
「密にならない、短い上演時間で、観たお客様が元気になる作品を」と、見た人は幸せになると言われている新幹線のドクター・イエローから着想を得て、Yellow/新感線、発車です。
ネタもので笑いに包まれているけれど、演劇への愛とリスペクトに満ちた舞台。
今の状況下、中島かずきさん、いのうえひでのりさんの強い思いが込められているよう。
「さあ行きましょう!すべての道は舞台に通ずる。
進めばそこに劇場が待っている。なければそこにつくればいい!」
月影先生のラストの台詞に泣いちゃった😭
今年4月に観た舞台です。
大千穐楽も観る予定で「千穐楽観てからまとめてアップしよう」と思っていたのに緊急事態宣言で4月25日から5月10日の大楽までの公演が中止になってしまって、感想もそのままになっていました。
昨日、WOWOWでオンエアされているのをチラリと見かけて、そういえば・・・と思い出した次第。
劇団☆新感線41周年春興行 Yellow/新感線 「月影花之丞大逆転」
脚本: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
美術: 池田ともゆき 照明: 原田 保 衣裳: 竹田団吾
音楽: 岡崎 司 作詞: 森雪之丞 振付: 川崎悦子
殺陣指導: 田尻茂一 川原正嗣 アクション監督: 川原正嗣
映像: 上田大樹 歌唱指導: 右近健一
出演: 古田新太 阿部サダヲ 浜中文一 西野七瀬
河野まさと 村木よし子 山本カナコ 中谷さとみ
保坂エマ 村木仁/木野花
映像出演: 賀来賢人 磯野慎吾 吉田メタル 川原正嗣
ナレーション: 橋本さとし
2021年4月18日(日) 1:00pm オリックス劇場 1階8列センター
(上演時間: 2時間)
物語の舞台は演劇界の超座長・月影花之丞(木野花)率いる劇団月影花之丞。
ベテランの塾頭剛太郎<じゅくとうごうたろう>(古田新太)、ワケありの元トップ女優・水林星美<みずばやしほしみ>(西野七瀬)、大口契約ほしさに稽古に参加する保険外交員の東影郎<ひがしかげろう>(阿部サダヲ)といった劇団員たちが稽古に励んでいました。そこへ、インターポール極東支部捜査官のモスコウィッツ北見(浜中文一)が、 劇団員の塾頭が国際的な殺し屋“イレイザー”という秘密情報をキャッチして潜入捜査のため入団。やがて明らかになる暗殺計画・・・。
といったあらすじはあるのですが、ま、それはどうでもいい感じかな(どうでもよくない)。
様々な事情を持つ劇団員たちのあれこれと、劇中劇というか、劇団が上演する(稽古している)お芝居とが交錯して展開する中で、国内外の演劇やミュージカル、アニメなどのパロディてんこ盛り。大ネタ小ネタつぎ込んでおバカ芝居を突き詰めた感じなのに、終わってみれば、演劇、舞台、役者、そして私たち観客へのエールに胸熱という、まさに中島&いのうえマジック。
「アルプスの少女ハイジ」ネタに某家庭教師の企業ぶっ込んできたり、「え?それ大丈夫なの?」とういうものもいくつかあって、今回よくWOWOWでオンエアできたなと感心したり、いのうえさんってやっぱりミュージカルお好きですよね、とムフフとなったり。
ちなみに、いのうえさんのミュージカルパロディで私の最もお気に入りは「犬顔家の一族の陰謀」の「お湯にのぼせる」(=闇が広がる from エリザベート)ですが、あれこそ絶対オンエアできないわね。
お隣の席がわりと何にでもキャハハと笑う反応のよい若いお嬢さんだったのですが、「泥がついた1000マルク札」のところはスンとしておられました。ワタシ?私はもちろん爆笑しましたが何か(じぇねれーしょんぎゃっぷ)。
じぃじとハイジという、ビジュアル的にはアレですが、古田新太 vs 阿部サダヲの殺陣もたっぷり。
重さ、速さ、二人の殺陣のタイプの違いも見て取れて、新感線の殺陣好きにはたまらない贅沢でした。
そしてラストはセルフパロディというのでしょうか、みんな大好き「髑髏城の七人」。
アルプスの傭兵じいじからの二人(古田新太・阿部サダヲ・・・両人とも捨之介役者)の名乗り、「浮世の義理も昔の縁も三途の川に捨之介」は心震えるし、もちろん客席やんやの喝采でした。その後に「もう決めたんだ」と沙霧の台詞が続くのもよかったし、ラストに子ヤギが5匹出てきて塾頭さんと影郎くんと”七人”のシルエットになるのも本当によくできていて、何なら笑いながら泣いちゃったよね。
「優れた役者が舞台に立てないなどあってはならない」
「あなたの怒りはわかります」
冒頭に書いたラストの台詞もそうですが、月影先生の言葉の一つひとつが、この時期だからこそというのもあって、とても心に刺さります。まるで中島かずきさんが、いのうえひでのりさんが、月影先生の口を借りてその思いのたけを迸らせているよう。
それを体現する月影花之丞の木野花さん すばらしい。
あの「紅天狗」から18年!って、もうそんなにかと驚くばかりですが、そんな時の流れなんて超越したよう。
ある意味“芝居バカ”ともいえるキャラクターながら強烈なカリスマ性を持ち、演劇愛の権化のような月影先生が木野花さん自身とシンクロします。他の役者さんでは考えられないくらいハマリ役。どきどきマジ笑いしちゃって素に戻ったような台詞になるのもご愛敬。
古田新太さんの重厚さと阿部サダヲさんの愛嬌、小気味よさ。
個々の時はもちろん、二人組んだ時の芝居、殺陣の高揚感ハンパない。
浜中文一くん、西野七瀬さんの負けじというハジケっぷり。
村木よし子さん・山本カナコさん・中谷さとみさん・保坂エマの劇団4人娘もそれぞれに役どころを得た活躍で、うれしくなります。
この状況下で、本来計画していた大人数の本興行とは別の作品に変更して上演することを余儀なくされたということですが、演劇への、舞台への強い思いにあふれた、そして、まだ劇団が小さかったころの迸るく熱さとくだらなさ(笑)に満ちたこんな舞台が観られたことは、何かと憂鬱なことばかりのコロナ禍で、数少ない灯りのひとつでした。
にしても大楽めちゃ良席取れてたのに返す返すも無念 のごくらく地獄度



