2024年02月29日

「猿若祭二月大歌舞伎」 昼の部


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十八世中村勘三郎十三回忌追善「猿若祭二月大歌舞伎」。
歌舞伎座ロビーでよい香りのお香が焚かれた勘三郎さんのご遺影に手を合わせて「もう十三回忌・・・」としみじみ切ない

ですが、昼夜ともにチカラが入った演目が並び、中村屋ご一門はもちろん、仁左衛門さんをはじめ、東蔵さん、歌六さん、時蔵さん、芝翫さん、松緑さん・・・という豪華な座組はこの上ない勘三郎さんの追善興行となっています。
勘三郎さんも空の上で喜んでいらっしゃるでしょうか・・・いや、出られなくて悔しがっているかな。


十八世中村勘三郎十三回忌追善
「猿若祭二月大歌舞伎」 昼の部


2024年2月24日(土) 11:00am 歌舞伎座 1階5列センター



一、新版歌祭文 野崎村
出演: 中村鶴松  中村七之助  中村児太郎  坂東彌十郎  中村東蔵 ほか
(上演時間: 1時間15分)



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歌舞伎座で主演を勤める鶴松くんが観られるなんて!な「野崎村」。
これまで何人かのお光ちゃんを観てきましたが、鶴松くんは何というか、等身大で、とても”ニン”なお光ちゃんでした。
少し垢抜けない田舎娘ながら、初々しく可愛くて、久松との祝言を喜び、台所仕事をしながらもウキウキして手鏡をのぞいてしまう姿に娘心がよく表れていました。
お染に向かって放つ「ビビビビビ」もおきゃんでカワイイ。
だから一層、身を引くために自ら髪をおろした後半の健気さ、いじらしさ、そして切なさが際立ちます。

児太郎さんのお染はいかにも裕福な家のお嬢様といった華やかさですが、なよなよしたお嬢様ではなくて久松への恋心は結構濃いめ。
情感たっぷりでした。

この二人に対して「久松だれ?」と思っていたら七之助さん出てきてびっくり(事前にちゃんと配役確認しなさい(≧▽≦)
初役ということですが、品よく美しく柔らかく、優しさも情深さもあって、さすがの色男っぷりでした。
ここにお光の父・久作の彌十郎さん、お染の母・お常の東蔵さんの情愛が加わって盤石の構え。

久松を見送ったお光が茫然として落としてしまった数珠を拾って渡す久作。
我に返って久作の胸に取りすがって泣き崩れるお光。
この後のお染・久松の行く末も胸をよぎり、切なさに涙する幕切れでした。


二、釣女
作:河竹黙阿弥
出演:中村獅童  中村萬太郎  坂東新悟  中村芝翫
(上演時間: 32分)



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女性の美醜を笑いのネタにするあたりが若干苦手な演目。
獅童さんのこういう”笑いを取る”演目でのオーバーアクションも苦手なのですが、今回の太郎冠者はそのあたり抑えめでちょっとトボけた風味もよかったです。
「客席に届かせる力」は獅童さんならではだと思います。

対する芝翫さんは思いっきりデフォルメした拵えで誰かわからないくらい。
そして大きい(笑)。

大名某の萬太郎くんが相変わらずいいお声を響かせてくれるし、新悟さんの上臈は品よく美しかったです。


三、籠釣瓶花街酔醒
序幕 吉原仲之町見染の場より
大詰  立花屋二階の場まで

作:三世河竹新七
出演:中村勘九郎  中村七之助  中村児太郎  中村橋之助
中村芝のぶ  中村鶴松  中村歌女之丞  大谷桂三  片岡亀蔵
尾上松緑  中村時蔵  中村歌六  片岡仁左衛門 ほか
(上演時間: 1時間58分)



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下野国佐野の絹商人・佐野次郎左衛門(勘九郎)が吉原一の花魁、八ツ橋(七之助)に一目で魂を奪われ通い詰めるようになりますが、満座の中で愛想尽かしをされ、打ちひしがれて国許へ帰ったものの、数ヵ月後、再び吉原に現れて・・・というお話。

「『籠釣瓶』といえば「勘三郎さんと玉三郎さん」と目に心に強く刷り込まれていて、その佐野次郎左衛門と八ツ橋を勘九郎さんと七之助さんがともに初役で勤めるとあって、観逃す訳にはまいりません。


開演すると暗転の中、ザーッと幕が引かれる音だけが聞こえて、パッと明るくなると(宝塚で言う”チョンパ”ね)、桜が満開に咲き誇った吉原仲之町。客席からも「わぁ~」という声があがりました。

九重(児太郎)、七越(芝のぶ)と美しい花魁が道中していく中、大トリで登場する七之助さん八ツ橋のラスボス感・・・というか圧倒的”美”。
道中全く表情を変えないクールビューティにあんなふうに微笑み投げかけられたら、そりゃ佐野次郎左衛門でなくあてもイチコロよ←

八ツ橋が情夫の栄之丞(仁左衛門)に責められ、満座の中での次郎左衛門への愛想尽かしは憂いを帯びているようにも感じられました。
その八ツ橋がの言葉に打ちのめされ、怒りさえ表すことを忘れ、絶望が深すぎてかえって無表情になる佐野次郎左衛門が切ない。

仁左衛門さんの栄之丞の、八ツ橋が言うことを聞いてしまう説得力よ。
やさぐれているけど強気の、そして色っぽい二枚目の破壊力には誰も逆らえません。
皆さんおっしゃっていますが、柱に背をもたれかけて盆が回っていく姿たるや。
松緑さん釣鐘権八の悪が効いていますし、短い出ながら歌六さん、時蔵さんが座組にいらっしゃるのもうれしく頼もしい限りです。


そして、立花屋二階の場。
勘九郎さん佐野次郎左衛門、本当~っに怖かったです。

穏やかな笑みを浮かべながら「この世の別れじゃ 呑んでくりゃ」と言って、八ツ橋の「この世の別れ?」を待つまでもなくドラスティックに豹変する表情、声、纏った気配。
ちょうど次郎左衛門の正面の席だったのですが、あまりの凄みにゾワッと鳥肌立って、「ワタシ、殺される」と慄きました。

飛びつくように籠釣瓶を手にしたかと思えば目にも止まらぬ速さで一気に八ツ橋を斬って捨てる次郎左衛門。
まるで刀の魔力が乗り移ったかのような、まさに鬼神のごとくな所業。
身体能力が高く、明るさの中に得も言えぬ翳りを持つ、勘九郎さんにしかできない表現だと思います。
ほんとコワイ(二度目)。


こういうの見せられと、やはり中村屋さんから目が離せないな、と強く感じます。
内輪でやる(と私は思っている)平成中村座や巡業公演もいいけれど、本興行で、いろんなお家の座組に入っての活躍を期待しています。



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歌舞伎座にかっかった中村屋さんの定式幕をお祝いして
この劇場のどこかで見守っていらっしゃるであろう勘三郎さんと
おめでたい焼きで乾杯



充実の猿若祭 何なら毎年やっていただいてよろしくてよ のごくらく度 (total 2247 vs 2251 )



posted by スキップ at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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