2023年11月11日

やっぱり大好き! 「アナスタシア」


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1997年に公開されたアニメ映画「アナスタシア」に着想を得て2017年にブロードウェイで初演されたれたミュージカル。
ロシア革命で処刑されたロマノフ王朝の末娘アナスタシアが生きていたという「アナスタシア伝説」にもとづいたロマンティックな物語をすばらしい楽曲の数々で綴られた作品です。

2020年に宝塚歌劇 宙組で観て大好きで何度も通った舞台。
梅芸版は2020年の初演がコロナ禍のため大阪は全公演中止となったため、今回初めてでした。


ミュージカル 「アナスタシア」
オリジナルクリエイティブスタッフ
脚本:テレンス・マクナリー
音楽:ステファン・フラハティ
作詞:リン・アレンス
振付:ペギー・ヒッキー
演出:ダルコ・トレスニャク
美術:アレクサンダー・ドッジ   衣裳:リンダ・チョー   映像:アーロン・ライン   照明:ドナルド・ホルダー
翻訳・訳詞:高橋亜子   振付補:三井聡
出演:葵わかな  海宝直人  堂珍嘉邦  大澄賢也
朝海ひかる  麻実れい ほか

2023年10月20日(金) 6:00pm 梅田芸術劇場メインホール 2階5列センター
(上演時間: 2時間50分/休憩 25分)



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物語の舞台は20世紀初頭、帝政末期のロシア。
1906年 サンクトペテルブルクの王宮でロシア帝国皇帝ニコライ二世の末娘アナスタシアがパリへ旅立とうとしている祖母 マリア皇太后(麻実れい)からオルゴールを贈られる場面から始まり、美しく成長したアナスタシア(葵わかな)と両親、姉たちが舞踏会で踊る中、突然、銃声が響いてボリシェヴィキたちが乱入してくるロシア革命へと続きます。
そして、サンクトペテルブルクがレニングラードと名前を変えた1927年。街中ではアナスタシアが生きていると噂する声がまことしやかに広がり、パリに住むマリア皇太后は、アナスタシアを探すため多額の賞金を懸けます。それを知った詐欺師のディミトリ(海宝直人)とヴラド(大澄賢也)は、記憶喪失の少女アーニャ(葵わかな)をアナスタシアに仕立て上げ賞金をだまし取ろうと企て、アーニャに作法など様々なことを教え込んで三人でマリア皇太后の住むパリへと旅立ちます。一方、ボリシェビキの将官グレブ(堂珍嘉邦)もアナスタシア暗殺命令を負い、三人の後を追ってパリに向かいます。やがてアーニャは少しずつ昔の記憶を取り戻し・・・。


宝塚歌劇宙組(2020年)の感想はこちらこちら


宝塚で先に観て、同じ作品を外の舞台で観るとがっくし⤵となることが少なからずあるのですが(その最たるものは「ロミオとジュリエット」)、この舞台はとてもよかったです。

宝塚版はやっぱり男役のディミトリ主役の物語に改変していたことが今回オリジナル版を観てよくわかりました。もちろん宝塚版もとても上手く潤色されていたと思います(同様のパターンにトート主役のに「エリザベート」があります)。

楽曲がどれもいいのがまずあって、キャストも演出も、映像駆使した舞台美術も素敵でした。
あのプロジェクションマッピングの背景がとてもクオリティ高くて、2階席から観たこともあってか、本当に綺麗で精巧で遠近感もあれば壮大さもあって。銃撃でガラス割れる映像もすばらしかったし、写実的な部分ばかりでなく、パリへ向かう列車の背景が地図になっていたり、パリではエッフェル塔に上ったりムーラン・ルージュに飛んだする映像演出も楽しかったです。
舞台で映像使うのはあんまり・・派の不肖スキップですが、もうそんなこと言っていられない時代(と技術)になったんだなぁと実感しました。

とにかく楽曲がよい(二度目)のですが、いろんな場面でのリプライズの使い方も秀逸だと思います。
たとえば、オペラ座でアーニャとディミトリを見送ったヴラドが歌う♪ただ一つ計算外だったのは二人のロマンス 始まりはあの日のダ~ンス の部分が ♪The Countess And The Common Man 貴族とただの男 のメロディだったり。

訳詞や台詞が宝塚版とは少し違っていて、 Once Upon A December は "あの日の12月" ではなく "遠い日の12月"になっていました。
ラストのアレクサンドル三世橋でのアーニャの台詞は今回「大公女アナスタシアは意義を唱えます」でしたが、これは宝塚版の「大公女アナスタシアは許しませんよ」が断然好きでした(稲葉先生GJ!)
でもここで、二人の間にあるトランクの上に乗ってディミトリにキスするアーニャ、最高に可愛かったです(宝塚版にはなかった演出)。


今回、アーニャはじめ、プリンシパルキャストはマリア皇太后を除いてすべてダブルまたはトリプルキャスト。

アーニャ: 葵わかな・木下晴香
ディミトリ:海宝直人・相葉裕樹・内海啓貴
グレブ:  海宝直人・堂珍嘉邦・田代万里生
ヴラド:  大澄賢也・石川禅
リリー:  朝海ひかる・マルシア・堀内敬子
リトルアナスタシア:内夢華・鈴木蒼奈・戸張柚

まずディミトリの海宝直人さんありきで、リリーは朝海ひかるさんがいいなと選んで私がいける日(かつチケット取れた日)がこの日だけで、こういうキャストで拝見しました。


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葵わかなさんは私にとっては今でも「わろてんか」(2017年の朝ドラ)のてんちゃんなのですが、舞台を観るのは「パンドラの鐘」(2022年)以来2作目でした。
初演の「アナスタシア」も他のミュージカルでもよい評判を耳にしていていて、なるほどあんなに歌える女優さんだったのね、と感心(私が観た日は高音は少しつらそうでしたが)。
表情豊かで溌剌としていて、ダンスのレッスンでわざとディミトリの足を蹴ったりするおきゃんな感じもかわいかったです。ドレスもよくお似合いでした。
木下晴香さんのアーニャも観てみたかったな。

海宝直人さん何だかディミトリそのもののようでした。
"My Petersburg" 俺のペテルブルク は東京ではほぼ毎回ショーストップになっていたと聞きましたが、むべなるかな。
歌がうまいのはもちろんですが、あの1曲にディミトリのすべてが込められていて、これまで生きてきた道や人としての矜持を知る思い。ラストの ♪この街を~ のロングトーンも凄かったです。
悪役フェチとしてグレブ大好きなので、海宝さんのグレブも観てみたかったです。

そのグレブは堂珍嘉邦さん。
表情少なくて冷たい感じながら実はアーニャに惹かれていることも、父親から受け着いた革命の理念にがんじがらめになりながらもついに自分の意志で断ち切るに至る揺れがよく感じられました。歌はやっぱりお上手。

グレブでいうと、すごく怖かったらしい田代万里生さんグレブも観てみたかったなぁ。

ヴラドは大澄賢也さん。
イケイケでノリノリのイケオジでした。
ダンスがお上手なのは周知のことですが、歌もきっちりとこなしていらして、さすがたくさんのミュージカル作品に出演されているのは伊達ではありません。

楽しみにしていた朝海ひかるさんのリリー。
実は宝塚版の和希そらさんのリリーが好き過ぎて、どうだろうと思いながらでしたが、チリチリ頭(言い方)なのにコケティッシュで、元貴族の上品さは失わずにちゃんと笑いも取れる魅力的なリリーでした。
お得意のダンスは相変わらずステキでしたが、歌も思いがけず(失礼!)よく声が出ていて「あれ?コムちゃん歌うまくなった?」と感心したりも。

そして、麻実れいさんのマリア皇太后。
ひとたび現れると場を圧倒するような存在感、威厳と品。
マリア皇太后の気位の高さや気難しさの中に限りない孤独も滲ませていて、だから、ラストシーンで「それでも・・」と結んだ時の彼女の穏やかな微笑みに、そばにアナスタシアはいなくても心で繋がっていて、もう孤独ではないことが感じられて、こちらまで何とも言えない気穏やかな気持ちになりました。


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改めて「アナスタシア」大好きだ と感じた舞台。
他のキャストの日のチケット取っていなかったことをとても後悔しました のごくらく地獄度 (total 2427 vs 2426 )


posted by スキップ at 19:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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