2021年05月03日

四月大歌舞伎 「桜姫東文章」 上の巻


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清玄と釣鐘権助を片岡仁左衛門さん、白菊丸と桜姫を坂東玉三郎さんが演じての共演は昭和60年(1985)以来36年ぶりだとか。
こちらのポスターは昭和57年(1982)2月南座公演のために撮影された写真をもとに復刻版として制作されたもの。もちろんその公演は観ていませんが、今では伝説となったこの写真はずいぶん前にネット上で見たことがあって「ほぇ~っ」となったことを覚えています。

まさか、その、仁左玉の、桜姫を、この目で、観られる日が、来ようとは!


四月大歌舞伎 第三部
「桜姫東文章 上の巻」

発端  江の島稚児ヶ淵の場
序幕  新清水の場 桜谷草庵の場
二幕目 稲瀬川の場 三囲の場
作: 四世鶴屋南北
補綴: 郡司正勝
出演: 片岡仁左衛門  中村鴈治郎  中村錦之助  中村福之助  
片岡千之助  片岡松之助  上村吉弥  中村歌六  坂東玉三郎 ほか

2021年4月22日(木) 5:45pm 歌舞伎座 1階3列センター
(上演時間: 2時間14分/幕間 15分)



物語: 長谷寺の僧・清玄(仁左衛門)は、稚児の白菊丸(玉三郎)と道ならぬ恋の果て心中をしたものの自分だけが命を取りとめます。それから17年。高僧となった清玄阿闍梨は、満開の桜の下、清玄は17歳の吉田家息女 桜姫(玉三郎)と出会います。生まれつき開かない桜姫の左手が清玄の十念によって開くと、香箱の蓋がぽろりと落ちました。これは17年前、白菊丸が入水の折に左手に握りしめていた清玄の名が記された香箱の蓋でした。
御家没落のため出家を心に決めている桜姫は、1年前強盗に入った釣鐘権助(仁左衛門)に犯されましたが、彼を忘れられず、その子どもまで生んでいました。その釣鐘権助と運命の糸に操られるように再会した桜姫は自ら彼に身を委ね、その密会が明るみに出ると、香箱の蓋の名前から清玄が不義の相手という濡れ衣を着せられることに・・・。


「桜姫東文章」という作品自体は、それをモチーフとしたものを含めて何本か観ましたが、一番印象に残っているのはシアター・コクーンで観た「桜姫 現代劇ver. 清玄阿闍梨改始於南米版」(2019年)。
何てったって、勘三郎さんが演じた「権助」はチンピラみたいな派手なシャツ着た「ゴンザレス」だったのよ。あの時、開演前、舞台上に自分のバッグを落とすという事件もあったなぁ(^^ゞ


発端は江の島稚児ヶ淵の場 清玄と白菊丸が心中するところから始まります。
月明かりの下、幻想的な雰囲気の中、断崖絶壁の崖上へと向かう墨絵のように美しい二人。
稚児姿の白菊丸こと玉三郎さんの美しさ。転んで清玄を見上げた時の儚さなんて、清玄でなくても「抱きしめて守ってやりたい」と思うに違いありません。
香箱の蓋を握りしめて一気に海へ身を投げる白菊丸に対して、恐怖から一瞬躊躇って後を追うことができない清玄が切ないやら情けないやら。

場面変わって・・・の時に口上が登場。
「エラい男前出てきたで!」とスキップの心の声。
開演前にチラリと見たチラシの出演者名が頭の中をぐるぐる回りましたが、思い当たる役者さんがいない・・・

「玉さまの公演やん 功一さんやん!」と思い至ったワタシ、エライ(←)


浅葱幕が振り落とされると桜が満開の新清水長谷寺。前場とは打って変わって明るい場面です。
その満開の桜までも圧倒するような赤姫の拵えの玉三郎さん。絵から抜け出たように眩いばかりの美しさ華やかさ。
ここに登場する紫衣をつけた清玄阿闍梨の仁左衛門さんも高僧らしい気品があって堂々としていて、まさに今がわが世の春といった趣きです。

ところが一転、ほどなく入間悪五郎(鴈治郎)たちの前に現れた釣鐘権助はいかにもタチの悪い雰囲気で、桜姫の父 吉田少将を殺して吉田家の重宝・都鳥の一巻を強奪した犯人であり、その話を立ち聞きしていた端女お咲を平然と切り捨てるような悪党です。
なのに色気のダダ漏れっぷり凄まじく、まさに悪の華。悪役フェチの血が騒ぐ(←不肖スキップのことです)。
江戸前の台詞もピタリと決まり、当然のことながら清玄とは全く別人で、初めて歌舞伎観る人だと同じ役者さんが二役やっているとはわからないのではないかと思うくらいの落差。ほんと仁左衛門さん凄い。


「桜谷草庵の場」になるととてもよいお香の香りが漂ってきました。
歌舞伎の舞台で焚かれるお香はいつも本当によい香りでどんなお香なのか教えていただきたいくらいですが、その場の役者さんが準備されるらしきことを伺ったことがありますので、玉三郎さんかしら・・・教えてくださるかしら(無理)。

そして件の濡れ場ですよ。
「もう、こんなの見せていただいていいの?」というくらいエロティックで濃厚でした。

顔も知らない自分を犯した相手を忘れられず、垣間見た「釣鐘に桜」の刺青と同じものを自分の二の腕に彫る桜姫は、楚々としたお姫様のどこにそれほどの激情がと思いますが、権助の彫り物で彼と気づいて、人払いをして自分の腕の刺青を見せて迫る大胆さは、ちょっとアブナイ感じもする姫です。
まるで蕾が花開くようにお姫様から妖艶な女となっていく玉三郎さん桜姫のなまめかしさ艶やかさ。
それに応じる仁左衛門さん権助の、男前にもほどがある苦味走ったビジュアルと、胡散臭さプンプンでまるで心を持っていないような色悪ぶり・・・悪役フェチの血が騒ぐ(二回目)。
その二人が・・・(以下自粛)。
客席中が固唾をのんで(そして心臓をドクドクさせながら)見守っている雰囲気でした。

この後に出てくる残月(歌六)と長浦(吉弥)が多分同じような濡れ場を繰り広げたのであろう感じながらいかにも下世話な俗っぽさと年増感を出していて好対照でした。


ことが露見し、悪五郎や残月たちが踏み込んで来た時には逃亡してしまった権助の代わりに、香箱に名前が書かれていたことから不義の罪を着せられる清玄。
権助をかばって真実を語らない桜姫に対して、清玄は桜姫が白菊丸の生まれ変わりだと感じてその罪を受け容れます。

稲瀬川堤で百杖の刑を受けて晒し者になった二人。
白菊丸の生まれ変わりとして祝言をあげようと、破戒の印に数珠を切ってまで桜姫に迫りながら拒まれる清玄。
清玄が桜姫の中(にいると信じている)の白菊丸を思ってのことらしいのですが、その情念は今や桜姫本人に向けられていて、ここから彼の桜姫への執着が始まっていくようです。

桜姫が生んだ赤子を抱え、見るのが辛いくらいに落ちぶれた清玄と桜姫が雨の中行き交い、互いに近くにいる気配を感じながらも暗闇の中ですれ違っていくという、何とも切なくもどかしいところで幕。
これは「下の巻」も絶対観たくなるやつですね。


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冒頭の画像が初日前に公開された特別ポスターで
こちらが4月22日に公開された特別ポスター
6月の日程が入っているほか、タイトルのロゴなども少し変わっています。



松竹さんにまんまとヤラレましたワ のごくらく地獄度 (total 2244 vs 2245 )


posted by スキップ at 23:34| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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