先日観た博多座月組公演は新トップコンビのプレお披露目公演でしたが、ただ今東京宝塚劇場で絶賛お披露目公演中の雪組新トップコンビのプレお披露目公演も観ました。
6月に←
宝塚歌劇 雪組公演
ミュージカル・ロマン 「ヴェネチアの紋章」
原作: 塩野七生「小説イタリア・ルネサンス1 ヴェネツィア」
脚本: 柴田侑宏
演出・振付: 謝 珠栄
作曲・編曲: 玉麻尚一
装置: 國包洋子 衣装: 加藤真美
ロマンチック・レビュー 「ル・ポァゾン 愛の媚薬 -Again-」
作・演出: 岡田敬二
作曲・編曲: 𠮷﨑憲治 高橋 誠 甲斐正人
振付: 高橋 恵 植田浩徳 羽山紀代美
御織ゆみ乃 謝 珠栄 若央りさ 百花沙里
出演: 彩風咲奈 朝月希和 奏乃はると 沙月愛奈 真那春人
叶ゆうり 綾 凰華 星南のぞみ 諏訪さき 眞ノ宮るい
彩海せら 一禾あお 有栖妃華 夢白あや 音彩唯 ほか
2021年6月13日(日) 3:30pm 愛知県芸術劇場大ホール 1階E列上手
(上演時間: 3時間5分/休憩 35分)
「ヴェネチアの紋章」
物語の舞台は16世紀前半のイタリア。
アルヴィーゼ・グリッティ(彩風咲奈)はヴェネチア元首アンドレア・グリッティ (真那春人)の息子ですが、嫡子でないためヴェネチアの法律で貴族の身分も”紋章”も与えら「ヴェネチアの紋章」を手に入れるという野望に燃えていました。帰国して姪のラウドミア(音彩唯)の結婚披露宴に出席したアルヴィーゼは、元首に対抗する勢力を持つプリウリ(奏乃はると)の夫人リヴィア(朝月希和)を情熱的な踊り「モレッカ」に誘います。名門コルネール家の血筋のリヴィアこそ、アルヴィーゼと10年にわたり密かに愛し合う仲の恋人でした・・・。
1991年に花組トップコンビ大浦みずき、ひびき美都のサヨナラ公演として上演された作品。
トップコンビのサヨナラ公演、約30年ぶりの再演、初演の脚本は柴田侑宏先生と、月組の「川霧の橋」とかぶりますが、月組には月城かなとさんに、雪組には彩風咲奈さんに合う作品をきちんと選んでいるのね。
古きよき時代のメロドラマといった印象。
ヴェネチアではただの庶子で平民で、政治家になれず出世もできないけれど、トルコでがんばってハンガリア遠征の総督になり、戦いに勝てばハンガリアの王となってリヴィアを王妃として迎えられると意気込むアルヴィーゼ。
人妻だったけれどわりとあっさり離婚できて、コンスタンチノープルで二人で穏やかに暮らせれば十分と考えるリヴィア。
そうそう、そうよねーと女のワタクシはリヴィアに全く同感ですが、愛に満ち足りていても誇りと名誉は別物なのがオトコ。
勝算顧みずに突き進んでしまうアルヴィーゼと、彼を敬愛してともに戦う道を選ぶはぐれ組の3人(諏訪さき・眞ノ宮るい・彩海せら)やカシム(一禾あお)。
そうして散って行ったアルヴィーゼに殉じて、白い蝶のように海へと舞ったリヴィア。
アルヴィーゼが自分の出自の象徴でもある「紋章」への執着が強すぎたために起こった悲劇。
リヴィアの必死の言葉に耳を貸さず、慕ってついてきてくれる仲間までも道連れにして自滅の道を歩んだアルヴィーゼが何とも切ない。
そしてこの後、アルヴィーゼの親友マルコ(綾凰華)が二人が遺した幼い娘に会いに行って、将来彼女と結婚しようと決意する台詞があるのですが、あれ必要かな?
確かに、この少女は隠し子なので身分もなく、マルコが結婚することでアルヴィーゼの娘に彼が欲しくてたまらなかった貴族の紋章を与えることができる、という理屈はわかります。
かと言って愛のない結婚(人間としての愛はあるかもしれませんが)を、アルヴィーゼもリヴィアも、そして当の少女自身も望むかしら。
気になって少し調べてみたところ、二人の間に娘がいたというのは、原作にはあるけれども初演にはなかった設定だそうです。
リヴィアが海へ身を投げた後、マルコ宛の手紙と宝石箱が遺されていて、中にはアルヴィーゼからリヴィアへの贈り物の数々と「あなたが良いと思う時が来たら、あの子に渡してやってください」と書いてあったそうです。それでマルコは、あの子と結婚することが二人の願いだと悟る、というというこだそうですが、それならそのエピソードも入れた方がよかったのではないかしら。
ま、それでも「結婚する」というのは違うんじゃないかなという思いは残ります。
マルコが言うとすれば、「どんなことをしても彼女を自由にしてやる」とか「彼女が身分にかかわらず好きな人と結婚できるような世の中になることを(政治家として)誓う」みたいなことなのではないかと思います。
沙月愛奈さん筆頭に青い影たち(諏訪・眞ノ宮・彩海も入っていて豪華メンバー)が踊った後、アルヴィーゼが登場して歌うと舞台はヴェネチアへと移って、マルコが語り始めるというプロローグの導入がすばらしい。歌う美女・有栖妃華さんの歌声も相変わらずすばらしい。
エピローグはスモークの中で踊るアルヴィーゼとリヴィア。切なく哀しい二人の悲恋を忘れさせるような美しいダンスシーンでした。
彩風咲奈さん。
プレお披露目とはいえ、これまで数々主演経験もある彩風咲奈さんは真ん中に立って盤石。
長身で脚が長いスタイルのよさに、あのクラシカルな時代の衣装が映え、大股で歩く姿のカッコよさ、華やかでキレのあるダンス、歌ものびやか。
アルヴィーゼには「そこまで紋章にこだわらなくても」と言いたくなりますが、そこは譲れない頑なさにも説得性を持たせた彩風さんの演技でした。
朝月希和さんは品よく美しく、優美なリヴィア。
リヴィアとしてはもう少し強さを全面に出してもよかったのでは、と思いますが、彩風さんと違ってこれまで百戦錬磨という訳でなく、緊張もあったのかな。
マルコの綾凰華さん。
原作では主人公のマルコ。アルヴィーゼの親友で語り部として狂言回しも兼ねる役です。
貴族で育ちもお行儀もよくて、親友思いで温かい、”いい人”感が溢れるマルコがあやなちゃんのイメージとも重なって、とてもよかったです。
それだけにラストのあの結婚のくだりが残念(綾凰華さんのせいではない)。
夢白あやさんのオリンピアが、綺麗でゴージャスで押し出しもあってすばらしい。
物語のはじめの方に出てきたサンマルコ広場の鐘楼から警官が飛び降り自殺した事件が、警官に恐喝されていたオリンピアによる殺人だったことが最後に明かされますが、訳知りの有閑マダム風の美女が実はスペインのスパイだったオリンピア。それもさもありなんな存在感を放っていました。
宙組時代「FLYING SAPA」(2020年)のイエレナもとても印象に残っていますが、夢白さん、あの若さで役の引き出し多彩だな。
はぐれ鳥の3人(諏訪さき・眞ノ宮るい・彩海せら)の場面も楽しかったですが、つい三個イチで観てしまうので、一禾あおさんのカシムの方が切なさもあって目立つ印象でした。一禾あおさん、ショーで彩海せらさん他を従えてセンターで踊る場面もあって、雪組ファン界隈ちょっとざわめきましたね。
「ル・ポァゾン 愛の媚薬 -Again-」
1990年に剣幸、こだま愛中心の月組で初演、2011年には星組(中日劇場)、花組全国ツアー公演で再演された岡田敬二先生のロマンチック・レビューの代表的作品です。
観たことないころから
♪ル・ポァゾン ル・ポァゾン 愛の愛の媚薬
甘く熱い吐息が この胸を焦がす
牝豹の様な君の瞳に かしずく姿は誰~
という主題歌は歌えるくらい強烈に刷り込まれています。
2011年の星組版を観ましたが
まぁ、忘れてるわね←
そして、このショーのことも、観てから4ヵ月半経った今、ほぼ忘れています←←
曲も衣装も振付も、よく言えば伝統的でクラシカル、悪くいえば古くさい印象でした。
プロローグ始まった時は「あ、これコレ~!」と思いました。
スターさんが次々出てきて、彩風さんとのダンスで驚異の反りを見せる朝月さんとか。
地方公演で人数少ないとはいえ、左右からザクザク人が出てきて始まる群舞とか。
そしてあの主題歌、アガリます

あとはどこかで観た場面、どこかで聞いた曲の連続だったかなー。
ゆったりしていて振り数が少ないダンスを綺麗にエレガントに見せてくれるのはもちろんいいのですが、ずっとそれでは曲が変わってもさすがに単調さは否めません。
いくつかの代表的な場面はともかく、今の雪組に合わせてアップデートされていないのも何だかなーという感じでした。
お芝居は綾凰華さんが二番手でしたが、ショーの方は諏訪さきさんと分け合う形で、諏訪さんが特に歌では大活躍でした。
この演目が発表された時、誰がやるんだろう?と話題になったオープニングの「吟遊詩人」(初演は涼風真世さん)も諏訪さんでした。
ロマンスの歌手や、彩風さんのエル・マタドールでマタドールの影は綾凰華さんでした。
ともあれ、彩風さんはダンサーでショースターでもありますので、彩風さんのために書かれたショーでは本領発揮してくれるはず。
朝月さんも歌・ダンス・お芝居と穴がない娘役さん。もう少し華やかさが加わって押し出し強くなればとも思いますが、これからに期待したいと思います。
この公演観て、2組に分かれているにもかかわらず雪組は、男役もさることながら、朝月さん、夢白さん以外にも星南のぞみさん、希良々うみさん、有栖妃華さん、音彩唯さん・・・と美しくて地力のある娘役さん豊富だなぁと思いました。
パレード:
エトワール 有栖妃華
真那春人 星南のぞみ 夢白あや
諏訪さき
綾 凰華
朝月希和
彩風咲奈
にしてもショーの内容忘れすぎ の地獄度


