2022年05月11日
「三月大歌舞伎」 第三部
3月にはもう1本歌舞伎を観ました。
こちら。
三月大歌舞伎 第三部
2022年3月8日(火) 6:30pm 歌舞伎座 1階1列下手
一、信州川中島合戦 輝虎配膳
作:近松門左衛門
出演:中村芝翫 中村雀右衛門 松本幸四郎 片岡孝太郎 中村魁春 ほか
(上演時間:43分)
戦国時代。武田信玄の好敵手・長尾輝虎こと後の上杉謙信の物語。
武田の軍師 山本勘助を味方にしようと計略した輝虎(芝翫)は、家老の直江山城守(幸四郎)の妻 唐衣(孝太郎)が勘助の妹であることを利用し、勘助の母 越路(魁春)と妻 お勝(雀右衛門)を館に招待。小袖を進呈したり、自らお膳を供しますが・・・。
タイトルロールは輝虎ですが、2人の女形- 越路お勝のお芝居です。
これまで何度か観ていますが、初めて観た時の竹三郎さんの越路、秀太郎さんのお勝の印象がとても強く、特に秀太郎さんのお勝が絶品で、後に越路を演じられた時にも観ましたが、三つ子の魂何とやらで、私の中ではお勝=秀太郎さんで刷り込まれています。
音舌不自由のところを懸命に話す姿、越路を斬ろうとす輝虎を止めて侘びを述べながらつまびく琴の音色、すべて終わった後花道を引き上げる前に見せるほっとしたような笑顔・・・忘れられません。
調べたところ、2006年7月松竹座のの坂田藤十郎襲名披露興行だったらしく、その藤十郎さんも秀太郎さんももうこの世にいらっしゃらないなんて
雀右衛門さんのお勝は吃音の部分はあまり強調されていないようでしたが、毅然として気位の高い姑にそっと従い、懸命に琴を弾いて姑の無礼を切々と詫びる姿は哀感漂っていました。
越路は、いかにも山本勘助の母親といった気骨と手強さを漂わせて、輝虎相手にも一歩も引かず、死をも覚悟した武家の女性ですが、魁春さんは少しやわらかめというか、たおやかな印象でした。目のまわりがいつものように赤くないお化粧も新鮮。
最後の幕外の引っ込み。
ほっとした雰囲気のお勝に対して、越路はふっと天を見上げていて、もう二度とここに来ることはないし、娘である唐衣に会う事も二度とないと覚悟を定めたような印象でした。
芝翫さんの輝虎は大きな所作が時代ものの拵えによく映え、わざわざ自ら捧げ持ってきた食膳を足蹴にした越路に、着物を次々脱いで襦袢姿になって刀を振り上げる姿は迫力がありました。
台詞の声も大きくて立派なのですが、私の耳にはなぜかいつも単調に聞こえてしまいます💦
越路とお勝を迎える直江山城守が幸四郎さんだったのですが、幸四郎さの出番は次の「石川五右衛門」だけだと思い込んでいましたので、不意にオトコマエが現れて動揺する客席の不肖スキップ。
キリッとして重厚さもあり、お衣装も拵えもすごくハマっていて、水も滴るいい男とはまさにあのこと(←)。
予期していなかった分、めちゃ得した気分でした。
二、増補双級巴 石川五右衛門
松本幸四郎宙乗りにてつづら抜け相勤め申し候
補綴:戸部銀作
出演:松本幸四郎 中村松江 中村歌昇 大谷廣太郎 中村鷹之資
中村玉太郎 市川男寅 市村竹松 松本錦吾 大谷桂三 中村錦之助 ほか
(上演時間: 1時間12分)
天下の大盗賊、石川五右衛門(幸四郎)は、将軍の証である御正印を盗むため、勅使に化けて足利邸に乗り込むと、饗応役として現れた此下久吉(錦之助)と遭遇します。実は二人は、かつて同じ盗賊仲間であった幼馴染み。久しぶりの再会を懐かしむ二人ですが・・・。
歌舞伎の、つづら抜けがある「石川五右衛門」といえば、やはり何度か拝見した吉右衛門さんの印象が強いですが、その吉右衛門さんがご生前最後に舞台で演じられた役がこの五右衛門で、千穐楽前日に休演となり1日のみ代役をしたのが吉右衛門さんにこの役を教わったという幸四郎さんで、その幸四郎さんが今回本役で五右衛門を演じるという、エモーショナルなエピソードもある上演です。
通しで上演すると3時間超にもなる演目を幾つか場面をカットして再編したもので、幸四郎さん曰く「五右衛門物の名場面集」といった趣き。
スピーディにあれよあれよと物語は進んでいきます。
もちろんその中に、「つづら背負ったがおかしいかぁ~ ばぁ~かめ~」や「絶景かな、絶景かな~」といった五右衛門といえばコレな名台詞がきっちり収まっています。
幸四郎さんの五右衛門は、勅使に化けた貴公子然とした佇まいも、身バレした後の豪快な拵えもとてもよくお似合い。
声や台詞まわしに時折吉右衛門さんを感じて胸熱でした。
呉羽中納言になりすまして、平伏する此下久吉の前を通り過ぎて花道で振り返った時の不敵な笑み。
足利館の奥御殿で幼馴染の久吉と正装のまま腹ばいになり頬杖をついて無邪気に語り合う姿の可愛らしさ。
つづら抜けからの宙乗りで見せる骨太で豪快な所作。
南禅寺山門で「絶景かな 絶景かな~」と余裕たっぷりに煙管をくゆらせる圧倒的な存在感。
対する久吉の錦之助さんはすっきりした二枚目で、特に五右衛門が”五右衛門”となった後はいかにも剛柔の好対照といった趣き。
盗賊に身ぐるみはがされてしまうホンモノの呉羽中納言・大谷桂三さんが、笑われ役なのですが、品よくはんなりしたお公家さんぶり。
脇の役者さんの中に、やたら口跡よくて所作がキビキビ綺麗な人がいる、と思ってよく見たら、右平次左忠太こと鷹之資くんでした。やっぱりね。
そういえば、この演目には、玉太郎くん、男寅くん、竹松くんといった関西ではお見かけする機会があまりないおぼっちゃまたちが勢ぞろいしていて楽しかったです。みんな大きくなったねー(だれ目線(^^ゞ)
券面見ないと思い出せないくらい座席がどこだったかも忘れてしまっていました💦 の地獄度 (total 2300 vs 2303 )
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