2021年11月09日

神が捨てた俺 「ドン・ジュアン」


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モリエールの戯曲やモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」などで知られる「ドン・ジュアン伝説」をフェリックス・グレイの作曲でミュージカル化した作品。2004年 カナダで初演されたフレンチ・ミュージカルで、その後パリや韓国でも上演され人気を博したのだとか。
2016年 生田大和先生の潤色・演出、望海風斗さん主演の宝塚歌劇で日本初演されました。

2019年 同じく生田先生の演出、藤ヶ谷太輔さん主演で上演された作品の再演。
ヒロインのマリアを宝塚歌劇団退団後初舞台となる真彩希帆さんが勤めるのも話題です。


ミュージカル 「ドン・ジュアン」
作詞・作曲: フェリックス・グレイ
潤色・演出: 生田大和(宝塚歌劇団)
音楽監督・編曲: 太田 健(宝塚歌劇団)
美術: 松井るみ   照明: 笠原俊幸
振付: 桜木涼介  大石裕香  佐藤浩希
衣裳: 有村 淳(宝塚歌劇団)
出演: 藤ヶ谷太輔  真彩希帆  平間壮一  上口耕平  天翔 愛
吉野圭吾  上野水香  春野寿美礼  鶴見辰吾 ほか

2021年10月8日(金) 6:00pm 梅田芸術劇場メインホール 1階13列センター
(上演時間: 3時間/休憩 25分)



物語の舞台はスペイン セビリア。
快楽を追い求め「女と酒だけが俺を救う」と歌うドン・ジュアン(藤ヶ谷太輔)はある日、自分の娘を汚されたと憤怒する騎士団長(吉野圭吾)に決闘を申し込まれ、ドン・ジュアンが勝ちますが、騎士団長は亡霊となって「愛が呪いとなる」と彼を呪います。その亡霊に導かれるようにドン・ジュアンは騎士団長の石像を掘る彫刻家のマリア(真彩希帆)と出会い、二人は愛し合うようになります。そんなあるあ日、戦場へ行っていたマリアの婚約者 ラファエル(平間壮一)が帰ってきて・・・。


2016年に観た宝塚版(こちら)から、マリアのソロが増えたり、場面も新しく加えられたり、逆になくなったりもしているそうですが、そこのところはあまりわからず(←)。

最も強く感じたのはドン・ジュアンの孤独と切なさ。
親友であるドン・カルロ(上口耕平)は独白や独唱でドン・ジュアンのことを思いやっているけれど、実際に二人が直接会話する場面は少ないなぁと感じました・・・だからちょっと友人感が薄れて傍観者のように見えることも。
父のドン・ルイ・テノリオ(鶴見辰吾)とは話すけれども、言われる一方な印象。
唯一コミュニケーションを取っているように見えるのが騎士団長の亡霊です。

そこで気づく・・・母親のエピソードがカットされていることに。

ドン・ジュアンが求めていたのは「母の愛」だったのではなかったか。
ドン・ジュアンが歌う「悪の華」の歌詞に「神が捨てた俺を 女と酒が救う」とありますが、自分から母親を奪った神をずっと憎んでいて、それが彼を”神をも恐れぬ男”にしたのではなかったか。
彼が求めてやまなかった「母の愛」が唯一見えたのがマリアだったのではなかったか。


ドン・ジュアンの藤ヶ谷太輔さん。
時に眼光鋭く、時には孤独の淵に沈むような眼が印象的。
歌も(失礼ながら)あれほど歌えるとは思っていませんでした。とてもドラマチックな歌唱で、時折台詞まじりになるのはそういう演出なのかな。
普段人間離れした超絶スタイルのジェンヌさんばかり観ている目にはスタイル、特に脚の長さが・・・💦と思いましたが、それは些末なことですね。すばらしいドン・ジュアンでした。

真彩希帆さんは在団中から「まあやちゃんは外の舞台の方が向いているのでは?」と思っていたのですが、退団後1作目でそれを証明した形。
歌がうまいのはもちろん、細やかな演技や可愛らしさ、華やかさもヒロインとして申し分ない存在感。
これからのミュージカル界での活躍を大いに予感させる外部デビューとなりました。
藤ヶ谷さんとのバランスも存外によくて、寝室のお姫様抱っこのシーンのプリンセス感。
やたらおへそ出した衣装が多かったのは生田先生がまあやちゃんにあれを着せたかったのですかね?

ほぼ1場面だけの登場で台詞もないアンダルシアの美女に上野水香さんという贅沢な配役。
姿形の美しさはもとより、指先足の先まで見惚れてしまう圧倒的なダンス。
これまた贅沢な配役であるイザベルの春野寿美礼さんの圧巻の歌唱とともに、この舞台を濃密に彩ったお二人です。

存在感抜群の騎士団長&亡霊の吉野圭吾さん。
ダンスお得意のJアイドル相手にひけをとらないキレッキレの殺陣を見せたラファエルの平間壮一さん。
冒頭の歌をはじめ確かな歌唱と静かな佇まいが印象的なドン・カルロの上口耕平さん。
酒場の場面とかアンサンブルの中にすごく歌が上手い人がいると思ったら則松亜海(夢華あみ)さんでした。

キャストも皆よかったですが、エルヴィラだけが残念だったかなー。
誰もがドン・ジュアンにとってのマリアになれる訳ではないので、エルヴィラが一般女性を代表するキャラクターとなるはずですが、ただの勘違い女のように見えてしまったのは、演じる天翔愛さんのせいばかりでなく、脚本や演出の描き方もなぁ、と思いました。
天翔さんは現役の音大生ということですが、歌も台詞も不安定で、まだまだ発展途上かしら。



それにしても普段A席の2階後列までS席 13,500円はぼったくりすぎじゃないですか? の地獄度 (total 2324 vs 2325 )


posted by スキップ at 22:28| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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