2023年12月02日

レベッカが開けた窓 「ロスメルスホルム」


rosmelsholm.jpg


1886年に発表されたイプセンの最高傑作の一つと言われる戯曲。
「人形の家」「民衆の敵」をはじめ、イプセン原作の舞台はこれまでに何作か観たことがありますが、この作品は初めてでした。
というか、タイトルも初めて知りました💦


「ロスメルスホルム」
原作:ヘンリック・イプセン
脚色:ダンカン・マクミラン   
翻訳:浦辺千鶴
演出:栗山 民也
美術:長田佳代子  音楽:国広和毅
照明:小沢 淳   衣装:前田文子
出演:森田 剛  三浦透子  浅野雅博  
谷田 歩  櫻井章喜  梅沢昌代

2023年11月12日(日) 1:00pm 兵庫県立芸術文化センター
阪急中ホール 1階D列センター
(上演時間:2時間45分/休憩 15分)



19世紀のノルウェイ。
歴史と伝統に縛られたロスメルスホルムと呼ばれる屋敷には、所有者ヨハネス・ロスメル(森田剛)と家政婦のヘルセット(梅沢昌代)、そして下宿人のレベッカ(三浦透子)が暮らしていました。
ある日、ロスメルの自殺した妻ベアーテの兄であり、レベッカをこの家に紹介したクロル教授(浅野雅博)が屋敷を訪れ、モルテンスゴール(谷田歩)が掲げる「新しい進歩主義」に対抗すべく、ロスメルを保守派に引き込もうとしますが、レベッカの影響を受けたロスメルはこの古い体質から解き放たれようとしていました。ロスメルは若い頃、家庭教師だったブレンデル(櫻井章喜)という自由思想家に影響されていましたが、レベッカは、今や自分こそがロスメルを自由にすることができると信じていました・・・。


”ロスメル家のお屋敷”という意味を持つタイトル。
物語はほぼこのお屋敷の一室(二幕ではロスメルの私室も)で繰り広げられます。

左側の壁にはロスメル家歴代当主の肖像画がびっしりと掲げられていて、この家がこの土地で指導者を輩出した名家であること、その何代目かの当主として、ヨハネスが威圧感や閉塞感の中で過ごしてきたことが感じられます。
一方、反対側の壁には高いところから一面の大きな窓があって、窓を開けるたびに白いカーテンがふわりと揺れて明るい光と風が部屋の中へと入ってきます。それは陰鬱としたロスメルの人々の心に射し込む光のよう。

この左右の壁の対比がとても印象的でした。
そして、この物語の中で、最初に窓を開けるのがレベッカであることも。


かつて尊敬を集める牧師でありながら、信仰を捨て、自由思想に傾倒し、自身の政治的信念とも葛藤するヨハネス。
自由思想の持主で、ヨハネスの思想的な転回を促したレベッカ。
自分の属する保守派に何としてもヨハネスを留まらせようとするクロル。

レベッカこそがロスメルの妻ベアーテを死に追いやった原因だと告げクロル。
「進歩主義の同志」というレベッカへの気持ちが愛情だったと気づくロスメル。
最後に身をよじりながらロスメルの”肉体”を求める気持ちを発露させるレベッカ。

三人三様 緊張感のある濃密な台詞の応酬はとても聴き応えありました。
全体的に動きの少ないお芝居ではありますが、三人とも口跡よく台詞がきっちり届いて、それぞれ独壇場のような長台詞も聴かせてくれました。
笑わないヨハネスこと森田剛くんが、カーテンコールで見せた笑顔もとてもチャーミングでした。
短い出番ながらくっきりとした印象を残すモルテンスゴールの谷田保さんとブレンデルの櫻井章喜さん、そして、本当にお屋敷の家政婦さんがそこに存在しているようなヘルセットの梅沢昌代さんもすばらしかったです。

が、

欧米の宗教観や倫理観は私にはかなり手強い・・・上にノルウェイはその中でも馴染みのない国だなと改めて思い知りました。
19世紀のノルウェイの政治的背景なんて、私の頭の中には無に等しいです。これがたとえば18世紀のフランスであれば、何なら説明しましょうか、というくらい知識も持っているかなと思うのですが💦
イプセン特有の象徴とされる「白い馬」が何を象徴しているのかも、はっきりと掴んだとは言い難い・・・まだまだ修行が足りません。



グッズの白い馬と青い馬のキーホルダー 幕間に見て「あらカワイイ」と思いましたが、みんな早くから並んで開場するとすぐ完売するらしい の地獄度  (total 2432 vs 2430 )

posted by スキップ at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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