2023年05月07日

ここが俺のゴールや 「ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~」


minatomachi2023.jpg


シェイクスピアの「オセロ」を関西やくざの世界に翻案した作品の再演。
橋本じゅんさん・石原さとみさんで上演された初演(こちら)が2011年。
12年も前って・・・(遠い目)


2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演
Shinkansen faces Shakespeare
「ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~」
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:青木 豪
演出:いのうえひでのり
美術:池田ともゆき  照明:原田 保  映像:上田大樹   
衣裳:西原梨恵   音楽:岡崎 司   振付:川崎悦子
殺陣指導:田尻茂一  川原正嗣   アクション監督:川原正嗣
出演:三宅 健  松井玲奈  粟根まこと  寺西拓人  
右近健一  河野まさと  逆木圭一郎  村木よし子  
インディ高橋  山本カナコ  礒野慎吾  中谷さとみ  
保坂エマ  村木 仁  川原正嗣  武田浩二  高田聖子 ほか

2023年4月20日(木) 1:00pm COOL JAPAN PARK OSAKA・WWホール 
I(アイ)列センター/5月1日(月) 1:00pm P列センター
(上演時間:3時間40分/休憩 20分)



物語の舞台は1950年代の関西。
港町・神部(かんべ)で勢力を拡大した沙鷗組は組長が何者かに射殺され、未亡人沙鷗アイ子(高田聖子)がブラジルの血をひく若頭筆頭の亜牟蘭オセロ(三宅健)を二代目組長にと考える中、オセロは銃撃戦の怪我で入院していた病院の娘・モナ(松井玲奈)と恋に落ち、結婚して組を抜けて堅気になりたいと願い出ます。
他の組員から組長襲撃の際にオセロがモナをかばったことを聞かされたアイ子はオセロへの不信感と憎悪を募らせ、裏切り者オセロを地獄に突き落とすと心に決めます。
折しも沙鷗組と対立する四国の観音組襲来の情報が入り、オセロは最後の仕事として瀬戸内の漁師・紋田(河野まさと)の力も借りて観音組を海上で見事に迎え撃った夜、瀬戸内海の小島・小豆島(あずきじま)のホテルで・・・。



minatomachi3.jpg


舞台には昔の映画館のような趣きの幕。上手下手には「港町ロマン座」と書かれています。
幕が開くとかつての東映映画の岩に波がザッブ~ンという映像が流れ、東映の富士山のロゴを模した「新感線」のロゴが現れて、映画が上映されるような趣向で始まりました。

率直に言って3時間40分はやはり長いし(^^;) もっとカットできる場面や台詞や歌もあるのでは?と思いますし、初演で「あの場面いりませんから」と思った村木仁さんのSMシーンがそのまま再現されていたのには「!?👀?!」ともなりましたが、全体としてはおもしろく拝見して、最後は漏れなく泣くという・・・。


今回の改変の一番の目玉は、原作のイアゴーにあたる役まわりを女性に変更して、高田聖子さん演じる先代組長の未亡人アイ子に持っていったことですが、これが大当たりなんてものではないレベルで、本当に震えるくらいすばらしかったです。
「オセロー」という作品は元々イアゴーを演る役者の出来如何によるところが大きいと感じていますが、高田聖子さん演じるアイ子が鮮烈すぎて、これ以上の”イアゴー”はもう出て来ないのではないかとさえ思いますし、この改変を考えたいのうえひでのりさんの慧眼、まさに天才だなと改めて思いました(言い出しっぺはプロデューサーの柴原智子さんということですが)。

衿を抜いた着物の似合いっぷりとか所作とか、「こるるるらぁ~」と絶妙の巻き舌とか、ダイアローグとモノローグの切り替えとか、といったテクニカルな面はもちろん、目で声で表情で全身で、アイ子そのものを描出していて圧倒的。
最初に観た時、アイ子の沸点到達が速すぎる・・・つまり、オセロへの憎しみの発動があまりにも急激と感じたのですが、きっとそれは、アイ子の中にずっと燻っていた昏いものがあって、オセロの”裏切り”は単にそれに火をつけるためのきっかけに過ぎなかったのかと、その後のアイコを観て思いました。

闇堕ちしたアイ子のとてつもない恐ろしさと
同じくらいにいたたまれないほどの哀しさ。

それを最も表しているのがアイ子が歌う「テネシー・ワルツ」。
言葉に込められたアイ子の情念が立ち昇ってくるような歌詞と、それを見事に歌い上げる聖子さんの歌唱で、聴いていて胸に迫って自然と涙が・・・。
あの歌詞は青木豪さんがつくったものなのかな。どこかにあるなら全文もう一度読みたいし、何なら音源出してくださったら買いますけど?


もう一つ設定として成功していると思ったのは、オセロの年齢が原作よりかなり若い設定になっていて、奸計を弄する立場のイアゴーがオセロより上の立場(恩ある組長の未亡人)というところです。
オセロが信じ込んでしまうのに納得性があり、大詰めのすべてが露見する場面でも、周囲の人たちが「姐さんがっ!?」と驚愕していたのも、あの立場あってこそだなぁと思いました。
結構なおじさんであるオセローが若い部下の口車にまんまとハマって破滅する原作とは一線を画して、もちろんキャスティングの妙もありますが、オセロとモナの若さとピュアさが際立っている印象でした。

「テネシー・ワルツ」以外の楽曲も皆よくて、山本カナコさんのソウルフルな歌声をたくさん聴くことができて耳福でしたし、ラスト近くの「柳の歌」もオペラとは違った味わいで切なく、空に輝く美しい月とともに心に響きました。


1回目観た時、結末知っているのにオセロの最期で自分でも驚くくらい泣いてしまいました。
「ここがゴールや。俺が最後にたどり着くんは、やっぱりお前のそばや」ってオセロ
三宅健くんオセロ カッコイイとカワイイのバランスよくて魅力的なオセロでした。
松井玲奈さんのイキイキとしたモネとともに若さが全面に出ていて、バカップルぶりも微笑ましい。
聖子さんや中谷さとみさんがオセロの口まねする時、あの声まで真似してたのおかしかったな。

原作のエミリアやビアンカにあたるチエとエミを山本カナコさんと中谷さとみさんが演じていて、これもとてもよかったです。
アイ子さんのお店で働き言いつけは守りながら、モネちゃんに心を寄せて何かと親身になってくれています。
チエさんは沙鷗組員の川原正嗣さん(小さい声サイコー(≧▽≦))と元夫婦で、夫に浮気を疑われて離婚した経緯があり、エミさんの夫は今も服役中というドラマがそれぞれにあって、それが芝居や台詞の随所に活かされていました。

アイ子さんに刺されて瀕死の中谷さとみさん演じるエミさんが、息絶えたモナちゃんに寄り添って、「奥さん まだ天国の入口でさまようてはりますか。ほなそこで待っててください。一緒にいきましょう。うちで悪いけど」というところで毎回堪えきれず泣いてしまいました。

今回いのうえさんが青木さんに出されたリクエストの一つに「劇団の俳優 特に女優陣の芝居を活かしてもらえると嬉しい」というのがあったそうですが、それをしっかり受けて、さらには、村木よし子さんや保坂エマさん含めて、その期待に応えて芝居で結果を残す新感線の女優陣の力量すばらしい。

青木さんといえば、物語の冒頭病院のシーンで「青木いう患者が騒いでます。コンプライアンスや差別やばかり言われて何も書かれへん!て・・・」みたいなことを看護師さんに言わせていましたが、自虐ネタですよね?(笑)


4月20日に観た時は罰ゲームありました。
新感線の罰ゲームに遭遇するの何年ぶりでしょう・・・というか、罰ゲーム復活したのね㊗

何度めかのカーテンコール後、V6の♪TAKE ME HIGHER のイントロが聞こえて客席から歓声があがりました。
幕があがると、マイク持って歌い踊る(多分口パク)中谷さとみちゃんと藤田修平くん。
カテコでいつもやってるのかなと思っていたら、「罰ゲーム進行中」の字幕が。

さとみちゃんは 「3/12 あり得ない出トチリの罪 」
修平くんは 「3/13 あり得ない大遅刻の罪 」 だそうです。

大盛り上がりで楽しくて、ラッキーでした。


minatomachi2.jpg

5月1日は大千穐楽で恒例のお煎餅まき。
三宅健くんのご挨拶の後、お煎餅まきの説明は聖子さんと粟根さんがご担当。
「(エアだから)誰からでも何枚でも受け取れます」と聖子さん😆

寺西拓人くんのヴォーカルに乗ってお煎餅撒き。
高田聖子さんが手裏剣みたいにシュッシュッシュッと投げてくれたお煎餅をキャッチしました(エアだけど)。


ラスト三宅健くんがカッコいい投げキッスキメてくれた後、もう一度幕が上がると村木仁さんが真ん中に立って投げキッス・・・これで上書きされるのいやだ〜😂と思っていたら、最後にもう一度幕があがって、健くん「はよお帰り」と言った後、幕が下りる直前に投げキッス連射してくれました。Jの人の投げキッスはほんとにカッコいいな💕

「記念すべき新感線の43周年興行に43歳の僕が・・・」という健くんのご挨拶に43歳⁉️👀と知っていても改めてビックリ
これを書いている今はもうJの人ではありませんが、彼がこれから歩む道も幸多からんことを心からお祈りしています。




公演は楽しかったけれどWWホール ロビーの動線が好ましくないので次の新感線もこの会場なのちょっぴりブルー のごくらく地獄度 (total 2393 vs 2391 )


posted by スキップ at 16:17| Comment(1) | TrackBack(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コトタマ
Posted by 言霊 at 2023年05月08日 22:36
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック