2021年06月09日

出陣いたします 月組 「桜嵐記」新人公演


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昨年2月の星組「眩耀の谷」以来、ずっと中止されていた宝塚歌劇の新人公演が1年4ヵ月ぶりに再開。
お友だちが誘ってくれて、再開最初の公演を観ることができました。
本公演の感想もまだですが(書きたいことあふれすぎ💦)、まずは新公の感想を。


宝塚歌劇 月組 新人公演 「桜嵐記」
作・演出: 上田久美子
新人公演担当: 熊倉飛鳥
出演: 礼華はる  きよら羽龍  彩音星凪  真弘蓮  風間柚乃  
天紫珠季  蘭尚樹  柊木絢斗  一星彗  大楠てら  結愛かれん  
羽音みか  彩路ゆりか  瑠皇りあ ほか

2021年6月8日(火) 6:00pm 宝塚大劇場 1階29列センター
(上演時間: 1時間45分)



立見も出ていた満席の宝塚大劇場。
新公復活への歓びと期待で満ち溢れているような客席。
冒頭、老年の楠木正儀(風間柚乃)が登場して、「皆さま 南北朝時代へ、そして新人公演へようこそ(客席大拍手)。ありがとうございます。少々緊張しております」と笑わせて客席が一気に温まりました。
ここ、本役の光月るうさんが南北朝の説明をした後、下手から登場した老年の弁内侍に「ご門跡様」と声をかけるところでそれまでとガラリと声色が変わる(ここから役に入る)のにいつもゾクッとするのですが、風間さんもそれがしっかりできていて、「さすが研18と言われるおだちんだわ」と感心することしきり(本当は研8)。

物語や演出等については、本公演の感想をあげる際に改めてきちんと書きたいと思いますが、今回の新人公演は場面の短縮や省略もなく、ほぼ本公演通りに上演されていました。
そして最後に印象的な台詞の改変が2つ。

出陣式で皆が勢ぞろいした中、銀橋の中央に進み出た正行。
「皆さま 出陣いたします」   
(本公演: お別れを 皆さま)

そして最後に見送る後村上天皇
「生きろよ」  
(本公演: 戻れよ)

「お別れを」は劇中の正行の言葉であるとともに、この公演が宝塚ラストとなる珠城りょうさんの客席、ファンに向けての言葉でもありますので、これから先の道を歩いていく新人さんたちのための変更ですね。
2014年雪組の壮一帆さんサヨナラ公演「一夢庵風流記 前田慶次」のラストの台詞が「散らば花のごとく。楽しゅうござるのう」が新人公演では「間もなく満開ぞ。楽しみでござるのう」に変更されたのを思い出しました。
あの時の新公主演が珠城りょうさんの後を引き継ぐ月組次期トップ 月城かなとさんだというのも不思議に運命的な符号です。


礼華はる (楠木正行/本役:珠城りょう)
凛とした立ち姿が美しく、のびやかで品のある若武者。
若さあふれ、清々しく、さわやかでスッキリした容姿に衣装もよく映え、真ん中に立つ華やかさもあるすばらしい主役っぷりでした。
若者らしいのにどこか逆らいようがない運命=死に向かって突き進んでいくような悲劇性も感じられて。
冒頭の第一声とそれに続く歌は緊張のためか少し硬さが感じられましたが、以降は安定。台詞、歌ともに声がよく出ていました。長身のせいもあってか立ち回りはいささか腰が高いように見受けましたが、これから日本物の経験を積むことでよくなるでしょう。
本来は昨年の「ピガール狂騒曲」で新人公演主演を勤めるはずだったのが中止になったため今回にスライドした模様ですが、結果的にはこの役の方が礼華はるくんのニンだったように思います(もちろんピガールのジャンヌも観てみたかったけれども)。


きよら羽龍 (弁内侍/美園さくら)
早くから抜擢が続いてるきよらさんですが今回が新人公演初ヒロイン。 
定評ある歌唱は本当にのびやかで聴き惚れます。その歌声の延長のように台詞の声もとてもよく通るいい声で、このあたり、タイプは違いますが、先日退団した雪組の真彩希帆さんを彷彿とさせます。


彩音星凪 (楠木正儀/月城かなと)
月城かなとさんの正儀をさらにやんちゃに末っ子ぽくした感じ。兄たちにかわいがられてのびのび育った野生児といった趣き。
そしてめちゃイケメン。ラスト四条畷の合戦で正行と対峙するあたりは涙なのか汗なのか顔をぐしゃぐしゃにしての熱演でした。
河内ことばのイントネーションがちょっと残念な感じだったのですが、道産子だから無理もないかと思いつつ、横浜出身の月城さんの河内弁の上手さを改めて知る結果となりました。


一星慧 (楠木正時/鳳月杏)
本公演のショー「Dream Chaser」の“I‘ll be back”のメンバーで俄然注目した一星くん。
やさしく穏やかな正時を好演。百合に「正時様も生きていてくださいね」と言われて答えずにふっと見せる寂しげな表情が印象的でした。

それにしてもこの三兄弟、正行 礼華はるくん 178cm 正時 一星慧くん 178c 正儀 彩音星凪くん 173cm 、さらにはお父さんの楠木正成 大楠てらくん 180cmと、何という高身長一家なんだ。


蘭尚樹 (高師直/紫門ゆりや)
本役の紫門ゆりやさんの師直が強烈な印象なのでどうかなと思っていましたが、さすがにうまい蘭尚樹くん。
十分に脂ぎってきて嫌なヤツでした(褒めています)。歌うまさんでもありますので、師直は歌がないのが残念な感じ。
カーテンコールでは長の期としてしっかりしたご挨拶されていましたが、役の時とは全く違う穏やかな声でギャップ萌え。


柊木絢斗 (ジンベエ/千海華蘭)
こちらも本役の千海華蘭さんがこれ以上ない好演なのでハードル高いと思っていたのですが、芝居心あってよかったです。
千海さんのジンベエをとてもよく勉強して、その上で柊木くん自身の個性を出してきた感じ。


彩路ゆりか (後村上天皇/暁千星)
声や台詞まわしが暁千星さんにとても似ていて、こちらも本役さんをすごく勉強したのだろうなと思いました。
天皇としての品格も苦悩も感じられて、とてもよかったです。


最初に”つかみはOKだった風間柚乃くんの老年正儀や老年弁内侍の天紫珠季さんはすでに本公演でも大きな役をやっていて、さすがにこのメンバーの中では別格感ありました。
“I‘ll be back”でもう一人注目していた茶髪のイケメン 瑠皇りあくんの足利尊氏は日本物でもイケメンだったし、湯殿の場面で怖さと凄みを見せたとても美しい仲子の結愛かれんちゃんさすがだし、百合の羽音みかちゃんの健気さよ・・・と書いていたらきりがないくらい、脇に至るまですべての役が舞台で息づいていました。
ほんと、月組若手、おそるべし。



蘭尚樹さん(新公長の学年)のご挨拶:
「約1年前、当たり前の日常が当たり前でなくなった時から、一人ひとりががんばりたいという思いを手に握りしめたまま、この状況に、己に、必死に向き合ってまいりました。ですが、わたくしたちのその思いだけでは本日を迎えることはできませんでした。たとえこのような状況であったとしても新人公演を再開させようと働きかけてくださったたくさんの方々、お力を貸してくださったたくさんの方々、そしてご声援くださったたくさんの方々のお陰だと心から感謝の気持ちでいっぱいでございます。そのお陰で一人ひとりが本日また新しい課題と出会うことができました。その課題に向かって明後日の本公演から、そして東京の新人公演に向けて、精一杯精進してまいりたいと思います。本日は本当にありがとうございました。」


礼華はるさんご挨拶:
「昨年中止となっておりました新人公演がこの月組公演より再開できることになり、こうして本日劇場にお越しくださいました皆さまと、この新人公演メンバー全員そろって無事に迎えられましたこと、心からうれしく、感謝の気持ちでいっぱいでございます。
この作品の主人公である楠木正行は、困難な時でもやさしさや真心を持ち、分け隔てなく人を助け、南朝を導き、限りある人生を生き抜きました。わたくしたちも、限りある新人公演をさせていただける時間の中で、自分自身と向き合い、仲間と助け合いながら、父正成から正行へ、正行の弟へ、その心が受け継がれたように、月組の上級生の方々から芸の技術だけではなく、目には見えないその方の志や思いをしっかりと学び、受け継いでまいりたいと心から思いました。このような不安な状況の中、本日ご観劇にいらしてくださった皆さまと過ごしたこの時間は、ともに今を生きていると実感した、とても幸せな時間でございました。この思いを胸にとめ、これからも精進してまいりたいと思います。本日は誠にありがとうございました。」

「本当に、本日を迎えられて、本当によかったです。明後日からの本公演、そして東京の新人公演に向けて、月組生の一員として真っ直ぐに舞台を勤めてまいりたいと思います。本日は真誠にありがとうございました。」


演技に勝るとも劣らないすばらしいご挨拶にまたウルウル。

ぱるくん、「本日は誠にありがとうございました」と繰り返しおっしゃっていました。
本当にありがとうございました」と言うジェンヌさんが多い中、新鮮でした。



珠城さんのお別れ寂しいことこの上なしなれど、月組の未来は明るい のごくらく地獄度 (total 2259 vs 2259 )


posted by スキップ at 23:43| Comment(2) | TAKARAZUKA | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
「桜嵐記」。ウエクミ先生と珠城さん、鳳月さんが出て、さらにそこに月城さん・・となるとサヨナラ関係なく見たいじゃないですか!とずっと思ってました。残念ながら行けないですが、とても高評価のようですね。
新人公演もこの作品から再開できて、嬉しいです。そしてやはり、月組は若手に至るまで「芝居の組」の実力を発揮した!とスカステのわずかな映像を見て感じていましたが、スキップさんのレポートを見て、改めてそう思いました。
詳細なレポ、ありがとうございます!
おだちん、研18(笑)もう専科クラスの貫禄ですね。
この新公は、来年あたりのスカステ放送まで我慢するしかないですが・・・本公演は東京公演千秋楽をライブ配信で観れたらいいな・・・
Posted by はぎお at 2021年06月13日 14:01
♪はぎおさま

上田久美子先生の作品はどれも大好きなのですが、「桜嵐記」は
中でも本当に大好きでハマリにハマッております。
作品そのものもすばらしいですが、これまで観てきた数々の
トップ退団公演としてもピカイチではないかと思っています。
この公演で退団できる珠城さんは幸せだなぁと。

新人公演も礼華はるくんはじめ皆さま本当にすばらしくて、
まさに「芝居の月組」の伝統が脈々と息づいているのを
実感しました。

東京の千秋楽、ぜひご覧になってくださいね。
私も絶対映画館で観るぞ!と今から鼻息荒くしております(*^^)v
Posted by スキップ at 2021年06月15日 00:31
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