2022年10月01日

俺たちはただこの街を守りたかっただけだ 宙組 「HiGH&LOW -THE PREQUEL-」


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EXILEに代表されるLDH JAPANと宝塚歌劇団とのコラボレーション。
2015年に連続ドラマとして始まり、2020年までにシリーズ5作がオンエア。映画シリーズも7作。
「ハイロー」という言葉は耳にしたことがあってもどれも一度も観たことがなくて、「はぁ?」という感じではあったのですが・・・。


宝塚歌劇 宙組公演
TAKARAZUKA MUSICAL ROMANCE 「HiGH&LOW -THE PREQUEL-」
原作・著作:HI-AX
構想:平沼紀久  渡辺 啓
脚本・演出:野口幸作  
作曲・編曲:太田 健  青木朝子  多田里紗   音楽指揮:佐々田愛一郎
振付:麻咲梨乃  桜木涼介  KAORIalive   擬闘:清家一斗
装置監修:大橋泰弘   装置:木戸真梨乃   衣装:有村 淳 
出演:真風涼帆  潤 花  芹香斗亜  桜木みなと  瑠風 輝  鷹翔千空
寿つかさ  松風 輝  紫藤りゅう  秋奈るい  留依蒔世  若翔りつ
優希しおん  天彩峰里  水音志保  風色日向  亜音有星  泉堂 成 ほか

2022年8月27日(土) 1:00pm 宝塚大劇場 1階27列上手/
9月8日(木) 3:30pm 1階12列下手/
9月18日(日) 11:00am 2階3列センター
<追加> 11月18日(金) 11:00am 東京宝塚劇場 1階14列下手
(上演時間: 1時間35分)



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「THE PREQUEL」=前日譚 というサブタイトルからもわかる通り、「HiGH&LOW」の中心となる「SWORD」誕生前夜を描いた物語。
とはいえ各チームすでに出来上がっていて、リーダーは以下のとおり。

S  山王連合会   コブラ(真風涼帆)
W  White Rascals  ROCKY(芹香斗亜)
O  鬼邪高校    村山良樹(鷹翔千空)
R  RUDE BOYS  スモーキー(桜木みなと)
D  達磨一家    日向紀久(瑠風輝)


原作は各チーム喧嘩に明け暮れているらしいのですが(ドラマで予習した友人談)、まだそこまでではなくて、互いに睨み合っていて顔を合わせればもちろん喧嘩はしますが、という感じ。
そこへ、5チームまとめてぶっつぶしてこの街を乗っ取ろうとするリン(留依蒔世)率いる苦邪組(クジャク)を登場させて共通敵としています。苦邪組は宝塚版のオリジナルチームなのかな。
さらには、コブラの小学生時代の同級生カナ(潤花)とコブラとの淡く切ない恋も織り交ぜながら物語が繰り広げられます。

このカナとのエピソードがいかにもとってつけた感があってですね・・・。
カナは不治の病で余命いくばくもなく、ノートに書いた「生きている間にやりたいこと」を手に生まれ故郷のこの街に帰ってきてコブラと再会するという設定ですが、そういうの、これまで何度も映画や小説になっていたんじゃない?と既視感アリアリ。
しかもそのノートに書かれたカナの願いが「チャイナドレスを着てパーティに参加する」「浴衣を着てお祭りに行く」「お化け屋敷でお化け役の人を驚かす」・・・と、どこの中学生の夢見る少女ですか?という感じでいかにも陳腐。
カナは小学校6年生の時に病気が発覚して、両親がよりよい治療を求めて全国を移り住んだということらしいので、普通の人が体験する少女時代を過ごすことができなかったからとも考えられますが、それにしても幼稚すぎませんか?野口くん。
にもかかわらず「形あるものに永遠はないんだよ」と妙に達観したところもあって、アンバランスな印象。
それにいちいち付き合うコブラも人がいいというか。



・・・という訳でストーリー的には見るべきものはさほどない印象ですが、オープニングは大階段を使って各チームごとに登場してのパフォーマンスでまずはぶち上げ、中盤にはストーリー展開に沿って各チームがそれぞれ”プレゼンテーション”する場面があって、これは文句なくカッコいい。
初日に観た時は「お芝居というよりショーだな」と思いました。
各チームごとに音楽や衣装はもちろん、振付家も違ったダンスで、チームの特色がよく出ていておもしろかったです。

中でも最も心惹かれたのはスモーキー率いる RUDE BOYS。
「俺たちはただこの街を守りたかっただけだ」というのは冒頭、拳でガラスを割ったコブラが発する言葉ですが、原作を知らないで観た者には、この言葉に一番納得性があったのが RUDE BOYS でした。

寄る辺のない者たちが集まった「無名街」という街を、スモーキーが、RUDE BOYS が守っている。
そのことは、RUDE BOYS に潜入した苦邪組のGEN(松風輝)が煙草を吸ったことから街の女に素性を怪しまれ、口止め料を渡したものの「ここは火気厳禁。見つかったらRUDE BOYSに殺されるよ」とピシリと言われるところからも、この街を RUDE BOYS がいかに統制を取って守っているかが伝わりました。

無名街のシーンで、スモーキー&RUDE BOYSの歌とダンスもとてもよかったです。
スモーキーが歌う「RUN THIS TOWN」は調べたところ GENERATIONS from EXILE TRIBE の曲ということでしたので、もしかしたらどこかで耳にしていたのかもしれませんが、後のソロでのバラード風リプライズ含めて、桜木みなとスモーキーのヴォーカル冴え渡っていました。
ダンスもめちゃハイレベルで雰囲気を表していてカッコいい(振付:KAORIalive)
何あの人?しゃがんだ人の頭上をぴょーんと跳び超えたよ👀と驚いてオペラあげたらピー(優希しおん)だったり。

ということで、スキップ的には RUDE BOYS が優勝です。



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レビューショップのディスプレイ
とてもよくできています。



コブラの真風涼帆さん。
「ちげーよ」なんていう口調が全然似合ってなくて(^^ゞくらい、およそ真風さんのカテゴリーにない役かと思いますが、それでもひたすらカッコよくキマるのはさすがです。
この作品で観る限り、SWORD 5チームの中で山王連合会が一番普通で平和で自然体な印象。コブラも”ちょっととんがった町の不良”という感じです。
でもいざとなると喧嘩強いのね、というところも垣間見せるのもよき。
カナちゃんの願いを一つまたひとつと聞き入れて実現してくれるのも、きっと根はやさしい人なんだろうなと思いす。

カナの潤花さん。
前述したとおり「死ぬまでにやりたいこと」がいかにも少女趣味なことはさておき、ラストの「出ちゃった」含めて、カナというより潤花さんそのもののようなイメージでした。それだけ自然な演技だったと言えるかもしれません。
髪型は演出の指定だったのでしょうか。潤花さんの美貌を活かしきれていないように感じたなぁ。

ROCKYの芹香斗亜さん。
コブラとは逆にとても作り込んだキャラクターで、チームメンバー含めて華麗なビジュアルすばらしい。
「FLY WITH ME」で芹香さんがピンクのサングラスして、「ステッキをノールックで」とか言っていた意味がようやくわかりました。
White Rascalsは成り立ちが一番謎めいていますが、一番組織らしいというか、厳しく統制されている印象。
カナを見て「母が死ぬ前あんな感じだった」と言う鋭い感性を見せたかと思えば、「コブラ、殺す」と吐き捨てるROCKY、とても好き。
銀橋のソロも迫力たっぷりでした。

スモーキーの桜木みなとさん。
RUDE BOYS については前述したとおり。
スモーキーは自身も病気を抱えていて、死と背中合わせな印象がより一層切なげでハートを鷲掴みにされました。
それにしてもずんちゃん、また一段と歌唱力上がった印象です。

日向紀久の瑠風輝さん。
長身と鋭い目線に達磨一家の法被がとてもよくお似合い。
歌唱力には定評のあるもえこちゃん。ラップ風の「狂喜乱舞ぅ」が何気に耳から離れません。

お祭りの大きな太鼓の真ん中が亜音有星くんで「おっ!」と思って隣を見たら風色日向くんで、「おおっ!」となり、「しどりゅうもいるやん。りせくんも」と毎回目も耳も祭り状態でした。

村山良樹の鷹翔千空さん。
ヅカ初見のハイローファンの方々の「村山の村山感がハンパない」というツイートをよく見かけました。
ビジュアルはもちろん、表情や所作、殴り方まで村山そのものだとか。さすが芸達者のこってぃ、本領発揮です。
確かに「100発殴られても立っていられたら番長」のあたりは、普段の穏やかこってぃとは別人でした。

そんなこんなを全員向こうに回して立つリンの留依蒔世さん。
悪の存在感の大きさ、強さ(最後コブラとのタイマン弱すぎだけど💦)。
これが退団公演、残念すぎます。

White RascalsでROCKYの参謀的存在でいつもそばにいるKOOの風色日向さん。
沈着冷静で端正な佇まい。ROCKYが何かにつけて「KOO」「KOO」と呼んで頼りにしているのも頷けます。
山王連合会の明るいムードメーカーでドレッドヘアがお似合いのテッツ・亜音有星さん、苦邪組のボーイでミステリアスな美貌が映えるメイナンツー泉堂成さんと若手の活躍もうれしいところでした。

男の世界の物語なので娘役にあまり活躍の場がないのは残念ですが、苺美瑠狂のリーダー純子の天彩峰里さん、二番手明日香の花宮沙羅さん、山王街のBARのママ 水音志保さん、苦邪組の悪女KIDAの春乃さくらさん、山王街の床屋ピューマの仁花 山吹ひばりさんなど、美人さん目白押しです。

ラストの一斉大乱闘で、White Rascalsの前にKIDA率いる苦邪組の女たちが立ちはだかり、「俺たちは女には手は出せねぇ」と切羽詰まったところに純子さん筆頭に苺美瑠狂の面々が颯爽と現れて「ここはアタシたちに任せて!」というのカッコよかったです。



→ ショー「Capricciosa!!」につづく

posted by スキップ at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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