
京都芸術大学の開学30周年と、春秋座開場20周年を記念した公演。
猿之助さんと鷹之資くんの連獅子なんて絶対観たいやつ、と張り切ってチケット取りました。
昨年3月に平城宮跡で観る予定だった猿之助さん特別公演が中止になったので、実は猿之助さんの連獅子も澤瀉屋型の連獅子も観るのは初めてでした。
大学開学30周年記念・劇場開場20周年記念公演
京都芸術劇場 春秋座 芸術監督プログラム
市川猿之助 春秋座特別舞踊公演
2021年9月2日(木) 11:00am 春秋座 1階3列(最前列)センター
一、大学開学三十周年記念 劇場開場二十周年記念御挨拶
出演: 市川猿之助
大学創始者である徳山詳直氏の大きなパネルが飾られた舞台。
猿之助さん、黒紋付袴の正装でのご挨拶です。
「今年は大学開学30周年で春秋座開場20周年。その記念の公演です。もっと大々的にいろいろやろうと思っていましたが、今のご時勢でこういう形になりました」と猿之助さん。
この大学をつくる時、当時は日本全国に多くの大学ができていて、国としてはもう大学はいらないという考えだったところ、徳山氏が文部省まで出向いて演説をされたそうです。
「泣き申さず候ては化し申さず候」
江戸時代の儒学者 細井平洲の言葉で、「人は涙を流すほど感動した時初めてすごい向上心が生まれて成長する」ということ。日本にたくさんある大学はどこも政治経済は教えても感動は教えない。感動こそが人間をつくる。私は人間をつくる大学をつくりたいのだ」と。
このお話、2016年9月の「猿翁アーカイブにみる三代目市川猿之助の世界」でも出ていましたが、何度聞いても胸を衝かれる思いです。
徳山氏に「大学で歌舞伎を教えてほしい」と乞われた先代猿之助さんが「それなら劇場をつくってください」とお願いしてできたのが春秋座。「宙乗りもできるし、客席はずしてフラットにもなる、とてもいい劇場です」と猿之助さん。
猿之助さんは「亀治郎の会」を立ち上げた時に東京ではできる劇場がなくて、「春秋座なら自由に使える」とこちらで大変お世話になりましたとおっしゃっていました。
今はこのようなごご時世ですが、このままだと関西では歌舞伎に限らず演劇がなくなってしまうのではないかと厳しい表情で危機感を話されていたのが印象的でした。
二、素踊り 春秋三番叟
構成: 市川猿翁 構成
補綴: 石川耕士
出演: 市川弘太郎 市川猿四郎 市川笑野 市川猿紫 市川喜猿
(上演時間: 15分)
「これは春秋座のためにつくられた三番叟」と猿之助さん。
平成13(2001)年5月、春秋座の杮落しで上演されたもので、その時は猿之助(当時 亀治郎)さんが演じたものを、今回一門の五人で勤めるよう補綴されたものです。
猿翁さんがつくった春秋座の20周年を寿ぐ三番叟を、猿翁さんのお弟子さん5人が踏むというところにまず胸熱。
弘太郎さん筆頭に澤瀉屋5人衆。皆さま紋付袴で素踊りです。
5人の動きがシンクロしているのだけれど、やはりそれぞれ個性があって、表情も違っていて、目が足りないくらいでした。猿四郎さんはやっぱり三番叟踏んでもキレッキレだなぁとか。
後半は、皆さん右手に神楽鈴、左手に舞扇を持って、ラストは5人一体となって畳みかけるような舞。
鈴の音とダンッと舞台を踏む音が5人揃って、まるでアイリッシュダンスのようで迫力たっぷりでした。
三、澤瀉十種の内 連獅子
作: 河竹黙阿弥
狂言師右近後に親獅子の精 市川猿之助
狂言師左近後に仔獅子の精 中村鷹之資
(上演時間: 40分)
「連獅子は鷹之資くんと踊りますが、昔、富十郎さんの親獅子で伯父(猿翁さん)が仔獅子を踊ったことがあります。その息子と甥が今度は親子を入れ替えて踊るのも不思議なご縁です」と猿之助さん。
澤瀉屋さんの連獅子を観るのは初めてで、二畳台の置き方も違うのね、とか、毛振りは台の上でやらないのね、とかいろいろ興味シンシン。
宗論も胡蝶もなかったのは、この状況下での上演時間の関係かな。
連獅子といえば、仔獅子が親獅子に負けじと毛をぶんぶん振るイメージですが、今回の連獅子は少し印象が違っていました。
それは澤瀉屋型だから、というのではなくて、何というか、2人の関係性でしょうか。
とても素直に「仔」である鷹之資くんと、普段あまり見せたことのないような父性を感じる猿之助さん。
鷹之資くんの踊りが上手いのは織り込み済みですが、とてもお行儀よく、おっとりとして品よい仔獅子。
それを見守るような猿之助さんの親獅子が表情豊かで、谷底に突き落とした仔獅子が水面に映った時のうれしそうな表情なんて、「猿之助さん、あんな顔するんだ」とちょっとしたオドロキでした。
猿之助さんが團子くんと勤めた連獅子を観ていないのですが、どうだったか俄然興味が湧きました。
後ジテは猿之助さんかなり熱を放っていて、毛振りもさすがの迫力と美しさ。
鷹之資くんもしっかりそれについて行って、最後まで“親子”でした。
鷹之資くんといえば、染五郎くんの松本金太郎としての初舞台 高麗屋三代連獅子を富十郎さんとご一緒に観にいらしていて、終演後ロビーで金太郎くんのお母様に「とっても上手だった〜」と言っていた姿が忘れられません。当時鷹之資くん10歳 染五郎くん4歳。
いつか2人のがっつり共演も観られますように。

ロビーにはこれまでの猿之助さん出演作のポスターや舞台写真がズラリ


一つずつ見ていたらいくらでも時間が過ぎてしまいます

記念の手ぬぐいもいただきました
春秋座をつくってくださった徳山先生と猿翁さんに感謝 のごくらく度


