2022年09月11日

八月納涼歌舞伎 第三部 「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚」


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2019年に「これが本当に最後」(2018年に『また会う日まで』と終わったはずだったのに)と上演された弥次喜多が、また帰ってきた・・・だけでもかなり笑ったのに、代役祭りになって、染五郎くん梵太郎の代役が猿弥さんと発表された時は、タイムライン爆笑で揺れたよね。


八月納涼歌舞伎 第三部
「東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚」(やじきたリターンズ)
 本水にて大滝の立廻りならびに宙乗り相勤め申し候

原作:十返舎一九
構成:杉原邦生
脚本:戸部和久
脚本・演出:市川猿之助
出演:松本幸四郎  坂東新悟  大谷廣太郎  中村隼人  市川男寅  
中村鷹之資  中村玉太郎  市川青虎  市川寿猿  澤村宗之助  
松本錦吾  市川笑三郎  市川笑也  市川猿弥  片岡亀蔵  
市川門之助  市川高麗蔵  市川猿之助 ほか

2022年8月25日(木) 6:15pm 歌舞伎座 1階1列センター
(上演時間: 2時間42分/幕間 30分)



代役は以下のとおり

伊月梵太郎: 市川猿弥  (本役/市川染五郎)
五代政之助: 中村隼人  (市川團子)
娘オリビア: 市川笑三郎 (市川染五郎)
娘お夏:   市川笑也  (市川團子)
芳沢綾人:  市川門之助 (中村隼人)

本来二役だった染五郎くん、團子くんの役を二人ずつで分け合う形ですが、それにしても1日だけの休演で再開できたの本当にすごいとしか言いようがありません。



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前作の終わりで伊勢神宮の花火で天高く打ち上げられた弥次郎兵衛と喜多八。
あれから3年。無人島に飛ばされて何とか生き延びていた二人は、あの手この手で長崎にやっと渡り着き、かつて大道具のアルバイトをしていた古巣の歌舞伎座の苦境を知り、何とかしようと歌舞伎座に戻るため新たな珍道中を繰り広げます・・・。


幕開きはまんま鬼界ケ島の「俊寛」でした。
幸四郎さん弥次郎兵衛が俊寛で、猿之助さん喜多八が丹波少将成経という役回りで観たことあるお芝居が展開して、何とか島を脱出、
これ以降も古典歌舞伎のパロディが随所に盛り込まれているのは「弥次喜多」のお約束。

長崎に辿り着いた二人が最初に出会うのがオリビア。文明堂のカステラを売っています(笑)。
オリビアが憧れの役者・芳沢綾人に会いたいということで歌舞伎座を目指す道連れとなり、さらには途中知り合ったお夏も旅をともにするという流れ。

旅の途中で、図夢歌舞伎版に出てきた「家族商店」(入口のメロディまでまんまファミリーマートです)に辿り着き、店前にたむろする暴走族の総長となった梵太郎、政之助と再会します。
この暴走族たちと対立する総長シー子(新悟)率いるレディースチームとのバトルあり、梵太郎、政之助、オリビア、お夏の恋バナありで、いつも通りドタバタがやがや物語は展開、ラストは歌舞伎座を買収してホテルにしようとする緑婆奈々夫人(笑三郎)から歌舞伎座を守り、天照大神(笑也)が登場して一件落着といういつもパターンです。


一幕終わりに本水を使った大立ち回りがあって、弥次さん喜多さんずぶ濡れで大奮闘。
以前のように客席に向かってわざと水をパシャーッとかける、みたいなことはありませんでしたが、歌舞伎座でもここまで本水を使った演出がまたできるようになったんだと感慨深かったです。


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開演前に座席に置かれた水よけシートと一幕終演後の定式幕。
水に濡れているのわかるでしょうか。


二幕の見せ場は梵太郎チームとシー子チームの”踊り比べ”。
まず、梵太郎チームがウエストサイドストーリーの”Cool”まんまのダンス(踊りというよりダンスだった)で沸せてくれます。
猿弥さん、元々太っているわりには(←)動ける人ではありますが、ダンス完璧。
他の人たちともピタリと合っていて、私が観たのは代役6日目でしたが、ほんとこれどうやって覚えてたの?という感じでした。

レディースチームも、花道の登場からとてもよくて、中でも総長シー子の新悟さんが美しくて声もよく通り、踊りもキレキレで際立っていました。
シー子チームにもう一人、指先の動きが柔らかで足さばきがキレよくてとても踊りの上手い人がいる、と思ってガン見したら鷹之資くんでした。
顔の片側にファントムのようなタトゥ入れたメイクしていて最初誰だかわからなかったよ💦

この場面の最後に笑三郎さんと笑也さんが藤娘を踊るのですが、これは代役が決まってから急遽入れた踊りだそうです。
思わぬご馳走でした。


宙乗りは2回。
最初は寿猿さんがゴンドラに乗って。
下から見上げたらゴンドラの底に「世界最高齢宙乗り ギネス申請中」と書いてありました。

ラストは、弥次さん・梵太郎、喜多さん・政之助の2組の宙乗り。
気持ちよさそうに4人で上空を飛んでいきました。


染五郎くん、團子くんの活躍が観られなかったのは残念でしたが、代役の楽しさも存分に味わった公演でした。
弥次さん喜多さんを「おじさん」と呼ぶ猿弥さん梵太郎に、猿之助さん喜多さんが「おじさんにおじさんって言われたくない。4人のうち3人がおじさんなんだから」とおっしゃっていて笑ってしまいました。
オリビアとお夏も加えたら、6人のうち5人ですよね(≧▽≦)
猿之助さんは3日間休演した幸四郎さんにも「休んでたくせに」と容赦なくツッコんでいました。

最初に登場した時、家族商店の店先に立っているだけで笑いが起こる梵太郎の代役・猿弥さんばかりに注目が集まりがちですが、隼人くんの政之助はイケメンで普通にカッコよくて、これ本役でいけるのでは?と思いました。
そういえば、梵太郎と政之助、オリビアとお夏が木の影から交互に出てくる場面がありましたが、あれは本体なら早替りだったのだろうなぁと、それは観られないのがちょっぴり残念でした。





代役で「ぽっちゃり55歳」と話題になった読売新聞文化部の記事。

「役者は家で覚えりゃいいけど、すごいのは衣装と床山です。1日で作ってくれた。その心意気が一番ありがたい」と猿之助さん。
舞台を支えてくれている裏方さんたちへの思いがさすがだし、「家で覚えりゃいい」って言ってもたった1日で台詞も振付もすべてこなす役者さんたち、代役となった役者さんを受け入れる側の役者さんたち含めて本当に凄すぎる。




役者さん、裏方さん、スタッフさん 公演に携わったすべての方たちに心からの拍手を贈りたい 記憶に残る興行となりました のごくらく度 (total 2334 vs 2339 )


posted by スキップ at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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