2024年01月07日
當る辰歳「吉例顔見世興行」 夜の部
という訳で、記憶が新しい方の歌舞伎です(≧▽≦)
京の年中行事
當る辰歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 夜の部
市川海老蔵改め 十三代目市川團十郎白猿襲名披露
八代目市川新之助初舞台
2023年12月20日(水) 3:45pm 南座 3階1列上手
2023年の顔見世は十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行。
歌舞伎座で観たのが何だかずいぶん前のような気がして、「え!?まだ顔見世でやってなかった?」と思っちゃいました。
歌昇くん、児太郎くん、染五郎くん、芝のぶちゃんが並ぶまねきにテンション上がります。
竹馬も4年ぶりに復活
第一、仮名手本忠臣蔵 衹園一力茶屋の場
出演:片岡仁左衛門 片岡孝太郎 中村隼人 中村莟玉
市川染五郎 片岡松之助 松本錦吾 片岡進之介 中村芝翫 ほか
(上演時間: 1時間40分)
これまで何度も観ている仁左衛門さんの七段目 由良之助ですが、やはり絶品でした。
あの酔態のかわいらしさと色っぽさ、それが一転、力弥が文を届けに来たところの厳しい表情、鋭い目つきへの転換のギャップ萌え💕です。
見映えのよさはもちろん、どんな台詞も言葉がよく届くこと、所作が大きく美しいこと。
身請けしてもらえると無邪気に喜ぶおかるを見て、おかるに見えないようにちょっと涙を拭くような仕草にも由良之助のやさしさと、それでも秘密を守るためにはおかるを殺さなければならない厳しさが滲み、九太夫に「鴨川で水雑炊を」のくだりは、ゾクッとするほど冷酷な表情も見せて、本当に人間として、細やかに感情や表情の変化を見せる由良之助。
七段目の由良之助といえば、仁左衛門さんと吉右衛門さんが分け合っていたような印象がありますが、吉右衛門さん亡き今、仁左衛門さんが他の追従を許さない独壇場で、継承していく次の世代にも期待したいところです。
平右衛門、おかるの兄妹は芝翫さんと孝太郎さん。
芝翫さんは体躯が立派すぎてあまり奴には見えませんが(^_^;)、大きな声でしっかりした台詞。
おかるや中居さんとのやりとりの軽妙な部分も、軽くなり過ぎずちゃんと笑いはとる品のよいお芝居でした。
孝太郎さんのおかるもこれまで幾度となく観ていますが、やはり過不足なく安定。
冒頭、由良之助を諫めにやってくる赤垣源蔵、富森助右衛門、矢間重太郎が進之介さん、隼人くん、染五郎くんで、ほぼ年に1回のお目見えとなる進之介さんの生存確認して長台詞久しぶりに聴きましたし、ぶんすか怒っている隼人くんや染五郎くんかわいかったです。
大星力弥はてっきり千之助くんだと思っていたので「千ちゃんにしては台詞がずいぶんしっかりしてる」とオペラ上げたら莟玉くんで驚きました。
驚いたといえば斧九太夫が錦吾さんで、この座組に珍しいなと思ったのですが、「そうか!一人で京都に乗り込んできた染五郎くんの付き添いね」と思い至った次第です(違)。
第二、十三代目市川團十郎白猿
八代目市川新之助 襲名披露 口上
出演:海老蔵改め市川團十郎 初舞台市川新之助
片岡仁左衛門 中村梅玉 ほか幹部俳優
(上演時間: 15分)
舞台中央に團十郎さんと新之助くん。その上手に仁左衛門さん、下手に梅玉さんの4人が並び、その後ろに柿色の裃をつけた幹部俳優がずらりと並んでいました。
全部で28人で、「時間足りるの?」と心配になりましたが、口上を述べるのは4人だけでした。
仁左衛門さんも梅玉さんも口を揃えて新之助くんのことを「芸勘がいい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
最後は團十郎さんが、見物衆の無病息災を願って成田屋さん恒例の「にらみ」。
團十郎さんありがたくににらんでいただいて、よい年が越せそうと思いました。
第三、歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜
河東節十寸見会御連中
出演:市川團十郎 中村壱太郎 中村児太郎 市川男女蔵
中村歌昇 中村隼人 中村亀鶴 大谷廣太郎 市川男寅
大谷廣松 中村玉太郎 中村歌女之丞 市村萬次郎
市川門之助 中村芝翫 中村扇雀 中村鴈治郎
市川染五郎 市川右團次 ほか
(上演時間: 2時間)
夜の部の襲名披露演目。
「助六」観るの何だか久しぶりと調べてみたら、直近に観たのが2018年10月の仁左衛門さんの助六で(こちら)、團十郎さんこと海老蔵さんの助六は、2013年6月の歌舞伎座新開場 柿葺落六月大歌舞伎(こちら)以来でした。
そういえば、あの時幸四郎さんが勤めた口上を、10年の時を経て染五郎くんが立派に勤めている姿に胸がいっぱいでした。
当代團十郎さんの助六はやはり華やか。
まるで錦絵から抜け出てきたような美しさ際立ちます。
傘で顔を隠し、下駄の音を響かせて花道を勢いよく闊歩して登場。
七三で紫の喧嘩鉢巻の姿を現し、杏葉牡丹紋の傘を回して決める見得。この花道での所作が結構たっぷりなのですが、劇場全体がパァ~っと明るくなるような華と美しさ、そして観客の耳目を惹きつける吸引力はさすが。
意休を相手に傍若無人な態度、門兵衛たちをやり込める男伊達、母の満江にはからきし頭が上がらない愛嬌、といかにもやんちゃな次男坊という風情もよくお似合いです。
あの独特の滑舌も今回それほど気にならなかったのは、ご本人の進化なのか私の耳が慣れたのか←
揚巻は壱太郎さんと児太郎さんの役替りで、私が観た日は児太郎さんでした。
初役ということですが、豪華な衣装に負けない華やかさ。
本来声のよい役者さんということもあって、緩急のある台詞もしっかり。
ただ、これはルッキズムの観点からも言ってはいけないことなのかもしれませんが、お顔がかなり丸くてガタイもいいので、揚巻のお衣裳だとさらに大きく見えて、女形としては相手を選ぶかなぁと少し心配にもなりました。
左團次さんがよく勤められていた意休は、ご子息の男女蔵さん。
お父様からこのお役を直接教えていただくことは叶わなかったとお聞きしましたが、声がまず似ていることもあって、左團次さんを彷彿とさせ、團十郎助六相手に一歩も引かない見事な意休でした。
鴈治郎さんの通人、扇雀さんの白酒売新兵衛、芝翫さんのくわんぺら門兵衛と、しっかり脇を固め、歌昇さんの朝顔仙平、隼人さんの福山かつぎとフレッシュな配役もピタリと決まって、とても華やかな一幕となりました。
2010年の歌舞伎座さよなら公演では玉三郎さん揚巻付きの禿だった吉太朗くんが姿よし声よしのべっぴんさんの並び傾城になっているのも胸熱。
そして、舞台下手に静かに座して見守る後見、右團次さんの端正な佇まいも印象的でした。
顔見世は楽しいけれどチケット代が高いのと時間が長いのが玉にキズ のごくらく地獄度 (total 2438 vs 2438 )
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