2022年04月02日

中村屋ファミリーが春と一緒にやってきた 「陽春特別公演2022」


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中村屋さんの春の公演は3月に全国16ヵ所で開催される「春暁特別公演」と3月30日から4月4日まで5ヵ所をまわる「陽春特別公演」があって、
どちらも関西に来てくださったのですが、勘九郎さん、七之助さんの「かさね」をまだ観たことがないし、勘太郎くん・長三郎くんも出るしということで「陽春」の方を選びました。

「『かさね』はパリで踊ったことあるけど日本で踊るのは今回初めて」と七之助さんがトークでおっしゃっていて、やっぱりこちらを選んで正解!となりました。


「中村勘九郎 中村七之助 中村勘太郎 中村長三郎 陽春特別公演2022」
2022年3月31日(木) 11:30am フェニーチェ堺 大ホール 1階9列センター



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会場に入って、中村屋さんのこの黒・白・柿色の定式幕と角切銀杏の揚幕を見たら何だか胸がいっぱいになりました。


一、玉兎 
出演:中村勘太郎  中村長三郎
  (上演時間: 18分)



丸い月の中にシルエットで浮かび上がるお餅つきをする月之助(勘太郎)、兎之助(長三郎)。
もうこの時点でかわいくて客席のあちこちから笑い声や「かわいい」という声があがっていたのですが、その満月の中から飛び出してくるようにリアル二人が現れた時は思わず私も「あー」と声が漏れてしまいました。

観ているだけで顔がほころんでしまうかわいらしさ。
少し見ない間に勘太郎くんがグンとお兄さんになっていて、イメージしていたより身長差のある二人になっていました。
4月から6年生になる勘太郎くんと3年生になる長三郎くん。差が出やすい時期ですね。 

月の中で兎が餅つきをしている説を題材にした舞踊で、本来は一人で踊るものですが今回は二人のためにつくられたもの。
途中には「カチカチ山」のうさぎと狸を思わせる振りもあって、楽しい舞踊となっていました。

二人とも教えられたことを日一つひとつきっちり丁寧に踊っている印象でしたが、勘太郎くんが一人で踊る時、小さい長三郎くんがきちんと正座して両手をひざに置いてじっと見ていて、自分の出番になるとすっと立って前へ出ていく姿がいじらしくて立派でウルウル。


二、トーク&ミニ歌舞伎塾
出演: 中村勘九郎  中村七之助  中村勘太郎  中村長三郎/中村いてう
(上演時間: 45分)



前後の演目の準備の都合もあってか

・勘九郎・七之助トーク
・いてうミニ歌舞伎塾
・勘太郎・長三郎トーク

の三部構成。
司会進行は元フジテレビアナウンサーの吉崎典子さん。


勘九郎・七之助トーク
今回の巡業は息子さんたちと一緒で勘九郎さんは「にぎやかだけど大変」。
七之助さんは「ただただ楽しい」と相変わらずのおじばか(?)っぷり。
でも今日の楽屋は七之助さんだけ個室でさびしいのだそう。勘九郎さんは「息子たちと一緒でギュウギュウです」。

阪神ファンの七之助さん、開幕から5連敗中の阪神が心配なご様子。
「福助のおじと毎日LINEしてて。『負けほー』とかくる」のだそうです。

今回の演目「かさね」について、冒頭にも書きましたが、七之助さんは「パリで踊ったことあるけど日本で踊るのは今回が初めて」とおっしゃっていました。
勘九郎さんはあらすじを説明した後、「だから観終わった後は私のことが嫌いになると思います。与右衛門のことは嫌いになっても私のことは嫌いにならないでください」と。

「筋がよくわからないという方は今日のプログラムに歌詞が全部載っていますのでぜひどうそ。息子たちの初舞台の写真なんかもたくさん載ってて。」というプロモーションにまんまと乗せられて幕間につい買ってしまいました、
4人の舞台写真がカラーでたくさん掲載されていて1,000円はお得な感じですが、写真にキャプションが全くついていないのがいかにもチャチャッとつくった感じ(笑)。

七之助さんはご自身の「ラジのすけ」というラジオ番組の告知とI巡業で訪れる各地の名所をInstagramにアップしていることを話されていました。
そうそう、毎回いろんなところに行ってインスタあげてるなと思っていたのですが「毎日更新するようスタッフに命じられているんです。ほんとは行きたくないんですけど」とおっしゃっていました。そうだったのかー(^^ゞ

この日終演後、フェニーチェ堺の裏手側を歩いていて、私服に着替えてタクシーで外出する七之助さんと遭遇。
「早速撮影に出かけるのね。昼の部終わったばかりなのにお疲れさまです」と思ったのですが、この日の撮影場所は仁徳天皇陵だった模様。


大阪の思い出として、七之助さんは大阪城と扇町公園の「平成中村座」をあげていらっしゃいました。
特に扇町公園は「観客としてしか観ていないので、またあそこでやって出てみたい」「19歳で、『ラストサムライ』の撮影の後に観に行ったんだよね」と。

2002年の扇町公園は私にとっても平成中村座の原点。
あの公演の緑の中に駆け出して行った勘三郎さんの団七と芝翫(当時橋之助)さんの徳兵衛の姿が目に心に焼き付いています。
またあの場所で観ることができたらどんなに幸せでしょう。


ミニ歌舞伎塾
中村いてうさんが歌舞伎のあれこれをご紹介。
つけ打ちや大太鼓の実演でいろいろな効果音についてのご説明はこれまで何度も観たことがありますが、大太鼓が雨や風や人でないものなどをいろいろ音で表して「この後の『かさね』に今やった音は全部出てきますので聞いてみてください」とおっしゃっていて、ちゃんと連動しているところ、さすがだなと思いました。

その後、中村仲助さん、仲侍さんが登場して殺陣の実演。
いてうさん含めてどなたか登場するたびに吉崎さんが「○○県出身 お弟子歴△年」と紹介されるのが何だかおもしろかったです。


勘太郎・長三郎トーク
お化粧を落とし、羽織袴で登場した二人。
勘太郎くんが、まずは長三郎くんを緋毛氈を敷いて床几に座らせて、羽織の裾を整えてあげてから自分お席に座るのに感心。

「今日の出来は何点ですか」という質問に
勘太郎くんは「80点」
昨日は99点だったそうで、「いろいろ指摘されたから」と。
長三郎くんは「100点を目指したいと思います」と8歳とは思えぬお答え。

「ごはんを炊いたりお味噌汁をつくったり」とお家のお手伝いもいろいろするそうで、「どんなふうにするの?」という吉崎さんの質問に「話すと長くなっちゃうけど」と言いながら「お米にお水を入れて、一番最初のお水はすぐ捨てて、少ないお水で指を立てて・・・」とお米の研ぎ方を説明する長三郎くんに、お母さまがきちんと教えてやらせていらっしゃるのだろうなと感心することしきり。

長三郎くんは3年生になったら組替えがあるそうで、「新しいお友達に会うのが楽しみ」なのですって。


三、色彩間苅豆 かさね  
出演:中村勘九郎  中村七之助  中村仲助  中村仲侍
(上演時間: 50分)



「かさね」といえば、幸四郎さん&猿之助さん至上主義の不肖スキップではありますが、このお二人ならハマるだろうと思ったとおり、とてもよかったです。

勘九郎さんの与右衛門は、以前の勘九郎さんなら多分「誠実な感じ」が先に立ったと思うのですが、そんな片鱗はすっかりなくなり(笑)、いかにも冷酷で残酷で、人殺しも平気でやりそうな少しイッちゃっているような目が印象的な与右衛門でした。
かぶった菰を取って決まる姿の美しさ。
殺し場の一つひとつの鮮烈な所作。
連理引きはもう少し幸四郎さんから教わって~と思いましたが、これは花道がないことも影響しているでしょうか。

一途さと哀しみ、そして怨念への変化が見事な七之助さんのかさね。
愛しい与右衛門に逢えた喜び、与右衛門の真実を知った驚きと哀しみ、愛する人に命を絶たれた怨念・・・どの表情もゾクッとするほど美しかったです。
そして、与右衛門に殺される断末魔の海老ぞりの際立った美しさ。
醜い顔になってからのかさねがお化粧がいつもと違うような気がして過去の他の人の画像を調べてみたのですが、あの片目を青みがかった隈取のように描く同じお化粧でした。言い方がおかしいかもしれませんが、七之助さん、とても似合っていました。

ただ、死んでしまったかさねの怨念が与右衛門を手招きするところはねー。
猿之助さんの絶品の”左手”の印象が強烈なので、美しさも切なさも不気味さももうひと息といったところ。
でも何と言っても日本初演ですから。これからの七之助さんのかさねに期待です。

清元が延寿太夫さんで尾上右近くんのお兄様でした。
そういえば2019年の巡業で幸四郎さんと猿之助さんが「かさね」をやった時(こちら)の清元は栄寿太夫こと右近くんだったなぁと懐かしく思い出しました。不思議なご縁です。



いつか勘太郎くん長三郎くんで「かさね」やるかなぁ。早くしてくれないとおばちゃんの体力の限界が先になっちゃうわ のごくらく地獄度 (total 2283 vs 2281 )


posted by スキップ at 22:37| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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