語る太郎冠者。腰元たち(雪之丞・宗之助・高麗蔵)を鮎に見立て、鵜が鮎を捕る様子をみせますが、やがて大名も鵜飼遊びの真似事に加わります。そこで太郎冠者は、鵜飼をよく知らない大名に鵜の役を、自身は鵜匠となって、鵜飼ならではの漁法のやりとりを指南しますが・・・。


もちろん初めて観る演目でしたが、思いのほか楽しかったです。
幸四郎さんと染五郎くんが舞踊でこんなにがっつり組むのを観るのは「連獅子」以来かな。

生真面目だけどいかにも殿様気質な雰囲気の染五郎さんに、ちゃっかりしていて頭も口もよく回る幸四郎さん太郎冠者の塩梅が絶妙でした。
三人の腰元さんたちも明るく華やかでカワイイ。
幸四郎さんお得意のムーンウォークも♪
あっはあっはと声出して笑って、明るく打ち出されました。


チケット取る時「バレンタインデイだから何かイベントあるかも」とこの日にした目論見通り抽選会があってお二人のご挨拶聞けたし
(抽選はもちろん当たらない💦)、西や東の高麗屋さんご贔屓お仲間にもお目にかかれて Happy Valentine’s Day でした😊


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ロビーの売店に飾られていた染五郎さんの色紙。
俳優祭のあの松王丸にこんな強い思いが込められていたなんて



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博多座の幟は場所的にカメラに収めるの難易度高しです。



ひとつだけ欲を言えば、やっぱり幸四郎さんの人間豹ももう一度観たかったなぁというのが正直なところ のごくらく地獄度 (total 2255 vs 2259 )



posted by スキップ at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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