2022年03月27日

観る前から敗北 「INTO THE WOODS-イントゥ・ザ・ウッズ-」


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スティーヴン・ソンドハイムが1986年に発表、翌年ブロードウェイで初演されトニー賞3部門受賞したミュージカル。
2014年には、メリル・ストリープやジョニー・デップなど豪華キャストでディズニーの実写映画化もされました。

日本でもこれまで4度上演されているそうですが、今回は新翻訳、新演出での上演。
そして何といっても話題を集めたのは、望海風斗さん宝塚歌劇団退団後初舞台(コンサート「SPERO」「エリザベートガラ」はあったけれど)。
情報公開されるや私の周りの熱いnozomistさんたち、グッと前のめりでした。


ミュージカル 「INTO THE WOODS-イントゥ・ザ・ウッズ-」
作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
脚本:ジェームズ・ラパイン
演出:熊林弘高
翻訳・訳詞:早船歌江子   音楽監督・指揮:小林恵子
美術:杉浦充   照明:笠原俊幸   衣装:原まさみ
出演:羽野晶紀  古川琴音  毬谷友子  湖月わたる  朝海ひかる  
廣瀬友祐  花王おさむ  福士誠治  あめくみちこ  鈴木玲奈  
渡辺大輔  福井貴一  渡辺大知  瀧内公美  望海風斗  麻実れい(声の出演) ほか

2022年2月11日(金) 1:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階10列下手
(上演時間: 3時間10分/休憩 20分)



むかしむかしの物語。
ある王国の村のパン屋夫婦(渡辺大知・瀧内公美)子どもが授かりません。というのも、魔女(望海風斗)の呪いがかけられていたから。
魔女は夫婦に、呪いを解いてほしければ森へ行き、①ミルキーな白い牛 ②血のような赤い頭巾 ③黄色いコーンの髪 ④きらめく金の靴 を3日後の真夜中の鐘が鳴るまでに取ってこいと言います。
森へ入ったパン屋夫妻が出会うのは、それぞれに充たされない人生の屈折を抱えたおとぎ話の主人公たち。赤ずきん(羽野晶紀)は思春期真っ只中、シンデレラ(古川琴音)は継母(鞠谷友子)や姉(湖月わたる・朝海ひかる)たちにいじめられながらも王国のフェスティバルへの出席を計画、『ジャックと豆の木』のジャック(福士誠治)は唯一の財産である雌牛を豆5粒と交換してしまったり。そして塔の上に住むラプンツェル(鈴木玲奈)は母である魔女の言いつけを守り、幽閉の孤独に耐えています・・・。


人は自分のため、家族のため、自分の大切な人のために必死に努力をして生きていますが、その影で知らない誰かの人生が犠牲になっている・・・お互いの犠牲亡くしては人間の世の中は成り立たない。本当の敵は誰もが自分だけの幸福を願うがゆえのジェラシー、妨害、嘘、策略、罠。
人が本質的、普遍的に持つ「人間の業」がテーマとなっています。

このテーマや作品が描き出す世界観は嫌いではありません。
子どもの頃に読んだ「赤ずきん」をはじめとする童話の主人公たちが「えっ!」というようなキャラクターだったりするのもおもしろく観ました。

ただ、この舞台については、”観る前の雑音”が多すぎた-これにつきます。


このブログにもよく書いてきた通り、私は舞台を観るにあたり”予習”をしない派。
自分が観るまでは、元々知っている作品を除いては事前に原作もあらすじも読みませんし、劇評や他の人の感想、ツイートなども読みません。キャストもよくチェックしていなくて、出てきた人を観て驚くのはそれでいいのか、とは思いますが(^^ゞ

でもね

この作品については、東京(日生劇場)で先に上演されて、待ち望んで観た友人の複数のnozomistさんたちから失望、というか怒りのような感想が送られてくる訳です、LINEで。
TwitterはシャットダウンできてもLINEは読むというものです。
それで「もういいや」という気分になって、流れてくるツイートも読むに至った次第。
これでもう観る前から敗北感満載でした。


主な不評の理由は「一部の出演者の歌唱力」と「演出」でしたが、そんな人たちの感想がほぼすべて判で押したように、「作品としては全然よろしくない。けど、だいもん(望海さん)はすばらしい」で一致しているのがちょっとおもしろかったです。

実際に観てみると、歌はかなり覚悟していましたが、私が最も苦手だったのは、さしておもしろくもない(というかむしろ寒い)ギャグが散りばめられていたことと、突然挟み込まれる関西弁です。
それをかのだいもんまでもがやらされている姿が何とも痛々しい。
この作品は初見で映画も観ていませんが、オリジナルのジェームズ・ラパインの脚本にあんなギャグや関西弁があったとはとても思えませんので、これは今回の脚本ひいては演出の問題かと思います。
キャストの歌唱力についても、そもそもミュージカル俳優じゃない人間を起用しているところに根源があるので、これについてもやはり演出家が負うところが大きいのではないかしら。

歌唱力についてはなるほどとは思いましたが、東京での酷評が行き渡っていたためか、特定のキャストだけソロ歌唱の後に拍手入らないのはなかなかシュールでした。そのために演技力含めて正当な評価がされていないようにも感じました。


そんな中、元々ファンだった人からも、ヅカを知らないミュージカルファンの方々からも絶賛されている望海風斗さんは確かにすばらしかったです。
望海さんが歌い始めると客席の空気が変わるのが感じられるくらい、場の支配力が抜きん出ていました。
もとより歌うまさんですが、高音もさらにのびやかになって、ソンドハイムさんの難曲も望海さんが歌うと難しそうに聞こえないのがすばらしい。もちろん華やかで求心力もあり、さすがの力量をいかんなく発揮していました。
ミュージカル界でのこれからの活躍が見えるような、くっきりした足跡を残したデビュー作なったと思います。

声だけでいかにも巨人を感じさせた麻実れいさんさすがでしたし、とても贅沢な使われた方していたシンデレラの意地悪なお姉さん二人の湖月わたるさん、朝海ひかるさんの濃さも好きでした。

メインキャストではないけれどシンデレラの影をやった人が立ち姿や所作が綺麗で素敵だなと思って調べたら則松亜海さんでした。
ヅカ時代の芸名は夢華あみさん。96期でいろいろあったけれど、歌もとても上手な娘役さんなので歌のない役はもったいなかったな。

男優陣は廣瀬友祐さん、渡辺大輔さん、福井貴一さんといったミュージカル俳優陣が歌を牽引する感じでしたが、そんなに聴くに堪えないという人はいなかった印象です。
ジャックの福士誠治さんは元々歌える役者さんでもあり。


その福士くん。
カーテンコールラストで下手にはけながら客席に投げキッスしたの超キュートでした。
が、後ろに続いた望海さんが同じように笑顔で投げキッスしたら福士くんの時の5倍くらい盛大な拍手起こったのさすがでしたし、nozomistさんたちどんだけ観てるんだと思いました。
下手の席でしたので望海さんのちょっとドヤった笑顔と、福士くんがえ〜っという感じで望海さん振り返るところまで間近で観られてこちらも笑顔で out of the woods




先入観が入ってしまうと楽しめない典型的なパターンでした の地獄度 (total 2282 vs 2279 )


posted by スキップ at 21:24| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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