2023年01月06日
王道宝塚ロマン 花組 「うたかたの恋」
2023年エンタメはじめは宝塚歌劇花組。
そしてmy 楽が終わってしまった(早っ!)
宝塚歌劇 花組公演
ミュージカル・ロマン 「うたかたの恋」
原作:クロード・アネ
脚本:柴田侑宏 潤色・演出:小柳奈穂子
作曲・編曲:寺田瀧雄 𠮷田優子 手島恭子 音楽指揮:佐々田愛一郎
振付:羽山紀代美 御織ゆみ乃 百花沙里
装置:二村周作 衣装:有村淳
出演:柚香 光 星風まどか 水美舞斗 美風舞良 航琉ひびき 和海しょう
華雅りりか 羽立光来 永久輝せあ 春妃うらら 峰果とわ 帆純まひろ
聖乃 あすか 一之瀬航季 咲乃深音 侑輝大弥 朝葉ことの 希波らいと
都姫ここ 愛蘭みこ 美羽 愛 美空真瑠 星空美咲 鏡 星珠 ほか
2023年1月2日(月) 11:00am 宝塚大劇場 1階26列下手/
1月5日(木) 11:00am 2階12列上手
(上演時間: 1時間35分)
物語の舞台は1888年のオーストリア。
ハプスブルク王朝の皇太子ルドルフ(柚香光)は次代のヨーロッパを担う才知に長けた青年でしたが、公務に疲弊し政略結婚で結ばれた妻ステファニー(春妃うらら)との仲は冷え切っていました。ルドルフは親友で従兄弟のジャン・サルヴァドル(水美舞斗)が平民のミリー(星空美咲)を恋人に持ち、自由に人生を謳歌していることをうらやましく思っていました。
そんな時、ウィーンのブルク劇場で男爵令嬢マリー(星風まどか)と出会い、ひと目で惹かれたルドルフは従姉妹のラリッシュ夫人(朝葉ことの)に手引きを頼んでマリーを王宮の自室に招きます。互いに惹かれ合った二人は逢瀬を重ねるようになっていきます。
ルドルフの次期皇帝としての立場を揺るがそうとするフリードリヒ公爵(羽立光来)らが取り巻く中、マリーとの仲を知った父 フランツ・ヨーゼフ皇帝(峰果とわ)は激怒してルドルフにマリーと別れるようにと言い渡し、マリーを修道院に入れると宣告します。
ドイツ大使館で開かれ舞踏会で最後に一緒に踊った後、ルドルフはマリーを伴ってマイヤーリンクへと旅立ちます・・・。
クロード・アネの小説「マイヤーリンク」をもとに、19世紀のオーストリアで実際に起こった皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーの悲恋を、柴田侑宏先生がドラマティックに描きあげて、1983年に雪組の麻実れいさん、遥くららさん主演で初演された作品。以来、何度も再演を重ねていますが、大劇場で上演されるのは30年ぶりだそうです。
私は2013年宙組の全国ツアー公演(凰稀かなめ・実咲凛音主演)で一度だけ観たことがあります。
「マリー 来週の月曜日 旅に出よう」
「あなたとご一緒なら どこへでも」
という台詞から始まる主題歌「うたかたの恋」があまりに有名で、タカラヅカスペシャルはじめいろんなシーンで聴いていましたし(最近では2021年の愛月ひかるさんサヨナラショーが印象的
「いかにも王道だけど古めかしい宝塚歌劇」と観る前には思っていて、実際、このところの物語のテンポも場面転換も速い舞台に慣れた目には ”ゆったりしてる”という印象は拭えないのですが、そのゆったりも含めて思いのほかよくて、もちろん王道の悲恋ものではあるものの、ルドルフの政治的な立場や、両親との葛藤、ゼップスさんも出てきて「『エリザベート』とこんなにリンクしていたっけ?!」と改めて驚いたり。舞踏会のリプライズシーンは二度観て二度とも泣くというね。
緞帳が上がるとミラーボールが回り、赤い大階段に純白の軍服を着た柚香ルドルフと真っ白なドレスの星風マリーが対角線上に立って、あの有名な台詞を放って主題歌を歌い、踊り、最後に暗転したところで2回銃声が響きます。
舞台は変わって、ドイツ大使館の舞踏会。
ワルツに乗った美しいバレエに始まる盛大な舞踏会にルドルフが現れ、マリーをダンスに誘って招待客の耳目が集まる中、幸せそうに踊る二人。あの台詞を言いながら・・・。
そこへ、ジャン・サルヴァドルの独白が重なります。
「幸せそうに踊る二人。しかしこの時二人は、すでに死を決意していたのです」
こうしてジャンの回想という形で、9ヵ月前、ルドルフとマリーが出会った時に遡って物語が展開します。
舞踏会シーンの始まりがいかにも宝塚歌劇の王道で、上品な色合いの衣装も豪華で美しく、水美舞斗さん、永久輝せあさんの華麗なバレエをはじめ、正装で着飾った男役、娘役が勢ぞろいする舞踏会は本当に華やか。
そしてその華やかさの分、余計にこの後に待ち構える悲劇がより鮮明に浮かび上がります。
今回演出を担当されたのは小柳奈穂子先生。
現在の宝塚でエースの一人と目される演出家ですが、あまり奇をてらわず、オリジナルを尊重して演出された印象です。
とはいえ、新曲も加えられ、盆を駆使して暗転やカーテン前をできるだけ短くしたり、マイヤーリンクの山荘での観ている方がこっぱずかしくなるようなウフフ、きゃっきゃっのシーンをカットされたりと、随所に工夫が見られました。
前述したとおり「こんなにも『エリザべート』とリンクした作品だったのか」と改めて感じたのですが、自由主義思想を持つルドルフの閉塞感や苦悩、彼を取り巻く人々をより色濃く描くことで、悲劇へと走らずにはいられなかった状況が浮き彫りになっているように感じました。
後で知ったのですが、ルドルフがローマ法王に離婚を願い出て却下されたこと、そこにはマリーの存在があったことを知って激怒したフランツ・ヨーゼフ皇帝が二人を別れさせ、マリーを修道院に入れるとルドルフに宣告するくだりは今回初めて加えられたのだとか。
この場面で「最後にもう一度だけマリーに会わせてください」とルドルフが父であるフランツに懇願してからの冒頭の舞踏会のリプライズシーンは、本当に胸に迫るものがありました(そして泣く😢)。
この場面の皇帝の執務室が背後の壁面にハプスブルク家の紋章である双頭の鷲が大きく掲げられていてとても重厚感があってすばらしかったので「舞台美術誰?」とプログラム確認したところ二村周作さんでした。納得です。
柚香光さんのルドルフ。
気品があって美しく、儚くて翳りもある薄幸の貴公子が本当によくお似合い。
軍服もよく映えて、立ち姿や所作も美しく、ビジュアル完璧。皇太子として常に感情を押えつつ、マリーにだけ本当に自分を見せることができる姿が切なくも痛々しくもあり。
「お前を清らかなままにおこうとした誓いを自ら破ろう」なんていう台詞を吐いてマリーをお姫様抱っこするのも、このルドルフなら許せます。
1月2日に観た時「!?まだ2日目だよ。大丈夫か?」と思った歌唱も、5日に観た時はそうでもありませんのでこのままがんばっていただきたいところです。
星風まどかさんのマリー。
「まどかちゃんに今さらマリーなんて・・・何ならシシィやろうという人が」と正直のところ思っていたのですが、声もワントーン高くして、とても初々しく可愛らしいマリーに仕上がっていて、さすがです。もちろん歌も盤石。
水美舞斗さんのジャンと永久輝せあさんのフェルディナンドはともにルドルフの従兄弟。
平民の娘を恋人に持ち自由な生き方をするジャンはルドルフと対照的な存在として描かれ、ルドルフとマリーを見守る語り部でもあります。
彼が語る二人の最期で、ルドルフの遺体はオーストリア王室が早々に連れ去り「マリーは親族が迎えに来るまでただ一人で眠っていた」という言葉にまたナミダ。
フェルディナンドは叔父のフリードリヒ公爵の命でマイヤーリンクにルドルフを逮捕しに来ますが、「納屋づたいに逃げられる」とルドルフに告げるなど、苦悩ぶりが加えられて印象的な役になっていました。
ルドルフ亡き後、このフェルディナンドが皇位継承者となり、やがてサラエボ事件で暗殺されることを思うと歴史の無常を感じます。
ジャン、フェルディナンド 二人の恋人はそれぞれ星空美咲さんのミリーと美羽愛さんのソフイ。
売り出し中の花組期待の娘役が演じました。
これが退団公演となる華雅りりかさんのエリザベートが凛として品があり、距離がありながらもルドルフへの情愛も感じられてとてもよかったです。
ルドルフをマリーと取り持つラリッシュ夫人の朝葉ことのさんのいかにも訳知りの貴婦人といった達者な演技も印象的でした。
娘役では他に、オペラを歌うシュラット夫人の糸月雪羽さん、酒場の歌手マリンの咲乃深音さん、ミッツィの詩希すみれさんの歌唱もそれそれすばらしかったです。
歌唱といえば、ラストのルドルフとマリーの場面のカゲソロも美しい歌声でプログラムで確認したところ、龍季澪さんと花海凛さん。
花海凛さんは108期生の研1さん。抜擢ですね。
峰果とわさんのフランツ・ヨーゼフの厳格さ、羽立光来さんフリードリヒ公爵の狡猾ぶり、老従僕ロシェックの航琉ひびきさんの飄々とした雰囲気と。
若手では、御者ブラットフィッシュに聖乃あすかさん、ウィーン新聞記者クロードの侑輝大弥さん、マリーの兄ジョルジュの希波らいとさん、モーリス大尉に抜擢(だよね?)された美空真瑠さんあたりが目立ったところでしょうか。
→ ショー「ENCHANTEMENT」につづく
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