2023年01月22日
夢の先へと踏み出す勇気 宙組 「夢現の先に」
宙組101期 鷹翔千空さん バウホール初主演
そして、作・演出の生駒怜子先生もこれが演出家デビューとWおめでたい作品
1月5日の初日が開いた翌日から休演となってしまってどうなることかと思いましたが、1月13日から公演再開。
さらには、1月17日から21日まで追加公演が上演されるという、劇団所有劇場の強みを発揮。
私も最初に取っていたチケットは飛んで行ってしまいましたが、振替していただいて無事観ることができました。
宝塚歌劇 宙組公演
バウ・ドリーミング 「夢現(ゆめうつつ)の先に」
作・演出:生駒怜子
作曲・編曲:手島恭子
振付:若央りさ AYAKO
装置:川崎真奈 衣装:薄井香菜
出演:鷹翔千空 秋奈るい 花菱りず 澄風なぎ 亜音有星
朝木陽彩 山吹ひばり 泉堂 成 大路りせ 奈央麗斗 ほか
2023年1月19日(木) 11:30am 宝塚バウホール 11列下手/3:00pm 3列上手
(上演時間: 2時間30分/幕間 25分)
物語:”僕”(鷹翔千空)は毎晩悪夢にうなされるのが日常となっていますが、ある夜、夢の中に”彼”(亜音有星)が現れ、「明るい夢の世界へ行こう」と”僕”を連れ出します。そこには夢の世界の住人やもふもふの白い羊たち、そして“僕”が密かに想いを寄せる“彼女”(山吹ひばり)とそっくりな女性の姿も。1ヵ月前の雨の日に傘をさしかけてくれた彼女にひと目ぼれしたものの、傘を返すことも自分の思いを打ち明けることもできないでいた”僕”は、”彼”や羊たち、夢の世界の住人たちに励まされ、傘を返す練習をして、現実世界で“彼女”の勤める花屋へ傘を返しに行きます・・・。
”僕”の夢と現実が交錯して繰り広げられる世界。
作品のアウトラインが発表された時も、このポスタービジュアルが公開された時も「??」な感じでしたが、その先入観はよい意味で裏切られました。
ストーリーを全く知らずに観ましたので、一幕は、”空想と現実をまじえたファンタジーなラブストーリー”という印象だったのですが、”彼”がどういう人物なのか、”彼”と羊たちとの関係は・・・などがわかってくる二幕の展開に涙。
”僕”ことアベルが毎晩悪夢を見るのは、10年前に亡くなったお父さんの突然の死に間に合わなかったことによるトラウマ(とはいえ、知らせを受けて学校から直行したのだからアベルには何の落ち度もないように思われるけれども)だとすると、10年間悪夢を見続けてきたアベルの夢の中に、今になって”彼”が夢に現れたのはなぜか。
”彼”ことバルウィンはやはり10年前に何らかの原因で植物状態(もしくは昏睡状態)となり、アベルの父が入院していた同じ病院に今も入院しています。
もしかしたらこの2人は同じ事故に巻き込まれたのかもしれないと思いますが、それについて語られることはありません。
そこで先述した疑問の答えですが、私はバルウィンが「目覚める=現実の世界へ戻る」べき時が来て、でもその勇気がなく、アベルの力を必要としたから、ではないかと考えます。
痛みも苦しみもなく温かい夢の世界を離れて現実の世界へ戻る手助けをしてほしかったのではないかな。
「元の世界に戻ったら全部忘れているかもしれないし、歩けないかもしれないし、こんなふうにしゃべれないかもしれない」とバルウィンが悲痛に叫ぶシーンがありましたが、その恐怖を一緒に乗り越えてくれる友だちが必要だったのではないでしょうか。
エマとの恋がうまくいって、あまり悪夢に悩まされなくなり、あのチューブがいっぱいついた宇宙服のような服がどんどん軽くなっていくアベルと反比例するように、時折暗い表情を浮かべるバルウィンの服にチューブが増えていくのが痛々しく切ない。
白い羊たちの存在も愛おしかったです。
最初は3匹だった羊が段々増えていくのは、バルウィンのお母さんが「あの子は羊が好きだから」と1匹、また1匹とバルウィンの枕のまわりに羊のぬいぐるみを増やしていくからだとわかった時にも泣いてしまいました。
メロ(泉堂成)だけが、バルウィンが元気なころに買ってもらったぬいぐるみで、もしかしたらバルウィンが事故にあった時にも一緒にいたのかもしれません。
だから、「ご主人が楽しいのが一番」と、バルウィンが本当に求めているものをわかっていたのだと思います。
後で出てくる現実世界のバルウィンのお父さんとお母さんがメロ以外の残りの2匹-メラ(澄風なぎ)とメル(花菱りず)との二役で、はじめから傍にいるメロと、両親の面影があるメラ、メルを友だちにしたバルウィンの気持ちが重なるようなキャスティングが印象的でした。
というように、二幕になって物語の舵がグッと切られるので、アベルと“彼女”ことエマの恋の印象が希薄になってしまったのは課題かな。
感触としては、一幕ヒロイン エマ、二幕ヒロイン バルウィン という感じでした。
本来のテーマは、アベルとエマのラブストーリーではなく、辛くても苦しくても、楽しいだけの夢の世界から現実へと踏み出す勇気、でしょうか。
アベルの鷹翔千空さん。
生真面目でちょっとヘタレで奥手な好青年がハマッていました。
受け身であまりしどころがある役ではありませんが、アベルの純粋さやさしさが伝わる演技。
オフのこってぃはちょっとふにゃふにゃした話し方(←)だと感じているのですが、舞台では声よく口跡よく、もちろん歌もよく。
フィナーレのダンスはもっとバーン!と来てもよさそうですが、初主演でもあり、そのあたりはこれからのお楽しみかな。
エマは山吹ひばりさん。
凛とした美人だしお芝居も歌も上手いけど、あのアニメ声というか発声の仕方が苦手・・・と思っていましたが、今回それほど気になりませんでした。発声改善中かな。
エマは聡明で仕事もできるオンナという感じで何かと気弱なアベルをリードしていましたが、強引という感じはなくて好感。素敵な女性でした。
バルウィンの亜音有星さん。
最初に登場した時の明るい笑顔が「いつもの亜音くんじゃん」と思いましたが、場面が進むにつれて翳りも複雑な表情も描き出していました。亜音くんも声よし歌よし。
と言いつつやっぱり華やかなさと笑顔が持ち味かな。フィナーレで鷹翔くんに加わって下手から出てきた時の満面の笑顔、キラキラでした。
エマが勤める花屋の店長 トーマスの秋奈るいさん、店員モニカの朝木陽彩さん、フランクの大路りせの3人がとてもよい。
明るくて、みんな働き者でいい人。
トーマス店長はやさしくて店員思いでホワイト企業だし、フランクはエマが好きなのに、エマとアベルがうまくいくと潔くサッとあきらめるし、そんなフランクをモニカは茶化しながら温かく見守っているし。
朝木陽彩さんはこれが退団公演。
モニカのお芝居もよかったけれど歌がとてもお得意の彼女。フィナーレ デュエットダンスのカゲソロでも美声を響かせていました。
アベルの悪夢の黒い影の中に茶色い前髪をサラリと垂らしてキレッキレに踊るイケメンが私の目を捉えたのですが、悪夢はいつも薄暗いシーンなので誰かわからず・・・ソワレ3列で観た時、大路りせくんだと把握。「いや、フランクやん!影やってもイケメンだわ」となりました。
りせなるのもう一方 泉堂成さんは白い羊メロ。
これがまた、ご主人バルウィンを思う心がいじらしくて、抱きしめたくなるくらいかわいい羊でした。
絶賛売り出し中のりせなる、さすがの輝きです。
新入り羊メイの奈央麗斗さんの彫刻のような美貌も際立っていました。
夢の世界の住人の中にナジャ・グランディーバみたいなニューハーフ系の人がいて目立っていました。ちゃんとネイルもしていて、背が高かったから、輝ゆうくんかな?
下級生が多い公演ですが、羊さんたちや住人たち、みんなに台詞があって、短いながらもフィナーレは男役、娘役の群舞もデュエットダンスもあり、よきバウホール公演でした。
途中中止は辛かったけれど、結果的に21日まで公演できたの、本当によかったです。
「夢現実の先に」観てたらお花買いたくなって、帰りにお花屋さんへ。
白いヒペリカムが可愛くて最初に選んだら、何となく白っぽいアレンジになりました。
エマさんの好きなかすみ草も入れたわぁ。
とても楽しく拝見しましたが、エマさんどこ行っちゃったの?とちょっと思ったかなぁ のごくらく地獄度 (total 2360 vs 2361 )
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