2022年03月23日

さぁ 涙をふき 顔をあげて 歩くんだ 宙組 「NEVER SAY GOODBYE」


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2月5日に初日を迎える予定だった公演。
関係者のコロナウイルス感染の影響で延期となり、2月28日にやっと開幕。
宝塚大劇場では2週間だけの公演となってしまいましたが、とても完成度が高く、迫力たっぷりの熱い舞台が繰り広げられました。


宝塚歌劇 宙組公演
ミュージカル 「NEVER SAY GOODBYE」-ある愛の軌跡-
作・演出:小池修一郎
作曲:フランク・ワイルドホーン  
音楽監督・編曲:太田健   編曲:青木朝子
音楽指揮:西野淳
振付:御織ゆみ乃  若央りさ  島崎徹  桜木涼介  KAORIalive  鈴懸三由岐
装置:大橋泰弘   衣装:有村淳
出演:真風涼帆  潤 花  芹香斗亜  寿つかさ  松風 輝  春瀬央季
桜木みなと  瀬戸花まり  紫藤りゅう  留依蒔世  瑠風 輝  
若翔りつ  優希しおん  天彩峰里  鷹翔千空  水音志保  
風色日向  亜音有星  奈央麗斗/夏美よう ほか

2022年3月1日(火) 1:00pm 宝塚大劇場 1階4列センター/
3月10日(木) 11:00am 2階1列センター
(上演時間: 3時間5分/休憩 35分)



1936年 アメリカ・ハリウッドで出会ったポーランド人の写真家ジョルジュ(真風涼帆)とアメリカ人劇作家キャサリン(潤花)。
ナチス政権下のベルリンオリンピックに対抗してバルセロナで開催される人民オリンピックを取材に訪れたジョルジュはキャサリンと運命的に再会、二人は恋に落ちますが、折しも勃発したスペイン内戦に巻き込まれていきます・・・。

2006年に宙組トップコンビ 和央ようか・花總まりのサヨナラ公演として小池修一郎先生が書き下ろし、宝塚歌劇が初めてフランク・ワイルドホーン氏を音楽に招聘した作品でもあります。さらには、この作品で初舞台を踏んだ92期生の真風涼帆さんがトップスターとして堂々の主演・・・とエモーショナルな話題も満載の舞台。

初演は、映像でチラ見したくらいです。
ラストのジョルジュとキャサリンの別れのシーンで花總まりさんが流した一筋の涙が印象的でした。
ここでジョルジュが歌う主題歌「NEVER SAY GOODBYE」をはじめ「ONE HEART」「俺たちはカマラーダ」など数々の名曲はこれまで幾度となく聴いて耳覚えがあります。



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3/10に2階席から観た時、カメラマジックでこんな奇跡の1枚が撮れていました


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普通はこんな感じ。

ちなみに、公式サイトの公演案内のタイトルはすべて大文字表記ですが、ポスターやプログラム表紙、このオープニング幕などは全部 Head Capital になっています。
どちらかに統一してほしい~。



スペイン内戦については、ピカソの「ゲルニカ」やロバート・キャパの写真「崩れ落ちる兵士」をはじめ、ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」は学生の頃読みましたし宝塚歌劇でも観たことがあり、直近では2020年に舞台「ゲルニカ」など断片的な知識はあって、人民戦線軍とファシズム勢力(この作品中では「反乱軍」と称されている)の闘争という認識だったのですが、何も理解していなかったことを思い知りました。またしても「昔はものを思はざりけり」だわ。
まず王政から共和制への移行があり、そこにフランコ将軍率いる軍部のクーデターが起こり、政府軍はソ連の支援を受けるPUSC(統一社会党)と自由主義を掲げるPOUM(統一労働者党)に分裂、そのどちらも良しとしない民衆による人民軍が立ち上がったこと、ベルリンオリンピックに対抗して「ポプラール・オリンピアーダ」(人民オリンピック)が開催される予定だったこと、中止になって帰国できなかった選手団はスペインの民衆とともに戦う道を選んだこと、などを今回やっと理解しました(遅すぎ💦)。

この内戦の終結を知っている私たちは、マタドールを辞めて戦線に参加するヴィセント(芹香斗亜)や、各国のオリンピック選手たちの決意、民兵となった市民たちが女、子どもまで訓練する場面など観ているだけで胸が締めつけられる思い。
それは折しもロシアのウクライナ侵攻という今の世界情勢とも重なり、何度も涙が溢れました。

それをさらに感動的なものにしたのが宙組の重層的で力強いコーラス。
反乱軍に市民たちが立ち向かう市街戦の「ノー パサラ」、一幕終わり ジョルジュの♪一つの心に 固く結ばれ 明日を目指し 歩いて行く 友を信じて から始まる「ONE HEART」の大合唱、二幕の市街戦「バルセロナの悲劇」。
いずれも大人数でのナンバーが圧巻で、コーラスが劇場じゅうを包み込むような迫力です。

闘牛の場面のムレータさばき、オリンピアーダ開会式リハーサルの大きなフラッグを使った群舞、二幕冒頭のサン・ジョルディの祭など、宝塚らしい華やかなシーンも織り交ぜつつ、骨太の物語、とても見応えがありました。
ラストはさすがにサヨナラ公演っぽいと感じましたが、初演を観ていませんのであまりそれは意識せずに観られたのもよかったです。


マドリードでオランダ義勇軍と合流することになり、一緒に行くというキャサリンに自分が撮った写真のフィルムを託し、「アメリカに帰って君がキャプションを書いて写真集を出版してほしい」と告げるジョルジュ。
二人とも今離れてたらもう二度と会えないことは覚悟の上で「わかったわ」とフィルムを受け取るキャサリン。

ここでジョルジュが歌う
♪さぁ 涙をふき 顔をあげて 歩くんだ
 僕は生きてる 君の中に 
 だから言いはしない サヨナラだけは NEVER SAY GOODBYE
 
この部分の歌詞、プログラムには載っていないのですが、ミュージカルの楽曲として、心情、情景を簡潔かつ余すところなく伝えていてすばらしいと思います。
小池修一郎先生 天才。そしてもちろん、このメロディラインをつくり出したワイルドホーンさんもやはり天才。


真風涼帆さんジョルジュ。
売れっ子の写真家でありながら自分をデラシネ(根無し草)と表現する孤独の影がよくお似合い。
真風さんは表情も台詞の抑揚も比較的振り幅小さめだと思うのですが、それがこのジョルジュのキャラクターにはよくハマッていたと思います。
歌はいつもの真風くんでしたが、とても丁寧に歌っていた印象。衣装はどれもよく似合って、ビジュアル完璧。この時代の、股上の深いズボンにサスペンダー、あんなに似合う人いる?(しかも電話しながらシャツを腕まくり)

潤花さんはキャサリンと、狂言回し的な役のキャサリンの孫娘・ペギー。
美しく華やかでヒロイン力抜群。
ぶんすか怒っている気の強さもよくお似合いで、衣装の着こなしもすばらしい。
課題の歌は、今回、キーを下げているのかな?地声で力強く歌えていました。高音ファルセットだと別人のようになるのはご愛敬。
現代的な衣装と語り口のペギーがとてもよくて、本来はこちらがニンの役かなとも思いました。
そういえば、ペギーと一緒に出てくるビセントの孫エンリケの奈央麗斗さんは107期生で研1。これからが楽しみです。

芹香斗亜さんは花形マタドールの座を捨てて人民軍に加わるヴィセント。
黒髪に浅黒い肌、いかにも精悍なマタドールでコスチュームがことのほかお似合い。
芝居も歌も安心安定のハイクオリティ。初演時よりボリューム大きくなったらしきソロ曲も聴かせてくれました。

ビセントの恋人テレサは水音志保さん。美人さん。抜擢ですね。
「夢千鳥」の時はそれほど思わなかったのですが、台詞がちょっと一本調子かな?
それでもビセントがオランダの義勇軍と合流することを決めた時、「行かないと言うような男なら惚れなかったよ」という台詞でぶわっ涙出ました。

桜木みなとさんはPUSCの幹部アギラール。
反乱軍は舞台には現れす目に見えないので、ジョルジュたちに立ちふさがる一番の敵役。
人間的な感情を持たない(わりにはキャサリンには惚れてたらしいけれど)ような冷徹な役をクールに演じていました。

ハリウッドの大女優でジョルジュの恋人エレンは天彩峰里さん。
こちらも潤花さんに負けずとも劣らず華やかで美しく、いい意味で大女優の傲慢さも出ていて、歌唱もすばらしくとてもよかったです。
「忘れてしまったの パリで交わした熱い口づけと炎の夜~」とジョルジュを責める場面の歌詞がドストレートで「!!」と思いましたが、それに対するジョルジュの答えが「君を傷つけたのなら謝るよ。でも出会ってしまったんだ」で、もう、ほんと男ってやつは💢となりました。

民兵となる各国オリンピック選手に、紫藤りゅう、瑠風輝、鷹翔千空、優希しおん、風色日向、亜音有星と若手イケメンが配されていましたが、一人「国へ帰る!」と脱落した後、PUSCに捕えられてアジトを自白させられてしまうタリックの亜音有星さんが目立つもうけ役かな。

そして、留依蒔世さんのラ・パッショナリア。
「プロミセス、プロミセス」で急な代役で見事なマージを演じた時も驚きましたが、今回配役が発表された時も「ルイマキセ、また女役?!」とざわつくとともに期待も高まりました。
その期待に十分すぎるほど応えたラ・パッショナリア、すばらしかったです。
もともと歌うまさんですが、あんなにのびやかで力強い高音が出るとは。
小柄で少年っぽい男役ではなく留依蒔世さんは十分男らしくたくましい男役(笑)なのでそのギャップにも驚きますが、今回の役はオーディションで勝ち取ったのだとか。
訓練のシーンで♪女だから腕の力 少し弱いけれど~ と歌っていましたが、誰よりも強そうなんだけど、ルイマキセ

歌唱でいえば、若翔りつさんの市長と短い出番ながら瀬戸花まりさんの占い師アニータも印象的でした。


フィナーレは
芹香斗亜さん主題歌銀橋ソロ → ロケット → 真風さん中心の男役群舞 → 娘役引き連れた芹香十亜さん大階段に現れて加わって男女総踊り → 真風さん銀橋、他の男役舞台と大階段で全員ムレータ振り回しての群舞 → 真風さん抜けて芹香さん中心の男役・娘役群舞 → 真風さん・潤花さんデュエットダンス という構成でした。

初日から話題になっていたKAORIaliveさん振付のムレータの群舞が圧巻で、終わった瞬間「もう1回観たーい!」と思いました。
2階席から観た時は、大階段に芹香さん登場して以降のフォーメーションが神がかっていました。
留依蒔世さんがフィナーレでも女役のままで、芹香さんと組んで色っぽい大人のダンスを見せてくれたのも素敵でした。


パレード:
エトワール 天彩峰里
亜音有星・鷹翔千空・風色日向
紫藤りゅう・留依蒔世
瑠風輝
桜木みなと
芹香斗亜
潤花
真風涼帆

 
瑠風輝さん 初の一人降り おめでとー!



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2回しか観に行けなくてもちゃんとスターバスケット食べました。

スターバスケット~COSMOS~
 ・明太風味のちくわサラダドッグ
 ・魚介風味のトマトスープ
 ・フライドポテト
 ・スティック野菜 2種のディップソース
 ・ヨーグルト

事前に説明を読んでいなくて、「何だか練りものみたいな歯ごたえだなぁ」と思いながら食べたのですが、ちくわだったとは!
ちくわにポテトサラダを挟んで揚げた”ちくわサラダ”って熊本県(真風さんの出身地)で食されているんですって。ほんまかいな。



すばらしい作品で大劇場2週間しか上演できなかったことがとても残念。2月に3回分取ってた私のチケットほんと悔しい のごくらく地獄度   2282 vs 2277 )  



posted by スキップ at 17:56| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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