2022年02月15日

これが柚希礼音のレイチェル 「ボディガード」


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2020年3月 梅田芸術劇場で開幕した公演が5公演のみの上演で中止となり、4月に予定されていた東京公演は全公演中止。
柚希さんご本人のパフォーマンス的にも不本意だったと思われた公演から2年。

どれほどの努力を積み重ねて今年の舞台に立っているかと思うと、一幕終わりの「I HAVE NOTHING」で響き渡るハイトーンボイス聴いていて涙がこみ上げてきました。
これが柚希礼音のレイチェルです。


ミュージカル「ボディガード」
原作:ローレンス・カスダン
   (ワーナー・ブラザース映画「ボディガード」)
脚本:アレクサンダー・ディネラリス
訳詞:森雪之丞   翻訳:阿部のぞみ
編曲:クリス・イーガン
演出・振付:ジョシュア・ベルガッセ
ミュージカルスースーパーバイザー:リチャード・ビードル
音楽監督:小澤時史
美術:二村周作   照明:勝柴次朗   
衣装:十川ヒロコ  
出演: 柚希礼音  大谷亮平  AKANE LIV  入野自由  
猪塚健太  大山真志  内場勝則  青山航士  大河原爽介 ほか

2022年1月30日(日) 5:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階3列センター
(上演時間: 2時間25分/休憩 25分)



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2020年版の感想はこちら


物語:グラミー賞受賞歌手でスーパースターのレイチェル・マロン(柚希礼音)は女優としてもオスカーを目指し精力的に活動をしていましたが、息子のフレッチャー(大河原爽介)、姉のニッキー(AKANE LIV)と暮らす彼女の周辺には、謎のストーカー(入野自由)の影がちらついています。マネージャーのビル(内場勝則)はこの状況を憂い、敏腕ボディガード フランク・ファーマー(大谷亮平)にレイチェルの身辺警護を依頼します。しかし、フランクの存在はオスカー賞レースのためによりレイチェルの露出を高めたい広報担当のサイ(猪塚健太)、古参ボディガードのトニー(大山真志)には煙たい存在であり、何より自分の思う通りの生活ペースを貫きたいレイチェル本人が反発します。
そんなある日、レイチェルはフランクの忠告を聞かず、サイが勧めるシークレット・ライブに出演しますが、興奮した観客がステージに押し寄せ、あわやのところをフランクに救われます。このことをきっかけに、レイチェルはフランクに深い感謝と信頼を覚え、二人の距離は急速に近づいていきます・・・。


「とにかく歌声が気になって気になって、歌詞やお芝居に集中できなかったというのが正直なところ」(2020年版の感想)
「たった一つ気がかりだったのは、柚希さんの高音の歌唱。力強い低音の地声とは裏腹に高音になると、弱々しいファルセットに。実はこれ、7月に『マタ・ハリ』を観た時にも感じて、『あれ?ちえちゃん、こんなに高音弱かったかな』と思ったものでした。もしかしたら来年の『ボディガード』を見据えて発声法改造中なのかもしれませんが」(2021年9月 REON JACK 4)

こんなふうに書いていたとおり、観るまでずっと不安で・・・というより観るのが怖くて、実は当初2回分取っていたチケットを1枚手放したくらいです。

2年前は喉を傷めていた、というより、このミュージカルのナンバーが柚希さんの音域に合っていないのだと思われ、それは多分今回も変わっていないのですが、別人のように張りのあるのびやかな歌声に感激ひとしお。


元より、天性のスターオーラ全開で華やかなスーパースターぶり。
冒頭「QUEEN OF THE NIGHT」でダンサーを引き連れての登場から目が吸い寄せられます。
相変わらずキレッキレのダンス、手足が長くプロポーション抜群で、太ってはいないのに迫力あるボディで健康的なお色気もあって、とにかくショーシーンのインパクトが鮮烈。
プライドが高く、勝気でタカビーなレイチェルが、少しずつフランクに心を開き、信頼から愛へと変化していく心情が自然でとてもチャーミングなレイチェルでした。

♪エンダ~~ 「I WILL ALWAYS LOVE YOU」は、もっと歌えるヴォーカリストの方はきっとたくさんいらっしゃると思いますが、この物語の、柚希礼音のレイチェルとして、最高でした。


柚希さんの歌声の心配が取り除かれた分(笑)、物語にも前回より集中できて、レイチェルに男性の影を感じ取ったストーカーが行動をエスカレートさせる→そのきっかを自分がつくってしまったことでプロ意識の高いフランクが本来の職務を全うすべくレイチェルと距離を置こうとする→フランクの気持ちがわからないレイチェルの憤りと切なさ・・・といった展開がより心に入ってきました。
レイチェルの華やかなスター性の前に裏方に徹している姉のニッキーが、自分自身も歌手を志していたことを捨てきれず、クラブでひっそりと歌う哀しみも、密かに思いを寄せていたであろうフランクがレイチェルと愛し合っているのを目の当たりにする切なさも、ひしひしと感じ入りました。


映画とは設定が異なる部分もありますが、ファンに囲まれたレイチェルをフランクがお姫様抱っこして救出するシーンや、ラスト近くでレイチェルをかばって銃弾を受け倒れたフランクを「この人、私のボディガードなのっ!」とレイチェルが叫ぶシーンは映画そのまま。

お姫様抱っこの場面は、レイチェルのライブと迫りくる不気味なストーカーを対比させる照明を使った演出が初演同様秀逸でした。
ファンに取り囲まれて華やかなステージを展開するレイチェル。
時折ストップモーションになり音楽もなくなって、ストーカーが階段の上、途中、ステージ傍へとひたひたとレイチェルに近づいて来て、そこに心拍音のような効果音が重なって、結末がわかっていても緊張感が漲り、まるで映像を観ているようなシーン。
隣の席で観ていらした小さいお子さま連れのお母様が思わず「こっわ~」と声が出てしまったの、わかります。


フランクの大谷亮平さんは2020年の初演が初舞台で、少し固さが残る感じがフランクの硬派で不器用な雰囲気と重なっているところはそのまま。
完全無欠のプロフェッショナルボディガードだったフランクがレイチェルを愛し一夜を共にしながらも、ボディガードとしての任務と責任感から彼女への思いを封印しようと愛の任務の板挟みで苦悩する姿がとても人間的。
長身でガタイもよく、スーツがよく似合って表情少な目で苦味走っているのもポイント高し。
フランクはこのミュージカルの中では歌わない役ですが、レイチェルと行ったカラオケバーで「エンダー~~~」を歌ったらとんでも・・というオチもかわいい。

ニッキーのAKANE LIVさんの豊かな歌唱力とレイチェルに対する複雑な思い、ストーカーの入野自由さんの得体の知れない不気味さ、今回初参加のサイの猪塚健太さんのいかにも業界人っぽい少し軽い雰囲気、トニーの大山真志さんの頭まで血が巡っていない感じ(褒めています)、ビルの内場勝則さんの軽妙さと温かさ、フレッチャーの大河原爽介のボーイソプラノ、ダンスシーンを牽引しつつ頼りになるレイ・コートを演じる青山航士さんとハイクオリティのショーシーンを見せてくれたアンサンブルの方々。

すばらしいカンパニー一丸となって、2月19日大千穐楽まで駆け抜けられますように!



グッズのテディベアくん買おうと思っていたのに完売でした のごくらく地獄度 (total 2269 vs 2266 )


posted by スキップ at 23:09| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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