2021年09月04日
銀ちゃんカッコいい! 花組 「銀ちゃんの恋」
1980年に初演され、小説版は直木賞も受賞したつかこうへいさんの名戯曲「蒲田行進曲」。
宝塚歌劇では1996年に久世星佳さん主演で初演、2008年・2010年には大空祐飛さん主演で再演され、今回が4度目の上演です。
風間杜夫さんの銀四郎、平田満さんのヤス、松坂慶子さんが小夏を演じた映画は観たことがあって、とてもおもしろく印象に残っていますが、宝塚版は今回初見でした。
宝塚歌劇 花組公演
プレイ 「銀ちゃんの恋」 ~銀ちゃん、本日も反省の色なし~
原作: つか こうへい 「蒲田行進曲」
潤色・演出: 石田昌也
作曲・編曲: 高橋城 甲斐正人 高橋恵
振付: 尚すみれ 殺陣: 清家三彦
装置: 稲生英介 衣装: 加藤真美
出演: 水美舞斗 美風舞良 航琉ひびき 飛龍つかさ
峰果とわ 帆純まひろ 侑輝大弥 希波らいと 都姫ここ 星空美咲/
京 三紗 悠真 倫 ほか
2021年9月2日(木) 3:00pm シアター・ドラマシティ 19列センター
(上演時間: 2時間40分/休憩 25分)
物語: 京都撮影所では大作「新選組」の撮影が進んでいました。土方歳三を演じるのは銀ちゃんこと倉丘銀四郎(水美舞斗)。自分が主役じゃないと気がすまない自己中心的な人間ながらどこか憎めないところもある銀ちゃんですが、かつての大スターで恋人の女優 小夏(星空美咲)が妊娠したことで、スキャンダルを恐れ、自分を慕う大部屋俳優 ヤス(飛龍つかさ)と結婚するよう無理矢理頼み込みます。銀ちゃんの言いなりになるヤスに腹を立てていた小夏ですが、自分の子ではないとわかっていて出産費用を稼ぐために危険な仕事も顧みないやさしいヤスに心惹かれていきます。そんな時、映画の見せ場「池田屋階段落ち」のシーンが危険すぎるという理由で中止となり、意気消沈する銀ちゃんのため、ヤスは階段落ちを買って出るのでした・・・。
開演5分前ぐらいから会場に出演者が歌う「蒲田行進曲」が流れます。
♪虹の都 光の港 キネマの天地
花の姿 春の匂い あふるるところ
カメラの眼に映る かりそめの恋にさえ
青春もゆる 生命はおどる キネマの天地
フルコーラスたっぷり流れるのですが、「あー、これこれ」と聞き覚えのあるメロディに一緒に口ずさみそうになります。
そこへ、「このたび三代目 倉丘銀四郎を襲名しやした水美舞斗でごぜぇやす」といつもとは違って役になり切った開演アナウンス。
遊び心たっぷりのオープニングにテンション上がります。
ストーリーは私が覚えている範囲でほぼ映画(原作)のまま忠実に再現という感じ。楽しかったです。
どうなるのかなと思っていた階段落ちも照明をうまく使っていてなるほどねーと感心。
ラストのお葬式のシーンは違っていましたが、映画の「カーット!」が入るオチもそのままでした。
「毎日放送からロフトの屋上に飛び降りる」「インターナショナルホテルで結婚式」といった台詞は大阪ネタなのかな?
完全無欠のヒーローではなく、欠点ばかりながら人を惹きつける魅力を放つ銀ちゃんは、宝塚の主演男役としては異質な役の一つかと思いますが、水美舞斗さん、すばらしい。
これまで蓄えに蓄えてきた実力とポテンシャルを一気に放ったという印象です。
水美さんはオフの時に何度か遭遇したことがあって、そのたびに「彫刻みたい」と思うくらい綺麗な鼻筋の通った美人さんですが、そのビジュアルをいかんなく発揮して、「銀ちゃんカッコいい!」と傷だらけのヤスが言ってしまうくらいカリスマ性のある水もしたたるいい男っぷりです。
時折ふっと見せる孤独の翳りも魅力的。一幕終わりは、銀ちゃん、ヤス、小夏ともに涙ナミダでした。
元々、お芝居、歌、ダンスと穴のないスターさんですが、今回キレッキレの殺陣も披露してくれています。
「ダンスは顔で踊るんだ」は花組ポーズつきで。
出演者が発表された時から「ヤスはつかさだよね」とみんな言っていた(もちろん私もそう思った)飛龍つかささん。
これまたハマリ役で、銀ちゃんに心底惚れ込んでいるのが伝わる熱いヤス。
ガサツなのだけれど繊細な心を持っているところも、階段落ちの前のピリピリした場面も心情がよく伝わってきました。
お得意の歌もさすがに聴かせてくれました。
105期生 研3ながら今年2月の「PRINCE OF ROSES」に続いてのヒロインと抜擢が続く星空美咲さん。
小夏は落ち目の大女優で、しかも妊婦という、宝塚のヒロインとしては、しかも若い娘役さんにとってはかなりの難役と思いますが、大健闘でした。
声を張ると緩急がなくなってしまうところがありましたが、台詞もしっかり。
ウェディングドレス姿も可憐で綺麗。素化粧かわいいのでメイクや髪型もう少しがんばれ。
ラスト近くの全員コーラスの中で一人別メロディのソロを取る歌唱も圧巻でした。
銀ちゃんのライバル 橘(映画では原田大二郎さんがやっていたと記憶)の帆純まひろさんもよかったです。
この役がカッコよくないと、銀ちゃんのカッコよさも焦りも際立たないところ、ちゃんと強敵のライバルになっていました。
映画のシーンで沖田総司役の人が美形と思って後でチェックしたら侑輝大弥さん。あー、なるほどねと思った次第。
そして、専科のお2人 京三紗さんと悠真倫さんの存在感。
特に京三紗さんは、ヤスの故郷で小夏と対峙する場面のお母さんが絶品。
台詞の一言ひと言に息子を思う心情が細やかに込められていて本当にうまい。
カーテンコールでは、幕が下りるまで隣の飛龍つかささんと親子2人ノリノリで踊っていた姿も印象的でした。
悠真倫さん監督は楽しそう。
お祭りの自治会長、「あれ、まりんさんみたいだけど・・・」と思って後でプログラム確認したらやっぱり悠真さん。こちらも楽しく遊んでいらっしゃいますよね?(笑)。
この日がドラマシティ公演初日で、ご挨拶では「横浜からやってきましたが、愛とエネルギーに満ちた個性あるれるメンバーと、休演の朝葉ことのの分も・・・」と涙で声を詰まらせ、帆純まひろさんの方を向いて「男は人前では泣かねぇんだよっ!!」と銀ちゃんの台詞で強がってみせて、天を仰いで涙をこらえる水美さん。
3回目のカーテンコールでは階段の上で一人花組ポーズキメていらっしゃいました。
「じゃあ、ヤスさん」と挨拶振られた飛龍つかささん。
「あの遺影の写真をいただいて帰りたい」と。
「ここだとあのサイズ感だけど家に飾ったら結構でかいと思うよ。でも、なら交換しようか」と水美さんに言われて「え~っ、いいんですか」とうれしそうな飛龍さん
肝心のご挨拶は「皆さんお疲れ様でした」とシンプルでしたが、聞くところによると、これは星空さんがKAAT楽でおっしゃったのを受けたのだとか。
「積もる話ござる・・」と言いかけて(多分「ごぜぇやしょうが」と言いたかった?)言い直そうとするも強い心で「積もる話もござるでしょうが」で突っ切った水美さん「お口チャックでお願ぇいたしやす!」と締めくくり。
さらには、ラスト幕が下りる直前に星空さんを幕前に押し出し、驚く星空さんを笑って抱き抱えるって、どこまで銀ちゃんカッコいいんだ。
マイティ 同期トップの支えにはもったいない実力と華ですが各組に95期いて劇団どうするつもりなのかしら のごくらく地獄度 (total 2297 vs 2297 )
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