2023年06月19日
音楽というサイドから宝塚歌劇にアプローチ 「第3回 Suu's Room」
前回(こちら)の最後に次回のゲストが発表された時、「行きたいけど平日なのね💦」と思っていたら、ディナータイムに開催ということで、張り切って行ってまいりました。
第1回:1人で参加 → 第2回:2人 → 第3回:3人に増殖 と確実に仲間を増やしおります。
第3回 Suu's Room
すーさんとゲストのおしゃべりタイム
~金曜の夜はディナーを~
出演:憧花ゆりの ゲスト:太田 健
2023年6月16日(金)宝塚ホテル 宝寿の間
18:30-19:45 ディナー
19:45-21:00 トーク
最初にすーさんより、「今回は星組『1789』のお話もたくさんするつもりでしたが、まだ公演が再開していない状況を考え、もちろん『1789』のお話もしますが内容を少し変更してお送りすることをお許しください」とご説明がありました。
もちろん太田先生も音楽監督・編曲として携わっていらっしゃる作品。「1789」好きとしては少し残念ではありましたが、それを差し引いて興味深いお話の数々盛だくさんでとても楽しかったです。
♪宝塚との出会い
4歳の時に突然「ピアノを習いたい」と言い出した太田少年。
以来、音楽の道をずっと歩いて来られましたが、宝塚との出会いは「ほとんどない」そうです。
「花の指定席」というテレビ番組を少し見たことがあるのと阪急の看板を見かけたことがあるくらい。アメリカにいる時に薦められて宝塚を受けることになった時、「5組を覚えるところから始めた」のですって。
♪潤色とオリジナル
最初から曲がある潤色のアレンジと1から曲をつくっているオリジナルとではおのずとアプローチも違ってくるそうです。
潤色の場合:
1.現地打合わせ
2.採譜
3.演出打合わせ
4.音源制作
5.お稽古
6.歌劇バージョンのオーケストラ譜制作
7.オーケストラ合わせ
8.舞台稽古 → 初日
オリジナルの場合:
1.演出家打合わせ
2.曲作り
3.音源制作
4.お稽古
5.オーケストラ譜制作
6.オーケストラ合わせ
7.舞台稽古 → 初日
いずれの場合でも、演出家の意向が強く反映されることとなって、小池修一郎先生や生田大和先生の要望や無理難題(?)のお話はとてもおもしろかったです。
オリジナル曲を作曲する時は、台本や歌詞を何度も何度も読み込んで”音が降ってくるのを待つ”のだそうです。
昔は「やってやろう」と曲をつくっていたこともありましたが、大体失敗する、ですって(≧▽≦)
曲をつくる時には必ず自分で歌ってみるそうです。
オーケストラだけのお稽古の時は生徒もいないので、台詞も言いながら(礼さんだとこのくらいの速さで話すかな、とか)全曲歌うのだとか。
♪シーケンス(同期演奏)
あらかじめ打ち込んでおいた(録音しておいた)音源を再生しながらそれに合わせて生演奏するというシーケンスは、太田先生が宝塚で最初に始められたのだそうです。2011年雪組の「ロミオとジュリエット」の時。
「反対されたでしょ?」と言うすーさんに「反対というか、何のこと?」という感じでした、と(笑)。
幸いなことに初演の星組「ロミオとジュリエット」(2010年)が全部録音だった(梅田芸術劇場と博多座公演)だったのでその音源を使うことができたそうです。
ここで、月組「Deep Sea」の「秘密の花園」の場面の打ち込みのみの音源と、演奏+風間柚乃さんの歌が入ったバージョンを聴き比べ。
同じリズムを刻みながらこんなに厚みがあって豊かな楽曲になるのね、と驚きでした。
シーケンスの効果として、指ではとても弾けない速さも演奏できることや、オーケストラの人数を23人から50人に増やすような効果があることを挙げていらっしゃいました。
♪1789
マリー・アントワネットの「全てを賭けて」でシーケンスをつかっているということからお話は「1789」へ。
初演の月組(2015年)の時、ナンバーがどれもキャッチーなのが印象的だったそうです。
お稽古は大変で、舞台稽古の時まで振付されていたそうです。
月組版から東宝版を経て今回の星組版へとナンバーの変更比較リストもいただきました。
・愛し合う自由(ロナン/新曲追加)
・許されぬ愛(マリー・アントワネット→オランプへ変更)
・革命の兄弟(東宝版から追加)
・武器をとれ(デムーラン/東宝版から追加)
・世界を我らに(歌唱カット→フィナーレ曲へ)
が主なところ。
個人的には東宝版で渡辺大輔さんデムーランが歌う「武器をとれ」が大好きでしたので、今回入って(しかも暁さんデムーランのカッコいい歌唱で)聴けるのがうれしかったです。
♪ソロ・デュエット・コーラス
太田先生のソロ、デュエット、コーラスのすーさんセレクトの名場面を舞台映像とともに。
ソロ:
・宙組「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」(2012年) 「蒼水色(アイスブルー)の瞳」 実咲凛音
「実咲さんの澄んだ声が太田先生の曲にぴったり」とすーさん
・月組「エドワード8世」(2012年) 「退位の歌」 霧矢大夢
これ出た時「ひゃっ!」と言ってしまいました。大好きな曲です。
この作品は大野拓史先生の脚本が遅れて、初日まで1週間というところでこの曲も歌詞ができていない状態で「退位の歌」という題名だけ言われて作曲されたのだそうです。
「霧矢さんは1週間であの曲を・・・」とすーさん。
「霧矢さんはお稽古場ではほとんど演出家でしたね」と太田先生。
デュエット:
・花組「巡礼の年」(2022年) 「愛の夢」 柚香光・星風まどか
リストとマリーがラストシーンで歌う、リストの「愛の夢」が曲の中に散りばめられているとても綺麗な曲。
生田先生は曲を混ぜこぜにするのがお好きで「『愛の夢』でありたいけど『愛の夢』ではないオリジナル曲」というリクエストだったそうです。
こうして改めて聴くと本当にすごい曲だなと感じました。
・星組「ディミトリ」(2022年) 「トビリシ奪還」 礼真琴・舞空瞳
あのディミトリがルスダンの後ろに立って(本当は二人は遠く離れたところにいる)♪愛している 愛している と歌うところを含めて大好きな場面と曲です。今聴いても胸がキュッとなって泣きそうになります(映像なかったのが幸い?)
最初にお書きなる手書きの作曲ノートも披露。
メトロノームを流しながら夜中に「礼真琴さんならこれくらいのスピードでしゃべるかな」と一人で台詞を言いながら曲をつくるそうです。
生徒やオーケストラに配る楽譜は今はすべてコンピュータで作成するので、この手書きのものは全部捨ててしまうから残っていないのだとか。
「昔はね~。先生によっては読めない楽譜とかありましたよね」とすーさん。
「Hの鉛筆使うからコピーに写らなかったりね」と太田先生。
コーラス
・星組「ディミトリ」(2022年) 「出撃」
ジョージア音楽は初めてで、YouTubeを見まくり、片っ端から聴いてその世界の人になったそうです。
振付に入られていたジョージアンダンスの野口さんともよく話されたそうですが、「ほとんど感覚」とおっしゃっていました。
この「出撃」の曲は一人の人が5つの太鼓を叩いて5回録音した上に生演奏を重ねる形(そうそう、あの太鼓で始まる音楽ゾクゾクしたよね~と思い出しました)。
録音を流すボタンは指揮の佐々田先生が押す役割だったとか。全員進撃の後に刻まれるリズムも。
ちなみに生田先生のところにはジョージア大使館から山ほど資料が届きましたが全部ジョージア語だったのだとか。
♪音楽監督とオリジナル
オリジナルの時は”生みの苦しみ”があるけれども、潤色の時は他の人が長い時間をかけてつくられたものを大切に、でも宝塚らしいオリジナリティは出すように心がけていらっしゃるそう。「その曲を好きにならないとダメ」とおっしゃっていたのも印象的でした。
「宝塚のメロディは決まった理論が存在しますか」
という質問には「しない」と即答。
宝塚は歌い方がクラシックとポップの間、ミュージカルよりも少しクラシック寄りだそうです。
ダダダーン!で終わる、とうのはありますと←ほんとはイヤなのですって(≧▽≦)。
演出家が拍手のために望むことが多いのだとか。
♪これからの曲づくり
お芝居の曲ばかりなのでショーをやりたい。
ショーでは、いつもプロローグと中詰の間の芝居チックなシーンの曲を任されることが多いので主題歌をやりたいそうです。
これまで主題歌をやったショーは「シルクロード」。
「生田先生は注文が多い」のですって。
次回作は、月組「DEATH TAKES A HOLIDAY」と宙組「Xcalibur」。
「DEATH TAKES A HOLIDAY」はオペラみたいな雰囲気で「1789」とは正反対。
「Xcalibur」は「いつものワイルドホーンが聴いていただける」そうです。とてもステーキ(油っこいという意味らしい)。
ワイルドホーンさんは演技より歌い方に対して注文が多く、娘役にも「もっと強く歌って」とおっしゃるそう。
「宝塚は男役も女性だから娘役が強く地声で歌うとあまり差ががなくなってしまうのでそのあたりが難しいところ」と太田先生はおっしゃっていて、ほんとにそうだなぁと思いました。
次回(9/8)のゲストは光月るうさんと発表されました。
会場にはご本人のるうさんと、千海華蘭さんもいらしていて拍手でお見送り👏
お料理は今回から一皿ずつサーブされるフルコース形式。
冒頭の画像は
~夏の海からの贈り物 豊かな海の薫りと山の恵み~ デギュスタシオン
・ろうもろこしのムース 蓴菜と枝豆とともに
・合鴨胸肉とイチジクの赤ワイン風味
・鱧のエスカベーシュとポワブロンのマリネ
・鯛とサーモンカネロニ仕立て 鱒の卵添え 芽野菜の菜園風
Suu’s Room オリジナルカクテルで乾杯
鰈(かれい)のパヴェ海藻クルート焼き ポルチーニのリゾットとグリーン・アスパラガス
サフランと貝の旨み ペシュール風ソースで
白・赤のワインもビアもいただいたわぁ←
牛背肉のロティ マルサラ酒のソース
グラタン・ドフィノワーズと旬の温野菜を添えて
ココナッツのブランマンジェとウィークエンド・シトロン
マンゴーのソルベと一緒に
終宴後には場所を変えて打ち上げの乾杯するまでが Suu's Room です。
音楽というサイドから語られる宝塚歌劇のお話とても興味深かったし、演出家の先生がたとはまた違った”作曲家”太田健先生の人となりに触れることができたのも好感。
タカホのお料理はどれも品よくおいしくて、同行したお友だちとの会話もはずみ、とても楽しい夜でした。
次回も絶対行きたーい! のごくらく度 (total 2401 vs 2399 )
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