
松竹座の七月大歌舞伎。
コロナ禍以降、2年ぶりに昨年は7月3日から18日までと短い期間の上演でしたが、今年は7月3から24日までと1週間長くなりました。
船乗り込みも再開されて、少しずつではありますが大阪の夏が戻りつつあります。
関西・歌舞伎を愛する会 第三十回
七月大歌舞伎 昼の部
2022年7月9日(土) 12:00pm 松竹座 3階1列下手
一、八重桐廓噺 嫗山姥
作:近松門左衛門
出演:片岡孝太郎 中村壱太郎 中村虎之介
片岡千之助 中村亀鶴 松本幸四郎 ほか
(上演時間: 55分)
物語:かつては人気傾城で今は傾城の恋文の代筆をして歩く荻野屋八重桐(孝太郎)は、通りがかった館の前でかつての夫・坂田蔵人時行の歌を耳にし、腰元お歌(亀鶴)に取り入って中に入れてもらいます。そこには煙草売りに身をやつした時行(幸四郎)がいました。親の敵討ちのために家を出たのだと明かす時行に、八重桐はその敵は時行の妹・白菊(壱太郎)が討ったと伝えます。これを恥じた時行が切腹すると、その魂が八重桐の体内に宿り、大力無双の身体となって、沢瀉姫を奪いに来た太田十郎(虎之介)たちを蹴散らすのでした。
「初めて観る演目だ」と思いながら観ていて、「仇討ちは白菊さんが既に討っている」と揶揄されて、いきなり切腹する幸四郎さん坂田蔵人時行の両側で「しぇ~っ」と驚く八重桐、白菊とともに私も座席で「ひょえ~っ」と驚きながら、「あれ?前にもこんなふうに驚いたことある」と思い当たりました。
帰宅してから自分のブログ検索してみたら、2012年御園座の中村勘九郎襲名披露興行で観ていました(こちら)。
10年前かぁ。いや~、ブログ書いておくものですね(^^ゞ
まずは腰元お歌の亀鶴さん登場でオペラあげて二度見👀
「え?亀鶴さんだよね?」「亀鶴さんの女形珍しい~、そして大きい~」と思いましたが、御園座では亀蔵さんだったと知って、お歌さんってそういうお役なのねと納得。
最後の方で、隈取を施した太田十郎こと虎之介くんが出てきてまた二度見👀
「え?!あれ、もしかして虎ちゃん?」「あんな勇壮な虎ちゃん観たの初めてかも~」と感激。
沢瀉姫に問われて、身振り手振りも交えて身の上話をする「しゃべり」を達者に聴かせた八重桐の孝太郎さんはじめ、壱太郎さん、幸四郎さんと口跡よく台詞がよく届く役者さんが揃って観応え、聴き応えありました。
沢瀉姫の千之助くんは台詞もう少しがんばれ~だけど、可憐で赤姫の拵えがことのほかお似合いでした。
ぶっ返った孝太郎さん八重桐が怪力ぶりを発揮して灯篭を持ち上げるのがすごく既視感・・・と思ったら「毛谷村」のお園さんでしたw

ロビーで配布されたポストカード
二、浮かれ心中
中村勘九郎ちゅう乗り相勤め申し候
作:井上ひさし 「手鎖心中」より
脚本・演出:小幡欣治 演出:大場正昭
出演:中村勘九郎 中村七之助 松本幸四郎 中村隼人
片岡松之助 中村鶴松 中村亀鶴 中村扇雀 中村鴈治郎 ほか
(上演時間:1時間35分)
物語:大店伊勢屋の若旦那・栄次郎(勘九郎)は、戯作者になって世間の注目を集めたい一心で話題づくりのために、自ら親に申し出て勘当を受け、顔を見たこともない長屋の娘おすず(七之助)と婚礼を挙げます。しかし絵草紙は評判にならず、吉原の花魁の帚木(七之助二役)を身請けしたり、手鎖の刑を受けようと役人に頼み込んだり、戯作者仲間の太助(幸四郎)とともにあれこれ画策し、ついには心中の茶番劇を計画しますが・・・。
この演目は前に勘三郎さん主演で歌舞伎座で観たことを覚えていて(調べたら2008年4月でした。「八重桐廓噺」より前なのに

この「澤瀉屋さん」は猿翁さん(当時 三代目市川猿之助さん)のことなのですが、松竹座のちゅう乗りで勘九郎さんが「お江戸じゃ今ごろ澤瀉屋さん(四代目猿之助さん)が馬に乗ってる」とおっしゃったのを聞いて、あの勘三郎さんの言葉が勘三郎さんの声で蘇って、胸がいっぱいになりました。
江戸の庶民の物語ながら、時代を風刺するようなエスプリが効いているところがいかにも井上ひさしさんといった趣きの演目。
勘九郎さん栄次郎と幸四郎さん太助のコンビネーションがとてもよくて、丁々発止のやり取りが絶妙。
普段のキャラクターだと反対な印象ですが(笑)、お気楽で破天荒な勘九郎さん栄次郎を、ノリツッコミな感じで受け止める幸四郎さん太助、新鮮でした。
勘九郎さんはお父様の勘三郎さんが演じた役をされると声や台詞まわしがますますそっくりになるところがいいのか悪いのかよくわかりませんが、明るくて愛嬌たっぷりで憎めない栄次郎、とてもよかったです。
幸四郎さん太助が一人二役で男女の喧嘩を見せるところさすがで「もっとやれ!」と思いましたし、吉原で帚木の花魁道中にひと目ぼれする場面がまんま「籠釣瓶花街酔醒」で、幸四郎さんの佐野次郎左衛門また観たいなぁと思いました。
ちゅう乗りしていく勘九郎さんを一人見送る幸四郎さん太助。
まるで勘九郎さんと歌舞伎の未来を見つめているような何ともいえない表情だったな。
可憐なおすずと華やかな帚木を鮮やかに演じ分けた七之助さん。
声も佇まいもガラリと別人になるところすばらしい。
帚木の花魁道中があまりにも美しくて、夜の部行った時に舞台写真買っちゃいました。
どこまでもいじらしいおすずが喧嘩の場面で急にドスの効いた男声の啖呵になるところも笑ったな。
お目付け役の番頭吾平の扇雀さん、息子の所業にあきれ顔の父・伊勢屋太右衛門の鴈治郎さん、相変わらずイケメンがイケメン役の大工清六の隼人さん、栄次郎の妹お琴で綺麗な海老ぞり見せてくれた鶴松さん、どこまでも堅物の役人・佐野準之助の亀鶴さん、と役者が揃って、とても楽しい舞台でした。
黒御簾で演奏される ♪It’s a Small World の曲に乗って、瓦版や紙吹雪や紙テープまき散らしながらねずみに乗ってちゅう乗りする勘九郎さん。
「お清め」と書かれて消毒液?を首から下げていて、撒く前ごとにシュパシュパと清めていたの笑っちゃった。


ちゅう乗りお迎え席だったのですが、ラスト鳥屋に入る直前に勘九郎さんが笑顔で私に向かって盛大に紙テープパァーッと撒いてくれました。
左横は通路で右横は3席空席だったので、思い込みじゃなくて本当に私に向かってだったのよ←
幸・勘・七といえばそろそろ歌舞伎Nextいかがですか のごくらく度


