2021年10月01日

「マタ・ハリ」再び


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「REON JACK 4」の東啓介さんとの共演で記憶がよみがえったこちらの作品。
ラスト3公演が急遽中止になってしまって、楽しみにしていた初演オリジナルキャスト(柚希礼音マタ・加藤和樹ラドゥー・東啓介アルマン)の大千穐楽が観られなかったという、少しばかり切なさの残る公演となりました。

2018年に初演された舞台の再演。
マタ・ハリ役が柚希礼音と愛希れいかさんのダブルキャストとなったほか、ラドゥーには田代万里生さんが加わり加藤和樹さんとダブルキャスト、アルマンは三浦涼介さんが加わって東啓介さんとダブルキャストとなりました。
アンナの春風ひとみさん、ビッシングの宮尾俊太郎もともに新キャストです。


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私が唯一観た回はこんなキャストでした。


ミュージカル 「マタ・ハリ」
脚本: アイヴァン・メンチェル
作曲: フランク・ワイルドホーン
歌詞: ジャック・マーフィー
オリジナル編曲・オーケストレーション: ジェイソン・ホーランド
美術: 堀尾幸男   照明: 日下靖順   衣装: 十川ヒロコ
訳詞・翻訳・演出: 石丸さち子
出演: 柚希礼音  田代万里生  三浦涼介  春風ひとみ  
宮尾俊太郎  鍛冶直人  工藤広夢  飯野めぐみ  ほか

2021年7月18日(日) 5:00pm 梅田芸術劇場メインホール 
1階13列 下手  (上演時間: 3時間/休憩 20分)



ストーリーはもちろん、演出、舞台美術なども初演を踏襲しているようでしたので、あらすじや全体の感想は2018年観劇時のこちらで。

そうそう、照明の印象が少し変わったかなと思ったのですが、プログラム調べたら初演の照明はリック・フィッシャーさんで今回は日下靖順さんでした。この違いに気づいた(気づいたというのか?)自分、エライ(自画自賛)。
舞台美術の中では実は照明が一番好きでいつも注目しているのです。


2ヵ月半も前に観た舞台なので細かいことは忘れてしまっているのですが新キャストの印象を少し。

ラドゥー:田代万里生さん
最初にキャスティングを知った時、いかにも好青年でお育ちのよいプリンスといった印象の万里生くんがラドゥー?と意外な気がしました。
ラドゥーには少し線が細すぎるのでは?とも思ったのですが、このラドゥーが存外にハマっていたのはうれしい驚きでした。

粘着質で激しい感情を心の奥底に滾らせながら表面上はクールというラドゥーが、あの端正な佇まいだからこそ一層際立ちます。
最初にマタを訪ねる楽屋の場面、アルマンとの場面(多分心中は嫉妬に燃えている)、マタがアルマンの消息を訪ねてラドゥーの自宅を訪れる場面と、場面が進むごとに嫌らしさと異常さがどんどん増していく感じ(褒めています)。
マタに惹かれている気持ちをキッパリ切り捨てて、裁判でマタを冷酷に追い詰めるところもよかったです。

そして、わかっていたことだけど歌がすばらしくうまい。本当にうまい(大事なことだから2回言いました)。
特に「一万の命」とラストのソロ曲「戦いが終わっても」は圧巻でした。

「一万の命」はアルマンが「人生と闘え」を歌った後に続く曲ですが、自分の人生を大切にしようとするアルマンと、集団の命を救うためには個を切り捨てることもいとわないラドゥーの対比がとても鮮やか。
そして2人がマタをめぐってぶつかり合う「2人の男」のドラマチックさ。


アルマン:三浦涼介さん
繊細で孤独感を漂わせ、いつもどこか寂し気なアルマン。
登場した時からどこか悲しい結末を予感させるような佇まいもあって儚げ。マタ・ハリじゃなくても母性本能くすぐられるタイプだよね~と思いました。
クールな美貌なのにくしゃっと笑う顔がとてもかわいくて、マタをスターダンサーではなく一人の女性として愛して、だからこそマタも「彼となら」と希望を見出すことができたのだと思います。
数々のミュージカル作品に出演されているだけあって歌もお上手。
アルマンが歌う「普通の人生」が大好きなのですが、ただ純粋に普通に平凡に生きる人生を願う歌唱に心打たれました。
小顔で華奢なイメージがあったのですが、柚希さんと並んでも背が高い(181cmですって)のにも改めてオドロキ。


春風ひとみさんのひたむきにマタに寄り添い、温かく包み込むようなアンナ、踊るビッシング(違)宮尾俊太郎さんもよかったです。


そして柚希礼音さん。
「寺院の踊り」の登場シーンから、神々しいほどのオーラのマタ・ハリ。
人々がマタ・ハリの踊りに熱狂し、あの冷徹なラドゥーが心奪われ、アルマンが自分の任務を忘れて本気になるのも納得の、圧倒的な光。
初演から3年の時を経て、女性らしい部分がより深みを増し、繊細さかわいらしさと毅然として前に進む部分との緩急がよりくっきり際立っているように感じました。
「女」を武器にしたたかに生きてきた彼女が仮面の下に抱える純粋さと孤独が痛いほどに感じられるマタ。

「REON JACK 4」のレポにも書いたのですが、ただ一つ気がかりなのは高音の歌唱です。
この作品で「え?!高い声、弱々しい・・・」と最初に思いました。
初演の時はそんなふうに感じなかったのに、と思って自分の初演の感想読み返してみたら、「歌唱もますますのびやかでパワフル。『柚希礼音史上最高音』という高音まで地声で出ていて凄い」と書いていて、あー、やっぱり今回と違う、と思いました。
高い音程になるとたちまち弱々しいファルセットになって・・・「ボディガード」(2020年)で喉を傷めて存分な力が発揮できなかった悪夢が脳裏をよぎりますが、来年年初にその「ボディガード」再演も控えていて、今は発声改造中なのだと信じて待ちたいと思います。



どんな公演も中止になったりしない日常が早くもどりますように の地獄度 (total 2307 vs 2309 )



posted by スキップ at 22:34| Comment(0) | 演劇・ミュージカル | 更新情報をチェックする
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