2023年10月15日
この子の時代は幸せで自由 「ラグタイム」
1996年にカナダで初演され、1998年にはブロードウェイで上演、トニー賞で最優秀脚本賞など4部門を受賞したミュージカルの日本初演。
20世紀初頭、アメリカの移民の約9割がやって来たと言われる激動の時代のニューヨークを舞台に、ユダヤ人、黒人、白人の3つの家族が、差別や偏見に満ちた世界を変えていこうとする群像劇。
ミュージカル 「RAGTIME」 ラグタイム
脚本:テレンス・マクナリ―
歌詞:リン・アレンズ
音楽:スティーヴン・フラハティ
翻訳:小田島恒志 訳詞:竜 真知子
演出:藤田俊太郎
振付:エイマン・フォーリー
音楽監督:江草啓太 美術:松井るみ 衣裳:前田文子
出演:石丸幹二 井上芳雄 安蘭けい
遥海 川口竜也 東 啓介 土井ケイト
綺咲愛里 舘形比呂一 畠中 洋 EXILE NESMITH ほか
2023年10月7日(土) 12:30pm 梅田芸術劇場メインホール 1階12列センター
(上演時間:3時間5分/休憩 25分)
物語の舞台は20世紀初頭のニューヨーク。
娘の将来を思いラトビアから移民としてアメリカにやってきたユダヤ人のターテ(石丸幹二)。
流行の音楽“ラグタイム”を奏でる才能ある人気黒人ピアニスト コールハウス・ウォーカー・Jr.(井上芳雄)。
裕福な白人家庭になりながら偏見を持たず、正義感にあふれるマザー(安蘭けい)。
ある日、コールハウスに愛想をつかした恋人のサラ(遥海)が2人の間に生まれた赤ん坊をマザーの家の庭に置き去りにしたことから、3人と彼らを取り巻く人々の運命が交錯していきます。
ヘンリー・フォードや J.P.モルガン、エマ・ゴールドマン、ブッカー・T・ワシントンといった実在した実業家や政治家も登場して、アメリカの当時の歴史を描く叙事詩のような趣きです。
真ん中に白人のグループ、上手にユダヤ人、下手に黒人たちと色分けされた切り絵の幕。
まるでその絵が動き出すように白人グループから順に登場人物が出てくるオープニングがとても洒落ています。
やがて全員で「Raggime」のコーラスとなりますが、動きや歌い方がそれぞれの人種ごとに違っていて、衣裳の色の違いもキャッチーにくっきり際立たせていて、一気に物語世界へ引き込まれます。
重く厳しい内容の物語で、白人でも黒人でもユダヤ人でもない私は、本当の意味で理解しきれたとは言い難いかもしれませんが、とても心に響きました。
コールハウスの車にまつわる理不尽
サラの不幸な事件
コールハウスの最期
断片的にではありますが、過去に見聞きしたアメリカの差別事件に照らして、「こうなるんだろうな」とつい悪い方に考えてしまう通りに物語は展開します。
劇中、何度も感極まったのですが、涙が溢れるのは不思議なことに幸せな場面たち。
和解したコールハウスとサラがT型フォードに乗って帰路につき、赤ちゃんを抱いて歌う Wheels of a Dream
♪この子の時代は幸せで自由
誇り高く生きる 怯むことなく
愛と希望に満ちていて、聴いていて涙溢れました。
楽曲はもちろん、井上芳雄さんと遥海さんの歌唱が本当にすばらしくて。
歌を聴いて感動して自然と涙が出たのは私の記憶の中では生涯二度目です。
(一度目は大昔に劇団四季の「CATS」でグリザベラが歌った "Memory" なのですが、今となってはキャストがどなたかもわかりません・・・)
その後、厳しくつらい展開が続いて心がかなり疲弊したラスト
「コールハウス!」とマザーが呼んで、走り出て来たリトルコールハウスがまるで希望の塊のようでまたナミダ( ;∀;)
2人の残した赤ちゃんをマザーが引き取って育て、保守的な夫・ファーザーは亡くなり、マザーは心を通じ合わせていたターテと再婚してそれぞれの子どもたちとリトルコールハウスと3人で幸せに暮らしている・・・つまり冒頭に登場した3つの人種の融合、というエンディングは、いかにもユートピアというか、綺麗すぎる結末という気もしますが、”そうありたい未来の希望”を描いた作品なのだと思います。
まさにコールハウスとサラが「この子の時代は幸せで自由」と歌ったように。
世界のどこかで続く戦争や対立、人種差別や偏見、ジェンダーや貧困の問題・・・この物語の時代もそれより前からも、そして今も、決してなくなることはないのかもしれないけれど、繰り返す絶望の中でもより良き未来を信じて生きれば希望が見えてくると。
ロビーに飾られていた切り絵アート
石丸幹二さん・井上芳雄さん・安蘭けいさんというメインの3人がすばらしいのはもちろん、1人ひとり個性際立つソロも圧巻のコーラスも聴きごたえたっぷり。
遥海さんと、一幕ラストで力強い歌声響かせた塚本直さん(NESMITHくんと小中同級生なのですってね!)の歌唱が特に印象的でした。
ミュージカル界、まだまだ知らない逸材たくさんいますね。
17人のアンサンブルが衣装や演じ方を変えながら3つの人種を演じ分けるのも凄かったな。
ダンスナンバーも素敵でした。
長らくCONVOYの舞台観ていないのでお久しぶり~なタテ(舘形比呂一)のお元気な姿観られたのもうれしかったし、ヒャー!とかフー!とかばかり言っててちょっと笑っちゃったあーちゃん(綺咲愛里)は相変わらずとびきり可愛かったです。
大阪公演の日程が他の予定と重なっていて観るのをあきらめてチケットも取っていなかった公演。
宝塚歌劇宙組公演が中止になってぽっかり空いた日に「それならば」とチケット探してとてもお安く譲っていただいのですが、この作品を見逃さないでよかったです。
どうして最初からチケット取らなかったのか過去の自分を叱ってやりたい の地獄度 (total 2422 vs 2418 )
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