2021年11月24日

ハッピーエンドの忠臣蔵 花組 「元禄バロックロック」


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花組誕生100周年、柚香光・星風まどかの新トップコンビお披露目、そして谷 貴矢先生大劇場デビュー作とお祝いてんこ盛りの公演。
「時を戻せる時計」がテーマの「忠臣蔵」。
クロノスケ、キラ、クラノスケ、コウズケノスケ・・・といった役名、果ては「賭場・ラッキーこいこい」なんて情報公開された時にはどんなトンチキ作品になるのかと不安でしたが、思っていたよりちゃんと「忠臣蔵」で、夢いっぱいのファンタジーでした。


宝塚歌劇 花組公演 三井住友VISAカード シアター
忠臣蔵ファンタジー 「元禄バロックロック」
作・演出: 谷 貴矢
作曲・編曲: 太田 健  多田里紗
音楽指揮: 佐々田愛一郎
振付: 若央りさ  KAOARIalive  殺陣: 清家三彦
装置: 國包洋子   衣装: 加藤真美
出演: 柚香 光  星風まどか  水美舞斗  高翔みず希  美風舞良  
和海しょう  華雅りりか  優波 慧  永久輝せあ  飛龍つかさ  
帆純まひろ  音くり寿  聖乃あすか  一之瀬航季  侑輝大弥  
希波らいと  美羽 愛  星空美咲 ほか

2021年11月7日(日) 11:00am 宝塚大劇場 1階4列センター/
11月18日(木) 3:30pm 1階11列下手/
11月23日(火) 11:00am 1階21列センター
(上演時間: 1時間25分)



物語の舞台は将軍ツナヨシ(音くり寿)が治めるバロック文化花咲くエド。
赤穂藩主タクミノカミ(聖乃あすか)がエド城でコウズケノスケ(水美舞斗)に刃傷に及び切腹、赤穂藩はとりつぶしとなりました。
元赤穂浪士の時計職人クロノスケ(柚香光)は、タクミノカミが遺した設計図をもとに時を戻せる時計を発明、少しの時を戻してはスリを捕まえて礼金をせしめたり賭場で大儲けしたりして暮らしていました。賭場の主キラ(星風まどか)の美しさに惹かれるクロノスケでしたが、そこで出会った赤穂藩の家老クラノスケ(永久輝せあ)から主君の仇と狙うコウズケノスケの隠し子の名前がキラだと知らされます・・・。


タクミノカミ(浅野内匠頭)、コウズケノスケ(吉良上野介)、クラノスケ(大石内蔵助)、ツナヨシ(徳川綱吉)、ヨシヤス(柳沢吉保)、ケイショウイン(桂昌院)といった史実としての「忠臣蔵」の登場人物の中に、クロノスケ、キラという架空の人物を配置。

江戸時代を模した設定ですが、和洋折衷な雰囲気で和装を基調としながらもシャープでカラフルな衣装、タクミノカミは自分のことを僕と言い、キラやツナヨシは父母のことを「パパ」」「ママ」と呼ぶなど、無国籍、無時代の世界観。
それでも「忠臣蔵」を知っていると、クラノスケの偽の放蕩(ツバキは「擬態」と言ってた)、ツナヨシの生類憐みの令、ケイショウインをお玉と呼ぶコウズケノスケなど、細かいところがさり気なく採り入れられてると感心。



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開演5分前から時を刻み続ける幕
いろんなところが動いていて、見ていて飽きることがありません。



コウズケノスケの隠し子として吉良邸に閉じ込められて暮らしていて忍び込んできたクロノスケと出会い、恋し、赤穂浪士の一員として吉良邸に討ち入ったクロノスケから預かった設計図をクロノスケを助けたい一心で猛勉強して時を戻す時計を完成させ、討ち入り前の時に戻って来たことをクロノスケに告げるキラ。
「コウズケノスケと赤穂浪士の争いを止めてクロノスケを死なせないためには、タクミノカミの刃傷前に時を戻すしかない」・・・そうすることでクロノスケとキラの出会いもなかったことになってしまうけれど、それはもういいと辛さを振り切って時を戻すことを決意するキラに、「時を戻さない」解決方法を見出すクロノスケ。
それまで散々時計を使って小銭稼ぎをしてきたクロノスケが「時計を使わない」方法を選ぶところが胸熱。
「こんなものもういらねぇ!」とキラの前で遠くに投げ捨てた時計を実はちゃっかり隠し持ってたというオチも茶目っ気たっぷり。

ラストのツナヨシの裁定は、現実の「忠臣蔵」でもこんなふうに一件落着してくれたらどんなによかっただろうと、ちょっと切なくなりました。


2人のキーポイントとなる花火の場面は映像を使って夜空に広がる花火を表現。
討ち入りの時、クラノスケ筆頭に赤穂浪士が銀橋に並ぶ場面は拵えこそ違っていますが、歌舞伎でもよく観る討ち入りの光景だぁと胸躍りました。
殺陣もふんだんに織り込まれていて、特にクロノスケ vs コウズケノスケの銀橋上での立ち廻りは、あの狭い銀橋であんなに速い殺陣を、とハラハラドキドキワクワクしました。


赤穂の侍でありながら”時計職人”というクロノスケは柚香光さん。
大きな時計を肩にかついでの登場からビジュアル完璧。
綺麗な女性が好きそうな軟派な面と自分の考えに揺らがない硬派な面とのバランスよく、少しとぼけた雰囲気でぼそりとつぶやくひと言に思わず笑ってしまうことがしばしば。そういえば「花より男子」の道明寺司でも本人は大真面目に言っているひと言で大笑いしたのを思い出しました。台詞の間のセンスがいいのだと思います。キラの正体がわからない間は、キラに振り回されてちょっと頼りなく、お尻に敷かれている感じもよかったです。
歌も今回安定している印象。

花組トップ娘役として大劇場お披露目となる星風まどかさんのキラ。
正体がわからず謎めいて妖しげな時、過去の回想、そして身バレしてからの本当のキラと演じ分けくっきり。
前髪ぱっつんの長い黒髪をはじめどの髪型も衣装もよく似合って、さすがの華です。
歌も相変わらず聴かせてくれますが、私が観た3回ともどこか1ヵ所台詞を噛んでいて、宙組時代からそうでしたが、トップ娘役として非のうちどころがないまどかちゃんの、このあたりが課題でしょうか。

悪役フェチとしてはコウズケノスケの水美舞斗さんがとてもよい。
銀髪の髪にうっすら口髭がとてもよく映えて、大きさもあって、悪の香りプンプン。しかも色っぽい。
台詞の緩急がとてもよくて、カエデやツバキに指示を出した後、「よいな」というひと言の息を抜いた言い方にとなりました(細かい(^^ゞ)。
「銀ちゃんの恋」でも見せたスピード感ある殺陣は相変わらずキレッキレです。

悪役でもう一人 ヨシヤスの優波慧さんもよかったです。
いかにも沈着冷静な切れ者といった風情で、将軍ツナヨシにもコウズケノスケにも一目置かれる存在感。

クラノスケは永久輝せあさん。
いかにも殿思いの剛の武士というところがクロノスケとよい対照で、クラノスケの表裏の顔の演じ分けくっきり。
笑顔でクロノスケを見送った後すぐに「あいつを見張れ」「何かあれは斬れ」とヤスベエに命じる表情の変化にゾクゾクしました。立ち姿も剣さばきもとても綺麗。

タクミノカミの聖乃あすかさん。
若くて美形がいかにもタクミノカミ役者という雰囲気。いく分狂言回しのような役どころですが、この世に未練を遺した亡霊として舞台上にいつもいて、その展開に時折悔しそうだったり苦しそうだったりする表情を浮かべているのが印象的でした。

ツナヨシの音くり寿さん。
いやもうすごいよ。できる子なのは知っていましたが、怪演といってもいいのではないかしら。
まだ若年の設定で犬を愛するやさしい少年とエキセントリックな将軍が同居するツナヨシ。やわらかく話している中で突然豹変する台詞の声、強さもすばらしい。
音くり寿さんにこの役をキャスティングした谷先生すばらしい。

ツナヨシママ&コウズケノスケの元カノのケイショウイン 美風舞良さん、お笑い担当?のクラノスケの妻リクの華雅りりかさん、コウズケノスケ配下のくノ一 カエデとツバキの美羽愛さん、星空美咲さん。娘役さんたちの活躍も頼もしいです。
特に星空美咲さんは「銀ちゃんの恋」ヒロインに続いての抜擢。台詞に口跡の幼さは残るものの、キリリとした中にコウズケノスケに思いを寄せるという複雑な女心を持つくノ一、健闘が光ります。




ラストはスコーンとハッピーエンド。
1年の大劇場公演締めくくりに「悲劇忠臣蔵」ではなく明るく元気なバロックロック。
明るく晴れやかな気持ちで新しい年を迎えられそうです。



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→ ショー「The Facination!」につづく


posted by スキップ at 21:45| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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