2023年05月04日

三白眼の菅原道真 月組 「応天の門」


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              ©宝塚歌劇団

4月30日に無事大千穐楽を迎えた月組公演。
お芝居は月刊コミックバンチに今も連載中の灰原薬さんの「応天の門」。
学問の神様と称される菅原道真と、平安の色男・在原業平が手を携え、都で起こる怪事件を次々と解決していく様を描く歴史サスペンスです。


宝塚歌劇 月組公演
平安朝クライム 「応天の門」-若き日の菅原道真の事-
原作:灰原 薬「応天の門」
脚本・演出:田渕大輔  
作曲・編曲:青木朝子  植田浩徳   編曲:多田里紗
音楽指揮:上垣 聡
振付:御織ゆみ乃  山村友五郎  桜木涼介
擬闘:栗原直樹   装置:大橋泰弘   衣装:薄井香菜
出演:月城かなと  海乃美月  鳳月 杏  光月るう  白雪さち花  千海華蘭
春海ゆう  夢奈瑠音  蓮 つかさ  佳城 葵  朝霧 真  英 かおと  彩 みちる
風間柚乃  天紫珠李  彩音星凪  礼華はる  結愛かれん  彩海せら  
蘭世惠翔  一乃 凜  大楠てら  瑠皇りあ  花妃舞音/梨花ますみ ほか

2023年2月4日(土) 1:00pm 宝塚大劇場 1階29列上手/
3月2日(木) 3:30pm 1階14列センター/
3月5日(日) 3:30pm 1階14列下手/
4月30日(日) 1:30pm TOHOシネマズなんば スクリーン8(ライブ中継)
(上演時間: 1時間30分)

 

13歳の清和帝(千海華蘭)の時代の平安初期。
藤原良房(光月るう)とその養嗣子・基経(風間柚乃)が朝廷の権力を掌握しつつある中、京の都では、月の子(ね)の日に「百鬼夜行」が通りを闊歩し、その姿を見た者を取り殺すという怪事件が頻発していました。幼き頃から秀才との誉れ高き文章生・菅原道真(月城かなと)は、ひょんなことから知り合った検非違使の長・在原業平(鳳月杏)にその才気を見込まれ、この怪事件の捜査に協力することになります。唐渡りの品を扱う店主・昭姫(海乃美月)たちの協力を得て道真は次第に事件の真相に近づいていきますが、その背景には、鬼や物の怪の仕業を装い暗躍する権力者たちの欲望が渦巻いていました・・・。


原作のコミックのことは全く存じあげなかったのですが、この公演に合わせた無料キャンペーンで3巻まで読むことができて、大体の登場人物や人間関係は把握した上で観ました。


百鬼夜行の真相を究明するという主筋に、菅原道真の亡き兄・吉祥丸への思い、その兄と藤原基経との関わり、在原業平と高子の叶わぬ恋、藤原良房・良相兄弟の権力争いと確執、良相の娘・多美子の入内に渦巻く陰謀・・・とあれこれ盛り込み過ぎじゃない?というのが初見の印象。
原作ありの作品にありがちで、原作に出てくる数々のエピソードはどうしても入れたくなるのでしょう。

ミステリーという面では藤原基経が最初からくっきりとした”悪役”として立っているので、百鬼夜行の正体はそんなものかというのは大体想像がつきますが、原作が連載中ということもあってか犯人を徹底的に糾弾する勧善懲悪とはいかず、「戦いはまだこれからも・・・つづく」的な終わり方なのもすっきりしない印象ではあります。

それでもエピソードを寄せ集めたダイジェストみたいにはなっていなくて、さすがの月組の芝居力でおもしろく見せてくれました。


月城かなとさんの菅原道真。
月城さんが最初に原作読んだ時の印象を「三白眼」とおっしゃっていましたが、メイクなのか目への光の入れ方なのか、本当に三白眼に見えるのすごいと思いました。
原作よりはかなり年上に感じられましたが、頭がよくて誰に対しても不愛想でほとんど笑顔を見せず、意に副わないことは「嫌です」とキッパリ言い放ち、世間知らずで人の心の機微に疎い”食えない坊ちゃん” だけど正義感は持っている道真像を描出。
あのちょこんと角が生えたようなかぶり物や衣装もとてもよく映えていました。

海乃美月さん演じる昭姫(しょうき)は、元唐の後宮の女官で訳あって京の都にたどり着いて唐渡り品の商いや遊戯場を取り仕切る女店主。
彼女自身が聡明なので道真の聡明さもひと目で見抜いて、口では「食えない坊ちゃん」と言いながらも協力するという役どころ。
勝気で相手が役人であろうと思ったことはズバズバ言う女性で、物語中の誰とも恋愛感情がないという宝塚のヒロイン、とりわけトップ娘役が演じるヒロインとしては珍しい女性ですが、私は海乃さんにはなよなよした(言い方!)女性像よりこんな役の方がお似合いだと思っています。

在原業平の鳳月杏さんがこれまた絶妙のハマリ役。
原作コミックを読んだ時から業平Love💗だった不肖スキップ。そのイメージそのままの鳳月さん業平に惚れないでいられようか←
検非違使の長として有能なのは元より、宮中の権力争いとは一線を画したところにいる遊び人で、ひらひらと女たちの間を渡りゆく蝶のようでいて、高子への思いを断ち切れないでいる・・・惚れてまうやろー(2回目)。
「魂鎮めの祭」で遠くの高子と視線を交わす業平の表情、絶品でした。

お相手の高子は天紫珠李さん。
あまり為所のない役になっていて、高子の境遇同様お気の毒でしたが、紅いお召し物がよく映えて美しかったです。

この業平・高子の若き日の道行きを演じるのが英かおとさんと蘭世惠翔という美しい二人。
特に英かおとさん業平の色っぽさはどうしたことでしょう。
「あの太鼓の音は?」「これは私の心臓の音です」という高子と業平の原作そのままの台詞が再現されていてとなりました。

藤原基経の風間柚乃さん。
”油断ならない青二才”と宮中の貴族たちが歌う、まさしく憎まれ役。
頭が切れて優秀なのを見込まれて伯父の藤原良房の養子となり、冷徹で、同じく養女となった高子を権力の道具として入内させるため、藤原多美子を亡き者にしようと画策している、さらには道真の亡き兄・吉祥丸とも過去に関わりがあって心に翳りを持つ・・・といろいろ背負った役ですが、風間さん、さすがの力量でねじ伏せていました。銀橋ソロもすばらしかったです。
した。

「この春18年目を迎えましたが、13歳の役で終わります」とおっしゃっていた千海華蘭さんの清和帝。
いやよくキャスティングしましたよね。
本当にかわいらしく、でも品があって「何とかしてたも」なんて言葉、こんなに似合う人他にいる?
キャリアを考えたら退団もやむなしとは思いますが、からんちゃんのいろんなお役、まだまだ観ていたかったな。

礼華はるさん演じる藤原常行がとてもよい役。
多美子のことをひたすら心配している妹思いの兄。妹のためなら毒酒だって自分があおっちゃう。
長身小顔に平安時代の装束がよく映えて、お髭もとてもよくお似合いでした。
業平と対等もしくは身分的に少し上?な役で、鳳月さん業平に対等な口をきくぱるくんが新鮮でした。
正直、台詞や発声はまだこれからなところもありますが、これからも大いに期待しています。

同じく若手注目株の彩海せらさんは紀長谷雄。
彩みちるさん演じる白梅とニコイチで動きまわっていて、原作のイメージを体現する役どころかな。

いつもキリリとよい声で明瞭な台詞の國道・蓮つかささん、物語冒頭の百鬼夜行に連れ去られる酔っ払いと道真の父・菅原是善をくっきり演じ分けた佳城葵さんの芸達者ぶりも印象に残りました。

若手では瑠皇りあさんの吉祥丸も印象的でした。
聞くところによると新人公演で演じた藤原基経もすばらしかったとのこと。
これまで本公演ではそれほど役に恵まれていない印象ですが、もっと出てきてほしい男役さんです。

今回、結愛かれんさん、蘭世惠翔さんというキレイどころの華やかな娘役さんが退団されて寂しくなる一方、「すごい?阿呼すごい?」がめっかわの阿呼こと幼き日の道真の一乃凜さん、相変わらずアニメ声が気になるものの、とんでもなく可愛くてお芝居も上手い多美子の花妃舞音さんナド、有望娘役続々で、月組ほんと人材豊富ですね。



ショー「Deep Sea」につづく →


posted by スキップ at 22:18| Comment(2) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
配信で千秋楽を拝見しました。
確かに、詰め込み感はありましたが、若手まで役が付き、「芝居の月組」は健在だな、と集中してみることができました。
月城さんは、実力もありますが、特に月組に来てから演目に恵まれてるような気がします。

退団者が多いのが残念ですが(るうさんが退団とは・・・)、次々と「この巧い人は誰?」と出てくる月組。これからも楽しみです。
Posted by はぎお at 2023年05月13日 15:46
♪はぎおさま

私も千秋楽は映画館で観ました。
楽しかったですね。

このお役は月城さんにぴったりという訳ではないと思いますが
それでもここまで持ってくるのはさすがだなぁと感じました。
逆に鳳月杏さんの役はハマリ過ぎですよね(^^;)

るうさんやからんさんといった月組を代表する方たちが退団
してしまいましたが、活き活きと躍動する月組生を今後も
楽しみに観ていきたいと思います。
Posted by スキップ at 2023年05月13日 22:48
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