
ハリウッド映画史上最高のダンスペアと称されるフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが共演したハリウッド黄金期のミュージカル映画「TOP HAT」。
1935年公開に公開されたこの映画が2011年にイギリスで舞台化されて大ヒット。
2015年には朝夏まなとさん主演の宙組で日本初演された作品です。
フレッド・アステアを尊敬してやまない柚香光さん、待望の再演です。
宝塚歌劇花組公演 ミュージカル 「TOP HAT」
Music & Lyrics by Irving Berlin
Based on RKO’s Motion Picture
Book by Matthew White & Howard Jacques
脚本・演出:齋藤吉正
音楽監督・編曲:手島恭子 音楽指揮:橋本和則
振付:御織ゆみ乃 本間憲一 三井聡
装置:稲生英介 衣装監修:加藤真美 衣装:植村麻衣子
出演:柚香 光 星風まどか 水美舞斗 音 くり寿 航琉ひびき
華雅りりか 羽立光来 帆純まひろ 一之瀬航季/輝月ゆうま ほか
2022年3月21日(月) 3:00pm 梅田芸術劇場メインホール 3階2列上手/
3月30日(水) 4:30pm 1階8列センター
(上演時間:3時間/休憩: 30分)
2015年 宙組版の感想はこちら
ストーリー: 英国人プロデューサーで友人のホレス(水美舞斗)の招きでロンドンの舞台に立つことになったブロードウェイの人気ミュージカルスター・ジェリー(柚香光)が滞在先のホテルで出逢ったモデル・デイル(星風まどか)に一目惚れ。
互いに想いを寄せあうようになりますが、デイルがジェリーのことを親友マッジ(音くり寿)の夫(ホレス)と勘違いしてしまい、激怒し悩んだ末、あてつけに自分のパトロンであるデザイナー・ベディーニ(帆純まひろ)と結婚してしまいます・・・。

いかにも古き良き時代のハリウッドといった趣きの他愛のないドタバタラブコメ。
観ている私たちにはわかっているデイルの勘違いがもとでいろいろありつつ、お決まりのハッピーエンドで、明るい気分になれるミュージカルです。
ストーリーを楽しむというより、これでもかと挿入されたダンスや歌、ショーシーンは見応えたっぷり。
Irving Berlinの音楽はもちろんすばらしくて、生オケで、オーバーチュアも送り出し音楽もついている贅沢さ。
役者さんは皆さん適役好演。
シルクハットにタキシードがこの上なく似合う柚香光さんがいかにも楽しそうにのびのび踊っている姿が、ハッピーオーラそのものでした。
オープニングのタップはじめダンスシーンはいずれも楽しく美しく見応えたっぷりですが、特にすばらしく印象に残ったのは、ヴェネチアのホテルでジェリーとデイルが踊る CHEEK TO CHEEK のデュエットダンス。
エレガントに軽やかに、息もピッタリに踊る二人を観ているだけで多幸感。
ポスターにもなっているデイルのピンクのドレスがとてもかわいいのですが、ふわふわと揺れる裾さばきも綺麗。
くるくる回るリフトはもちろん、ジェリーがデイルを横抱きみたいなポーズになってデイルが上げた左足に右足を上げて合わせる振付(語彙力💦)、最初に3階から観た時、「何?今の?!」と震えました。
調べたところ来日版(2015年)のポスター(↑これね)にもなっていた有名なポーズらしいです(今回は左右逆でしたが)。
あの CHEEK TO CHEEK のダンスシーンだけでも通えるレベルでした。
Heaven, I'm in Heaven
二人で頬寄せあえば 恐れることは何もない
まるで天国のよう Cheek to Cheek
って歌詞もカワイイ。
演出は初演とほぼ同じという印象でした。
映像を使った映画のようなキャスト紹介から始まるオープニング。
初日(3/21)は、東京から急に来られなくなった友人のピンチヒッターで観た3階席で、映像の上の方が見切れてしまい「ヨシマサ、またかよ」と思いました。ちなみにこれは演出の問題ではないですが、梅芸3階は音響も甚だ悪くて歌も台詞も大変聴き取りにくいです。
齋藤吉正先生、映像をよくお使いになる演出家さんですが、私の記憶する限り、大劇場含めてこれまで2階、3階から観て見切れなかったことは一度もないです。
劇場中から観てちゃんとチェックしているのかと疑いたくなりますし、もしそれでよしとしているなら、それはそれで不信感。
もちろん大きな劇場でステージの映像をどの席からも完璧に観ることが不可能なのは承知しています。でも、大切な情報(キャストの顔写真や名前)などは見切れないようにするのが演出家の手腕であり工夫すべきところなのでは?
演出面では他にも、たとえばイタリア人であるベディーニの話し方・・・版権の制限があるのかもしれませんが、外国人であることを表現するためにあの話し方をするのは今の時代にはとてもold fashioned という印象です。大体、ホテルの支配人とか他のイタリア人はそんな話し方しませんし、ベディーニはある意味”道化役”で、それを強調するためならなおさら、他にいくらでも方法があるはず。帆純まひろさんはめちゃめちゃがんばっていたけれどもやらされ感を感じて残念。
他にも脚本の書き込み不足では?と感じられるところや訳詞もどうかなと感じる部分(ここも著作権が絡むのかもしれません)が散見されて、演出にはいささか不満はありますが、花組の皆さんのハッピー感満載のおかげで楽しい時間を過ごしました。
宙組を観たのは7年前なので細かいことは忘れてしまっているのですが、主演2人の印象が違うと作品そのものの雰囲気も変わるのも興味深かったです。

柚香光さんのジェリーはブロードウェイの人気スターで、多分モテモテキャラなのでしょうが結構一途で一本気な感じ。
ひたすたまっすぐブレることなくデイルを求め続けているジェリーでした。
お得意のダンスはタップ含めしなやかで優雅でまるで重力ないような軽やかさ。
クールな美貌に黒燕尾がよく映えます。
歌はいつもの柚香くんですが、声はよく出ていた印象です。
星風まどかさんのデイルはまずビジュアルが優勝。
金髪のフラッパー風の巻き髪がよくお似合いで、衣装もどれもよく映えます。そりゃジェリーもひと目ぼれするってものです。
ぶんすか怒っているところも、ジェリーに惹かれていくところも、親友の夫と思い込んで悩む姿もよき。
歌もダンスもハイクオリティで、唯一のウィークポイントである滑舌も今回は全く気になりませんでした。最強だな。
水美舞斗さんのホレスは柚香さんと同期ということもあってバディ感たっぷり。
心配性で小心者にはあまり見えませんでしたし、むしろジェリーよりチャラ男っぽいイケオジといった雰囲気でしたが、それがよくハマッていました。
キレのあるダンスはもちろん、マッジと掛け合いで歌う♪それ以外は I love you~ もとてもよかったです。
妻マッジはの音くり寿さん。
さすがに歌も演技もお上手。
ただ、台詞の言い回しが、多分映像でたくさん研究されたのだと思いますが、宙組版の純矢ちとせさんにそっくりに聞こえたのが気になりました。
お得意の歌はもちろん完璧で、プロローグのタップでは娘役には珍しい黒燕尾にハットでセンターでイキイキと踊っていらっしゃいました。
宙組版で愛月ひかるさんがれまでのイメージを覆すキャラクターを演じて話題になったべディーニは帆純まひろさん。
私なんて花組で「TOP HAT」やるとわかった時、「べディーニ誰がやるんだろ?」と真っ先に思ったくらい印象的な役です。
端正な二枚目という雰囲気の帆純まひろさん、体当たりの熱演でした。
2回目に観た時は、ジェリーとホテルの部屋で2人になるシーンで何度も綺麗な側転を披露して、ジェリーに「できないんだろ?」なって言ってました(^^ゞ
初日のご挨拶で航琉ひびき副組長が「奇跡の95期トリオ」とおっしゃった、専科から特出の輝月ゆうまさんはホレスの付き人ベイツ。
いかにも謹厳実直で折り目正しく、常にポーカーフェイス。しかも神出鬼没で七変化というベイツをさすがの力量で見せてくれました。
歌がないのは残念でしたが、フィナーレ群舞ではガンガン踊る姿を観られてうれしかったです。
ヴェネチアのホテルでマッジに 飲み物オーダーされたりデイルのタバコに火を付けてもあげるウェイターさんがいかにもイタリア男なチャラい感じのイケメンで注目したのですが、プログラムを見てもいつもウェイター4人(愛乃一真・太凰旬・涼葉まれ・天城れいん)同じ場面に出ていて特定できず・・・お顔立ちの記憶から、太凰旬さんかと思いましたが、調べたところ、ロベルト 愛乃一真さんだった模様。
SHOW TIME という名のフィナーレは
華雅りりか・帆純まひろ・一之瀬航季の歌ダンス → 柚香光センター 男役娘役群舞 → 水美舞斗・音くり寿中心 男役娘役群舞 → 柚香光・星風まどかデュエットダンス という構成。
デュエットダンス、劇中の CHEEK TO CHEEK とはまた違った趣きのダンスでしたが、最後、柚香光さん片手リフトしていて「すごい~👀」となりました。
大階段パレードはなくて、主要キャストは一人ずつ出てきて拍手で迎えられていました。
3月30日はe+貸切。
ロンドンのホテルでポーターさんがチップをねだる場面はじめあちこちで「イープラス」のアドリブ入るのも楽しかったです。
本日(4/6)千穐楽 無事完走おめでとう!
それでもやはりヨシマサ先生とは気が合わない の地獄度


