
宝塚歌劇団月組の新トップコンビ 月城かなとさん、海乃美月さんのお披露目公演。
2018年に綾瀬はるかさん、坂口健太郎さん主演で公開されたファンタジックな映画の舞台化です。
宝塚歌劇 月組公演
ミュージカル・キネマ 「今夜、ロマンス劇場で」
原作:映画「今夜、ロマンス劇場で」(2018年 武内英樹監督作品)
脚本・演出:小柳奈穂子
装置:二村周作 作曲・編曲:手島恭子 衣装:加藤真美
音楽指揮:佐々田愛一郎 振付:御織ゆみ乃 AYAKO
映像:上田大樹 殺陣:清家三彦
出演:月城かなと 海乃美月 鳳月 杏 光月るう 夏月 都 白雪さち花
千海華蘭 晴音アキ 春海 ゆう 夢奈瑠音 蓮つかさ 佳城葵
暁 千星 英 かおと 彩 みちる 風間柚乃 天紫珠李 彩音星凪
礼華はる 結愛かれん 柊木絢斗 白河りり きよら羽龍 ほか
2022年1月4日(火) 1:00pm 宝塚大劇場 1階13列上手/
1月23日(日) 11:00am 1階2列センター/
1月27日(木) 11:ooam 1階16列センター
(上演時間: 1時間35分)
1964年 東京
映画会社京映で助監督として働く牧野健司(月城かなと)は毎日仕事帰りにロマンス劇場という映画館に通い、古いモノクロ映画「お転婆姫と三獣士」を飽きることなく観て、映画の中のお転婆なお姫様 美雪(海乃美月)に憧れていました。映画館主の本多(光月るう)からこのフィルムを売ることにしたと聞かされた夜、これが最後とスクリーンの美雪を思い手を差し出す健司の前に、雷鳴とともに美雪がスクリーンから飛び出してこちらの世界に現れます。奔放な美雪に振り回されながらともに過ごすうち、互いに惹かれ合う健司と美雪でしたが・・・。
鳩三郎かわいい鳩三郎かわいい🐦
(最初の感想それ?😝)
skip🐾@skiplalala posted at 14:51:12
↑
1月4日に初めて観た後、幕間の私の最初のつぶやきです(^^ゞ
「鳩三郎」は映画の中の美雪姫に仕える「三銃士」の一人。
狸吉(蓮つかさ/代役 朝陽つばさ)、虎衛門(英かおと)、鳩三郎(柊木絢斗)といて、鳩三郎だけ「クルックー」しか話せません。
いろんな感情を込めて放つこの「クルックー」がたまらなくカワイイ。
美雪には鳩三郎が何を言っているのかわかるらしい。
美雪にはばあや(夏月都)とじいや(春海ゆう)もいますが「脚本家の怠慢」で名前がなく、大蛇丸(暁千星)の従者 雨霧(天紫珠李)・狭霧(礼華はる)に「悔し~!名前があるからと言って」と悔しがるシーンがあって、「鳴き声しか台詞がない鳩三郎よりマシですよ」と狸吉に言われて「クルックー」と寂しそうにつぶやく鳩三郎がとにかくカワイイ。
・・・とマニアックなところから感想に入ってしまいましたが、モノクロ映画の世界と現実の世界、さらには、数十年後の現代とを行き来して繰り広げられる物語は、その配分と宝塚的演出が絶妙に融合していて、ファンタジックで夢のある美しく楽しい物語に仕上がっています。
映画を観ていませんのでどこまで潤色されているのかわかりませんが、老年の健司が入院している病院で看護師さんたちが「すっごい美人のお孫さん?いますよね」「散歩しているところ見たんだけど牧野さんが転んでもあの人、手もかさないでただ見てるだけ」といった会話や、ロマンス劇場のカウンターに飾られた本多さんと奥さんの離れて立つ写真といった細かな伏線が後でそうだったのか、と回収される気持ちよさ。
冒頭とラストにスクリーンの映像から実物の舞台へと展開するシーンがありますが、その演出も鮮やか。
スクリーンから登場人物が飛び出してくるといえば、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの「キネマと恋人」(2017年)という名作が思い出されますが、あの作品の結末はほろ苦く切ないものだったのに対して、ハッピーエンドのこちらはいかにもタカラヅカ的。
心に残る台詞や言葉にも満ちあふれていて、健司が映画の脚本コンテストでどんな作品を書こうか悩んでいる時、本多さんが「何かで読んだ」と話してくれたチャップリンの言葉もとても印象的でした。
「浮浪者、紳士、詩人、夢想家、孤独な人、みんなロマンスと冒険に憧れているんだ」
大蛇丸から「自分たち映画の中の登場人物は本物の人間に触れたら消えてしまう」という美雪の真実を知らされ、「好きな人にずっと触れることなく生きていけるか」と自問し、落ち込む健司。
そんな健司の背中を押したのは、京映の看板スター ハンサム・ガイこと俊藤龍之介(鳳月杏)。
「君は傑作をつくるために映画を撮るのか?」
「いい映画をつくるために努力するんだろう?傑作かどうかは結果だ」
「男がたやすく下を向くな」「下ばかり見ていると今しか見えないぞ」
「男の視線は常に未来」
この場面の俊藤さんの言葉は健司でなくてもどれも心に染みて、語録つくりたいくらいです。

俊藤に励まされ、自分の心と向き合って、美雪と生きていくことを決意する健司。
それからの年月は、写真館で二人が少し離れて写真を撮る、京映が倒産する、ロマンス劇場で働く、ロマンス劇場閉館・・・と健司のナレーションで語られ、その時々の健司と美雪が舞台上に幻想シーンとして現れますが、このあたりからもうウルウル。
そして冒頭の病院のシーンに戻ります。
年老いて、今まさに命の灯が消えようとしている健司のベッドに寄り添う若くて美しいままの美雪。
「いつもの遊びをしよう」と ♪黄色いものは 夜空照らすお月様 赤いものは・・・ と歌い、美雪とともに過ごし眺めた色や景色を走馬灯のように思い返す健司。
「最後にあなたに触れたい」という美雪が初めて健司の手を取って「こんなに温かかったんだな」というところで涙ナミダ。
切ない~

スクリーンに映し出されるモノクロの美雪の世界。
そこに一歩一歩近づく後ろ姿は王子となった健司。
いつかの縁日で健司が膝をついて美雪に風車を差し出した時と同じポーズで一輪の薔薇の花を差し出す健司。
美雪が受け取った薔薇がモノクロのスクリーンの中で赤い色をつけ、その色が美雪姫の黄色いドレスや周りの人々にも広がっていき、スクリーンが上がるとそっくり同じ場面でリアルな登場人物たちが動くラストはとても感動的でした。
映像だれ?とチェックしたら上田大樹さんでした。だよねー。
この場面では、それまでずっとモノクロだった三獣士も、鳩三郎の嘴に色がついていたりして、もちろんばあやじいやも大蛇丸も 雨霧狭霧もみんな色があって笑顔で二人を祝福する多幸感。
月城かなとさんは失敗ばかりしているサエない助監督にしては見た目が美しすぎるきらいがありますが、さすが芝居巧者で、映画監督を夢みる心やさしき青年・健司を描出。ピュアで穏やかで包容力があって、そりゃ美雪も塔子も好きになりますよね。
美雪の海乃美月さんは大画面のスクリーンを一人で埋める華やかなオーラは少し乏しく感じましたが、ヒロイン経験豊富でもありさすがの安定感。
男言葉を使う勝気なお姫様が存外にお似合いでしたが、この人のニンとしてはラストの健司の手をとる美雪だろうなとも思いました。
俊藤龍之介の鳳月杏さんすばらしい。
いかにもあの時代の大スターといったインパクトと佇まいでオーラ全開。
どんなにキザッても自信満々でも嫌味にならないのもちなつさんならでは。
♪オイラは陽気な悪魔祓い~ も楽しくて、私もぜひ悪魔祓いしていただきたい。
原作映画にないキャラクター 大蛇丸は暁千星さん。
美雪に求婚している隣国の王子でヌルヌルネチネチした人物で美雪にもばあやじいやにも嫌われているという設定。
「白鳥の湖」のロットバルトのイメージということですが、ビジュアルはほぼトート(笑)。
美雪を追って健司の部屋に現れた大蛇丸が歌う曲も ♪彼女と踊るのは俺だ~ と、まるで「最後のダンス」だし。
出番はそれほど多い訳ではありませんが、印象鮮烈。
健司の部屋の押し入れからいきなり現れてからの場面は、雨霧・狭霧の「シャー!」「ヤラレタ~」といった小芝居からの大蛇丸の「やめんか」まで含めて毎回とても楽しみでした。
健司の助監督仲間でライバルでもあり友人でもある熱い男 山中伸太郎の風間柚乃さん、その伸太郎の思い人で京映の社長令嬢 塔子はこれが月組デビューの彩みちるさん、塔子のパパでピンストライプの白いスーツがいかにも業界人っぽい京映社長 成瀬正平の千海華蘭さん、美声を響かせ慈愛に満ちた月の精霊 ディアナの晴音アキさん、紺のスーツに小顔が際立つプロデューサー 清水大輔の夢奈瑠音さん、「勉強になりますっ!」の声がこれまたいかにもな俊藤の付き人さんたち(蘭尚樹・彩音星凪・彩路ゆりか)、ご主人様に負けず劣らずクールなビジュアルの雨霧&狭霧(天紫珠李・礼華はる)、そしてもちろん愛おしくてたまらない三獣士(蓮つかさ<朝陽つばさ>・英かおと・柊木絢斗)などナド 端々の役に至るまで”芝居の月組”がイキイキ。
怪我や体調不良で休演者が4人も出て、代役も大変だったかと思います。
狸吉の代役を急遽数日間勤めた新人公演でこの役をやる予定だった大楠てらさん、妖怪の歌姫で本役のきよら羽龍さんとはまた違ったパンチの効いた歌唱を聴かせてくれた白河りりさん・・・月組の若手は本当に頼もしいです。
→ ショー「FULL SWING!」につづく