「笑の大学」の感想アップした勢いで、昨年観たまま感想書けていかなかったこちらもアップしてしまいましょう。
「笑の大学」が25年ぶりなら、「ショウ・マスト・ゴー・オン」は東京サンシャインボーイズ時代以来、28年ぶりの上演です。
福岡、京都公演の小林隆さんに始まり、東京ではシルビア・グラブさん、浅野和之さん、ついには主演の鈴木京香さんの代役まで三谷幸喜さんが演じるという、まさに「ショウ・マスト・ゴー・オン」を地で行く事態にも耳目が集まりました。
「ショウ・マスト・ゴー・オン」
作・演出：三谷幸喜
美術：松井るみ 照明：三澤裕史
衣装：前田文子 音楽・演奏：荻野清子
出演：鈴木京香 尾上松也 ウエンツ瑛士 シルビア・グラブ
新納慎也 今井朋彦 藤本隆宏 小澤雄太 峯村リエ
秋元才加 井上小百合 中島亜梨沙 大野泰広 荻野清子
浅野和之 三谷幸喜（小林隆代役）
2022年11月19日（土） 6:00pm 京都劇場 1階G列上手
（上演時間：2時間20分／休憩 15分）
ある劇場の舞台袖。上手に少しだけ舞台が見えます。
「マクベス」開演直前で舞台監督の進藤（鈴木京香）をはじめスタッフが慌ただしく開幕の準備をする中、間もなく客入れも始まるという時間になってもマクベス役の座長の宇沢（尾上松也）の姿は見えず、外国人演出家も秋葉原で迷子になって現れません。昨日舞台監督に叱られた若いスタッフは無断欠勤、ミュージシャンたちも来られなくなり、ようやく現れた宇沢は泥酔した昨夜の酒が抜けず･･･と次から次へと想定外のアクシデントが降りかかる中、何とか切り抜けて上演しようとスタッフ、役者たちが悪戦苦闘します･･･。
「私もついに京都劇場デビューすることになりました」という三谷幸喜さんの開演アナウンス。
大混乱の舞台裏に突然現れる、無断欠勤したスタッフの父親役を小林隆に代わって三谷さんが勤めての上演でした。
「一度幕が開いた以上は何が何でも絶対に降ろさない」という、舞台人たちの奮闘を描いたコメディ。
畳みかけるようなドタバタ喜劇の中に、舞台人たちの気概とプライドが高らかに響く舞台讃歌でもありました。
「スコットランドに松はない」
「バーナムの森を動かすんだ」
「ジジイはバテてたんじゃない。ペース配分してたんだ」
などナド 今思い出しても笑いがこみ上げてくる台詞とシチュエーションの数々。
何度も声をあげて笑っちゃいました。
スタッフも役者も「何とか舞台を続けよう」と必死になる姿が、かえって滑稽に映るという三谷幸喜さんの真骨頂。
次々起こるトラブルが、荒唐無稽な設定ながら何となくありそうにも思えて、私たち観る側には「舞台裏ってこんななんだ」という好奇心もかき立てられます。
「裏方が舞台に出るのは恥だと思いなさい！」という舞台監督の至極真っ当な正論があるかと思えば、舞台を続けるためには戯曲がないがしろにされたり、演出家が頼りにもされていないといった背景がどことなく自虐的であったり･･･と、笑いのほかにも演劇好きには興味をそそられる要素がたくさん。
鈴木京香さんの進藤は男性の役だったのを今回女性に変更されたということですが、何があっても動じず、「絶対に舞台を続ける」という強い心でトラブルに次々対応していく姿は観ていて心が熱くなります。
そんな強靭な女性なのに、プライベートでは年下の恋人との関係にはヨワイところも見せるのも切なくてよき。
エキセントリックな看板役者と小心者の共存が絶妙の座長・宇沢萬の尾上松也さん、いかにも大物俳優然とした佇まいながら舞台監督の繰り出す指示に従う久野あずさのシルビア・グラブさん、よぼよぼなのだけれどヘンな動きに目が離せない老医師の浅野和之さん、最後の方に現れてザッと場をさらう小道具作り名人・黒木七右衛門の新納慎也さんと、再演なのに、キャストは皆あて書きのよう。
そして、台詞はあまり多くないけれどちょこまか動く姿が結構うざい三谷幸喜さんの万城目（代役）。
最後に発する「こんなにいい職場はない」という言葉がまるで劇作家としての三谷さんの心の声のようにも聞こえました。
個人的にかなり凹むことがあった日で、もう行くのをやめようとも考えたのですが、思い切って観に行って本当によかったです。
よい舞台はいつも私に元気と勇気をくれる。
「久々の舞台は思い切り明るくて楽しくて笑いに満ち溢れたもの（でも胸に迫る）にしよう」とこの作品の再演を決めてくれた三谷幸喜さんに感謝。
とはいえ、こんなにアップ遅れたら感動も薄れがち のごくらく地獄度
(total 2390 vs 2389 
)
