2021年10月17日

風間柚乃 ワンマンショー 月組 「LOVE AND ALL THAT JAZZ」


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月組期待の若手スター 風間柚乃さん バウホール初主演作。
100期生としては今年2月に「PRINCE OF ROSES」で主演した花組の聖乃あすかさんに次いで二番目のバウ主演です。


宝塚歌劇 月組公演
バウ・ミュージカル 
「LOVE AND ALL THAT JAZZ」・・・ベルリンの冬、モントリオールの春・・・
作・演出: 谷 正純
作曲・編曲: 𠮷﨑憲治  植田浩徳
振付: 尚すみれ  御織ゆみ乃  
装置: 新宮有紀   衣装: 加藤真美
出演: 風間柚乃  きよら羽龍  千海華蘭  佳城 葵  朝霧 真  
蘭 尚樹  桃歌 雪  彩音星凪  礼華はる  一星 慧  大楠てら
/汝鳥 伶  紫門ゆりや ほか

2021年10月12日(火) 3:00pm 宝塚バウホール 5列センター
(上演時間: 2時間30分/休憩 25分



物語の舞台は第二次世界大戦 ナチス政権下のドイツ・ベルリン。
かつてジャズの生演奏でヨーロッパ中にその名を轟かせたキャバレー「レベル」では、ジャズピアニストでもあるルーカス(風間柚乃)が父から受け継いだ店を一人護り続けていました。そんなある日、ルーカスは店へ逃げ込んできたユダヤ人の娘レナーテ(きよら羽龍)を匿ったことから、ジャズの演奏すら禁止される祖国の現状に反発し、レナーテと共に自由に生きられる国へ旅立つことを決意します。二人を執拗に追い詰めるのは、かつて同じ音楽院で学んだ友人でもあるナチス親衛隊ゾマー少尉(礼華はる)。偽造屋からナチス親衛隊の中佐夫妻の身分証を入手し、仲間のミュージシャンが集うパリ、そしてレナーテの祖父が住むカナダを目指しますが・・・。


「ナチス政権下で退廃音楽として禁止されたジャズを愛し、ユダヤ人の娘を護る為に命を懸けて戦ったドイツ人ジャズピアニストを主人公に、時代を覆う閉塞感に敢然と立ち向かう若者の姿を、ジャズの名曲に乗せて描くミュージカル作品」と記された公演概要から、重くシリアスなドラマを予想していましたが、華やかなジャズの場面も挿入されて、思ったより明るく軽やか・・・逆に言えばいささか拍子抜けな感じです。実話に基づいた物語ということですが、どこか絵空事っぽいおとぎ話のような印象を受けました。

ナチス親衛隊の中佐夫妻の偽の身分証を手に入れて、その人物を装ってナチスの列車に乗り込むというのは、ナチスの内部事情を全く知らない青年にしてはでき過ぎだし、それを見抜けないコールマン大佐もどうなん?と思ってしまいます。
当時のアメリカやカナダにとって、ドイツ=敵国で、それがナチスであろうとなかろうと関係なくドイツ人であるというだけで収容所に入れられることが描かれているのは興味深かったですが、お国がらなのか事実そんな雰囲気だったのか、収容所内が明るく綺麗で皆服装もきちんとしていて、戦時下の悲惨さや陰鬱な雰囲気は感じられませんでした。

そうそう、収容所で、ナチス親衛隊の偽の身分証が仇となって自分自身のことを信じてもらえず、取り調べから帰ってきたルーカスにフリードリヒが即「脱獄で決定ですか」と言い、二人を迎えたツヴァイクも顔を見るなり「脱獄ですね」と言うの、笑っちゃいました。

ドイツの、ナチス政権下の、戦時下の、とはあまりシリアスに意識せずに、ジャズを愛する青年の自由を求める物語ととらえるのがよさそうです。
タイトル通り、ジャズの名曲がふんだんに散りばめられ、「A列車で行こう」「ムーンライトセレナーデ」「シング・シング・シング」など耳慣れた曲を華やかに歌い踊るシーンは心浮き立ちます。


ルーカスを演じた風間柚乃さんは、ピアノの弾き語りに始まって(本当に弾いているのではなさそう)、歌にお芝居にダンスにと大車輪の活躍。
舞台上に一人でいる時間やソロで歌う場面が多く、作品全体がさながら”風間柚乃ワンマンショー”といった趣き。
研8にもかかわらず、研18とも研28とも言われる芝居の上手さや存在感、そして歌唱と、堂々たる主演です。
熱演すぎてもう少し緩急があれば、と思わないでもないですが、この学年で、バウ初主演となれば力も入るというものです。
もとより台詞の口跡はすばらしく、ゾマー少尉に向かって「マクベス」の一節を朗誦する場面がありましたが、あれを聴いていると「おだちんでシェイクスピア観てみたい」と思いました。
終盤、モントリオールの森を彷徨いながら信念と希望を歌い上げる7分間にも及ぶソロ歌唱は圧巻でした。

レナーテはきよら羽龍さん。
こちらも抜擢が続く月組期待の娘役さんです。
歌に定評があって、本当にのびやかで透き通るような美しいソプラノ。オペラの一節を迫力の歌唱で聴かせてくれました。
歌と同じくらい台詞の声も綺麗で聴き取りやすい。
おはねちゃん観ていていつも残念だなと思うのは髪型やメイク。このあたり、もうひとふんばりしていだきたいところです。

ルーカスの音楽院時代の学友で今はナチス親衛隊のゾマー少尉は礼華はるさん。
長身にナチスの軍服が映え、キツ目のアイメイクで、ほとんど表情を変えないクールな雰囲気がいかにも心を持たないナチスっぽい。
歌がないのは残念だったな。
二幕では、ユダヤ人のゴミ収集業者でルーカスの脱走に力を貸すユーディ。
当たり前ですが、ゾマーとはまったく違っていて、「え?ぱるくんなの?」と驚いた次第。
ジャズの場面のスーツの似合いっぷりや明るい笑顔も素敵でした。

一幕でトランぺッターのルネ、二幕で収容所所長のジャスティンを演じた千海華蘭さんも目を惹きました。
からんちゃんといえば、「ピガール狂騒曲」のロートレック、「桜蘭華」のジンベエと愛すべき人物の役が続いていましたが、冷厳として任務を遂行するジャスティンがとても新鮮でした。
数々のジャズの場面でもセンターで歌い踊っていて、改めてからんくんのカッコよさを実感。

汝鳥伶さんはさすがの重厚さと存在感。
フィナーレ「シング・シング・シング」の総踊りの前に、大劇場のショーでいえば「歌唱指導」にあたるソロの歌唱があって、汝鳥伶さんの歌を聴けるなんて!と思いました。もちろん渋くて温かくて素敵な歌声。

ベルリンの印刷屋でヤミの偽造屋シュミッツの佳城葵さんと助手のセレシュの蘭尚樹さんのうまさも光っていました。


風間柚乃さん、カーテンコールの挨拶で「デコボコ道」を噛んでしまい、自分で自分の左頬を打ったものの外れてマイクに当たってしまい、再度右頬を打ち直すという律義さw
笑いながらそれを見守る周りの雰囲気が温かかったです。



おだちんならシリアスドラマが観たいけれどそれは次回のお楽しみとしましょう のごくらく地獄度 (total 2316 vs 2316 )



posted by スキップ at 17:21| Comment(0) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
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