2024年03月09日

人生は時に困難だ でもだからこそ世界には物語が必要だ 雪組 「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」


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              ©宝塚歌劇団


宝塚歌劇雪組 宝塚大劇場公演は何枚か持っていたチケットがことごとく中止となって「もう大劇場で観られな~い」と思っていたところ、天使が舞い降りて、ラストぎりぎりで前楽を観劇することができました。

そして東京公演は、いつもツンな友会が盛大にデレてくれて、千穐楽・和希そらラストデイを観ることができたのでした


宝塚歌劇 雪組公演
Happy“NEW”Musical 
「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」-Boiled Doyle on the Toil Trail-

作・演出:生田大和
作曲・編曲:斉藤恒芳   音楽指揮:佐々田愛一郎
振付:御織ゆみ乃  平澤 智   擬闘:清家三彦
装置:國包洋子   衣裳:加藤真美   照明:高見和義
出演:彩風咲奈  夢白あや  朝美 絢  奏乃はると  真那春人  久城あす
和希そら  妃華ゆきの  沙羅アンナ  叶ゆうり  諏訪さき  野々花ひまり
希良々うみ  眞ノ宮るい  縣 千  咲城けい  聖海由侑  華世 京 ほか

2023年12月12日(火) 3:30pm 宝塚大劇場 2階12列上手/
2024年2月11日(日) 1:30pm 東京宝塚劇場 1階6列下手
(上演時間: 1時間35分)



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                   ©宝塚歌劇団

開演前
「ストランド・マガジン」編集部のつくり込まれたセットです。


発表された時「絶対覚えられない」と思ったタイトル「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」は「疲れ果てたドイルによって達成された大変な仕事」という意味だそうです。

物語の舞台は19世紀末のロンドン。
新聞や雑誌が一般大衆向けの最大メディアであり、その販売部数を各社競う中、医師であり作家でもあるアーサー・コナン・ドイル(彩風咲奈)は診療所を営む傍ら、イギリスの英雄たちの物語を書き綴り、いつか小説家として一本立ちすることを夢見ていました。出版社からは送った原稿が次々返送されてきますが、妻のルイーズ(夢白あや)は「あなたにはできるわ」と夫の背中を押し励まし続けていました。
そんなアーサーの前にある夜、かつて自身が書いた小説の主人公・名探偵シャーロック・ホームズ(朝美絢)が突然現れ、「僕を書きたまえ、僕らの冒険を」と告げます。
翌朝、アーサーが書き上げた小説をルイーズが「一番売れていない雑誌社に持ち込みを」というホームズの助言通りハーバート・グリーンハウ・スミス(和希そら)が編集長を務めるストランド・マガジン社に持ち込むと、ハーバートは「本物を見つけた!」と喜び、掲載された小説は大評判となり、アーサーは一躍人気作家となりますが・・・。


前半はホームズシリーズが誕生し、ドイルがいちやく売れっ子作家となっていく過程が描かれ、そこに「心霊現象研究協会」とミロ・デ・メイヤー教授(縣千)の催眠術や降霊術といった(あまり必要とも思えない←言い方)エピソードが挟み込まれて楽しく展開。
シャーロック・ホームズは朝美絢さんの000を筆頭に、以降、天月翼さんの001から苑利香輝さんの010まで、常に10人のホームズを従えていてゴチャゴチャしていて(言い方(≧▽≦)再び)、ファンタジー感もたっぷり。
一転して、自分が生み出したホームズというキャラクターのあまりにも人気沸騰ぶりに、書きたい歴史小説を書くためにはホームズを葬り去るしかないと決意したドイルとホームズの対決からの、ホームズ贔屓の世論の反発を買ってしまい、妻のルイーズまで病に倒れる後半はシリアス。

でもそこは、Happy“NEW”Musical ですから。
アーサーが「ホームズをまた書く」と決意すると、ルイーズの病気もあっさり治ってめでたしめでたし。


私がこの作品で最も感じ入ったのは、アーサー・コナン・ドイルの作家としての在り方です。
「想像力こそが魔法」と信じて「世界を生み出す最初の一文字」を白い紙に書き始める時の不安と勇気。そこに劇作家としてのとしての生田大和先生が重なるようにも思えました。これ、また改めて感想書くつもりですが、最近観た「テラヤマキャバレー」でも同様のシーン、台詞があって、小説にしても演劇にしても「何かをつくり出そうとする人」の苦悩や厳しさ、孤独を強く感じました。

そして、ラストにアーサーが言う
「人生は時に困難だ。でもだからこそ世界には物語が必要だ」
という言葉が、演劇や小説を愛する者として、とても心に響いたのでした。


彩風咲奈さんのアーサー・コナン・ドイル。
「書きたい」という思いが強く、子どものような純粋さや好奇心を持った人物。
小説で世に出たいという願いが叶ったとはいうものの自分が目指していたジャンルではなかったという焦燥感を持ちつつもおおらかで、どこかとぼけた朴訥な雰囲気を醸し出すのは彩風さんの持ち味でしょう。
脚が長くて、あの時代のクラシカルなスーツの似合いっぷりハンパない。

夢白あやさんのルイーズ。
華やかな美人で明るくて元気はつらつでポジティブ。
診療所に患者さんが一人も来ないと嘆くアーサーに「いいことじゃない。お医者様にかかる人がいないなんて!」なんて、奥様としても人としてもすばらしいです。

朝美絢さんのシャーロック・ホームズ。
アーサーの想像の中にいるホームズはアーサーにだけ見えるという存在ですが、ミステリアスでちょっと人を食ったような、悪魔的な雰囲気がぴったりでした。
開演してから登場するまで30分?ぐらいありますが、出て来た時の客席の「キタッ!」感、すごかったな。
あと、一緒に出てくる10人の「ホームズズ」たちは目が忙しくて全部追えませんから~💦

これが退団公演となる和希そらさんは「ストランド・マガジン」編集長ハーバート・グリーンハウ・スミス。
登場から台詞も歌も超イケボで、この声がもう聴けなくなるかと思うとそれだけで胸がいっぱいになります。
「今日限りで退職させてもらいます。探しに行くんだ第二の夢を」という台詞は、生田先生のそらくんへの餞の台詞かな。

ストランド・マガジン編集部には、オーナーの真那春人さんはじめ、諏訪さきさん、眞ノ宮るいさん、咲城けいさん、聖海由侑さん、音彩唯さんと人気の若手が勢ぞろいして豪華でしたが、何だかもったいない使われ方でした・・・全体的に役が少ないというキライはあります。

縣千さんは「魔法のペン」によって間接的にアーサーとホームズを引き合わせることになるミロ・デ・メイヤー教授。
少しイロモノ感漂う役で、縣くんのポジション的なものもありますが、こういう役が続くなぁという印象。今回ショーもその傾向があって、余計にそう感じたのかもしれません(もちろんご本人の責任ではありません)。
とはいえ、ぽんこつ霊媒師を愛嬌たっぷりに演じていて、好感。

メイヤー教授の「心霊現象研究協会」にアーサーを招き入れることになる保守党議員アーサー・バルフォア卿は華世京さん。
何でもできて早くから抜擢が続く華世くんですが、この役はいささが荷が重かった印象。
この学年にしてはよくできているのはもちろんではありますが。



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大劇場の公演デザート「推理SHOU雪」
お髭ついていてカワイイ


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こちらは東京宝塚劇場の公演デザート 
「スノーファン おいで~ コレイル?イル!イル!」
お味はともかく、ネーミング(≧▽≦)




ショー「FROZEN HOLIDAY」につづく 


posted by スキップ at 19:36| Comment(2) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
生観劇されたのですね!
私は、配信で千秋楽見ました。

正直、私もゴチャゴチャ感がぬぐえなくて、よくわからないところがありましたが(笑)ゼロから何かを生み出す作業の孤独感、エンタメの意味。現実世界と相通ずる感じで、心に響きました。

そして、和希そらくんを見送る気持ちで観劇。少年役や、個性的な役柄が多かった気がしますが、最後は野心家で真っすぐな青年。なんか清々しかったです。

雪組は見る機会がほとんどないのですが、久々に拝見すると、スターの宝庫ですね。これからが楽しみになりました。
Posted by はぎお at 2024年03月10日 12:33
♪はぎおさま

幸運にも千穐楽を劇場で観ることができました。
シャーロック・ホームズへの生田大和先生の愛が溢れすぎた作品
かなぁと思いました(≧▽≦)

そらくんは最後まで”和希そら”で、本当に今でも退団が惜しい
と思えてなりませんが、次なる世界での活躍を祈っています。

雪組に限らず、若い人たちのキラキラ活躍する姿は頼もしく
宝塚歌劇にとっては苦しい時期が続いていますが、
変わらず応援していきたいと思います!
Posted by スキップ at 2024年03月11日 12:36
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