
星組 瀬央ゆりあさん初東上作品・・・となるはずが、コロナウイルス感染症の影響で2月1日から13日に予定されていた宝塚バウホール公演が中止。私のチケットもあえなく消えてしまいましたが、2月19日から25日の神奈川KAAT芸術劇場公演は完走できて本当によかった。
何とか私も配信で観ることができました。
宝塚歌劇 星組公演
ミュージカル・コメディ
「ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~」
原作:オスカー・ワイルド
脚本・演出:田渕大輔
作曲・編曲:青木朝子 植田浩徳
振付:御織ゆみ乃 桜木涼介
装置:大橋泰弘 衣装:有村淳
出演:瀬央ゆりあ 美稀千種 紫 りら 大輝真琴
綺城ひか理 小桜ほのか 咲城けい 水乃ゆり
詩 ちづる 稀惺かずと ほか
2022年2月23日(水) 3:30pm 配信視聴
(上演時間: 2時間30分/休憩 25分)
物語の舞台は19世紀末のロンドン。
プレイボーイの子爵アーサー・ゴーリング卿(瀬央ゆりあ)は社幾多の女性と浮き名を流す自由気ままな独身貴族。父親のキャヴァシャム卿(美稀千種)からは早く身を固めるよう迫られています。ある日アーサーは、友人である政治家ロバート・チルターン(綺城ひか理)邸で開かれた夜会を訪れると、そこには、かつて密かに想いを寄せ合いながらも今はロバートの貞淑な妻となったガートルード(小桜ほのか)、顔を合わせればいつも喧嘩になるロバートの勝ち気な妹メイベル(詩ちづる)、そして財産目当てでアーサーに近づいたものの、さらに良い条件の相手と結婚するためにアーサーとの婚約を3日で破棄した過去を持つローラ・チーヴリー夫人(紫りら)という、アーサーと関わりの深い3人の女性がいました。今やウィーン社交界の花形となったローラは、政界一高潔な紳士と名高いロバートにある「切り札」をネタに自分の不正な株取引に加担する議会演説を強要していました。苦悩するロバートからすべてを打ち明けられたアーサーは・・・。
オスカー・ワイルドの原作「An ideal husband」(理想の夫)は未読です。
劇中の台詞にも出てきますが、「理想の夫」とはロバートのことで、つまり、本来はタイトルロールであるロバートが主人公の物語を、愛と友情のために時には優しい嘘もつくジェントル・ライアー アーサーを主人公に改変した作品ということになるでしょうか。
とは言うものの、そこまでアーサーを深く掘り下げて描かれてはいなくて、アーサーと彼を取り巻く3人の女性との恋のさや当てがメインのラブコメディといったところかな。
アーサーはいいヤツだけれど、言うなれば苦労知らずのお金持ちのお坊ちゃんで、特にこれといった深刻な悩みもなく、大望もなく、この先もこのままの人生を歩いていくのだろうなという、ビジュアルのカッコよさを除けは取り立てて主役として魅力的な人物とも思えません。
世のため人のために働きたいと政治家を志したものの、貧しかった頃に世に出るためにたった一度だけ犯した不正が元で脅迫され、自分を清廉潔白な”理想の夫”と信じている妻もまた清廉潔白で過ちなどしない人だと苦悩するロバートにこそ、やはり物語はあるなぁと感じました。
アーサーを巡る3人の女性たちとのエピソードでくっきりおもしろいのはローラで、その華やかさ強さ、悪女っぷり、さらにはラストで自分の負けを認めてロバートへの「切り札」にしていた手紙を返してアーサーにひと言残して去っていくところなんて、まだアーサーを思っている切なさも色っぽさもあって、カッコいい大人の女。
この役は本来、音波みのりさんがキャスティングされていましたが休演。
紫りらさんは急な代役にもかかわらず存分に実力を発揮してすばらしかったですが、やはりこの役は音波みのりさんで観たかったなぁと思いました。
というか、原作のある役なのにまるであて書きみたいにはるこちゃんにぴったりの役じゃない?
この後、次の本公演での退団が発表された音波さん。これまでにも数々の名園、名役がありましたが、もし演じることができていたら、ローラ・チーヴリー夫人は間違いなく音波みのりさんの代表作の一つになっただろうと残念でなりません。
この時代の英国紳士という拵えがピタリとお似合いの瀬央ゆりあさんのアーサー。
プレイボーイのチャラ男というよりお育ちも性格もよくて明るいみんなの人気者という造形でしたが、それが瀬央さんの持ち味ともよくハマっていました。
歌は相変わらずのせおっち節ですが、「ま、いいか」と思えてしまうのが瀬央さんの不思議な魅力。
お髭をたくわえてダンディなロバートは綺城ひか理さん。
生真面目で自信に満ちて落ち着いているロバートと、ローラに脅されて動揺し苦悩するロバートの演じ分けも鮮やか。
正義感もあって人の気持ちもわかってビジュアルよしで、まさに”理想の夫”でした。
その妻 ガートルートは小桜ほのかさん。
アーサーへの思いが残っていることを感じさせながらもロバートの貞淑な妻で、曲がったことが嫌いでちょっと融通きかなさそうで、とすべてがわかる演技はさすが。歌も相変わらずよいお声です。
メイベルは月組から組替えしてこれが星組デビューの詩ちづるさん。
105期4人娘(他3人は音彩唯<雪>・星空美咲<花>・山吹ひばり<宙>)の中では役付きが少し出遅れた感がありましたが、ここへ来て実質ヒロイン。最終的にアーサーと結ばれる役です。
台詞やドレスの裾さばきや所作などまだまだのところももちろんありますが、何と言ってもかわいいし歌えるし、台詞の声もくせがなくて好感。これからが楽しみです。
同じ105期の稀惺かずとさん。
ロバートの秘書でメイベルにずっとご執心のトミーがはじけた役で笑いも取って目立っていました。
こちらも目一杯感はあるものの、明るい華はさすがです。
言わずと知れたサラブレッドですが、去年の別箱「婆娑羅の玄孫」でも目立った役をもらっていて、劇団、いよいよ上げてきたなという感じ?
2月に配信で1回観たきりではトーゼン忘れ気味← の地獄度


