2022年08月15日

アルルカンの哀しみ 花組 「巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜」


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宝塚歌劇花組 東京宝塚劇場公演が昨日(8/14)初日を迎えました。
当初、7月30日開幕の予定が2週間遅れとなってしまいましたが、無事に幕が開いて本当によかったです。

という訳で、宝塚大劇場で観た時の感想を。


宝塚歌劇 花組公演
ミュージカル 「巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜」
作・演出:生田大和  
作曲・編曲:太田 健  斉藤恒芳   音楽指揮:西野 淳
振付:御織ゆみ乃  上口耕平  
装置:國包洋子   衣装:有村 淳    
出演:柚香 光  星風まどか  水美舞斗  永久輝せあ  美風舞良  
航琉ひびき  和海しょう  羽立光来  飛龍つかさ  帆純まひろ  
音くり寿  聖乃あすか  一之瀬航季  侑輝大弥  希波らいと  
都姫ここ  美羽 愛  美空真瑠  星空美咲/高翔みず希 ほか

2022年6月9日(木) 3:30pm 宝塚大劇場 1階18列センター/
6月26日(日) 11:00am 1階12列下手/
7月10日(日) 11:00am 1階5列センター
(上演時間: 1時間35分)




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リストの物語なのでチケットは大劇場ロビーのピアノと撮りました



舞台は19世紀前半のパリ。
ピアノの魔術師と称され、超絶技巧と女性達を虜にしてやまない類まれな美貌でパリのサロンを席巻し、時代の寵児として絶大な人気を得たピアニスト フランツ・リスト(柚香光)は、若くして上り詰めた座に虚しさを感じ、厳しい批判を書いたマリー・ダグー伯爵夫人(星風まどか)とジュネーブへ逃避行します。ハンガリー人である“リスト・フェレンツ”として生きることと、人気ピアニストとして名声を欲する気持ちと葛藤しながら、自らの“魂”の居場所を探し、ヨーロッパ中を彷徨い続ける若き日のリストの姿を、マリー・ダグー伯爵夫人をはじめ、最大の好敵手ショパン(水美舞斗)、かつての恋人ジョルジュ・サンド(永久輝せあ)などを交えて描く物語。


「巡礼の年」は、リストが人生を模索していた時期に作曲した作品集のタイトルだそうです。
作品全体の印象としては、サブタイトルの「魂の彷徨」がまさしくそれで、リストの魂が彷徨い、流れ、迷う様子が描かれているドラマです。

冒頭こそ、リストとジョルジュ・サンドの濃厚なシーンから始まりますが、サンドとマリー・ダグー伯爵夫人とリストの三角関係・・・もっと言うならショパンを加えての四角関係が描かれるのでもなく、”運命の恋人”マリーとの恋も、いわゆる不倫な訳ですが、切なく苦しい恋という感じはなく、何となく中途半端に消えてしまって、ラストに再会するまで急に年月が飛んでしまったり。
主人公(もしくはヒロイン)に共感しづらい、心を寄せて、応援する気持ちで観ることができないのがツライところ。

生田先生としてはこの作品を通して伝えたいことがたくさんあって、詰め込んだ結果、全部中途半端になってしまった、みたいな。
よく言われていますが、ヴェートーベンを描いた「fff」やフランス革命を描いた「1789」、生田先生の「ひかりふる路」を連想させるシーンがいくつかあって、前にどこかで観た感が強いのも残念な感じ。


そんな中、心に残るシーンが2つあって、一つはリストとマリーの出会いの場面。
ル・ヴァイエ侯爵夫人のサロンで、アイドル並みに女性たちの視線を一身に集めて得意満面でピアノを演奏するリスト(カレーくんリストのあの髪ファッサーの威力おそるべし)。
ただ一人、それを痛々しそうな目で見つめるマリー。

ここでマリーが記事に書いた言葉を歌う
♪与えられた仮面で偽る アルルカンの哀しみで踊らされている
という歌詞がとても印象的でした。


もう一つは、逃避行していたリストが一度だけという約束でパリに戻りタールベルクとピアノ対決する場面。
ここで演奏して絶賛されたリストの曲を、2人で暮らした安らかな日々から生まれた美しい調べだと感動するマリーに対して、聴衆の絶賛を「これだよ、これを聴いてくれ」というリスト。
2人の見るものが違ってしまった、心が離れてしまったことを表す象徴的なシーン。
出会った時に音楽を通してわかり合えたはすの2人が、その音楽で互いの心のすれ違いを知る切なさ。


この後、2人は袂を分かち、マリーは共和主義運動に身を投じることになりますが、この運動の描き方も唐突で表面的な印象。
もっと2人の関係に焦点を絞ったら・・・とも思いましたが、史実なのでそうもいかなかったのかな。


時代の雰囲気を表す豪華な衣装や舞台装置はとてもよかったです。
「ピアノだんじり」(笑)も、ダンスシーンもたくさんあって華やか。
リストやショパンの名曲を散りばめた楽曲も素敵。


他の人がやったらちょっとイケてなさそうな髪型をファッサーとさせながらピアノ弾く柚香光リストは、当時社交界でカリスマ的人気を誇ったというのも納得の美しさ。
ピアノ弾き語りも聴かせてくれて、たくさん歌い、たくさん踊って見せ場たっぷり。
後半に観た時、喉が少し苦しそうでしたので、東京では最後まで気をつけてがんばっていただきたいです。

マリー・ダグー伯爵夫人の星風まどかさんはさすがの仕上がり。
美しく知的で、サロンに集う他の女性たちとは一線を画している感があって、そりぇリストも惹かれるでしょうと思いました。
台詞の滑舌は時折不安定ですが、歌はいつも高得点。

どことなく儚げで優しい雰囲気のショパンは水美舞斗さん。
物静かで友達思いで、ピアノと作曲の才能に満ち溢れていて、完璧すぎるのでは?と思いました。

男装の麗人ジョルジュ・サンドは永久輝せあさん。
美しく勝ち気なジョルジュ・サンド 素敵でした。
あくまでも”男装した女性”というスタンスを失わず、いつも強気でもポロリと女性の部分がこぼれ落ちる感じもいい塩梅でした。
歌もうまいなぁ。

この公演が退団公演となる2人
飛龍つかささんはマリーの夫ダグー伯爵、音くり寿さんはリストのパトロンのラプリュナレド伯爵夫人で、もちろん2人とも抜群に上手いのですが、それぞれマリー、リストの本質を理解せず、心も寄せられないという似たようなポジションでちょっと残念だったかなー。

新聞社の編集長エミールの聖乃あすかさんは美貌が際立っていましたが、かなり独特のメイク(特に眉とか)で、役づくりかな?と思っていたのですが、ショーでもそんな感じでしたので、メイク変えたのかな?

ロッシーニ(一之瀬航季)のフィアンセ・オランプが都姫ここちゃんで、このところ美羽愛さんや星空美咲さんに抜かれっ放しだった印象があるので、よかったなーと思いました(←立ち位置)

少年リストの美空真瑠くん。
娘役の先行が目立つ105期生の男役ホープ。かわいくて目が釘づけでした。




→ ショー「Fashionable Empire」につづく
 
posted by スキップ at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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