2023年03月18日
孤高の王の物語 「キングアーサー」
「1789-バスティーユの恋人たち-」「太陽王」「ロックオペラ モーツァルト」など数々のヒット作を生み出しているドーヴ・アチア氏が音楽・脚本・歌詞を手掛けるフレンチミュージカル。
この3作全部宝塚歌劇で観ています。そしてこの作品の日本初演「アーサー王伝説」(2016年)も珠城りょうさん主演の宝塚歌劇月組で観ました。
もう7年も前なのに、楽曲聴くと舞台がぶわっと蘇りました。音楽のチカラってほんと、すばら
しい。
ミュージカル 「キングアーサー」
音楽・脚本・歌詞:ドーヴ・アチア
日本版台本・演出:オ・ルピナ
翻訳・訳詞:高橋亜子
音楽監督:竹内聡 振付:KAORIalive
美術:二村周作 照明:高見和義
映像:上田大樹 衣裳:前田文子
出演:浦井健治 加藤和樹 太田基裕 小南満佑子 小林亮太
東山光明 石川禅 安蘭けい 長澤風海 工藤広夢 ほか
2023年2月25日(土) 5:30pm 兵庫県立芸術文化センター
KOBELCO大ホール 1階C列上手
(上演時間:3時間/休憩 20分)
「岩に突き刺さった聖剣エクスカリバーを引き抜いた者が王となる」というアーサー王伝説をもとに脚色されたミュージカル。
自らが王の血筋であることを知らずに育ったアーサー(浦井健治)は、エクスカリバーを引き抜く権利を得るための騎士決闘場に義兄ケイ(東山光明)の従者としてついてきますが、魔術師 マーリンマーリン(石川禅)によって導かれてエクスカリバーを抜き、王の位に就くことになります。
我こそが次なる王と野望を抱いていたメレアガン(加藤和樹)はアーサーに王の座を奪われ、さらには婚約者であるグィネヴィア(小南満佑子)の心までも奪われてアーサーへの憎しみを募らせ、必ず王座を取り戻すことを誓います。さらには、アーサーの異父姉モルガン(安蘭けい)は母を汚したアーサーの父ユーサー王への憎しみをアーサーに転嫁し、復讐のためにアーサーを罠にかけ、アーサーの子どもを身ごもります。結婚したアーサーとグィネヴィアの前にランスロット(太田基裕)が現れ、円卓の騎士に加わります。次第に心を寄せ合うグィネヴィアとランスロット・・・。
キャストボード
エクスカリバーと一緒に撮るのがお約束というものでしょう。
今回、メレアガン(伊礼彼方/加藤和樹)
グィネヴィア(小南満佑子/宮澤佐江)
ランスロット(太田基裕/平間壮一)
がWキャストでした。
悪役フェチの不肖スキップ。宝塚版を観た時に輝月ゆうまさんが演じたメレアガン(宝塚版の役名はメリアグランス)が大好きでしたので「あの役は加藤和樹さんで観たい!」と思い、2公演のみの加藤和樹さんメレアガンで行ける日一択。他のキャスト考慮する余地はありませんでした(^^;)
「ロミオとジュリエット」日本初演の宝塚版(2010年)と東宝版初演(2011年)を観た後、フランスオリジナルバージョン来日公演(2012年)を観た時にも同じことを感じたのですが、悩みや葛藤といった人物の心情の変化には重きが置かれず、物語がスピーディに進んで、それがすばらしい楽曲とアンサンブルダンサーはじめアクロバティックなダンスで彩られる、とてもショーアップされたスペクタクルな舞台という印象でした。これがフレンチミュージカルの、というよりドーヴ・アチア作品の特徴かな。
タイトルロールのアーサーは、どちらかと言えば辛抱役でメレアガンやモルガンほどインパクトが強くありませんので、彼の葛藤や成長が芝居でも歌でもあまり描かれていない(役者さんの演技ではなく脚本的に)と感じられるのはなかなかキビしいところ。
そのメレアガンやモルガンにしても、なぜそれほどまでに「アーサーだけ」を憎み恨むのか、根本の心情は描かれていないのがこの物語の弱いところでもあるかなぁ(もともとがアーサー王”伝説”でもあり)。
自分の手に入るはずだった王の座と婚約者をアーサーに奪われたと思い込んでいるメレアガンはまだしも、アーサーの父親違いの姉であるモルガンが母親をユーサー王に汚されたことを恨みに思って、亡きユーサー王への憎しみをアーサーに転嫁するのは逆恨みも甚だしい。
それにしても、魔術でグィネヴィアに化身してアーサーを惑わし、彼の子を宿してやがてその息子(男の子と信じているのか)にアーサーを殺させるという復讐計画の何と遠大なことでしょう。
結末も宝塚版とは違っていて、これは今回日本版台本と演出をされたオ・ルピナさん独自のものなのか、宝塚版が宝塚らしく潤色されたものだったのか、オリジナルを観て確かめてみたと思いました。
個人的には、ランスロットがメレアガンとの戦いで死なず、火刑のために繋がれたグィネヴィアとランスロットの鎖を自ら断ち切って2人を許すアーサーが、己の罪深さに気がふれてしまったグィネヴィアをそっと抱き寄せる、という宝塚版のラストが好きでした。
そういえば、「恐れられる王でなく 愛される王に」とアーサーが歌う曲もなかったよね?と調べてみたら、あの曲は宝塚版のためにアチアさんが特別に書き下ろしたものだったのだとか。
浦井健司さんのアーサー王。
ケイについて行った純朴な少年時代が「いつかどこかで観た浦井くん」(「アルジャーノン」しかり「COLOR」しかり)なのはいかがなものかと思いましたが、本人も予期せぬままに王となり、名実ともに国と民をその身に背負う王となるまで、内面の葛藤や成長、孤独感を募らせていく姿を描出していてよかったです。
初めて手にしたエクスカリバーに操られていたような時から、剣の使い方、殺陣にも重厚さが増していく変化もすばらしい。
歌は相変わらずいい声で、本当にうまくなったなぁと思います。
甲冑や豪華な衣装も着こなしていて、姿勢の悪さはまだちょっぴり気になるところではありますが、立ち姿も立派な孤高のキングアーサーでした。
加藤和樹さんのメレアガン。
まず、あんな高音が出せることにオドロキ。
憎しみを滾らせるメレアガンは敵役だけどおいしい役で、それを加藤さんが目一杯力を込めて、そして楽しんで演じている印象でした。
髪型もメイクもとても凝っていました。
太田基裕さんのランスロット。
うん、王子様ですね(^^ゞ
美しくてカッコよくてやさしい・・・そりゃグィネヴィアも惹かれますわよね。
あまりに清廉潔白で爽やかで、ワタクシとしてはもう少しあやうさというか色気も欲しいところではあります。
小南満佑子さんのグィネヴィア。
グィネヴィアはやっぱり難しい役だと実感しました。
特に今回のグィネヴィアは最初からアーサーに恋愛感情は抱いていなくて(もちろん感謝とか尊敬はある)、ランスロット一途という印象で、そこはそれでどうなの?とつい思ってしまうのでした。
安蘭けいさんのモルガン、石川禅さんのマーリンはさすがという他ありません。
お二人ともいい声で迫力ある歌唱で物語を牽引していました。
安蘭けいさんモルガンの「地獄を見せてあげる」聴いていると、本当にぞわぞわしてきます。
飄々とした雰囲気の東山光明さんのケイ、モルガンの影のようでも分身のようでもある侍女のレイア 碓井菜央さん、円卓の騎士で冷静な目でアーサーに従うガウェイン 小林亮太さん・・・役者さんは皆よかったです。
そういえばケイは宝塚版では「一つの国に王は2人いらない」とおばかのふりしてたことが最後に明らかになっていましたが、今回そのくだりはなかったです。
あと、狼(長澤風海)と鹿(工藤広夢)ね。
まるで重力を感じないあのダンス、出てくるたび惹きつけられて目が離せませんでした。
狼と鹿ばかりでなく、全体に振付がとてもカッコいいなぁと見惚れていたのですが、KAORIalive先生だったのね!
開演前のステージ
こんなふうに撮影OKの舞台、宝塚以外でも増えてきました。
この二つは幕間と終演後
同じものですが照明でずいぶん印象が変わります。
終演後もグッズ売場は長蛇の列👀(いや、私は何も買いませんけど) の地獄度 (total 2380 vs 2382 )
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どこかで見た浦井健治、についつい笑ってしまいました(笑)。それもまた彼の魅力、と思っちゃうのはファンの役目ですね(^_^;)
宝塚版のラスト、そんな風だったのですね。びっくりしました!
このキャストで、そちらのバージョンも観てみたいなあ、と思いました。
わぁ!お久しぶりです。
コメントありがとうございます😊
浦井くんは”やればできる子”と思っていますので
私の中でつい期待値が上がってしまうのですよね〜😅
でも本当に素敵なアーサー王だったと思います。
そうそう、このキャストで宝塚版のラスト、確かに
観てみたいです。
そして宝塚でもいつか再演されないかなぁとヒソカに
願っています。