2023年05月10日

鳳凰祭四月大歌舞伎 昼の部 「新・陰陽師」


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4月2回目の上京は歌舞伎マチソワ。
まずは歌舞伎座昼の部へ。なんと、今年初歌舞伎座でした。


歌舞伎座新開場十周年記念
鳳凰祭四月大歌舞伎 昼の部
「新・陰陽師」
滝夜叉姫
蘆屋道満宙乗り相勤め申し候

原作:夢枕 獏 「陰陽師 瀧夜叉姫」
監修:石川耕士
脚本・演出:市川猿之助
出演:中村隼人  市川染五郎  坂東巳之助  中村壱太郎
尾上右近  中村児太郎  中村福之助  中村鷹之資
市川青虎  市川寿猿  市川笑三郎  市川笑也
市川猿弥  市川中車  市川門之助  市川猿之助 ほか

2023年4月19日(水) 11:00am 歌舞伎座 3階1列センター
(上演時間: 3時間52分/幕間 35分・25分)



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時は平安j時代。
東国の民のために朝廷に反旗を翻した平将門(巳之助)は、興世王(右近)たちと関八州を掌握し、これに対して朝廷は将門の旧友である俵藤太(福之助)に将門討伐の勅命を出します。藤太は、帝の寵愛を受ける、かつての思い人桔梗の前(児太郎)を恩賞に所望します。そこへ、妖術遣いの陰陽師・蘆屋道満(猿之助)が現れ、将門を討つためにと藤太に1本の鏑矢を贈りますが、道満のその姿からはいかにも怪しい雰囲気が漂っていました。この鏑矢を手に東国へ赴き将門を討った藤太ですが、打ち落としたはずの将門の首はどこかへ消え、行方が分からなくなってしまいます。
一方、将門の祟りを案じる都で評判の若き陰陽師・安倍晴明(隼人)と友人で笛の名手である源博雅(染五郎)はある日、糸滝と名乗る娘に出会います。博雅がひと目で心奪われた美しき彼女の正体は、将門の妹・滝夜叉姫(壱太郎)。怪異の続く京の都、将門の蘇生を企む者たちに、大蛇丸(鷹之資)らの加勢を得た安倍晴明たちが立ち向かいます。


歌舞伎座が新開場して初めての新作歌舞伎として上演された「陰陽師」(2013年)から10年。
舞台一面に浮かぶ大きな月に烏帽子の影が浮かび上がり、安倍晴明、源博雅、従者の3人がゆっくり歩いて来るところに百鬼夜行が現れ、と幻想的に始まった初演とは配役総入れ替えで全員が初役、脚本・演出は猿之助さんということで、登場人物や筋立ては同じながら、初演とはまるで別物の観。


まず、安倍晴明、一幕には出てきません。
一幕終わった時、「え?!タイトルロールどうした?」と思いましたもの。
二幕でやっと登場して花道で「私が主役なのに出番が遅いのは猿之助兄さんの脚本のせい」みたいな文句言ってました(≧▽≦)
晴明と博雅の並びは絵のように美しく気品あって眼福でしたが、初演のようなバディ感は希薄だったかな。

ここをはじめ、「来月誕生日で93歳」というおめでたい寿猿さんネタなど、楽屋落ち的台詞が時折挟み込まれるのも猿之助さんならではの遊び心ある脚本。
「車引」や「河内山」など、いくつか他の歌舞伎の演目を思わせる場面や台詞が挿入されていたり、葵太夫さんの竹本だったり、全体としては新作歌舞伎というより古典寄りな印象。でもラストはご本人の宙乗りで全部持っていくという・・・。

鷹之資くん大蛇丸の手の先つま先まで神経の行き届いた、キビキビしているのにやわらかい踊りや、右近くん興世王と壱太郎くん滝夜叉姫の二人が七三で躍動感とエンターテインメント感たっぷりに見せてくれる花道の引っ込み、大立ち回りなど、舞踊や立ち廻りの見せ場もふんだんに用意されていて、花形世代が存分に活躍しているのも猿之助さんらしい演出だなと思いました。

俵藤太に討たれた将門を興世王が蘇らせ、道満たちと共謀してこの世を魔界に変えようと暗躍するところを晴明と博雅、大蛇丸たちが阻止しようとする貴船山中の展開が本作のハイライトという感じですが、あの戦いの中で大百足の人たち凄かったです。

ー特にあの18人(筋書で数えた)の役者さんたちの見事に統制されて蠢く大百足は見モノでした。あれ、三階から観た方がきっとおもしろかったのではないかしら。ー
 ↑
これ、10年前の初演の感想に書いていたことで、今回その通りに三階から観た訳ですが、大百足のフォーメーションとアクロバティックな動きが本当に凄くて、終わってすぐ「もう1回観たい!」と思ったくらい。
筋書買っていないので定かではないのですが、今回の大百足(見惚れて数えるの忘れた)には名題下さんたちばかりでなくスーパー歌舞伎同様アクションクラブ?の人たちも加わっていた模様(多分。トンボの切り方が違っているように見えましたので)。

”悪役のピカレスクロマン”といった趣きの物語なので、どうしても悪役たちの印象が強くなってしまうのですが、巳之助くんの将門、右近くんの興世王、壱太郎くんの滝夜叉姫、いずれも声よし姿より芝居よし立ち廻りよしですばらしかったです。
中でも右近くん興世王、本当に声も口跡もよくて台詞は明瞭、興世王として身バレしてからはグンと大きくも見えて、存在感抜群でした。

声がいいといえば桔梗の前の児太郎くん。
最初出てきた時、誰かわからなくて「あの声がよく通る女形さんは誰?」とオペラあげて「なーんだ。児太郎くんか。そりゃ声もいいはずだわ」と納得した次第。
スキップ的にはノーマークだった(ごめんなさいね(^^;) 福之助くん俵藤太もキリリとして大健闘だったと思います。

そして猿之助さんの蘆屋道満。
出番はそれほど多くないものの、さすがにこの座組の中では際立った存在感。
「『鎌倉殿の13人』の文覚そのもの」という感想をお見かけしてなるほど~と思いました。
いかにも胡散臭く怪しげなのだけれどどことなく愛嬌もある道満。さらには最後にあの宙乗りですから。そりゃ持っていきますよね。



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2023年初歌舞伎座おめでとうということで、おめでたい焼いただきました。



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歌舞伎座の新しい緞帳
全部写したいとはりきってパノラマ撮影したらこんな感じに(^^;)



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夜の部の二演目も観たかったけれどここはグッとガマン の地獄度 (total 2393 vs 2392 )


posted by スキップ at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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