
平成中村座姫路城公演 第二部は張り切って千穐楽のチケットを取っていたのですが、思わぬところからご招待のチケットが舞い降りてきて、ありがたいことに2回観ることができました。
姫路城世界遺産登録30周年記念
平成中村座姫路城公演 第二部
2023年5月25日(木)4:00pm 平成中村座 松席 1階10列センター/
5月27日(土) 4:00pm 松席 1階4列上手
一、棒しばり
作:岡村柿紅
出演:中村勘九郎 中村橋之助 中村扇雀
(上演時間: 40分)
曽根松兵衛(扇雀)は留守の間に酒好きの次郎冠者(勘九郎)と太郎冠者(橋之助)に酒を盗み飲まれないよう、次郎冠者の両手を棒に、太郎冠者を後ろ手に縛りつけて外出します。飲めぬとわかるとますます酒が飲みたい二人は、協力して酒を酌み交わし始めます。そうして二人がほろ酔い気分で踊り出したところへ、松兵衛が帰ってきて・・・という狂言を題材とした松羽目物の舞踊。
これまでいろんな役者さんの組み合わせで観ていますが、勘九郎さんは、勘三郎が亡くなった翌年(2013年)の「八月納涼歌舞伎」(こちら)で坂東三津五郎さんの次郎冠者で太郎冠者を踊られたのを観て(そして号泣した)以来で、次郎冠者は多分初めて観たのではないかしら。
勘九郎さんのほとばしる愛嬌とこれでもかの身体能力が詰め込まれた演目で、まぁ楽しいったらありゃしない。
客席のリアクションもよくて、至るところで笑いや拍手が起こっていました。
次郎冠者が棒に縛らた手に盃を持って最初に飲もうとした時に、全く口元に届かず「シェーッ」となる所作や表情が勘三郎さんのそれにそっくりで、2回観て2回とも泣きそうになってしまいましたが、それ以外は楽しく拝見。
あの扇を上下持ち変える(それも2本も)ところとか、棒に縛られたまま左手で投げて右手でキャッチするところとか、毎回感心しますが、歌舞伎役者さんって本当に凄い。
勘九郎さん、ちょっとドヤ顔で楽しそう。
次第に酔いがまわってくる勘九郎さんかわいいし、そんな勘九郎さんに負けじと奮闘する橋之助さんもすばらしかったし、松兵衛が帰って来て3人でわちゃわちゃするところの扇雀さんも楽しそうで、笑顔で気持ちよく幕となりました。
そういえば橋之助さん、次の「天守物語」含めて一部二部全演目にご出演。
何気に「中村橋之助奮闘公演」ですね。

一緒に観た友人と乾杯
バランタイン十七年のハイボール「天守物語」
ジャパニーズクラフトジン「播州皿屋敷」


いつも完売で買えなかった「4人でひとつの隈取りうちわ」
ラストチャンスとばかりに千穐楽は開演前から入口に並んで一番乗りで買いました←
二、天守物語
作:泉 鏡花 作
演出:坂東玉三郎
出演:中村七之助 中村虎之介 中村橋之助
中村鶴松 片岡亀蔵 中村勘九郎 中村扇雀 ほか
(上演時間: 1時間45分)
播磨国姫路にある白鷺城の天守閣最上階は、人間たちが近づくことのない、美しい異形の者たちが暮らす別世界。主は美しく気高い富姫(七之助)。そこへ富姫を姉と慕う亀姫(鶴松)が訪れ、久しぶりの再会を喜ぶ富姫は、亀姫に土産として白鷺城の城主である武田播磨守自慢の白い鷹を与えます。
その夜、天守閣に播磨守に仕える姫川図書之助(虎之介)が鷹を探しに現れました。富姫は、凛とした図書之助に、命を奪わず帰しますが、図書之助は天守を降りる途中で燈を消してしまい、火を求めて再び最上階へと戻ってきます。富姫は、自分に会った証として城主秘蔵の兜を渡しますが、天守を降りた図書之助は家宝の兜をすけ盗んだ疑いをかけられ追われる身となって・・・。
これまで朗読含めて玉三郎さんの富姫様以外観たことがありませんでしたが、「次に富姫様をやるとしたら七之助さんだよねー」とずっと思っていました。
人外のもの感と怜悧なまでの美しさを併せ持つのは、玉三郎さんと七之助さんが双璧だな、と。
今回玉三郎さんの演出で、お役ももちろん細かに教えていただいたことと思いますが、立ち姿や佇まい、所作、発声まで、驚くくらい玉三郎さんに似ていて、時折ゾクッとしました。
異界に生きる姫の妖しさ、気高さ、色気、美しさ。
自分の力も美しさも十分知り尽くしている傲慢とプライド。
もちろん似ているところばかりではなく、七之助さんらしさも随所に見られて、「千歳百歳にただ一度、たった一度の恋だのに」という言葉の
が響きの切なさよ。
守第五重の欄干から、白露を餌に釣り糸を垂れて秋草釣りをする侍女たちから始まる物語。
そこへ富姫が帰ってきて、亀姫がやってきて、うふふきゃははの楽しい展開からの後半の切なさ。
亀姫は鶴松くん。
見目麗しいのはもとより、妹キャラで年若い無邪気な可愛らしさがあって、小悪魔で異界の住人らしい残忍さも持ち合わせていて出色。
海老蔵(現 團十郎)さんのイメージが強い図書之助は虎之介くんには荷が重いのでは?と危惧していましたが、とてもよかったのはうれしい驚きでした。
初々しくも凛々しく清廉でいかにも真っ直ぐな好青年という佇まい。口跡よくて台詞もしっかり。
まぁ、富姫様が「帰しとうなくなった」というほどのビジュアルかというとそこはゴニョゴニョ。
勘九郎さんは舌長姥と近江之丞桃六の二役。
本音を言えば図書之助が観たかった気持ちもありますが、何をやらせても上手いし、何なら舌長姥は楽しそうでした。
目が見えなくなった富姫と図書之助に「泣くな、美しい人たち」と呼びかける近江之丞桃六の神々しくも温かい声が勘三郎に似ていてまたドッキリ。
1回目(5/25)は姫路城に上った後に観ましたので、まるで自分もこの世界に迷い込んだように感じられました。
図書之助が上ってくる花道スッポンの階段も、「ああ、あの木の階段・・」と目に浮かんだり。
ラストで舞台奥が開いて、夕暮れの空に真っ白な姫路城天守閣が浮かび上がる光景は、まさにこの場でないと味わえないもので、ここで、この演目を観られた幸せを感じずにはいられませんでした。


姫路城天守閣から下界へおりてきたところで「鰯賣戀曳網」終わりの勘九郎さん、七之助さんのお手振りに遭遇。
5月11日に桜席から観た時より外の人めちゃ増えていました。

今回 勘三郎さんの”眼”は5つしか見つけられず。
(ご本人様混じっていますが)
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とインスタにポストしたところ、「顔はめにも勘三郎さんの眼がある」と教えていただいて、自分で撮った写真チェックしたところ

ありました👀
ここ~?!

終演後に裏手にまわってみたらもうガンガン撤収が始まっていて少し寂しくなりました。
また遠くないうちに関西で平成中村座が観られますように のごくらく度


