2021年05月02日

四月大歌舞伎 第一部


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まずは仁左玉の「桜姫東文章」ありきで、「何?一部は高麗屋さんの勧進帳ですって?!観るー!」となり、「二部はま、いっか」(コラッ!)となって、「ん?一部と三部の間に東宝で星組のロミジュリ観られるやん」で、モリモリとなった7ヵ月ぶりの東京遠征。
久しぶりの歌舞伎座、堪能いたしました。


四月大歌舞伎 第一部
2021年4月22日(木) 11:00am 歌舞伎座 1階2列センター


一、猿翁十種の内 小鍛冶
作: 木村富子
出演: 市川猿之助  市川中車  中村壱太郎  市川笑三郎  
市川笑也  市川猿三郎  市川猿弥  市川左團次
(上演時間: 48分)



名刀「小狐丸」誕生の奇譚を描く舞踊劇。
能の「小鍛冶」を題材に初世猿翁さんが初演された「猿翁十種」のひとつということですが、今回初見でした。
国立文楽劇場の4月文楽公演でもかかっていましたが観に行けず(千穐楽チケット取っていたのに中止になった💦)。


当代随一の刀匠 三條小鍛冶宗近(中車)のもとへ、帝からの勅使 橘道成(左團次)が訪れ、御剣を献上するように命じます。宗近は、神仏のご加護を得ようと氏神の稲荷明神に祈りを捧げるところへ、忽然と童子(猿之助)が現れ、宗近を励まし、自らが剣の相槌を務めると約束して山に消えていきました。
宗近がいよいよ鍛冶場に入り刀を打つ準備を始めると、狐の姿をした稲荷明神の御神体が現れます。「相槌を務める」と約束した童子は実はご神体の仮の姿だったのでした・・・。

猿之助さんの童子実は稲荷明神、中車さんの宗近、左團次さんの道成、壱太郎さんの巫女、笑三郎さん、笑也さん、猿弥さん、猿三郎さんの弟子、後見には寿猿さん、猿四郎さん、左升さんと澤瀉屋さん勢揃い+高島屋さん、成駒屋さんという布陣。
24年ぶりの上演で猿之助さん、中車さんともに今回が初役だそうです。


楽しかった!
幕開き、厳かな雰囲気の中登場した役者さんのお顔がどなたかわからず(最前列だったのに)、「誰?」と思っていたらほどなく「あぁ、中車さんか」となりました。
中車さん、歌舞伎の舞台では本当に“歌舞伎役者さん”になられたなぁと実感。たとえば「弥次喜多」などで見せる姿は「香川照之の延長」のように見えなくもありませんが、今回は全く別人。舞踊劇にも初挑戦ということですが、とても真摯に丁寧に勤められている印象でした。

お稲荷様の中からすーっと現れる童子の猿之助さん。
前髪ぱっつんで可愛らしく無邪気な童子ですが何だか不思議な雰囲気を醸し出していて、音もたてない跳躍や軽やかでキレッキレの舞は観ていて本当に楽しい。
後半、稲荷明神として再登場した時は白い毛の頭の上にちょこんと狐が乗っていて、「何あれ、狐が乗ってるやん・・・あ、お稲荷様だからか」と心の中で自問自答。
荘厳な雰囲気の霊狐の舞は切れ味鋭く躍動的ですばらしい。それほど大柄ではない体が何倍にも大きく見えます。
そして、宗近と二人、トン カン トン カンとリズミカルに槌を打つ軽やかな音の心地よさ。
五穀豊穣を祈りつつ帰っていく花道の引っ込みまで、本当に目が離せませんでした。

間狂言として、巫女や弟子たちの準備の様子が踊りで表現されます。
皆さん見目麗しく踊りも楽しい。「同じ打つならワクチン打ちたいものだわい」なんて猿弥さん春彦の言葉には客席から笑いが。

世の禍を鎮める霊力を持ち、時を超えて重宝されるという名刀「小狐丸」。
その誕生を垣間見ることができて、何かと凹みがちな今の状況の中、元気をいただいた思いでした。



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二、歌舞伎十八番の内 勧進帳
出演: 松本幸四郎  尾上松也  大谷友右衛門  市川高麗蔵  
大谷廣太郎  松本錦吾  中村雀右衛門 ほか
(上演時間: 1時間10分)


四月の「勧進帳」は白鸚さん弁慶、幸四郎さん富樫のA日程と幸四郎さん弁慶、松也さん富樫のB日程があって、白鸚さん弁慶はもしかしたらこれが見納めかもしれないと、両方観たいところではありましたが、宿泊できない事情もあり、幸四郎さんが初めて弁慶を勤めた平成26年(2014)歌舞伎座から幸四郎さんの弁慶は一度も欠かさず観ているワタクシといたしましては、やはりB日程となりました。


染五郎時代の平成26年歌舞伎座、そして平成30年 襲名披露の歌舞伎座、松竹座、南座、令和元年 歌舞伎座と弁慶を勤めてきた幸四郎さん。
もうすっかり手の内のお役で、気迫あふれる中に余裕すら感じます。
染五郎時代の昔は、中日過ぎたあたりにはいつも声をからしていたのが嘘のような太い声で朗々たる台詞まわし。
特に低音の響きは「ああ、弁慶ってこんな声だったんじゃないかな」と思わせます。

颯爽とした姿かたち、力強く美しい所作、若々しく軽やかな舞、全身から立ち上るような義経に対する熱い忠義の心。
知的で冷静なのにどこか茶目っ気というか可愛らしさもあって、緊張感の中にほっとする一面も。
延年の舞から滝流しに至るところでは今回も泣いてしまいました。あそこで泣くのは幸四郎さん弁慶を観る時だけだなぁ・・・というか、滝流しつきの「勧進帳」されるのが今は幸四郎さんだけなのだけど。

決死の思いで安宅関を通り、幕外で万感の思いを込めたような一礼をしてからの炎のような飛び六方―弁慶の後ろ姿が揚幕の向こうに消えた瞬間、いつも「あぁ もう1回観たいっ!」となります。

松也くん初役の富樫もとてもよかったです。
菊五郎さんに教えを乞うたということですが、教わったことを真摯に忠実に一つひとつ体に沁み込ませている感じ。
元々声のいい役者さんで口跡よく台詞は聴かせてくれますし、関守としての品格、姿かたちの美しさや背格好も幸四郎さんの弁慶ととてもよいバランスでした。
松也くん富樫の力演があって、勧進帳読み上げや山伏問答がより緊迫感に満ちたものになっていました。

特に山伏問答は弁慶と富樫の対峙がまさに丁々発止とはこのこと。
静かに始まった問答がどんどんテンポも熱量も上がっていき、息もつかせぬ問いと答えの応酬となって、観ていて苦しくなるような緊迫感の中、劇的に盛り上がってクライマックスとなるという、手に汗握るようなシビレる山伏問答でした。

雀右衛門さんは、見た目や台詞まわしが若干女形さん味強めかなという印象でしたが、品も情もある義経で、「判官御手」ではやっぱり泣きます(←)
幸四郎さん初役の弁慶の時からずっと後見を勤めていた廣太郎くんが今回初めて四天王の一人 駿河次郎にまわったのも胸熱でした。



すばらしい舞台なのに緊急事態宣のため4月24日で幕。あと4日とはいえ千穐楽までやれなかった口惜しさいかばかりか のごくらく地獄度 (total 2243 vs 2244 )


posted by スキップ at 17:02| Comment(0) | 歌舞伎・伝統芸能 | 更新情報をチェックする
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