
もう次の星組公演も始まって、すでに2回も観たのですが(そしてその印象が強すぎて前の公演の記憶は薄れがちでもあるが)、先に観た雪組公演のレビューを。
まずはお芝居から。
宝塚歌劇 雪組公演
大江戸スクランブル 「夢介千両みやげ」
原作:山手樹一郎
脚本・演出:石田昌也
作曲・編曲:手島恭子
音楽指揮:御﨑 惠
振付:山村友五郎 若央りさ 殺陣:清家三彦
装置:稲生英介 衣装:加藤真美
出演:彩風咲奈 朝月希和 朝美 絢 奏乃はると 千風カレン
真那春人 久城あす 杏野このみ 愛すみれ 和希そら
妃華ゆきの 綾 凰華 諏訪さき 野々花ひまり 希良々うみ
眞ノ宮るい 星加梨杏 縣 千 夢白あや 華世京/汝鳥 伶 ほか
2022年3月20日(日) 3:30pm 宝塚大劇場 1階9列下手/
4月7日(木) 3:30pm 1階6列センター/
4月17日(日) 11:00am 1階18列センター
(上演時間: 1時間35分)
小田原の庄屋の息子・夢介(彩風咲奈)は、父親から“通人”となるため千両を使って道楽修行をするよう言い渡され、江戸へ向かう道中、“オランダお銀”と呼ばれる女スリ(朝月希和)に懐を狙われますが、夢介の朴訥で底抜けな優しさに触れたお銀は一目惚れ、押しかけ女房となり二人は江戸で奇妙な同棲生活を始めます。根っからのお人好しの夢介は江戸でも数々の事件に巻き込まれますが、持ち前の優しさと金の力で解決、そのたびに女にも惚れられて・・・という物語が、飛脚屋の遊び人の若旦那・伊勢屋総太郎(朝美絢)やお銀の幼馴染でスリの三太(和希そら)たち周りの人々を巻き込んで繰り広げられます。

屈託のない明るい喜劇。明るいお話を気楽に楽しむというテイストで、平和で誰も死なず、みんな幸せのハッピーエンド。
最後は夢介の「皆さまお手を拝借」という言葉で舞台客席一緒になって三本締めの手拍子という多幸感。
直前に観た作品がスペイン内戦を描いた宙組の「NEVER SAY GOODBYE」でしたので、そのギャップに思わず苦笑い。
でもこのふり幅の大きさもタカラヅカ。
原作は「桃太郎侍」をはじめ数々の名作を生み出した山手樹一郎さんの代表作の一つということですが、「桃太郎侍」は知っていても山手樹一郎さんは知りませんでした(←)。
ということで事前に原作を読みかけたのですが、夢介がトラブルに巻き込まれる→人のよさとお金を出して解決 の繰り返しで飽きてしまって途中でリタイア。結局あの分厚い原作本の半分も読んでいませんが、この舞台に出てきた登場人物、ごくわずかを除いてほとんど知っていましたし、舞台で描かれたエピソードもほぼ知っているものでした・・・あの原作の残り半分にはいったい何が?・・・というのはともかく、夢介とお銀の出会いに始まって、一つ目の御前(真那春人)一味とのいきさつ、五明楼の芸妓・浜次(妃華ゆきの)娘手品師の春駒太夫(愛すみれ)、悪七夫婦(綾凰華・希良々うみ)の企みから、総太郎をめぐるお松(野々花ひまり)お糸(夢白あや)の一件まで、原作に出てくるエピソードを盛沢山に手際よくまとめたなという印象です
とはいえ、演出にはもの申したい部分もあります。
たとえばお銀が夢介にひと目ぼれするくだりで、ピンクのライトが当たってキラーン

お銀さんが夢介さんに惚れるのはわかったとして、夢介の方がお銀さんに惹かれていく心情は全くと言っていいほど描かれていませんでしたし、上演時間の都合もあるでしょうが、総太郎とお松の関係も説明不足感は否めません。
台詞の言葉選びも、もちろん原作に則ったものもありますが、何だかなぁと感じる部分も多く、「演出誰だっけ?ーあ~、石田先生か⤵」となりました。あくまで個人的な好みの問題でもありますが。
夢介の彩風咲奈さん。
三度笠に股旅姿で「おひけぇなすって」と仁義切る冒頭の登場シーンはカッコいいけれど、あとはひたすらゆったりやんわり朴訥な夢さん。
宝塚のトップがやる役としてはかなり異色で、♪日本イチのお人好し と歌われているままにいい人感満載の夢さんですが、「牛みたいにぼーっとした男」とか言われつつ、お銀をはじめ浜次、春駒太夫といった男を手玉に取っていた側の玄人の女性に惚れられるゆったりしたやさしさと包容力が、彩風さんが醸し出す雰囲気とよく合っていました。
お銀は朝月希和さん。
気が強くて姉御肌で気風がよく、実は情にも厚いお銀姐さんがよくお似合い。
原作のお銀さんは際立った美女なのですが、宝塚はどうしても男役中心なのでそのあたりは軽く流されていて残念。
伊勢屋総太郎の朝美絢さん
♪なんせこの顔 この器量 もててもてて しょうがない 泣かせた女は星の数
というテーマソングがぴったりの美丈夫。
でもなぁ、原作もそうなのですが、総太郎って本当にゲスな男で遊び方も全然”通人”でも何でもない。お松ちゃんにこんな男のどこに惚れたのか聞いてみたいくらいです。
宙組から組替えでこれが雪組デビューの和希そらさんは三太。
原作ではもっと子どもですが、17歳の少年役です。
ひと際口跡がよくて(もちろん声もいい)、所作もキビキビしていて、「和希そらここにあり」と雪組ファンに鮮やかに印象づけた感じ。
ほんと、和希そらくんって何でもできてめちゃうまいのねー。
綾凰華さん演じる悪七は一つ目の御前の一味ですが、ある出来事をきっかに改心して「夢さんのためなら命も投げ出す」というくらい心酔する役どころ。これは原作からふくらませてあって、これが退団公演となるあやなちゃんへのはなむけでしょうか。
綾さんもその思いに応える公演で、ラストステージ、最後のお役を盛り上げてくれました。
原作と違っているといえば、縣千さんの金の字も、私が読んだ範囲では原作には登場しなかった人物。
夢介が江戸までの道中で出会う遊び人金さんですが、名前で察しがつくとおり、ラストは南町奉行 遠山金四郎になって長袴の足さばきも見事にキリリと登場。オトコマエッ!
その登場の直前、暗転の時に「てめえら、神妙にしやがれ!」的な台詞が流れるのですが、多分録音かな?声や口跡がまだまだ女の子で、「あがたガンバレ~」となりました。
娘役さんにもたくさん役があって活躍しているのもうれしいところですが、梅次の杏野このみさん、浜次の妃華ゆきのさんのお二人が、芸妓さんとしての着物の着こなしも所作もお化粧もとてもよくて、さすが日本物の雪組育ちのベテラン娘役さん👏と感心。
逆に、相変わらず抜擢続きで今回も岡っ引き走助で目立っている華世京さんは、台詞はともかく腰は高く、所作はまだまだで、日本物は場数を踏むことも大切だなと改めて感じました。


Instagramには動画をポストしましたが、瞬きするまねき猫くんキュート
→ ショー 「Sensational!」につづく